A,もう2・3話待って♡
いつもたくさんの感想ありがとうございます!
誤字脱字報告も感謝です、少しづつ修正していきます!
「んー、これこれ!やっぱ山海経に来たら肉まんを食わないとなぁ!」
ある非番の日のこと。
特にやることもなく寮の部屋でゴロゴロしていた俺様はふと猛烈に肉まんが食いたくなり、山海経行きの電車に飛び乗ってやって来ました山海経高級中学校自治区。
周囲を見ると飲食店がたくさん立ち並んでおり、その中には店先で肉まんを蒸して売っている店もあった。
ここ山海経高級中学校は前世で言うところの中国がモチーフになっているようで、麻婆豆腐や北京ダック等の本格中華から肉まんのような歩きながらでも手軽に食える軽食まで、幅広い中華料理が楽しめる街だ。
グルメが有名なので、これまたグルメが有名な百鬼夜行同様に観光客で大層賑わっている自治区だな。
実際観光業も盛んみたいだし。
自治区の入口から色んな飲食店が立ち並んでいる光景は初めて見た時は驚いたもんだ。
百鬼夜行も観光業や飲食業が盛んなので、似たりよったりって感じの地区だろうか。
まぁこのいかにも「チャイナ!」って感じの赤い建物群を見てるだけで楽しいってところもあるからな。
俺様も前世は日本人だったので、同じアジアの街並みを見ると少しホッとしないこともない。
まぁ百鬼夜行のあの感じには流石に負けるけどな。
アレはなんというか、実家のような安心感を感じる。
一方で、山海経自体の方針としてはわりと閉鎖的らしくよそ者に関しては歓迎しない傾向にあるとか。
そんな山海経の風習に異を唱えて、外部との積極的な交流を図ろうとする勢力が出てきて今はバチバチに争っている……と、この前の会議で羽沼議長が言っていた。
確か……玄龍門と玄武商会だったかな?
玄龍門が伝統的な山海経の文化を守ろうとする派閥で、玄武商会が他校と積極的に関わってる派閥だった様な。
いつもながら思うけど、あの人どこからそんな情報仕入れてきてんだろうな……?
まぁキヴォトスで一枚岩の学校なんて数えるほどだろうし、別に珍しい話でもないんだろうが。
と言うわけで、山海経で俺様のようなよその生徒が大手を振って歩けるのは主に玄武商会の影響の強い地区が主になっている。
玄龍門の影響の強い地区に行くと最悪睨まれることもあるからな、一回間違えて入っちまった時はそれはもうすごい目で見られてびっくりした記憶があるなぁ。
まぁ他の自治区のイザコザに首を突っ込む気はサラサラないので、今後は注意しておこう。
そんな事を考えつつ、俺様は肉まんの入った紙袋を左手に抱え右手に手にした肉まんにかぶりつく。
口の中にジューシーな肉汁が広がり、モチモチの皮との融合が大変心地良い。
「ん、うめぇ!」
うーん、やっぱ肉まん食うなら山海経だよなぁ!
イブキも連れてきてやりたかったけど、今日は生憎飛び級クラスのテストの日だったんだよなぁ……
流石にテストの日に他の自治区に連れ歩くわけにはいかないので、土産でも買って帰ってやろう。
何を買ったら喜ぶかな?流石に山海経にまで来てプリンは芸が無いし……桃饅頭とかどうだろうか?
「うわぁぁぁぁぁん!」
「……ん?」
そんな事を思いつつ山海経の街をフラフラと歩いていると、前方から何やら大声が聞こえてきた。
声の感じからしてまだ幼い子どもだろうか?
俺様は声のする方を見やると、そこにはピンク色のスモックを着て黄色い帽子を被った5歳くらいの小さな女の子がしゃがみ込んで大泣きしている光景が広がっていた。
あれは……どう見ても保育園の園児って感じの格好だな?
「……あの子1人か?」
周囲をキョロキョロと見回してみるが、街ゆく人々は気まずそうにその子を避けて通るだけであの子に駆け寄る保護者らしき人の姿が見当たらない。
おいおい……いくらなんでも薄情すぎないか?
あんな幼い子どもが泣いてるんだぞ……?
