せっかく書いたし投稿してみる。
……ん?
…こりゃ珍しい事もあるもんだ。こんな所に意思を持った人間が来るとはね。
あぁ、気を悪くしないでおくれよ。見ての通り、ここは海の中さね。ここに来る人間なんて、大抵海でその命を終わらせてしまった者やアタシと同じように人から別の生き物になった者しか来ないからねぇ…
前者なら恨みや後悔の念が強くて意思疎通なんて出来ない、後者の場合はもう人ではないものだから、あんたの存在が珍しくてね。ついまじまじと見つめちまったよ。
…どれ、せっかくここに来たのも何かの縁だ。少しアタシの話し相手になっとくれよ。
丁度泳ぐのに疲れた所だから、誰かと話でもして休憩したいのさ。
ん?……どうやら、あんたからは話しかけられないみたいだねぇ。なら、アタシが適当な昔話でもするから、それを聞いてくれるだけでいいよ。
アタシは結構長い年月海の中に居るんだ。色々な昔の話を知っているよ。…でもあんまり古いのも退屈だろう、比較的最近の話でもしようじゃないか。
それにしても…海はいいねぇ。
周りをごらんよ。そこら中に生命の力が溢れ、それがどこまでも広がっている。お固い掟なんてない、何者も平等で自由でいられる場所だ。
かつて多くの人間が海に魅せられ、船で旅立ったのも納得するだろう?
……だけどね、自由だからこそ何人もここで命を失ったよ。
嵐に巻き込まれたり、他の生き物に食われたり、食べるものがなくなったり、死んだ理由は様々さ。でもね、意外と人間が人間に殺される事も多かったんだ。
アタシにはよく分からないけど、それぞれに譲れないものがあったんだろうね。色々な組織や国がこの海で戦い、そして死んでいったのさ。
海での争いは昔からあったけど…中でもすごかったのは軍艦が出てきた頃だね。
あれはすさまじかったよ。まるで鯨の様に大きくて、巨大な筒をいくつも乗せている船でね、その筒から放たれる炎は、まるであのテ・カァの一撃を見ているかのようだったよ。まさか、人があんな恐ろしいものを作れるなんてねぇ…おっと、話が逸れちまった。
その軍艦を使って、人々は大きな争いを続けていたんだ。
いくつもの国が、長い年月をかけて戦い続けた。
……船は何隻も沈んだし、大勢死んだよ。この目で何千、何万の魂が何処かへ向かっていく光景も見たさ。今思い返しても、この世の終わりかと思うくらい悲惨なものだったよ。
でもね、長い年月が経つと人間疲れて来るものさ。何時しか争いも終わり、元の自由な海が戻って来た。
人々は船をこぎ出し続ける事に変わりはないが、それは争いの為ではなく遠くの友や資源を運ぶためのもの。あの頃とは比べ物にならないくらいに平和な海になったってわけさ。
……平和は長くは続かなかったけどね。
海で争いを続けたんだ。そこで死んでいった者達や無念の内に沈んだ船の無念も当然海の底に集まった。
そしてそれは怨念となり、何時しか闇が生まれた。
始めは小さい闇だった。しかし、闇はどんどん広がり、集まっていき、個々で形を得るようになった。
それらは奇しくも沈んでいった軍艦たちの特徴を持っていてね、その胸の内に渦巻く怨念をぶつけるかのように海を行く人間たちを襲い始めたのさ。
もちろん人間も抵抗はした。でも、闇から産まれた者たちの力は強大で、何時しか人間は船を出せなくなり、海での自由を失ってしまったんだ。
やがて闇から産まれた
しかし、人間も完全に折れたわけじゃなかった。
人間は深海棲艦に対抗する手段として、在りし日の軍艦たちの能力と魂を持った娘たち…『
彼女たちは軍艦の持つ艤装を装備して深海棲艦と戦い、人々の自由の為に戦ったんだ。
