作者はブルアカにわかです、ご了承ください。
人生ってのは何が起こるか分かんねぇもんだ。
ある日突然宝くじが当たって億万長者になれるかもしれねぇし、好きな人から告白されて恋人ができたり、会社で出世できたりするかもしれねぇ。
そうだ、だからある日突然俺様がポックリ逝っちまうのも自然の摂理と言えるだろう。
んで、気づいたら日本とは全く別の世界にいわゆる転生しちまうってこともまぁ無くはない話ってワケだ。
あ?現実味がなさすぎ?俺様もそう思う。
だがまぁ……この身でそれを経験しちまったら流石に受け入れざるを得ないだろうよ。
というわけで、俺様は前世で齢17歳で命を落として今の世界に転生したってワケだ。
……死因?なんだっけ?……あんま思い出せねぇな。
それに俺様の死に様を語ったところでそんな気持ちいい話でもねぇだろうよ。
ま、そんなことはどうでもいいんだ。なんせ15年も前のことだ。前世の記憶も段々と薄れちまってるさ。
それに……充実した人生とは言い難かったしな。
ま、それはともかくだ。
ブルーアーカイブってゲームを知ってるか?
透き通る世界観で送るRPGをキャッチコピーにした、美少女ゲーの皮を被った世紀末ゲームだ。
いやまぁ俺様もよくわかんねぇんだけどよ。ダチに勧められて一応ダウンロードしてストーリーの序盤を流し読んだくらいだからな。
……こんなことになるなら、もっとちゃんと読み込んどくべきだったけど。まぁとにかくだ。
どうやら俺様が2度目の生を受けたのは、そのブルーアーカイブの世界だったようで…
透き通る世界観とは名ばかりの、火薬の香りと世紀末じみた治安のキヴォトスでの生活は最初は苦労したがまぁ今ではそれなりには楽しくやっているつもりだ。
これはそんな俺様の、最愛の可愛い妹とともに送る……
なんてことない日常の物語だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「書類仕事が終わらねェ!!!」
ドン!!!
という音と共に目の前の書類に印鑑を叩きつける。
場所はゲヘナ学園、万魔殿の執務室。
座っているデスクの目の前に積まれたエベレストの如く高くそびえ立つ書類の山。
印鑑を押した書類を処理済みの山へ放り込みつつ俺様ことゲヘナ学園1年生の丹花タツミ(タンガタツミ)は大声を挙げる。
「……うるさいですよタツミ。少し静かにしてください。」
そんな俺様を見かねたのか書類の山を挟んで隣の机で書類にペンを走らせている赤髪の女性、一学年上の棗イロハ先輩が呆れたようにそう言ってきた。
相変わらずフワッフワの髪の毛を揺らしながら、心底面倒くさそうな表情で書類にペンを走らせている。
「でもよ棗先輩!俺様達は花の高校生スよ!?普通なら友達とくだらない話で盛り上がったり、喉がイカれるまでカラオケしたり、河川敷でお互いに決闘したり素晴らしい青春を送るはずじゃないスか!」
「……前2つはともかく最後のは青春なんですか?」
「ともかく!本来なら楽しいはずの時間を過ごしてるはずなのに何が悲しくて執務室にこもって書類仕事しなきゃいけないんスか!こんなん社会人になったら嫌でもやり放題っスよ!?高校生は今しかエンジョイ出来ないんスよ!?」
「それが私達、万魔殿の仕事だからですね。」
サインを終えた書類に印鑑を押しつつ、棗先輩はジト目でこちらを見つめながらそう言った。
棗先輩の言うことは確かにごもっともではある。
俺様の所属している組織である
つまり所属している以上は生徒会がやってるような書類仕事をこなさなければならないわけだ。
ただ、いくら生徒会といえど普通ならこんなに高く山のように書類が積み上がることはない。
……そう、俺様の所属しているこの学園は普通ではないのだ。
ゲヘナ学園。
ここキヴォトスの3代マンモス校のうちの一つで、ゲヘナの生徒は頭に角が生えていることが多いのが特徴だ。
治安が他の2校やその他の学校より壊滅的に悪く終り散らかしており、そこかしこで生徒が暇さえあれば銃撃戦をおっぱじめたり建物を爆破していやがる。
そのせいで、大量の報告書等が生徒会である万魔殿へ流れ込んできてしまっているのだ。
まぁ俺様から言わせりゃ他の学区もたいがい世紀末なんだけどな。
なんだよ銃持ち歩くのが普通の世界って。
どこの世紀末覇王伝説だってんだチクショウが。
それに、このキヴォトスで暮らす人々は耐久性能がとんでもなく高いのである。
具体的に言えば銃弾を頭に食らっても脳震盪くらいで済むし、体ならクソ痛いくらいで済んじまう。
そういうわけで、この世界ではメチャクチャ気軽に発砲するやつが多いわけだ。どこの終末世界だよまったく。
アメリカだってこんな引き金軽くねーぞ。
あ?俺様?銃弾食らったら即お陀仏だが?
