一気に寒くなりましたね……
俺様が盾を構えて前衛を務め、ワカモが後方から支援するという形でFOX小隊に風穴をぶち開けるために突撃を敢行した俺様とワカモの二人。
それを見てFOX小隊も即座に陣形を整え直し、まずポイントマンである金髪のFOX3が最前線へ躍り出てくる。
「後ろへは行かせないわよ!」
「どけ!邪魔だぁっ!」
盾を構えつつ、歯をむき出しにして威嚇するFOX3。
その姿を視認した俺様は全力で走りつつ、全ての体重を盾に乗せありったけの力を込めてFOX3へ向けて盾を振り抜いた。
「っ!?」
もちろん黙ってそんな一撃を受けてくれるわけもなく、FOX3も即座に防御体制を取りお互いの盾が衝突する。
ーガギャァンッ!!!ー
刹那、金属と金属が激しくぶつかり合う音ともに俺様の腕にハンマーで殴られたような衝撃が走った。
「ぐっ……!」
そのあまりの衝撃に思わず手から盾が弾け飛びそうになるが俺様は歯を食いしばると、そのまま盾に力を込めてFOX3のポジションを後ろへ追いやりにかかる。
「この……ヘイローがないのにどんな力してんのよ!」
「言っただろ!こちとら伊達にゲヘナで普段からイカれた不良どもを相手にしてぇねんだよっ!」
盾越しに殺さんばかりの殺意を込めた視線をぶつけ合いながら、そのままお互いに盾に力を込めて押し合いの形になる俺様とFOX3。
もちろんその隙を見逃すはずはなく、即座に後ろに控えていたFOX小隊隊長の七度ユキノがFOX3の盾から顔を出すと俺様へ向けて手にした銃を向けてくる。
「覚悟しろ!丹花タツミッ!」
「あら、貴方の相手は私ですよ?」
だが、こちらとて1人で戦っているわけではない。
あらかじめ俺様をカバーするために後ろ目のポジションを取っていたワカモが即座に俺様の横へ付くと、ワカモの手にした歩兵銃から七度へ向けて弾丸が放たれる。
「このワカモが付いている以上、何人たりともタツミさんは絶対に傷つけさせませんよ?」
「くっ、邪魔をするな狐坂ワカモ!」
七度はワカモが放った銃弾を超人的な反射神経で回避すると、そのまま手にした小銃の銃床を使って歩兵銃のコッキング動作を行っているワカモの腕を狙う。
「そうは行くかよッ!」
だが、そうは問屋が卸さない。
俺様は両手で抑えていた盾を即座に左手のみで支えると空いた右手でブークリエを構え、即座に引き金を引いて七度に散弾をフルオートで叩き込む。
「やらせないわよっ!」
「それはこちらのセリフですわっ!」
それを見て即座にFOX3が盾を掲げながら七度の前へ躍り出てくるが、俺様はブークリエのマガジンを素早く交換しながらそのまま一歩前へでてFOX3の盾を蹴る。
俺様の蹴りを盾で防いだFOX3はそのまま手にしたサブマシンガンをこちらへ向けてくるが、銃のコッキングを終えたワカモが素早く彼女へと突撃した。
「くっ……!」
それを見て即座ワカモの攻撃を防ぎにかかるFOX3だが、彼女がワカモの攻撃を防ぐために盾をずらした事により俺様から七度への斜線が一瞬だけ通る。
そしてその隙を見逃さずに俺様はブークリエを七度へ向けるとチャージングハンドルを引いてチャンバーへ弾丸を送り込む。
「食らいやがれ!」
そして、俺様はそのまま人差し指で引き金を引いた。
刹那、火薬の爆発音とともにブークリエの銃口から散弾がフルオートで発射され七度へ命中する。
「ぐっ……!?」
「FOX1ッ!」
散弾をモロに食らった七度はその場でふらつき、俺様はそれを見逃さずふらついている彼女へ追撃を仕掛けるために地面を蹴る。
それを見たFOX2は絶叫に近い声を上げながらも手にしたショットガンを構えてカバーのために前へ出てくる。
「そこをどけ!」
「くっ、やらせないっ!」
そして、そのまま七度をかばうように立ちはだかったFOX2のショットガンの銃床と俺様の盾が衝突した。
一瞬襲ってくる強い衝撃に顔をしかめつつも、すぐに地面に足を叩きつけた俺様は腕に力を込める。
「くっ、よくもやってくれたわね!」
「あら、目の前の敵のことではなく仲間の心配をするとは……ウフフ、私も舐められたものですわね。」
「この……!邪魔よ!どきなさい狐坂ワカモ!」
「ウフフ、私がタツミさんの背中を危険に晒すような真似をするとお思いですか?」