しかし……おかしいな、両親はともかくあの格好をしているならどこかの保育園か幼稚園に通ってるはず。
なら近くに園の先生が居て然るべきだと思うが……
……あまり他の自治区の問題に首を突っ込むのは得策とは言えないが、流石にあんな小さな女の子を放っておくことは俺様には出来なかった。
俺様はその子の側まで近寄ると、しゃがみ込んで女の子の目線まで顔を下げる。
「どうしたんだ?お嬢ちゃん。」
「うぇぇぇん!おさんぽしてたらみんながどっかいっちゃたのー!」
……なるほど、どうやら園から出て散歩をしている時に先生や他の園児とはぐれてしまったようだ。
ならやることは決まったな。
この子を泣きやませて、園まで送り届けるとしよう。
「えーっと、君の名前は……」
スモッグに付いている花型の名札を確認する。
そこには可愛らしい文字で「ココロ」と書かれていた。
「なるほど、ココロちゃんって言うんだな。ココロちゃん、皆はどのあたりで何処かに行っちゃったんだ?」
「うぇぇぇぇん!そんなの分かんないよぉ!」
「……まぁそうだよなぁ。」
ココロちゃんはわんわんと泣きながらそう言う。
まぁそりゃこんな幼い子が把握しているわけもない、聞いたのは失敗だったな。
「……よし、ココロちゃん。お兄ちゃんが皆のところまで送ってあげるぜ!」
「うぇぇ……ひっぐ。ほ……ほんと?」
「もちろん。お兄ちゃんの名前は丹花タツミって言うんだ。お兄ちゃんはこう見えても嘘はつかないんだぜ?」
「……でも、知らない人について行っちゃだめってココナちゃんが言ってた。」
まぁ、それは確かにそのとおりなんだよなぁ。
ココナちゃんが誰なのかは知らんが、よく教育が行き届いているようで何よりだ。
……ってか、俺様今ゲヘナの制服着てるからな。
下手すりゃ誘拐犯と間違われる可能性もあるわけで。
クソ!ゲヘナの治安の悪さがこんなところで災いするとは思わなかったぜ……!
しかし困ったな、これじゃどうしようも……
「……ん?」
そんな事を考えて頭を痛めていると、ココロちゃんが何やらキラキラした目をしながら俺様の手元を見ているに気がついた。
何事かと思い視線を追うと……肉まんの入った袋を見ているようだった。
「……食うか?肉まん。」
「いいの!?」
「おう、いっぱい買ったからな。1つくらいやるぞ。」
「やったー!ありがとう、タツミお兄ちゃん!」
俺様は肉まんを1つ取り出し、ココロちゃんに手渡す。
肉まんを受け取ったココロちゃんは満面の笑みで肉まんを頬張り、ニコニコした笑みを浮かべた。
……良かった、とりあえず泣き止んでくれたようだ。
ってか保育園に通ってるだろう子に勝手にモノ食わせちまったが大丈夫か……?栄養管理とかしてるんじゃ……?
……園の先生に会ったら平謝りするしかねぇな。
「にしても、この子はなんてところに通ってんだ……?」
俺様は肉まんを食べてハムスターみたいになっているココロちゃんの頭を撫でつつ、もう片方の手でスマホを取り出して「山海経 保育園か幼稚園」で検索をかける。
すると、スマホのディスプレイはすぐに答えを導き出してくれた。
「山海経高級中学校訓育支援部、梅花園……」
山海経でヒットする保育園もしくは幼稚園がここだけのようなので、ココロちゃんはこの梅花園と言う所に通っている園児ということで間違いないだろう。
早速マップアプリを起動してここから梅花園までの距離を図ってみると、どうやら歩いて10分ほどの場所のようだ。
「よしココロちゃん!お兄ちゃんと梅花園までお散歩しようか!」
「うん!分かった!タツミお兄ちゃんはいい人みたいだし、ココロついてく!」
そう言うと、ココロちゃんは満面の笑みを浮かべる。
肉まん1つあげただけでこの懐かれようは少しびっくりするけど、まぁ小さな子ならこのくらいの方が可愛げがあっていいかもしれねぇな。
俺様ははぐれたら困るのでココロちゃんに手を差し出すと、ココロちゃんは小さな手で俺様の手を握った。
……イブキが小さかった頃を思い出すなぁ。
「よーし、じゃあお散歩の続きだ!行くぜココロちゃん!」
「おーっ!」
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「わー!たかーい!」
「こらこらあんま暴れんなよー。落ちちまうぞー。」
俺様の首の上でキャイキャイと騒ぐココロちゃんにそう言いつつ、俺様はスマホのマップアプリを頼りに梅花園のすぐそばまでやって来ていた。
ちなみにココロちゃんは最初は手をつないで一緒に歩いていたのだが、途中から「肩車して!」とせがんできたので二つ返事で肩車をしている次第だ。
そう言えばイブキも小さい頃はよく肩車してやったけど最近はしてやってねぇなぁ……
まぁもっぱら、イブキは肩車よりも俺様の膝の上の方が好きみたいだけどな。
と、そんなこんなしているうちに梅花園が見えてきたようだ。
……なんか、すごい立派な建物だな。
「ココロちゃん、ここでいつも遊んでるんだな?」
「うん!ここでいつもシュンお姉ちゃんやココナちゃんといっしょにお友達と遊んでるんだー!」
ココロちゃんの反応的にもここで間違いないようだな。
……しかし、どう事情を説明したものか。
梅花園の先生達からしてみれば、迷子になった園児がゲヘナの生徒に肩車された状態で帰ってくる訳だろ?
