転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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万魔殿の日常に戻ってきたタツミのお話です


いつもの日常と丹花タツミ

時刻は9時を回ろうかと言うところ。

場所は万魔殿の執務室にて。

今日も今日とて俺様は自分のデスクの上に最早山脈を形成しそうなくらい積み上がっているほどの書類にペンを走らせながら、その他の業務の処理を並行してを行っていた。

 

「えーっと、この書類は承認っと……」

 

俺様は目を通した書類にペンを走らせてサインを書くと処理済みの束の中へ放り込み、手元のマグカップを手に取りすっかり温くなった中身のコーヒーを啜る。

生ぬるいコーヒーが喉を通る感覚とともに、独特の香りが鼻を突き抜けていった。

 

「えーっとこの書類は救急医学部の予算増額……こいつは承認だな。これは……爆薬研究会の建物の爆破申請書?指定してある建物は万魔殿……ってケンカ売ってんのかこいつら!こんなもん却下だ却下!おととい来やがれ!」

 

俺様はドン!と不承認と言うハンコをふざけた書類に叩きつけると、そのまま書類を処理済みの山へ放り込んだ。

まったく、ただでさえ忙しいってのにこんなくだらねぇ書類出して仕事を増やすんじゃねーつっーの!

 

さて、話は変わるがアビドスのみんなに誘われて行ってきたあのバカンスから帰ってきて今日で丁度1週間が経とうとしている。

自然豊かな南の島で思う存分はしゃいで羽根を伸ばしてリフレッシュし、イブキとも思いっきり遊んでエネルギーを充填した俺様は新たな気持ちで万魔殿の業務を行っているのだが……

 

「タツミ議長代理!風紀委員会から予算関連についての書類が届きましたがどうしましょう?」

「分かった、すぐサインと印鑑を押すからそこに置いておいてもらえるか?」

「タツミ議長代理!こちらトリニティから書き留めが届いていますが!」

「後で確認する、ちなみに差出人は誰か分かるか?」

「はい!ティーパーティーの桐藤ナギサと、シスターフッドの歌住サクラコからそれぞれ2通届いています!」

「あの二人か……なら早めに確認して返事を返しておかねぇとな……分かった、ありがとう。」

「議長代理!ミレニアムのセミナーより今度会談をしたいとの旨の連絡が入っています!」

「何?ミレニアムが?分かった、ちょっと今手が離せないから後で折り返すと伝えてもらっても構わないか?」

「はいっ!分かりました!」

 

俺様が書類を処理していくと同時に、同じ速度で更にどんどんと音を立てて積み重なっていく書類の山。

執務室では万魔殿の役員達がせわしなく動き回っており本日の業務がいかに激務であるかを物語っていた。

 

……いや、いくらなんでも忙しすぎるだろこれ。

見ろよこの書類の山を。連邦生徒会で岩櫃調停室長がいつも抱えている量の軽く3倍くらいはあるんだが?

目の前の書類にサインを書いて印鑑を押しつつ、俺様は天井を見つめながらため息を吐いた。

 

ちなみに、何故これほどまでに忙しいかと言うと今日は俺様とイブキが留守の間に主に指示を出して万魔殿を回してくれていた棗先輩と元宮先輩には休日を取ってもらい京極先輩には午前休を取ってもらっているからだ。

なので必然的に重要業務を処理できるのは俺様のみとなっているため、俺様の所に幹部以上の人員の承認が必要な書類がすべて回ってきているんだよな。

そのため、これほどまでに忙しくて目の前に書類の山が積み上がっているという状況になっている。

一応イブキも出勤してはいるんだけど流石にイブキに書類仕事を任せるわけにもいかないので、俺様と役員達でどうにかこうにか回していると言った具合だな。

ちなみに、イブキは万魔殿の応接間にて護衛に付いている役員達と一緒にお絵かきをして過ごしている。

仕事が終わったら、俺様も顔を出してやるとしよう。

 