更にFOX3も怒りの形相を浮かべ七度のカバーを行おうとするが、ワカモの繰り出す攻撃に身動きが取れずにその場に釘付けになっている。
「ユキノちゃんは私が守るっ!」
「ハッ、頭に血が上ったら勝てるもんも勝てないぜ!」
初めてこちらへ向けてハッキリと敵意の混ざった視線を向け、俺様を睨みつけながらショットガンに力を込めて俺様を押し返そうとするFOX2。
だが俺様はあえて一旦力を抜いてFOX2のバランスを崩すと、彼女が一瞬だけ体制を整え直すために生まれた隙を見逃さずにがら空きの鳩尾に右足を突き刺した。
「がふっ!?」
俺様の蹴りを食らったFOX2は目を見開き、蹴られた部分を押さえながらヨロヨロとその場で踏みとどまる。
確実にダメージは受けているはずだが、彼女の手にはしっかりと銃が握られており苦悶の表情を浮かべつつも俺様の事を射抜かんばかりの鋭い目で睨みつけている。
その形相は仲間を守るためにも絶対に引けない、という強い思いを感じさせるものだった。
……なるほど、流石はSRTの厳しい訓練を耐え抜いたかつ経験も豊富な3年生だけのことはある。
ダメージを食らっても銃を手放さない耐久力といい、仲間を守るためのポジションからは意地でも動かない強い気持ちといい、間違いなく強敵だろう。
俺様は攻撃の手を緩めないためにもすぐに追撃の体制を取ろうとするが、その瞬間背中に冷たい感覚が走った。
「……っ!タツミさんっ!狙撃です!11時方向ですわ!」
隣りにいたワカモからそんな声がかかるのと、俺様の体が動くのはほぼ同時だった。
俺様はその場で体を回転させて11時の方向を向くと即座に盾を体に引き寄せ、FOX小隊のスナイパーからの狙撃を受け止めた。
その瞬間、大型の弾丸が盾に突き刺さったことにより俺様の腕に強い衝撃が走る。
「くそ、なんつー威力だよ!」
完璧に受け止めているにも関わらず体が後ろへ持っていかれそうになるほどの衝撃に思わずそんな事を吐き捨てながらも、俺様は地面に足を叩きつけてその場で踏ん張ると勢いを利用して七度達へと向き直る。
「丹花タツミィッ!」
すると、既に先程の銃撃のダメージからある程度回復していたらしい七度が目前まで迫ってきていた。
だが、この狙撃が俺様の隙を生み出すために行われたものであることなんざ見え見えなんだよっ!
七度はそのままアサルトライフルをこちらへ向けて引き金を引くが、俺様は放たれた弾丸を全て盾で防ぐとそのままブークリエの銃床で七度の肩を狙う。
「甘いッ!」
七度はそれを認識すると即座にアサルトライフルの銃床をブークリエにぶつけて軌道を変え、そのまま一歩踏み込んでくると腰のケースからサバイバルナイフを取り出して俺様の胸元を狙って勢い良く突き立てようとする。
しかし俺様は体を捻ってそれをかわすと、そのままがら空きの彼女の背中にブークリエの銃床を叩きつけた。
「がふっ!?」
「FOX1っ!」
続いて七度のカバーのためにFOX2が俺様へ向かってショットガンを突き付けてくるが、即座に盾を引っ張って銃撃を防ぐと盾から顔を出した俺様はFOX2へ向かって踏み込むとそのまま構えた盾を振りかぶった。
「……っ!」
「やらせるかぁっ!」
そしてそのまま盾をFOX2に向かって叩きつけようとするが、即座にその場で体をはね起こした七度の銃撃によりFOX2への攻撃を諦めた俺様は振りかぶっていた盾を無理やり引き寄せて強引に彼女の銃撃を全て弾き返す。
「くっ、バケモノが!」
「人をバケモノ呼ばわりするんじゃねぇよっ!」
七度はそう叫ぶと再度アサルトライフルを構えて俺様へ向かって突っ込んでくると、その場で一回転して回し蹴りを繰り出してくる。
俺様は蹴りを防ぐために盾を構えるが、その隙を見逃さずにFOX2が俺様へ向けてショットガンを構えた。
完全に隙をつかれる格好になったが、俺様に焦りは1ミリもなかった。
「タツミさんっ!」
「あぁ、頼むぜワカモ!」
そう、今の俺様には頼りになる相棒がいる。
ワカモは俺様に声を掛けつつFOX3の盾を蹴り飛ばしその遠心力を利用してその場から跳躍した。
そして俺様の背中側へ素早く着地すると、そのまま銃を構えてFOX2に突撃する。
「貴方の相手は私ですわ!」
「くっ、狐坂ワカモ……!」
苦悶の表情を浮かべるFOX2とワカモがそのまま衝突すると同時に、俺様の構えた盾に七度の蹴りが突き刺さる。
(ちぃっ!)