何故かキヴォトス人と違って俺様はそんなに頑丈じゃねぇからなぁ……
ってのも、俺様には【ヘイローがない】からなんだが。
同じ両親から生まれた妹のイブキはしっかりとヘイローがあるんだがな、一体全体何が違うって言うんだ?
まぁそういうわけで、俺様の肉体はキヴォトスの外の人間とそんなに変わらないってワケだ。
「私だってこんなに大量の書類仕事なんてやりたくないです、正直言って今すぐ放り投げてサボりたい気分ですが……仕事は仕事ですからね。仕方ありません。」
そう言って再びペンを走らせる棗先輩。
棗先輩は結構な頻度でサボりたいと言っており実際にサボっているところを見たこともあるのだが、根は真面目なのでやるべき仕事はキッチリとこなす人だ。
つまり力の抜き方を心得ているということ。
これが出来る人は中々いないからな、そういうところは俺様も尊敬している。
「それに、それは本来ならマコト先輩が風紀委員会に押し付けるはずだった書類をあなたが引ったくったんですから責任を持って処理してください。」
俺様の前に積まれている書類のヒマラヤ山脈をペンで指しながら、棗先輩はため息交じりにそう呟く。
そう、俺様が処理している大量の書類は元はと言えばウチの議長である羽沼マコト先輩がゲヘナ風紀委員会に押し付けようとしていた書類なのである。
ちなみに、棗先輩が処理しているのは元々万魔殿で処理する手はずになっているものだ。
「たしかにそれはそうなんスけど……いくらなんでも量が多すぎませんかこれ?というか羽沼議長この量を風紀委員会に押し付けようとしてたんスか?いい加減空崎委員長に殺されますよ?」
「……それがあの人の生きがいですから。」
「どうしようもねぇな……」
俺様と棗先輩は呆れ果てた表情を作りつつ顔を見合わせた。
ゲヘナ風紀委員会。
その名の通りゲヘナ学園の風紀委員会であり、ゲヘナの風紀を守るための組織だ。
先ほども言ったがゲヘナ学園の治安はこの世の終わりみたいな酷さのため、不良やドンパチを取り締まる風紀委員会の出動回数は片手では足りず多忙を極めている。
特に風紀委員会である空崎ヒナ先輩はゲヘナどころかキヴォトスでも匹敵するものは少ないと言われるほど武力があり、彼女が出るだけで鎮圧できる事もあるくらいだ。
そんな多忙を極めている風紀委員会なのだが、何故かウチの羽沼議長はこの風紀委員会のことを目の敵どころか親の敵くらい敵視しており、事あるごとに風紀委員会に対する嫌がらせをしているのである。
ある時は登校してくる生徒のスリーサイズをまとめて提出しろといい、またある時は校内の廊下の合計距離を図れと言う。
俺様が今ヒーヒー言いながら処理しているこの書類も、本来であれば羽沼議長の嫌がらせによって風紀委員会へ押し付けられていたものなのだ。
それを俺様は羽沼議長と言い合いをしてまで無理やりふんだくったワケだな。
理由?んなもん決まってる。
だって……風紀委員会かわいそうじゃね?
ただでさえ自治区内でドンパチやるバカどもの鎮圧で忙しいうえに風紀委員会は風紀委員会で書類仕事とかをやんなきゃならないわけだろ?
