「……というわけなんだ。」
“そんなことが……分かった、ありがとうタツミ。”
「いや、大丈夫だ。こっちこそ辛気臭い話に付き合わせて悪いな先生。」
“ううん、大切な生徒の悩みを聞くのは大人の努めだからね。むしろ、よく相談してくれたよ。前までのタツミなら私を頼らずに突っ走ってただろうからね。”
「ははは……耳の痛い話だな。否定はできないけど。」
あれからあの日に起こったことを詳細に全て先生に話した俺様は手元のマグカップを手に取り、すっかり温くなったコーヒーをすすりながらため息を吐き出す。
そんな俺様の前で、先生は大きな胸の下で腕を組むと難しい顔を浮かべながら何かを考えているようだった。
「まぁ今言ったことはあくまで俺様の推理……と言うか憶測に過ぎない。もしかしたら間違っているって可能性も充分に考えられるとは思うが……」
“ううん、タツミの話を総合して考えるとFOX小隊に裏で指示を出しているのが連邦生徒会の幹部の可能性はかなり高いと思う。信憑性のある話だと思うよ。……生徒がそんな事をしているとは出来たら考えたくないけどね。”
そう言うと、先生は険しい表情をしながらそう呟いた。
普段から全ての生徒の味方だと言っている先生にとっては、そんな守るべき対象である生徒が殺人を企てているなんてことは受け入れがたい事実だろうからな。
心中察するに余りあるものがある。まぁ先生ならきっと今回のFOX小隊を裏で操っている連邦生徒会の幹部も生徒だから、と言う理由たけで無条件に救おうとするんだろうなということは目に見えているけどな。
全く、つくづくお人好しと言うか生徒バカと言うか。
先生のそう言う生徒であれば誰でも助けるという精神は嫌いではないけど、それはそれとしてキッチリと反省しない限りは許すべきではないと俺様は思うけどな。
結局RABBIT小隊だって今は地域のボランティアをして市民に徐々に受け入れてもらってるけど釈放理由はガバガバだったし、そういう所は良くないと思うぞ先生……
まぁ黒幕を暴いたとして半殺しにして矯正局にブチ込んだ上で、キッチリと反省するのであれば許してやらんでもないと思っている俺様が人の事は言えないがな。
なんやかんやで、俺様と先生は実は案外似た者同士なのかもしれない。
あ、ちなみに全て話したとは言ったけど流石にワカモとのあの一夜のことは先生には伏せて話してある。
まぁそりゃそうだろう。あの日のことは墓場まで持っていくと俺様は心に決めているんだ。
それにそんな事はひけらかすものではないし、俺様とワカモの秘密であることには間違いないからな。
と言う訳で、先生にはFOX小隊に握られた証拠を【ワカモと共闘してFOX小隊と戦った】という事にしてある。
証拠としては不貞行為よりも弱いのは違いないが、言うてゲヘナの議長代理と災厄の狐がわりと親しくしていて共に戦ったなんて情報が流れればそれはそれで俺様の立場が危ういのは間違いないわけだからな。
言い訳としては違和感はないはずだ。
現に先生も特に不審がる様子はなかったしな。
なお、俺様の握っている証拠はそのまま【FOX小隊が暗殺に来て裏にいるのが連邦生徒会幹部】だと伝えた。
これは紛れもない真実だし、証拠としてもとても強力なものなので特に嘘をつく必要はないだろう。
「……で、だ先生。ひとまずこのことは七神代行にも伝えておこうと思うんだが……大丈夫だよな?」
“うん、大丈夫だと思うよ。むしろ、そういうことなら伝えてあげないとリンちゃんの身に危険が及ぶかもしれないから。知ってたら自衛する事だって可能だしね。”
俺様は先生へ向けてそう質問をすると、先生は真剣な表情を浮かべながらそう言って頷く。
一応、七神代行にはモモトークで先生と同じくざっくりとした概要は伝えてあるものの詳細までは伝えきることが出来ていないからな。