……俺様、問答無用で撃たれたりしねぇよな?
そんな事を思いつつ、俺様は正面の門に備え付けられた来客対応用のチャイムに手をかける。
「あーっ!ココナちゃんだー!」
すると、その瞬間に俺様の頭の上のココロちゃんが誰かを見つけたようで大声でその人物に呼びかけた。
思わず俺様は押そうとしていたチャイムから手を引っ込め、ココロちゃんが呼びかけた人物を見る。
ココナちゃんと呼ばれた人物は梅花園の建物の入り口に立っており、ココロちゃんを見つけるなり大きく目を見開いてこちらへ走り寄ってくる。
「ココロちゃんっ!」
「知ってる人か?ココロちゃん。」
「うん!ここのきょーかん?なんだって!」
教官?
……ニュアンス的には先生という意味だろうか?
ともかく、知り合いが居るならもう安心だな。
俺様はゆっくりと屈んでココロちゃんを地面に降ろす。
すると正面の門が開き、ココナちゃんと呼ばれた人物はココロちゃんに走り寄るとそのまま抱きしめた。
「ごめんねココロちゃん!私がもっとよく見てたら……」
「んーん!大丈夫だよココナちゃん!タツミお兄ちゃんがここまで送ってくれたから!」
そう言うと、ココロちゃんは「ねー?」と言いながらニコニコした表情を様に向けてくる。
それに俺様も笑顔で返していると、ココナちゃんと呼ばれた人物はココロちゃんから手を離すと俺様の前へと歩いてくる。
そして、そのまま頭を下げた。
「ありがとうございました、ゲヘナの生徒さん。」
「いや、俺様は当たり前のことをしただけだ。顔を上げてくれ。えーっと……」
俺様が首をひねりつつそう言うと、ココナちゃんと呼ばれた少女は顔をガバっと上げる。
「ごめんなさい。私は春原ココナと言います。ここ、訓育支援部梅花園の教官をしています。」
そう言うと、春原教官は再びペコリと頭を下げた。
彼女の銀髪とケモミミがふわっと揺れる。
……俺様が見たところ、この子イブキよりも少し歳上か同い年ぐらいに見えるんだが?
この歳で教官……もとい梅花園の先生をやってんのか?
……マジで?
「ご丁寧にどうも。俺様は丹花タツミだ。」
「タツミさん、この度はココロちゃんを助けてくれてありがとうございました。」
「いいっていいって。たまたま泣いてるのを見かけてほっとけなかっただけだよ。礼には及ばんさ。」
実際あそこで見捨てるって選択肢は無かったわけだし。
「私、園の皆を連れてお散歩してる途中にココロちゃんがいなくなっちゃって、どこを探しても見つからなくて、シュン姉さんにもいっぱい迷惑を……」
「あー、春原教官。ストップだ。」
事情はとりあえず把握した。
要は春原教官が園児たちを連れて散歩していたら、ココロちゃんがはぐれてしまったということだろう。
パッと見た感じ、ココロちゃんはとても好奇心が旺盛な子だ。散歩中に興味を惹かれるものにでもフラフラと近寄っちまったんだろうな。
「園児を連れて散歩するってのは大変だろうなってのは俺様でもわかるさ。それに、何もココロちゃんだけってわけじゃ無かったんだろ?」
「……はい。当時は園の子ども達が10人ほどいました。」
「やっぱりな。ココロちゃんくらいの歳の子どもってのは大変だろ?目を離すとすぐ危険に首を突っ込んでるし、注意しても聞かねぇし、ギャン泣きはするし……」
うーん、イブキの小さい頃を思い出すなぁ。
今でこそ結構聞き分けのいい子になっているが、イブキがココロちゃんくらいの歳だった頃はそれはもう甘えただしワガママだったもんだ。
まぁ、そんなイブキも超可愛かったんだけどな!