その姿は華麗にして勇猛。アタシも思わず自慢の孫娘の事を思い出したね。…また話が逸れちまった。歳を取ると話したい事が多くなって困るよ本当…
そうして深海棲艦へ抗う術を手に入れた人間たちは反撃を始めた。
艦娘たちは良く人間に尽くし、日々深海の闇たちと戦い続けた。
艦娘たちは深海棲艦との戦いに勝ち続け、人の領海を取り戻していった。艦娘が深海の勢力を倒したという知らせが連日の様に人々に知らされ、人々の瞳に希望の色が戻って来た。
これで大丈夫だ。また、海に自由が戻って来るのだと。
…まぁ、それも長くは続かなかったけどね。
艦娘たちは確かに強大な力を持っていた。でも、深海棲艦たちも一筋縄ではいかなかったのさ。
生物ってのはその環境に適応するために日々進化を続ける。それは深海棲艦も例外ではなかったんだ。強力な艦娘が現れる度に深海の者達はそれに対抗するたびに進化を続け、艦娘たちに適応していったのさ。
そいつらは何時しか“elite”やら“flagship”と呼ばれ、歴戦の艦娘でも手に負えない程に力を付けていった。
そいつらが現れた頃から艦娘たちは押され始め、せっかく取り戻した海もまた征服されちまったんだ。
希望を見せられて、またそれを奪われる。前とは比べ物にならない程大きな絶望に人々は呑まれていった。
艦娘でもダメだったんだ。もう何をやっても駄目だろう。中途半端に希望なんて持つものじゃなかったってね。
その後どうなったかって?…人間とは愚かなもんで最後は神頼みさね。
変な話だよ。神が人間を助けてくれた例なんてごく稀。ましてやその時代では神の存在なんてまやかしとして受け継がれてきて、信じている人間の方が少ないのに、最後に頼るのは何時も神さね。都合がいいったらありゃしない。
…まぁ、それも仕方がないと思うよ。老若男女、職業や立場なんて関係ない、人間どうしようもなかった時は何かに縋りついてでも心を守りたいものさ。きっと神なんて助けてくれないって心のどこかでは理解していても、祈らざる負えなかったんだろうね。
絶望的な状況で、
――――その結果、もの好きな1人の
その男は、人間であり、神であり、戦士であり、厄介者であり…自らの罪に向かい合った勇気ある者。
その男の名は――――マウイ
マウイは遥か南の島に伝わる風と海を司る半人半神の男。
伝説でも人間の為に島を釣り上げたり、風を飼いならして人間の発展に貢献したりと人間に友好的な神だ。人々の祈りを聞き、力を貸す為に彼らの目の前に現れたのさ。
マウイは人間たちの為に再び戦う事を誓い、艦娘たちと共に深海棲艦との戦いに身を投じた。
マウイは強かった。
時代遅れのボートをまるで手足の様に扱い、まさに疾風のごとき動きで敵を翻弄し、隙を見せた相手を自慢の魔法の釣り針で切り裂いた。
戦艦の艦娘にも引けを取らない怪力で何百もの深海棲艦達の波をそのまま押し返した。
釣り針の力で自らを巨大な鷹の姿に変え、敵の艦載機を次々に叩き落し、戦場の空を制した。
戦いに赴く者たちを激励し、時には『ハカ』で鼓舞していつ終わるのか分からない戦いに疲れ果てた艦娘や軍人たちの心の支えとなった。
マウイの参戦で人類側の戦線は盛り返し、人々も段々と希望を取り戻していった。当時の艦娘や人間たちが言うには、まさに伝説通りの英雄だとさ。
……実を言うと、アタシは個人的にマウイには思う所があるからあまり好印象はないんだが、確かにあの時のマウイは英雄と呼ばれるのも当然だと思うよ。
そうしてマウイが参戦してからも長い年月をかけて人間と艦娘、マウイは協力して戦い続け、人類はついに深海棲艦の脅威を払いのける事に成功したんだ。