流石はSRTの訓練を受けているだけあって、格闘技にも精通しているらしく七度の蹴りはあの体制からでもしっかりと体重の乗った重たいものだった。
しかし空崎委員長や剣先委員長、そして普段からカンフーの鍛錬を怠らない鹿山先輩の体ごと撃ち抜かれるような規格外のパワーではない。
「舐めんな!」
俺様はそう叫びつつ盾を振って七度を弾き飛ばすと、即座に追撃するために地面に足を踏み込む。
「私を忘れんじゃないわよっ!」
だが、先ほどワカモに盾を蹴り飛ばされていたFOX3が即座に七度のカバーのために俺様の前へ現れた。
それを見た俺様は内心で舌打ちしつつもすぐに狙いを目の前のFOX3へ変更し、彼女へ向かってブークリエの銃口を向けて引き金を引く。
「このっ……フルオートのショットガンを片手で扱うなんて滅茶苦茶すぎるわよアンタ!」
「こちとら死ぬ気でこいつを扱うために特訓して来たんだ!遠慮せずに存分に弾丸を味あわせてやるよ!」
「ディナーならともかく、弾丸はお断りだわっ!」
俺様の攻撃を防ぎつつ、顔をしかめるFOX3。
「アンタには負けないっ!」
「それはこっちのセリフだ!」
お互いにそう叫びながら、本日何度目か分からない俺様の盾とFOX3の盾が衝突した。
あまりの衝撃に俺様の体が少しだけ浮きそうになるが、同じ前衛としてこいつに負けるわけにはいかない。
俺様は無理やり地面に足を固定するとその場で盾に体重をかける。
「FOX4!やれ!」
FOX3と盾を合わせて鍔迫り合いをしていると、FOX3の後ろから無線機に向かって七度の指示が飛ぶ。
「ちぃ!」
俺様はその指示を聞くと即座に盾を引っ込めた。
その隙を飲み逃さずにすかざずFOX3の手にしたサブマシンガンからの銃撃が飛んでくるが、俺様は盾をすべらせてそれをすべて防ぐと一旦後ろへ跳躍する。
そして、着地の瞬間に俺様へ向かって飛んできたFOX4からの狙撃を間髪入れずに盾で弾くとその場に盾を突き立てて七度とFOX3を睨みつけた。
それと同時に、俺様の後ろへワカモがほぼ同じタイミングで着地する。
「大丈夫かワカモ?」
「はい、今のところ傷一つありませんわ。」
「ならいい。さっきは助かった、ありがとう。」
「ウフフ♡そういうタツミさんこそ、私の晒している隙をカバーしてくださってるではありませんか。」
「おいおい言っただろ?俺様が前を張る限りはお前には指一本触れさせないってな。」
「まぁ、なんと頼もしいお言葉……ウフフ♡ではしっかりと守ってくださいね?【貴方の女】を♡」
「あぁ、言われなくてもキッチリ守ってやるよ!」
俺様とワカモは互いに顔を見合わせて笑い合うと、即座に視線をFOX小隊に移してそれぞれの武器を構える。
「FOX2!大丈夫!?」
「ゲホゲホ……!うん……このくらい平気だよ。」
そんな俺様とワカモの目前ではこのままではマズイと七度とFOX3へ合流したFOX2の応急処置が行われていた。
「くっ、丹花タツミだけでも厄介だと言うのに狐坂ワカモまで相手にしなければならないとはな……!」
「しかもあの二人の連携はバッチリ……ほぼアイコンタクトだけで通じ合ってるし、以心伝心って奴なのかな。」
「はっ、上等だわ!あいつらのムカつく余裕ヅラ、すぐに歪ませてやるわよっ!」
こちらを鋭い視線で見据えながら、それぞれそんな事を口走るFOX小隊の面々。
どうやら七度やFOX2がダメージを負ったことにより彼女達のボルテージも上がってきているようで先程まではぴょこんと頭の上に鎮座していた狐耳の毛がピンと垂直に立ち、犬歯をむき出しにしてこちらを威嚇するような殺意の篭った表情を向けてきている。
だがそんな状況でもFOX2は冷静さを保っているようで、こちらの様子を注意深く観察しているようだった。
今のFOX小隊で一番脅威なのは現状冷静さを欠いている七度や熱くなっているFOX3よりも、落ち着いて極めて冷静にこちらの隙を伺っているFOX2なのは間違いない。
あとは狙撃手のFOX4も2人に比べると比較的冷静さを保っているようで、段々とどこから狙ってきているかのアタリが付けにくくなっているのを感じる。
いずれにせよ、この状況が続くのはよろしくない。