「そんな子どもを10人も抱えて散歩だろ?とんでもなく気を張ってても1人はぐれちまう事くらいあるだろ。」
「でも、私は教官なんですよ!この子達の命を預かる身として、今回の失敗は……」
「なら次から気をつけたら良いんじゃないか?」
俺様がしれっとそう言うと、春原教官は目を見開く。
「なぁ春原教官。失敗は誰にだってある。俺様には妹が1人居るんだが、春原教官は見たところそのくらいの歳に見えるんだよな……そのくらいの歳なら失敗なんざあって当たり前の話だ。大事なのは、反省することと繰り返さないこと……だろ?」
……完全に先生の受け売りだけどな、この言葉。
「反省してるならそれを次に生かせばいいさ。それに春原教官はその歳で梅花園の教官をやってんだろ?俺様めちゃくちゃすごいと思うぜ?」
見たところ、春原教官の年齢はイブキとほぼ変わらないだろう。
イブキだって天才児なのは間違いないが、じゃあ自分より幼い子の面倒を見れるかって言うと多分無理だ。
しかもそれが複数人となればなおさら。
ってか俺様でもそんなの無理だ。出来るわけがない。
だが、春原教官はそれをこなしている。
普通にめちゃくちゃ凄いことだと思うし、尊敬する。
「……ま、今回は俺様も運よくいた事だし気にすんなよ春原教官!初対面なのに説教臭くなって悪かったな。」
そう言って、俺様は目尻に涙を溜めている春原教官の頭に手を置くとそのまま撫でる。
春原教官はしばらくぽかんとしていたが、やがて顔を赤く染めると手をブンブンと振り回す。
「……こ、子ども扱いしないでくださいっ!私は一人前のレディなんですからねっ!?」
頬を膨らませつつそう言う春原教官。
やべっ、ついいつもイブキにやってる感じで頭撫でちまったけどよくよく考えたらいくらイブキくらいの歳の子とは言え初対面の女の子の頭を撫でるとかやっちゃだめじゃねぇか!
「……そうだな。悪かった。」
そう言って、俺様は手を引っ込める。
それに、春原教官はイブキとは変わらない歳とは言え梅花園で教官を任せられるくらいにはしっかりした子のようだし子ども扱いするってのは失礼に当たるだろう。
「すまねぇな春原教官。」
「あっ……い、いえ!そこまで謝ってもらわなくても……」
俺様は頭を下げると、春原教官はワタワタと慌て始めた。
「春原教官は一人前のレディだよ。梅花園って山海経の大事な施設の教官をその歳で任されてんだ。俺様なんかよりもよっぽど大人だし、すごいと思うぞ。」
そう言って、俺様は笑顔を見せた。
「あ、ありがとうございましゅ……」
「あー!ココナちゃんかおまっかー!」
「こ、こらココロちゃん!ココナちゃんじゃなくてココナ教官だと言ってるでしょ!」
心底楽しそうに笑うココロちゃんと、そんなココロちゃんを叱りつける春原教官。
うーん、実に微笑ましい光景だ。
「その、ありがとうございますタツミさん。ココロちゃんを助けてくれただけじゃなくて、励ましてまでもらっちゃって……」
「何度も言うが礼には及ばないぜ?春原教官、アンタは凄いんだからもっと胸を張れよな?」
「……ふふ、はいっ。ありがとうございます!」
そう言うと、春原教官はケモミミをぴょこぴょことさせながら花の咲いた様な笑みを浮かべた。
……しかし、この子イブキとそう歳変わらないだろうになんつー格好してんだよ……スカート短すぎんだろ……
やっぱ山海経の生徒って目のやり場に困る格好してるよな……?