それはともかく、棗先輩達には俺様とイブキが留守にしている間には万魔殿の事を完全に任せてしまったので負担をかけちまったわけだからな。

最初棗先輩達は休みを取ることを遠慮していたのだが、今日くらいゆっくり休んでもらって鋭気を養って欲しいという俺様の要望により休みを取ってもらっている。

本来は京極先輩にも1日休みを取ってもらいたかったんだけど、俺様今日は午後からシャーレの当番なんだよな。

 

普段なら先輩方を休ませてやりたいからって理由で断ることも考えたけど、FOX小隊の事も先生には早急に伝えないといけないって言う俺様の個人的な事情もある。

結局、あれからFOX小隊が襲撃を仕掛けてくる気配は全く無く今のところは平和な日々を送れてはいるものの彼女たちの裏で糸を引いている黒幕の用意周到さを考えると俺様の握っている証拠を無力化するために既に動きだしている可能性は高いと言ってもいい。

となればこちらとしてもウカウカしている時間はない。

早急に手を打たなければならないだろう。

先生にはあれからモモトークでFOX小隊のことについて軽く説明してはいるんだけど、やっぱり顔を突き合わせて詳しく説明するに越したことはないだろうからな。

 

しかもこの話に関しては皆を危険に巻き込むわけにはいかないため先生や七神代行など、極一部の人にのみ相談するつもりだから出来たら内密な話のしやすい場所で話を切り出せるのが理想的だ。

その点シャーレは先生と当番である生徒以外は原則立ち入りが禁止されているのもあって、そういう内密な話をするにはもってこいの場所だからな。

本来ならば翌日にでも話を伝えたかったのだが、先生はシャーレに戻ってすぐに百鬼夜行の生徒に頼まれてロストパラダイスリゾートへとんぼ返りしたのもあって中々時間が合わなかったんだよな。

その後お互いに話し合った結果今日が休暇を終えてから最速で俺様が当番で呼ばれても問題ないタイミングだったためシャーレに行くことになっている。

 

で、万魔殿の忙しさを考えれば今日を逃してしまえばズルズルと話せるタイミングを逃しそうな気もしたため京極先輩には申し訳ないけど午後から俺様がシャーレへ行くタイミングで出勤して貰う手筈になったわけだ。

で、シャーレの当番へ行く=DU地区へ行くということなのでシャーレの当番が終わり次第連邦生徒会へ顔を出して、七神代行へも話を通すために今日は夕方くらいから七神代行へもアポを取っている。

 

一応七神代行にも先生と同じくモモトークで軽く概要は説明しているけど、やっぱり直接会って話をしたほうがいいのは確実だろうからな。

それに、俺様の読みではFOX小隊を裏で操っている黒幕は連邦生徒会の幹部の中に潜んでいると見ている。

ならそいつに対してプレッシャーを与えるためにも、今日どれだけ忙しかろうが午後からは何が何でもシャーレと連邦生徒会へは行かないといけないんだよな。

 

バカンス中の留守を引き受けてくれたのに更に負担をかけてしまい京極先輩には申し訳ない気持ちで一杯だ。

だから、せめて午前中で今日のやるべき仕事は全て終わらせてから当番へ行く予定……だったのだが。

 

「議長代理!校庭の中庭にて温泉開発部が重機を持ち出して暴れているとの報告が!なんでも部長の鬼怒川カスミが万魔殿が部費を増額しないから校外での採掘が出来ないから部費を増やせと言っているらしく!」

「はぁ!?何してくれとんじゃあのアホども!?くっ、すぐに空崎委員長に連絡を頼む!」

「そ、それがヒナ委員長は本日は校外に出張中のため対応に当たれないとのことでして……!」

「クッソ絶対狙ってやりやがったな鬼怒川の野郎!仕方ない、天雨行政官に連絡をして銀鏡先輩を出動させるよう要請してくれ!多分キレるとは思うけど、俺様が後で土下座しに行くから要件だけ伝えておいてくれ!」