そこに嫌がらせでこんな量の書類を押し付けられてみろ。間違いなく発狂ものだ。
俺様ならブチギレて万魔殿に乗り込むまである。
と言うか何なら万魔殿は風紀委員会の予算カットまでやっている、一体何の恨みがあるんだ。
それに、風紀委員会には俺様のクラスメイトである火宮チナツも所属しているからな……出来ればクラスメイトと険悪になるのは御免被りてぇわけで。
アイツとは仲良くやってるつもりだし、たまーに一緒に昼飯食ったりしてるからこれからも仲良くしてぇ。
それに空崎委員長も過労死するんじゃねぇかってくらい働いてるからな、流石にしのびないってのもある。
この前なんか目の隈がそれはもう酷いことになってたからな、見かねて胃薬を渡したら大層喜ばれた。
……いや、普通に考えて胃薬で喜ぶってどこのくたびれたOLだよ。空崎委員長はまだ学生だぞ?
あまりにも労しすぎるだろ……
そんなワケで、俺様は風紀委員会に押し付けられるはずった書類と今格闘しているわけだ。
ん?理由はそれだけかって?
……そうだが?それ以外に何か理由が必要なのか?
困っている人がいたら助ける、当たり前の事だ。
「しかしこの量はやべーでしょ。俺様死にますよ。」
「……あなたがマコト先輩からその書類を奪ったせいで私は本来ならあなたと分担してやるはずだった書類を一人でこなしているんですけどね?」
「大変申し訳ございません棗先輩。終わったら何か奢りますので何卒ご勘弁を。」
「はぁー……全く、仕方ないですね。ポテトチップスで手を打ちましょう。」
「了解です。」
……まぁポテチで済むなら安いもんだな。
こういうところで遠慮が感じられるのが棗先輩の良いところでもあるわけだが。
「というか、元はと言えばこの書類は羽沼議長の仕事なんじゃないんス?あの人何をやってるんスかマジで。」
「マコト先輩ならイブキと一緒にお菓子を買いに行ってますよ。」
「あのバカ帰ってきたら一発殴る!!!」
書類にサインを書きまくり印鑑をドカドカと押しつつ、俺様は本日2度目の大声を挙げた。
「と言うかイブキに菓子を買うのは俺様の仕事だぞ!妹をたぶらかしやがってあのバカ議長……!」
「……マコト先輩はイブキに甘いですからね。」
「アンタもっスよ棗先輩。もちろん俺様もですけど。」
「イブキは可愛いですからね。」
「わかる、マジ天使。さすが俺様の妹!」
書類に印鑑を叩き付けつつ、俺様はそう言った。
ちなみにイブキと言うのは俺様の妹の丹花イブキの事だ。俺様と同じくゲヘナ学園に通っている1年生。
ちなみに兄である俺様とは同学年だが、なんとイブキは11歳なのにゲヘナの高等部に入学できるだけの天才だからなんだなこれが。
まったく、我が妹のことながら誇らしいぜ!
ちなみにイブキはこの世で一番可愛いし大天使である。
当たり前だよなぁ!?
「……なんでイブキはあんなに可愛いのに、兄である貴方はそんな感じなんですかね?」
「おーっとこれは俺様ケンカ売られてますかね?」
「いえ、率直な思いを口にしただけですが?」
「余計タチ悪くないっすかね?」
と、まぁこんな感じで棗先輩は万魔殿の中でも一番と言っていいほどには気安く話せる存在なわけだ。
まぁあのアホ議長……羽沼議長へ対する認識もほぼ一致してるし実際かなり気は合う方だからな。
「あーだめだ、そろそろイブキニウムが切れてきた……」
「なんですかイブキニウムって……」
「イブキから摂取できる栄養素っすね、俺様にとっての酸素みたいなモンっす。」
「……はぁ、コレがなければ少しは頼りになるんですけどね。」
心底呆れ果てた表情でそう呟く棗先輩。
仕方ねぇだろ、イブキに会えなくて寂しいんだよ。
「ただいまーっ!」
「ん?この声は……」
そんなこんなで書類を猛スピードで捌いていると、俺様にとっては聞き慣れた声が耳に入ってきた。
間違いない、この声は世界で一番可愛い生き物である我が妹のイブキの声だ!