人類も艦娘も歓喜した。これで、再び海での自由を取り戻せたのだと。
その後の展開?あぁ、それはありきたりなもんさ。人類は再び船をこぎ出し、目的の為に海を進む。艦娘たちはその活躍が認められて戦後も地位やら生活が保証されて、ある者はそのまま軍に残って自分に与えられた役目を続けたり、ある者は戦いから離れて新しい道を歩き出したりとそれぞれ思い思いに生きている。
マウイは戦いが終わった後、何も言わずに人々の前から消えていった。まるで自分の役目は終わったと言わんばかりに何も残していかなかった。
そんなマウイの姿勢に人間と艦娘は敬意を払い、彼を守り神として崇め、新たな伝説として語り継いでいく決意を固めたんだとさ。
……ふぅ、久々に長話が出来て楽しかったよ。付き合ってくれてありがとさん。
さて、アタシも十分休めたし、また泳ぎ始めるとするよ。……なんだい、その物欲しそうな顔は?まるでもっと話を聞きたいみたいじゃないか。…その反応、図星のようだね。本当、変り者だねあんたは。まぁ、世の中一人ぐらい変り者が居たっていいと思うけどね。
でも残念、海では何者も自由。アタシも好きにさせて貰うよ。
そうだねぇ…どうしてもまたアタシの話が聞きたいのなら、気が向いた時にでも海を見てごらん。縁があれば、またアタシに会えるだろうよ。
アタシはずっと海を泳いでるよ。エイのタトゥーと選んだんだからね。…あぁ、こっちの話さね。
さぁ、もういいだろう。アタシはもう行くから、アンタも目覚めて好きな所へお行き…――――
――――これはお前に言ってるんだよ、マウイ
「………んあぁっ?」
そんな間抜けな声を上げながら、俺は目を覚ました。
口元が乾いた涎でベタつく。気持ち悪さを手で拭いながら空に視線を移した。
いつの間にか眠ってしまっていた様だ。なんか変な夢を見た気がする…内容は思い出せないけど、エイに起きろと言われたような…我ながら変な夢だ。
……さっきと太陽の位置が全然違う。どうやら結構長い時間眠っていた様だ。
やっぱり漁と違って釣りは退屈な時間が長いからなぁ……釣り?
「っと、そうだった!……あぁ、クソッ」
俺は眠る前にやっていた事を思いだし、辛うじて握っていた釣竿を引く。
当然のごとく引き上げられた釣り針には魚は掛かっておらず、刺しておいた餌だけ食べられていた状態であった。
まんまと魚にしてやられたというわけだ。思わず餌だけ食っていった魚たちのしたり顔を浮かべて腹を立てる。
銛や網を使えばお前らなんて簡単に仕留められるんだからなっ!……まぁ、流石に毎回そうしてきて飽きたから気分転換に釣りにしたのは俺だけどさ…
居眠りをした結果の自業自得といえばそれまでなんだが、朝から獲物が全くかからないのだから何かに八つ当たりもしたくなるというものだ。
「え~い、もう釣りはやめだ!こうなったらこれで……あん?」
釣り竿を叩きつけ、背負っていた巨大な釣り針を手に取ろうとした瞬間、俺は右胸に違和感を感じて視線を移す。
しかし、俺の右の胸には何もなく、いつも通りタトゥーまみれの自分の身体が瞳に写るだけであった。
「なんだよ、釣れないからサメに変身して魚たちのビュッフェを楽しもうとしてただけじゃないか。邪魔すんなよ」
俺は右胸…正確には右胸に描かれている小さい男のタトゥーに向かって話しかけた。
すると、タトゥーの小さい男は俺に何かを訴えかけるように慌てた様子で動き出した。
「…あーもうッ!お前自分が喋れないの偶に忘れるよなっ!?そんな動きされても何が言いたいのかわからんわっ!!」
俺はタトゥーの男の伝えたい事が分からずに怒鳴る。