「わ、分かりましたっ!」

「議長代理!美食研究会が温泉開発部の騒動に便乗して給食部の部長を拉致して旧校舎へ立てこもり、自分達も予算の増額をしろと主張しているとの報告が……!」

「おい何してくれとんじゃ黒舘ハルナァァァッ!」

「し、しかもそのせいで給食部の部長が不在で給食の提供が遅れているらしく不満が出ているとの報告もあります!更には給食部から謎の紫のパンケーキが暴れているとの情報もあり、もう何が何やら……!」

「あーもう!次から次へとふざけんなよ問題児ども!」

 

執務室に血相を変えて飛び込んできた役員からの報告に俺様は大声を上げながら頭を抱える。

チクショウ!この超ド級のバカどもが!

よりにもよって棗先輩達を休みにした日に限ってよってたかって問題を起こすんじゃねぇっつーの!

 

「ちぃっ……!」

 

こちとら午後からはシャーレの当番なんだぞ!?

午前中に書類仕事とかの業務を全部終わらせちまわないと午後からの責任者は京極先輩一人なんだから、彼女に迷惑がかかるだろうが……!

空崎委員長が校外へ出張中となれば恐らく、風紀委員会だけで対応できるのは恐らく温泉開発部のみだ。

決して銀鏡先輩が弱いと言いたいわけじゃないけど、温泉開発部だってゲヘナの中ではとても強力な集団。

そんな集団と美食研究会を同時に相手にするのは、いくら精鋭揃いの風紀委員会といえど無理があるはずだ。

 

くそ、もうこうなったら仕方ない。

温泉開発部は風紀委員会に任せ、美食研究会や給食部で暴れている紫色のパンケーキ……恐らく牛牧が愛清先輩の穴を埋めようとして頑張った結果生み出されてしまった怪物の処理は俺様自らが請け負うしかないだろう。

何が何でも午前中に今日の業務を終わらせるって京極先輩と約束したんだ、秒で制圧して書類業務の続きに取り掛かってやるよ美食研究会のアホどもが!

 

「分かった!美食研究会とパンケーキの方は俺様が対応すると天雨行政官に伝えてくれ!」

「ぎ、議長代理自らですか!?」

「あぁ!空崎委員長がいないなら風紀委員会もいっぱいいっぱいのはずだからな!」

 

俺様は役員にそう指示を出してマグカップのコーヒーを一気に煽ると椅子から音を立てて立ち上がり、近くの上着掛けにかけておいた万魔殿のジャケットを羽織る。

そして足元に置いておいたブークリエとシールドを引っ掴むと、執務室のドアを勢い良く開け放った。

 

「じゃあ行ってくる!お前ら、留守は頼んだぞ!」

「は、はいっ!承知いたしました、タツミ議長代理!お気をつけていってらっしゃいませ!」

 

執務室で業務処理をしている役員達に留守を任せ、俺様はそのままの勢いで執務室から飛び出していく。

クソ、余計な面倒事を増やしてくれやがって……!

この鬱憤はお前らに全部ぶつけてやるからな!

覚悟しろよ、美食研究会のアホどもがぁ!!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

“た、タツミ……大丈夫?なんだか顔が死んでるけど……”

「あー……気にすんな先生。ちょーっとばかし午前中の万魔殿での業務が忙しかっただけだからよ。」

 

あれから時間は過ぎ、時刻は14時を過ぎた頃。

場所はシャーレのオフィスにて。

俺様は先生の向かいのデスクに座って目の前の書類を崩しながら、先生の言葉に力なくそう答えていた。

 

あの後万魔殿を飛び出し、美食研究会の制圧に赴いた俺様は黒舘ハルナを始めとした美食研究会が立てこもっている旧校舎へ突入して彼女たちと激戦を繰り広げた。

黒舘を始めとする美食研究会のアホどもは部費の増額を訴えて俺様に襲いかかって来たが、怒りが有頂天に達した俺様はそう時間を掛けずに彼女たち4人を制圧。

その後バカ4人を縄で縛り上げ、風紀委員会の天雨行政官に突き出してそのまま牢屋へとブチ込んでもらった。

 