「イブキィィィーーー!!!」
「あ、ちょっと……!」
こうしてはいられない。俺様は最後の書類に印鑑を叩きつけると椅子を立ち、猛スピードで声の聞こえた方向へダッシュを始める。
執務室のドアを開けた際に棗先輩が何かを言いかけていたが、そんなのは関係なしに俺様は万魔殿の玄関へと猛ダッシュする。
「イブキ!」
「あ、お兄ちゃん!ただいま!」
そして玄関へと到着すると、そこにはコンビニのビニール袋を片手にこちらへ向かって手を振る大天使イブキの姿があった。相変わらずブカブカの万魔殿のジャケットが抜群に似合っててこの世の何よりも可愛い。
あぁ……イブキニウムが体に染み渡るぜ……
「キキキ……出迎えご苦労だな、タツミ。」
「お帰りイブキ!このバカに変なことされてないか?」
そう言いつつイブキに駆け寄った俺様は、イブキの隣に立っている銀髪の顔とスタイルだけは無駄にいい女性に向かって指を差しながらイブキに問いかける。
「おい!?誰がバカだ!あと私がイブキに変なことをするわけないだろう!と言うか私に対する出迎えの言葉はどうしたァ!」
「あ、居たんすか羽沼議長。」
「さっきこのバカとか抜かしてただろお前ェ!」
「そう言えばそうでしたね、ハハッ。」
「貴様ァ……!」
ずいっと俺様に距離を詰めつつ、心底納得いってないような表情で凄んでくるこの無駄に顔のいい女。
何を隠そうこの女が我らが万魔殿のバカ議長でありゲヘナのリーダー、羽沼マコトである。
「お兄ちゃん!イブキはそんなことされてないよ!マコト先輩はイブキにプリン買ってくれたんだよ!」
「お、おうそうか。そりゃ悪かったよ……」
でもまぁよくよく考えたら羽沼議長がイブキに変なことするわけねぇか。
何故なら羽沼議長も重度のイブキ大好き人間だからな。
兄である俺様と同じくらいの愛をイブキに持っている人間だし、そこはまぁ認めてやらんこともない。
「フン!見たかタツミ!」
「なんであんたがドヤ顔してんだよ……!」
無駄にいい顔でドヤ顔する羽沼議長をぶん殴りたい衝動を抑えつつ、俺様はイブキの頭に手を置く。
まじでこの人黙ってりゃ絵になるからドヤ顔がサマになってるのが余計にムカつく……!
「それはともかく、良かったなイブキ。ちゃんと羽沼議長に礼は言ったか?」
「うん!ありがとーって言ったらマコト先輩涙を流して喜んでくれたよ!」
「そっか、ちゃんと礼を言えて偉いぞイブキ。」
そう言って、俺様はイブキの頭に置いた手を左右に動かす。するとみるみるうちにイブキの顔には満開の笑顔が浮かんだ。あ〜浄化される〜……イブキニウム最高!
それはそれとして、羽沼議長が泣いて喜ぶところはちょっと見てみたかったな。クソほどからかえそうだし。
「えへへ!」
「……まぁなんだその、羽沼議長。ありがとうございます。イブキにプリン買ってくれて。おかえりなさい。」
「い、いきなり落ち着くなオマエ!?……まぁ他ならぬイブキの頼みだからな。礼には及ばん。」
「まぁ、それはそれとして俺様に書類押し付けた件は許してませんからね?」
そう言ってジト目で羽沼議長を睨む。
「書類だと?だからアレは風紀委員に、特にヒナにやらせておけとあれほど言っただろう!?」
「バッカあんたアレ以上は空崎委員長が過労死するって言ったじゃないすか!」
「フン!奴がどうなろうと私の知ったことではない!」
「俺様の良心が痛むんだよォ!」
これ以上空崎委員長の心労を増やしてみろ、天雨行政官が殴り込んでくるぞ。
と言うかもう何回か殴り込んで来てるし。
なにより、あの人の服装教育に良くないからイブキにあんま合わせたくねぇんだよ……!