「じゃ、俺様はこの辺で失礼するわ。」
「はい、本当にありがとうございました。大したお礼もできずに申し訳ないです……」
「良いって良いって、気にすんなよ!」
ペコペコと頭を下げる春原教官に対して、俺様はそう答える。
「えー、お兄ちゃんもう帰っちゃうの?」
「ん?あぁ、お兄ちゃんはゲヘナってところに住んでるんだ。電車に乗らないとだから、そろそろ帰らないといけねぇかな。」
それにまだ肉まんしか食えてねぇしな。
イブキ達への土産も買ってやりてぇし。
「えー!?やだ!ココロ、まだお兄ちゃんと遊ぶ!」
そう言うと、ココロちゃんは俺様の足に腕を回してしがみついてくる。
「こ、こらココロちゃん!お兄さんに迷惑でしょ!」
「やーだー!タツミお兄ちゃんと遊ぶのー!」
春原教官はグイグイとココロちゃんを引っ張るが、ココロちゃんはキヴォトス人パワーをいかんなく発揮して俺様の足を掴んで離さない。
うーん……まいったな、このくらいの歳の子どもがこう言い出したらマジで言う事聞かねぇからな。
イブキもこのくらいの頃はよくこうやってワガママ言ってたっけ……
「春原教官、部外者が園に入るのは流石にマズいよな?」
「え?そ、そうですね……恐らく駄目だと思います……」
「だよなぁ……」
うーん、ああは言ったが別に電車までまだ時間はあるしココロちゃんに付き合えないことはないんだよな。
とは言え、流石に梅花園に入って遊ぶわけにもいかないしどうしたもんか……
「ココロちゃん、お兄ちゃんもココロちゃんと遊んであげたいけど梅花園に入るわけにはいかないから……」
「やーだー!ココロお兄ちゃんと遊ぶのー!」
「ハハハ……どうすっかなー……」
うーん困った。こりゃギャン泣きコースだぞ。
「……タツミさん、少し待っていてもらえますか?」
春原教官はそう言うと「ココロちゃんをお願いします」と言い残し、パタパタと梅花園の中へと消える。
そして数分立ち、急いでこちらへ駆け寄ってくると……
「お待たせしました。シュン姉さんから許可が出ましたので、タツミさんさえよければ是非ゆっくりしていってください。」
満面の笑みでそう言った。
……えっ、俺様梅花園に入っていいの?マジで?
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「おにーちゃん!遊ぼ遊ぼー!」
「私とおままごとしよー!」
「あっずるい!お兄ちゃんは私とお絵かきするの!」
「もーみんな!お兄ちゃんはココロのなんだから!」
「おいおいそんなに慌てなくても俺様は全員に付き合ってやるぜ?よーし、まずはお絵かきからだぁ!」
俺様は四方八方から群がってくる子ども達にもみくちゃにされながら、半ばヤケクソじみた声でそう叫んだ。
「あらあら、ふふふ。大人気ね彼。」
「気難しい園の子達がここまで懐くなんて……タツミさんは一体何者なんだろう……」
そんな俺様の横でそう呟く春原ココナ教官と、その姉の春原シュン教官。
「さぁ皆クレヨンは持ったな!?」
「「「はーい!」」」
「よっしゃ!行くぞぉぉぉ!」
俺様の声とともに、一斉に園児たちは持っているクレヨンを一心不乱に動かして画用紙に絵を描いていく。
その光景を笑顔で見つつ、そろそろと少しだけ園児たちから離れた場所に離脱する。
や、やっぱこのくらいの歳の子どものパワーってのはすげぇな……!俺様もう既にしんどいぞ……!
少し遊ぶだけでこれなんだから、この人数を毎日捌いている梅花園の教官ってマジですげぇんだな……
「お疲れ様です、タツミくん。」
「い、いえ……このくらいどうってことないっすよ……」
肩で息をする俺様に近寄ってきて労ってくれたのは黒髪が綺麗な春原シュン教官。
ココナ教官と同じくここ訓育支援部梅花園の教官を務めている女性で、ココナ教官の実姉に当たる人物だ。
その証拠に彼女達の頭にはお揃いのケモミミがぴょこぴょこと動いている。
そのあまりにも近すぎる距離に少しドキッとするが、頭を振って煩悩を振り払う。
……と言うか毎度毎度思うんだが、キヴォトス人ってなんでこう羞恥心の無い格好をしてんだよ!?
なんだよその胸の横の空いた服!天雨行政官よりやべぇんだが?それになんだよそのエグいスリットの入ったスカート!スカートっつーかほぼ前掛けじゃねぇか!?
教育者の格好か……?これが……?