その際、温泉開発部の対応にも当たっており忙しそうにしていた天雨行政官からは案の定「面倒事を増やさないでください!」とキレられてしまった。

面倒事も何も温泉開発部や美食研究会が勝手にやったことなのだが、天雨行政官はああなると人の話を聞かなくなっちまうからな……ひとまずその場で彼女に謝り、今度迷惑をかけたお詫びに食事を奢ると約束しておいた。

なお、食事を奢ると言った瞬間にそれまでワーワー騒いでいた彼女は嘘のように大人しくなると同時に「し、仕方ないから今回はそれで勘弁してやりますっ!」と若干顔を赤くしながら言ってたんだけど……

もしかして天雨行政官、忙しすぎて知恵熱でも出しちまったのかなぁ……?

 

そして、その後は救出した愛清先輩と共に給食部へ赴いてそこで暴れていた緑色の液体を撒き散らす紫色のパンケーキのバケモノを処理。

泣いて俺様に抱きついてきた牛牧を慰めつつ(何故かその際愛清先輩がものすごい表情を向けて来てたけど……何でだろ?)給食部の提供が遅れて厨房が壊滅していたため落ち着くまで厨房を手伝い、ある程度落ち着いた後に万魔殿へダッシュで帰還。

執務室に戻った俺様を待っていたのは行く前より更に積み上がっていた書類の山だったが、それを半泣きになりながらも気合いで午前中に崩しきってやった。

 

朝から問題児の対応で精根尽き果てた俺様は出勤してきた京極先輩いわく抜け殻のようだったらしいが、俺様はそのまま京極先輩に引き継ぎしてバトンタッチをすると疲れた体にエナジードリンクを流し込んで重い体を無理やり引きずりながら電車に乗ってDU地区へ向かい、先生の待つシャーレの部室へとやってきた。

そして、今はこうして先生の入れてくれたコーヒーを飲みながらシャーレのオフィスのデスクにて先生とともに積み上がった書類を片付けているといった状況だな。

 

……と言うか俺様いつも万魔殿の勤務中でもシャーレの当番中でもコーヒーを飲んでいるけど、そろそろカフェインの摂取過多にならないかの心配をした方が良いレベルには飲みまくっている気がする。

とは言えコーヒー以外の眠気覚ましと気分を変える飲み物なんて思いつかねぇし……一体どうしたもんかねぇ。

 

それに仕事の時はコーヒーを飲むと捗るってマインドセットされている節があるから、意外とコーヒーの効果ってバカにできないんだよな。

まぁ別に夜眠れていないって事はないし、もしかしたらそこまで気にする必要もないかもしれないが。

……まぁでも、天雨行政官の淹れる泥水みたいなコーヒーだけは勘弁してもらいたいけどな。

 

“ごめんね、疲れているのに書類整理まで手伝ってもらっちゃって……もししんどいなら、そこのソファで休んでてもらっても大丈夫だからね?”

「いや、気にすんな先生。当番で来てるなら先生の業務を手伝うのは当然だし、それに俺様だけじゃなくて先生だって寝る間も惜しんで働いているわけだからな。なら少しでも仕事を終わらせて先生にもゆっくりする時間を取ってもらいたいって思うのは当然だろ?」

“ふふ……君は本当に優しいね。ありがとうタツミ。”

「おう、このくらいお安い御用だぜ!」

 

優しい笑みを浮かべながらそういう先生に対して、俺様は親指を立てながらそう言った。

確かに目の前のデスクには大量の書類は積み上がっているけど、朝の万魔殿のデスクの上の書類に比べたら量は半分もないし何より内容もサインするだけでいいものばかりだから圧倒的に楽ではある。

現にこうして先生と雑談する余裕だってある訳だしな。

 

「そう言えば先生、百鬼夜行の生徒に泣きつかれてロストパラダイスリゾートへとんぼ返りした件は無事解決したんだったっけか?」

 