ないとは思うがイブキが真似したらどうすんだよアレ。
泣くぞ、俺様泣くぞマジで。
あと風紀委員会にはクラスメイトの火宮が居るんだっつーの。教室で気まずくなりたくねーんだよ。
「第一貴様の所属は万魔殿だろう!何故風紀委員の肩を持つんだ!」
「俺様は心労がたたってる人を放っておけるほど血も涙もない奴にはなりたくねぇんスよ!」
「ヒナならあの程度何ともないだろ!現にお前が来るまでは平気だったんだぞ!」
「平気だったんじゃなくて無理してただけなんだよなぁ!?空崎委員長目の隈やばいぞ!?不良の鎮圧に書類仕事もは流石にキツいわ!」
「随分とヒナにお熱じゃないかタツミィ……!さてはお前ヒナのこと好きだな?」
「は?何をどうしたらそうなんだよ!?脳みその代わりにプリンでも詰まってんのか!?」
「何だとこのシスコン野郎!」
「上等だ表でろやアホ議長!」
「はぁ……何をやってるんですか二人とも。」
俺様と羽沼議長がギャーギャーと言い争っていると、棗先輩が奥の廊下から気だるそうに歩いて来た。
「おぉイロハ。キキキ、出迎えご苦労だな。」
「おかえりなさいマコト先輩。イブキ。」
「ただいまーイロハ先輩!」
俺様と言い合いをしていた羽沼議長はすぐに表情を切り替え、ニヤリとした笑みを浮かべた。
その横ではイブキが笑顔を浮かべている、マジ天使。
「タツミ、あなた書類は終わったんですか?」
「あぁ、俺様が飛び出す前に終わらせた書類があると思いますけど、それで全部っすね。」
「……本当に仕事だけは早いんですから。あとそれならそうとせめて言ってください。確認してしまいました。」
「うっ……す、すいません。」
ジト目でこちらを見てくる棗先輩に対して、俺様はバツが悪そうに謝罪する。
……と言うか棗先輩確認してくれたのか。ありがたい。
「……それにしても、随分とヒナ委員長の肩を持つんですね?」
「キキキ、イロハもやはりそう思うか!」
棗先輩はジト目でこちらを見ながらそう言った。
辞めてくれ棗先輩……バカが調子に乗っちまうだろ……
と言うかほんとに他意なんかないんだが。
困ってるから、じゃ理由になんないのか?
「棗先輩までそんな事言わんで下さいよ……別に他意はないっス。空崎委員長があまりにも忙しくて見てられないから……困っている人がいるなら助けたいからスよ。理由はそれで充分じゃないですか。」
「まったくあなたは……そういうところですよ?」
そう言うと、棗先輩は頭に手を当ててため息を吐いた。
……何がそういうところなんだ?
「まったくだ、その心意気は良しだがそれを風紀委員以外に向けてほしいものだな。」
羽沼議長もうんうんと腕を組んで頷いているし。
……なんなんだ?
「別に風紀委員だけじゃないっスよ?」
「それは分かってます。給食部などからもあなたに助けてもらってると言う話は聞いていますから。」
「あぁ、この前調理手伝ったアレっスか?愛清先輩と牛牧の役に立てたなら良かったですが。」
「……ほんとにこういうところなんですよね。」
棗先輩はジト目を更に細めつつそう言った。
理解できずに首を傾げていると、イブキにジャケットの端をちょいちょいと引っ張られる。
「ねーねーお兄ちゃん!お仕事は終わったの?」
「ん?あぁ!さっき終わったところだぞ。」
「ならイブキと一緒にプリン食べよ!マコト先輩がみんなの分も買ってくれたんだ!」
イブキはそう言うと満点の笑顔で手にしたビニール袋からプリンを取り出しつつそう言った。
あぁもう可愛すぎるだろ!なんだこの可愛い生き物は!俺様の妹だよ!かーっ!俺様マジ勝ち組だな!
と言うか、羽沼議長俺様達の分もプリン買ってくれたのか?……おいおい、明日は槍でも降んのか?