「……タツミさん?」
「はっ!な、何でもない!何でもないぞココナ教官!」
そんな俺様をジト目で見てくるココナ教官に俺様は抗議の声を上げた。
ちなみに、シュン教官とココナ教官は姉妹なため名字の春原で呼ぶと紛らわしいので名前で呼んでくださいと言われたため、名前で呼ぶこととなった。
俺様としては初対面の女性……どころか、仲のいい女子ですら名前で呼ぶのに抵抗があるんだがキヴォトス人は何故か下の名前で呼ぶのが普通って感じなんだよな。
まぁ春原教官って呼ぶ度に2人に反応されるのは確かに困るので、かなり渋々ではあるが了承をした。
……よくよく考えたら、俺様が女性を名前で呼ぶのってイブキとこの2人だけだな?今のところは。
ちなみにシュン教官は「ココナちゃんとココロちゃんを助けてくれた方ですもの、是非ゆっくりしていってください」と快く俺様を梅花園に迎え入れてくれた。
器があまりにもデカい。
……いや、デカいのは器だけではないんだけども。
特に身長。俺様より高いんだが……?
「それにしても、すごい人気ですねタツミくん。」
「ハハハ……妹がこのくらいの歳の時に接してた方法で接してるんですけど、何故か懐かれちまいましたね……」
「……なるほど。それであんなに子どもの扱いが上手かったんですね。ココロちゃんは梅花園の園児の中でも特に人見知りの激しい子なので、ビックリしました。」
そう言って納得のいった表情を浮かべるココナ教官。
……えっ、ココロちゃんって人見知りだったのか?
めっちゃ人懐っこい子だなーとしか思わなかったぞ……?
「でも、二人とも毎日これだけ多くの子どもの相手をしてるんすよね?本当にお疲れ様です。」
「ふふ、ありがとうございます。確かに子ども達の元気に振り回されることが多いですが、その分私達も子ども達から元気をもらっている部分も多いですから。」
そう言うと、頬に手を当てて子ども達を見るシュン教官。
その目は慈愛に満ちており、まさに聖母の如き眼差しであった。なんというか、ママみがすごい。
……そういやシュン教官は3年生だって言ってたけど、とても17歳には見えねぇんだよな。
ちなみにココナ教官は11歳らしく、マジでイブキと同い年だったらしい。
イブキと同じく飛び級で、山海経の1年生なんだとか。
本当に凄いと思う。11歳で前世で言う保育園か幼稚園の先生をしてるなんて本当に尊敬しかないな。
「……それでも、ですよ。こういう仕事って必ず必要だと思うんですけどその苦労を理解してる人ってのは一握りでしょうからね。俺様はイブキの世話をしてたから分かりますが、一人でも大変なのにこんなに大勢の面倒を見てるんすから……シュン教官もココナ教官も、ほんとに頑張ってると思いますよ。ありがとうございます。」
まぁ俺様はイブキ一人の面倒を見てただけだから、2人の苦労には到底及ばないがな。
「あらあら……ふふふ。お上手ですねタツミくん。」
「そ、そんなに褒められると照れますね……」
俺様の言葉を聞いてシュン教官は顔を赤くして頬に手を当て、ココナ教官はへにゃっと笑いながら体をもじもじとさせている。
「そう言うタツミさんこそ、ゲヘナの万魔殿に所属しているんでしょう?それこそ私達には到底務まらない仕事だと思いますよ?」
「まぁ万魔殿っつっても基本は書類仕事と外交とかの政治だからなぁ。ま、慣れれば意外とやれるもんだぞ。」
それに外交は主に羽沼議長が率先してやってるから、俺様の仕事は主に書類仕事だしな。
あとはゲヘナ内をパトロールしたり、アホ議長の使いっ走りみたいなことが多い気がする。
……そう言えば、今度羽沼議長が山海経の生徒会に外交に行くぞとか言ってたような気がすんな?
山海経の生徒会っつーことは玄龍門だよな?大丈夫か?門前払いされない?
「書類仕事ですか……」
「えぇ。たまに積み上がりすぎて夜更かしすることになることもありますがね。」
「それは……お肌に悪そうですね。」
……いや、シュン教官アンタまだそんな歳じゃねぇだろ。
俺様には超美人にしか見えないんだがな。
「それにしても、まさかキヴォトスに男の方がいるなんて……ふふっ、びっくりしてしまいましたよ?」
「うーん、やっぱ珍しいんすかね?」
「それはそうですよ!私、ココロちゃんを連れてきてくれた時はそれどころじゃなかったですけど後でビックリしましたからね!?」
うーん、まぁ俺様以外にキヴォトスで男子生徒って聞いたことがないからなぁ。
園児達に懐かれてるのはそれもあんのかねぇ……?