書類の山から一枚書類を取ってそれにペンを走らせながら、俺様は先生にそう質問をした。

あれから先生は俺様とイブキやアビドスの皆と別れて奥空のヘリでロストパラダイスリゾートからシャーレに送ってもらったところシャーレの前に百鬼夜行の生徒が待機していたらしく、俺様達が滞在していた群島で騒動に巻き込まれて大変なことになっている自分達の仲間を助けてほしいとの依頼を受けたらしい。

詳しいことは省略するが、要約すると百鬼夜行の生徒がロストパラダイスリゾートを巡る利権関係に巻き込まれた……みたいな内容だったそうだ。

 

先生は休暇からシャーレに戻ったばかりだったから断ることも出来たとは思うけど、先生が生徒の頼みを断るなんて事は天地がひっくり返ってもありえない。

という訳で先生はその百鬼夜行の生徒からの頼みを受け入れ、そのまま奥空のヘリで百鬼夜行の生徒と一緒にロストパラダイスリゾートまでとんぼ返りしたんだよな。

 

“うん。アビドスのみんなやお祭り運営委員会のみんなの活躍もあって、無事に解決することが出来たよ。”

 

俺様の質問に対して、先生は俺様に視線を合わせながら笑顔を浮かべてそう答えた。

結論から言うと、今回のロストパラダイスリゾートの騒動を起こした犯人はカイザーローン……つまりカイザーコーポレーション系列の会社だったらしい。

 

詳しいことは俺様も分からないのでざっくりにはなってしまうが、何でも百鬼夜行のお祭り運営委員会とやらがオクトパスバンクとか言うカイザー系列の会社と契約を結んだことを悪用されて騒動が起きたらしい。

何でも百鬼夜行のお祭り運営委員会とやらには学園祭開催権限なるものがあるらしく、カイザーの連中はそれを狙って仕掛けてきたのだろうと言う事みたいだな。

そのために百夜堂?の名誉を失墜させようと企んでいたらしく、そのためにあんな穴だらけのリゾート利用券をバラ撒いていたのだとか。

まぁ早い話が百鬼夜行の生徒もアビドスと同じようにカイザーに食い物にされてしまった、という事だろう。

 

そしてその後は出回っているリゾート利用券を回収して回ったり、元カイザー理事と対峙したり色々なことがあったらしいけどお祭り運営委員会や百鬼夜行の生徒達、そしてまだロストパラダイスリゾートに残っていたアビドスの皆の活躍によって事態は無事に収束。

特にお祭り運営委員会委員長兼百夜堂看板娘の2年生、河和シズコ先輩の活躍は並々ならぬものだったとか。

そんな彼女たちの活躍もあり、黒幕だった元カイザー理事はあえなく逃走し今回の事件は幕を下ろした。

 

で、無事に問題が解決したと思ったところへ連邦生徒会の七神代行と由良木の二人がやってきたらしい。

不思議に思った先生が理由を尋ねると、何でもロストパラダイスリゾートは元々連邦生徒会が所有していた土地らしくそこで起こった偽の権利書を使った騒動が起こったので自分たちの土地を取り戻しに来たとの事だった。

あの土地が連邦生徒会の所有地だとは知らなかったけどそうとなれば流石に連邦生徒会の土地で百鬼夜行が商売をするわけにもいかず、立ち退きを要求されたらしいのだがそこで先生が河和先輩の思いを汲み取って交渉。

長い交渉の末、連邦生徒会との手続きと承認を得てロストパラダイスリゾートは百鬼夜行のお祭り運営委員会……もとい百夜堂が正式に土地の権利を買い取る形となりリゾートの運営権も得ることとなった。

そして問題を解決する際に交流した、リゾートに集まっていた連中と温泉事業やイベント事業等でフランチャイズ契約を結んで新たに河和先輩の手掛ける一大テーマパークとして生まれ変わったと言うのが事の顛末らしい。

 