突破口があるとすれば七度かFOX3だろうから、そこを集中的に狙い続けて早期の決着を付けた方がいいだろう。
「……よし、行くぞワカモ。」
「はい、承知いたしました!」
俺様はワカモと顔を見合わせて互いに軽く頷くと、再び盾を構えて地面を蹴りFOX小隊へ突撃を開始する。
「タツミさん、狙撃です!」
「分かってる!」
ワカモの言葉とほぼ同じタイミングでこちらを狙ってきていたFOX4の狙撃に反応した俺様は素早くワカモの背後へ付くと、大型のライフル弾を盾で受け流す。
その力を逆利用して右足一本でその場で回転した俺様はワカモの背後から前へ出ると、陣形を整え直したFOX小隊の前を貼るFOX3へ向けて盾を叩きつける。
「さぁ来なさい丹花タツミ!」
「上等だ!その余裕、すぐに吹き飛ばしてやるよっ!」
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「お兄ちゃん見つからないね、ホシノ先輩。」
「うへー、そうだねぇイブキちゃん。」
「こんなに探してるのに見つからないなんて……何か危ないことに巻き込まれてないといいんだけど……」
「あはは……まぁタツミくんも悪気はないだろうから、程々にしてあげてねぇ。」
「それにしても、本当にイブキちゃんはタツミくんの事が大好きなんだねぇ。」
「うん!お兄ちゃんはイブキと一緒に遊んでくれるしイブキのお願いなら何でも聞いてくれるんだ!最近は忙しそうにしてるからあんまり遊んでもらえてないけど、こうやって海に来たおかげでいっぱいお兄ちゃんに遊んでもらえたから!お兄ちゃんも楽しそうだし、ありがとねホシノ先輩!」
「ふふ、どういたしましてイブキちゃん。喜んでもらえたならおじさんも嬉しいよ。」
(さて……もう結構立つけど、イブキちゃんの言う通りこんなに見つからないものかなぁ。タツミくんが方向音痴なのは分かったけどこの島もそんなに広くないし、道に迷ったとは言え結構探してるからそろそろ見つかってもおかしくないはずなんだけどな……ヘルメット団や昨日のワカモちゃんって子もまだこの島の近くにいるみたいだし、早く見つけられるといいんだけど……)
(それにしてもワカモちゃんだっけ?先生やタツミくんの話によるとあの災厄の狐本人にして、タツミくんと何度も戦って共闘もして、それでキスまでしたらしいけど……うへー、最近の子は進んでるんだねぇ。おじさん聞いてて恥ずかしくなっちゃうよ。)
(タツミくんもワカモちゃんの事は表向きは邪険に扱ってるけど、本当に嫌ならもっと声に拒絶反応が出るはずだからなんだかんだで意識はしてるんだろうね。ライバルでもあって、満更でもない相手って感じかな?おじさん男の子のことは分からないけど、ワカモちゃんも見た感じだとノノミちゃんに負けないくらいの立派なものを持っていたもんね。そりゃ満更でもなくなるよなぁ。仮面を付けてるから素顔は分からなかったけど……おじさんとしてはセリカちゃんの気持ちを考えると頑張ってもらいたいところだけど、これは強敵だろうねぇ。)
「……あれ、ホシノ先輩。何か聞こえない?」
「ん?……ホントだ。これは……まさか銃声?あっちの方向から聞こえてるみたいだけど……」
「あっちってセリカ先輩達がいる方向じゃないよね?もしかして……お兄ちゃん?」
「うーん、いやでも何かあれば警備ロボの動きを管理してるアヤネちゃんから連絡が来る手筈になってるけど何も連絡がないからなぁ。タツミくんの可能性は低いんじゃないかな?昨日のヘルメットのお姉さんたちが何かしてるって可能性はあるけどねぇ。」
「でもこんなに歩いても手がかりもないんだし、もしお兄ちゃんだったら危ないよ!」
「……確かにそれはそうだね。今のタツミくんは防具を身に着けていないし、仮にあの銃声がタツミくんが戦っているものだとすると危ないかもしれないね。現状他に手がかりもないし……行ってみようか。」
「うん!行こ、ホシノ先輩!」
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「……マコト班長、ちょっといい?」
「ん?どうしたミサキ。何か作業で分からないところでもあったのか?」