するとタトゥーは俺が釣りをしていた岩場の下の砂浜を指さし始めた。
「なんだってんだ……あっ」
タトゥーの男に釣られて視線を移動させると、こいつが慌てている意味が分かった。
砂浜には全体に海藻が纏わりついた大きめの物体が流れ着いていたのだ。
奇妙な事に、その海藻の纏わりついた物体からは人間の足が生えていた。
「……土座衛門、か」
俺は海藻の塊を見ながらそう呟いた。
遺体が海岸に流れ着く。確かに珍しくはあるが、全くないわけではない。
実際に俺も長年生きていて何度か遭遇した経験があったし、ぶっちゃけ少し慣れていた。
「ここまで、お疲れさん」
俺は海で散っていった人間に同情はしない。海に出るという事は、彼らにも相応の覚悟があったという事だ。ならば俺がするべきことは哀れみを持つことではなく、ここまで流れ着いた者へ労いの言葉を掛ける事だろう。それが覚悟を持って海に出た者への最低限の礼儀だと思う。
「わかめだらけで息苦しいだろ。今、綺麗にしてやるからな」
同情はしないが思う所がないわけではない。
せめて身体を清めて海に流すか墓を作ってやろうと遺体に近づき――――
“………ピクッ”
――――その遺体が微かに動いている事に気が付いた。
「――――嘘だろ、おいっ!!」
俺は一瞬だけ虚を突かれるが、すぐにハッとしてわかめの塊へ走り寄る。
わかめに触れると、微かだが呼吸をするかのようにリズムを刻んで動いているのが分かった。間違いない、こいつはまだ生きているっ!
ここは無人島。周りには人の住んでいる土地はなく、他の島もない。まさに絶海の孤島だ。
近くを船が通る事もなく、ここに流れ着く死体は全て遠くで死んで、ここに流れ着いてくるものであった。
その為、虫の息ながらもまだ生を繋いでいる目の前の存在に俺は心底驚いていた。
でも、今は驚いている場合じゃない。助けられるなら、それに越したことはねぇよ!!
「待ってろ!今こいつを何とかしてやる……ん?これって…」
身体に纏わりついているわかめをはぎ取っていると、おおよそ人の身体では考えられない硬度を持った何かに触れる。
この感触…まるで鉄の塊を触っているみたいだ。でも、この感触はどこか懐かしい、以前何処かで触れたような……
「……もしかして」
俺は硬度の正体を確かめる為、それに纏わりついていたわかめを引きちぎった。
すると、わかめの中から大きな鉄の塊が姿を現した。
しかも、ただの塊ではない。何かを放つ為の巨大な筒や何かの動力の様な機械が積み込まれた、明らかに人の手で作られたものであった。
「艤装」
俺はその人工物の正体を知っていた。
艤装。それは船や車に取り付ける装備品の事だ。それがこの人間の身体に装着されていた。
ただでさえ重い艤装を自らの身体に身に着けて海を漂うなんて自殺志願者か頭のおかしい奴と考えるのが普通だろう。
しかし、俺は艤装を身に着けて勇敢に海を突き進む存在を、彼女達の存在を知っていた。
その存在の名は――――
「……久しぶりに見たな、艦娘」
深海棲艦との戦いから長い年月が過ぎ、
艦これのクロス物を書きたい衝動に駆られて書いた。
本当は仮面ライダーかポケモンで書こうとしたけど、他作者さんがもうやってるしせっかくだから見た事ないクロスでやろうとした結果がマウイやったんや…
プロローグだけだから憑依転生要素なかったけど、続けば転生要素出て来るから許し亭許して。
見切り発車だから続くかも未定だしどういう方向性に持って行くかも不明。個人的にはヤンデレしたいけど難しいかも…
続きはやる気と需要次第。
ここまでご拝読ありがとうございました