まぁ俺様も先生から軽くモモトークで概要を聞いただけだから詳しい話は良く分からないんだが……まぁ無事に解決したのであればなによりだ。

事件解決のために協力したアビドスのみんなと先生には百鬼夜行から生まれ変わったロストパラダイスリゾートへの特待チケットが届いたらしく、また今度夏が終わるまでに皆で遊びに行く予定らしい。

今度は廃墟ではなくきちんとしたホテルに宿泊出来るみたいなので、頑張ったご褒美として是非思う存分楽しんできてもらいたいものだ。

 

「そっか、無事に解決したなら良かったぜ。」

“うん、シズコも喜んでいたしホシノたちには感謝しないとね。リゾートはこれから本格的にオープンする予定らしいから、またタツミも行ってみると良いよ。シズコにはタツミのことを私から伝えておくから。”

「あぁ、是非そうさせてもらうよ。今度はイブキだけじゃなくて万魔殿の皆で遊びに行かせてもらおうかな。」

 

先生の言葉に、俺様は笑顔を浮かべて頷いた。

元々万魔殿には毎年海へ行くって恒例行事があるし、今年は羽沼議長が矯正局へ入って休止になっちまったけど羽沼議長は真面目に矯正局で反省しているようだしあの様子なら申請すれば一時外出の許可は降りるはず。

なら、少し遅くはなっちまったけどロストパラダイスリゾートに羽沼議長を含めた万魔殿全員で遊びに行くのも悪くはないかもしれないからな。

 

それに百鬼夜行と言えば飯がうまいことで有名だ。

元々観光業が盛んな学校ということもあって食に対する文化も百鬼夜行には根付いていて、しかも料理のジャンルはもっぱら和食系が多く前世が日本人だった俺様にとっては馴染みが深く口にも合うものが非常に多い。

それに街並みも日本がモチーフになっている物が多いため、街を歩いているだけでも落ち着ける様な学校だ。

俺様も百鬼夜行には何度も食べ歩きで行ったことがあるけどあそこに出ている屋台の焼き鳥や焼きそばはマジで美味いし、飲食店で出てくる和食類もこっちの世界で久々に食った時は涙を流しちまったもんだからなぁ……

そんな学校が運営を手掛けるなら飯のクオリティは保証されているだろうし、そうなると俄然楽しみだ。

 

そのためにも万魔殿で仕事を頑張ると同時に……FOX小隊の件を解決して心置きなく遊びに行けるようにしておく必要があるのは間違いないだろう。

 

「……さて先生。仕事も一段落したことだし、この前のモモトークで伝えておいた件を詳しく説明させてもらいたいんだが……構わないか?」

 

俺様は目の前の書類にサインを書くとそれを処理済みの山へ放り込み、先生にそう問いかけた。

 

“うん、大丈夫だよ。元々今日タツミを当番で呼んだのは半分くらいはその話をしたかったからだし、こういうのは早い方がいいでしょ?”

 

俺様の問いかけに対して、先生は一旦走らせていたペンをデスクに置くと俺様の方を向き直ってそう言った。

 

「間違いないな。助かるよ先生。ありがとう。」

“ううん、気にしないで。えっと、とりあえず概要はモモトークである程度は聞いたけど……確かこの前のリゾートで、前に連邦生徒会に襲撃を掛けたFOX小隊がタツミの命を狙って襲ってきたんだよね?”

「あぁ、その時にたまたま居合わせたワカモと協力して撃退して黒幕が連邦生徒会の幹部だろうということまで推測を立てたんだが……とりあえず、改めて全部最初から説明したいんだけど大丈夫か?」

“うん、大丈夫だよ。お願いしてもいいかな?”

「分かった。じゃあまずは……」

 

真剣な表情でこちらを見ながらそう行ってくる先生に対して、俺様も彼女の目を真っ直ぐ見ながら口を開く。

こうして、俺様はこの前のリゾートで起きたFOX小隊との一件についての概要を全て先生に説明するのだった。




うわーん!タツミの業務量がヤバすぎます!
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