「いや、そうじゃないんだけど……ほら、今度矯正局で他の班と合同で作業する予定があるじゃん。」
「あぁ、そう言えばそうだったな。」
「そうそう。で、そこで作業が終わったあとに特別にジュースとお菓子を出してくれるらしいんだ。」
「……何?普段はプリンを支給すると行ってこんにゃくを出してくるような輩が一体どういう風の吹き回しだ?」
「さぁ?そのへんは良くわからないけど、看守から好みのものを各自言えって言われたからマコト班長は何がいいのか聞きに来ただけ。」
「……なるほど、ここの看守にも囚人の士気を保とうという意識はあったのだな。」
「……?良くわかんないけど、何がいいの?」
「キキキ……なら私はぶどうジュースとクッキーを頼んでおくとしよう。看守に伝えておいてくれるか?」
「分かった、伝えておく。」
「……えっと、これはこうやればいいのか?」
「どうしたサオリ。何か問題でもあったのか?」
「マコトか。いや……少しここの作業の説明が分かりにくくてな。どうすればいいのか悩んでいたんだ。」
「あぁ……それはここをこうすればいい。そうすれば問題なくスムーズに行くはずだ。」
「……本当だ。ありがとうマコト、助かる。」
「キキキ、気にするな。自らの班の部下の面倒を見るのは上司の役目だからな。」
「その、マコト。何度目になるかは分からないが……」
「なんだまた謝罪かサオリ?もう充分貴様の気持ちは伝わったから充分だと言っただろう。」
「だが私はお前の大切な部下を……タツミを……」
「……その件に関しては何も思わないわけではない。だが他ならぬタツミ自身が貴様たちを許すと言っているなら私が許さないわけには行かないだろう。貴様たちも真面目に刑務に取り組んでいるし、反省する気があるなら必要以上に責める必要はない。それに、私とて過ちをしてしまったからな。偉そうに言える立場ではない。」
「マコト……」
「それに今の貴様たちは私の班の部下。なら、面倒を見るのは当然だ。」
「……ありがとう、マコト。」
「フン、礼を言われるようなことでもないだろう。さぁ早く作業に戻るぞサオリ。無駄話をしていては看守からまたどやされてしまうからな。」
「あぁ、分かった。」
「……あ、マコト。お疲れ様。」
「お、お疲れ様ですマコトさん。」
「ん?アツコにヒヨリか。あぁ、今日もご苦労だった。きちんと作業報告は終えただろうな?」
「うん、この前は報告を忘れちゃって作業を増やされちゃったからね……今回はキッチリやっておいたよ。」
「きょ、今日の夕飯はなんですかね。楽しみですね、えへへ……」
「先ほど看守に聞いたが、今日はどうやらハヤシライスのようだ。1杯だけならおかわりも許されているらしいから、たくさん食いたいなら大盛りで入れてくれと頼んでおくといいだろう。」
「ほ、本当ですか!?分かりました!絶対にそうさせていただきますぅ!」
「……前から思っていたが、本当にヒヨリは食べることが好きなんだな。この前のタツミからの差し入れも一番たくさん食べていたし……おかげで私の食べる分がほとんど残っていなかったが。」
「……アリウスにいた頃は本当に食べるものが無かったからね。任務を成功させたときの報酬が1杯の白湯だったくらいだから……だから、安心できる寝床があって毎日しっかり満足の行く食事ができるって言うのは私達にとっては本当にありがたいことなんだ。」
「……そうか。なら、タツミには感謝せねばならんな。」
「うん。彼は私達を救ってくれたヒーローだからね。もう何度もお礼を言ってるけど、ここから出られた時には改めてお礼を言わなきゃね。」
「なら、タツミの気持ちに応えるためにも真面目に刑務作業をこなして早く出所できるようにせねばな。」
「うん。私達は皆彼には感謝しているから……だから、これからも班長としてよろしくね。マコト。」
「……あぁ、貴様達がここを出るまではしっかり面倒を見てやるとするさ。あいつからも頼まれているしな。」
「ふふ、ありがとうマコト。」
長らく続いたリゾート編もそろそろ終盤に差し掛かりました
リゾート編終了後はリンとのデート編や日常回を挟んで、その後にカルバノグ1章の続きやミレニアムの生徒とも少しづつ交流を持たせることを予定しております