万魔殿の知名度もそんなに高くないし、なんか行く先々でびっくりされてる気がするな。
「おにーちゃん!あそぼあそぼー!」
そんな事を思っていると、お絵かきを終えたらしいココロちゃんがトテトテとこちらへ歩いてくる。
「おーココロちゃん!お絵かきは終わったかー?」
「うん!ほら見て!タツミお兄ちゃんだよ!」
「おぉ、よく描けてるな!俺様は嬉しいぞー!」
「えへへ!褒められちゃった!」
ココロちゃんの頭をポンポンと撫でてやると、ココロちゃんはふにゃふにゃとした笑みを浮かべた。
その後、ココロちゃんが俺様に撫でられているのを発見した園児たち全員に頭を撫でることをせがまれたのは言うまでもないだろう。
こうして俺様達は園児たちにもみくちゃにされながら、春原姉妹とともに終電まで園児と遊ぶのだった。
ちなみに、梅花園を出る際に「是非またココロちゃんや皆と会いに来てください!」と言うことでシュン教官とココナ教官の二人とモモトークの交換を行なった。
……部外者なのに堂々と行くのは少し気が引けるんだが、まぁココロちゃんに「また来てね、絶対だよ!」と言われたら行かないわけには行かないからな。
今度はイブキも連れて行ってやろう。ココナ教官はイブキと同い年らしいし、きっといい友達になれるだろう。
イブキも同年代の友達が出来たら楽しいだろうし、何より俺様も嬉しいからな!
なお、万魔殿に帰ってから何故かめちゃくちゃイブキに怒られたのはここだけの話。
山海経で買った土産の桃饅頭を渡すと何故か余計不機嫌になってしまったのは何故なんだ……?
その後、1時間以上イブキを膝の上に乗せて頭を撫でてやってなんとか機嫌を直してもらったのであった。
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「タツミさん、すごかったな。ココロちゃんやみんなをあんなに簡単に……」
「……ココナちゃん。今から万魔殿に連絡してタツミくんをウチに引き抜けないかしら?」
「な、何を言ってるの姉さん!?そんなのだめに決まってるじゃない!?」
「でもあのこの子ども達の扱いの上手さに、話を聞く限りでは料理もできるみたいだし……それに気配りも出来る。是非教官になって欲しいと私は思いますよ?」
「そ、それは確かにそうだけど……!」
「あと彼、園児達の相手をしながらこっそり消耗した道具の手入れや掃除までしてくれてましたよ?」
「え、えぇ!?そんなことまで!?」
「それに、園の仕事は力仕事も多いです。男手があったら頼りになると思わない?ココナちゃん。」
「それは……そうだけど……」
「それに……ふふっ。ココロちゃんや園の皆もだけど、ココナちゃんも喜びそうですしね?」
「は、はぁ!?どういう意味なの姉さん!?」
「嬉しかったんでしょう?私たちの苦労を分かってもらえて。」
「……うん。そうだね。私達は感謝の言葉はたくさんもらうけど、あんな風に私達の気持ちを理解して寄り添った言葉をかけてくれる人は初めてだったから……」
「本当にねぇ。真剣な顔でシュン教官は頑張ってますよって言われた時は年甲斐もなく本気でドキッとしちゃいましたし……」
「むっ……」
「あら、どうしましたかココナちゃん?」
「別にっ!なんでもない!」
「……ふふふ。」
「……それに、タツミさんは私のことを一人前のレディだって言ってくれた。みんな私の事を子ども扱いするのに、タツミさんは私を一人の教官として扱ってくれたから……それが一番嬉しかった。」
「……羨ましいなぁ。イブキちゃん、だっけ。私と同い年のタツミさんの妹。……いいなぁ。」
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「そう言えばイブキ、今日お兄ちゃん山海経に行ってたんだけどお前と同い年の子と知り合ったんだ。」
「……ふーん、そうなんだ。」
「春原ココナっていうんだけど、今度紹介するぜ!イブキも同い年の友達が出来たら楽しいだろうしな!」
「…………うん!楽しみにしてるね!……おにいちゃん?」
いつもの日常会でした
日常会書くの楽しすぎて本編が進まねぇ…