「フン、まぁたまには労ってやってもバチは当たらんだろう。サツキとチアキの分もあるから、せっかくだし皆で食うか?」
「さんせー!皆で食べたほうが美味しいもんね!」
「まぁ俺様は仕事終わりましたし構いませんが…棗先輩は?」
「私も先程終わりましたので構いませんよ。」
流石は棗先輩。なんやかんやと言いつつも優秀だ。
「なら京極先輩と元宮先輩も呼んでこねぇとっすね、俺様呼んできましょうか?」
「ならチアキは私が呼んできますよ、タツミはサツキ先輩の方をお願いします。」
「分かりました、んじゃちょっくら呼んできますわ。」
このあと皆でめちゃくちゃプリン食べた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おいし〜!」
「イブキ天使すぎんか?俺様気絶しそう。」
「分かるぞタツミ。私も気絶しそうだ。」
「いやぁ気が合いますね。死ぬほど嫌ですけど。」
「なんだとタツミィ!」
「真顔で鼻血出しながら言わないで下さい二人とも……変質者にしか見えませんよ?」
「マコトちゃんもタツミもイブキちゃんにメロメロだものねー。」
「イブキちゃ〜ん!こっち向いて〜!」
カメラを片手にイブキの写真を取りまくる元宮先輩。
写真後でくれねぇかなぁ……
なお、プリンを真剣な顔をしながら食ってる羽沼議長の姿は結構面白い。鼻血出てるけど。
あと京極先輩。プリン食いながら5円玉振るの辞めてくれ頼むから。せめて食い終わってからやってくれ。
「京極先輩?また催眠術の練習すか?」
「うーん、そうなんだけど中々うまく行かないのよねー。何回も練習しているのだけど。」
「……まぁその、頑張ってください。」
ピンク色の髪を揺らしながら、大きな胸の下で腕を組みつつそう言う京極先輩。
「おかしいわねぇ……マコトちゃんは即かかってくれるのに……」
「つーか今誰に催眠術かけようとしてるんすか?」
「もちろんタツミよ!」
「堂々と言うなよ!?かかりませんからね!?」
この人催眠術のことさえ無ければ羽沼議長よりよっぽど頼りになるんだけどなぁ……そもそも、京極先輩の催眠術ってホントに効果あんのか?
そういや前に羽沼議長がくっそ気持ち悪い話し方してた事があるが、アレは京極先輩の仕業だったのか……?
あと俺様を催眠術の実験台にするのはもう慣れたから良いが、せめて一言声は掛けてくれ頼む。
声かけてくれたら暇だったらいつでも付き合うんだけどな、なんやかんやで京極先輩にはお世話になってるし。
ま、そんなことよりプリンを食ってるイブキが可愛すぎるんだがな!
うぉぉぉぉイブキ最高!イブキ最高!
「あーイブキちゃんが可愛すぎます!」
「やっぱそっすよね!?そう思うっすよね元宮先輩!」
「うん!特に笑顔が可愛くてたまんないよ〜!」
「わかる!イブキマジ天使!」
「「イェーイ!!!」」
俺様と元宮先輩は同じタイミングで椅子を立つと、手の平を出してハイタッチをする。
「うぉぉイブキ最高!!!」
「イブキちゃーん!笑って笑って〜!」
「元宮先輩!次の万魔殿定期新聞の一面イブキの笑顔にしません!?過去最大人気更新間違いなしっすよ!」
「えぇ……?流石にそれはどうなのかしら……?」
「おっ、ナイスアイデアだねタツミくん!よーし、張り切って記事書くぞー!」
「チアキ!?」
「何アホなことをやってるんですか貴方達は……あとタツミは鼻血を拭いてください。」
と言いつつ、棗先輩も顔が緩んでいる辺り内心では楽しんでいるような気がするけどな。
棗先輩から受け取ったティッシュで鼻血を拭く。
羽沼議長がくだらん企みをして、棗先輩がため息をついて、イブキが笑顔で居て、京極先輩が催眠術を練習して、元宮先輩がそれを写真に収めて、俺様がいて。
これが万魔殿の日常。
……俺様の、かけがえのないものだ。
あったけぇな。……あったけぇよ、本当にな。
「キキキ……イブキ、今日はなんとおかわりもあるぞ!」
「え!?イブキプリン2つも食べちゃっていいの!?」
「なにィ!?プリンを2つもだと!?」
「キキキ……もちろんだ!さぁイブキ!プリンだぞ!」
「やったー!マコト先輩だいすきー!」
「グフッ!」
「ガハッ!」
「はぁ……」
「イロハ?大丈夫?」
「あはは!マコト先輩もタツミくんもおもしろーい!」
前世に未練が全く無いかと言われれば……まぁ、少しだけやり残したことはあるけども。
今は……こんな日常がいつまでも続けばいいな。
満面の笑みのイブキを見つめつつ、俺様はそう思った。
1話目を読んでくださってありがとうございます。
超見切り発車なのでゆるゆると続けていけたらと思います。
なお、感想を頂けると泣いて喜びます。
よろしくお願いします!