それに、FOX小隊の反応を見るに十中八九今回の黒幕は連邦生徒会の内部に潜んでいると見ていいだろう。
その事を七神代行に伝えておけば七神代行の方でもそれとなく黒幕に探りを入れてくれると思うし、何よりも意識することによって普段なら気づかないちょっとした不審点にだって素早く気づく事も可能になるだろうしな。
あとは、連邦生徒会の幹部で言えば七神代行との関係が良好でよく一緒に業務を行っている岩櫃調停室長や由良木は黒幕である可能性は低いと俺様は踏んでいる。
理由としてはFOX小隊が連邦生徒会を襲撃した際に病院送りにされたのが七神代行を支持する役員だったこと。
このことから、黒幕は連邦生徒会でのクーデターを成功させるためにもまずは七神代行を引き摺り下ろすために支持者を少しづつ排除しようとしている傾向にある。
現に七神代行と仲が良く、彼女の運営する連邦生徒会を好意的に見ている俺様と言う七神代行の支持者にFOX小隊をけしかけて暗殺を企ててきたわけだしな。
徐々に七神代行の支持者や味方を減らしていって、七神代行の力が弱まったところで不信任案なりを叩きつけて失脚させる……と言うのが黒幕の描く道筋だろう。
となると七神代行の支持者である岩櫃調停室長や由良木は七神代行の味方である可能性が濃厚であると同時に、黒幕のターゲットにもされかねない危険な立場にある。
流石に彼女たちには直接詳細を話すことは出来ないにしても、黒幕にFOX小隊をけしかけられる可能性がある以上は身の回りに気をつけるよう忠告したほうがいい。
岩櫃調停室長は自分も山のような書類を片付けるって仕事があるのに常に七神代行の事を気にかけている優しい人だし、由良木だって普段はダラダラしているけどああ見えてやるべきことはしっかりやるし、その実七神代行の事を心配している根っこは真面目なやつだからな。
そんな彼女たちを、黒幕のクーデターなどと言う犬も食わないくだらない私利私欲のために危険に晒すなんてことはこの俺様が許さない。
「そうだよな。分かった。なら、今日夕方から七神代行にはアポを取ってあるから連邦生徒会に顔を出してこのことを伝えて来る。ついでに、潜んでいる黒幕にも俺様から挨拶して来てやるとするさ。」
“……その心意気は素晴らしいと思うけど、無茶はしないでね?君が傷ついたら悲しむ人はたくさんいるんだから。”
「分かってるよ先生。俺様だって命は惜しいからな。無茶なことはしないって約束するよ。それに今は俺様が握っている証拠で黒幕へ脅しも掛けている。しばらく黒幕は身動きなんて取れやしないだろうからよ。」
“……うん、それなら大丈夫。頑張ってね、タツミ。”
「おうよ!」
心配そうな表情でそう言ってくる先生に対し、俺様は笑顔を浮かべながら力強くそう答える。
そんな俺様の表情を見て、先生は笑みを浮かべた。
現状、俺様と黒幕は互いの首に爆弾を巻き付けあってその起爆スイッチを互いに所持している状態だ。
だが、そのスイッチを今同時に押せば大きな被害を被るのは黒幕側であることは間違いない。
黒幕の目的はクーデター。であれば、今俺様のこの音声データを公開されて連邦生徒会内に捜査の手が入るのは黒幕からすれば絶対に避けたい事態だろうからな。
現にあれからFOX小隊は姿を表すどころか気配すら俺様の周囲には感じないし、一旦俺様の音声データの信憑性を落とすための裏工作に精を出していることだろう。
つまり、タイムリミットは裏工作が完了するまで。
それまでに俺様は連邦生徒会内に潜む黒幕を炙り出し、その上で決着を付けに行かなければならない。
うかうかしている暇はない。今から早急に打てる手は全て打っていく必要があるだろうからな。
……とは言え、俺様だってワカモとのあの一夜のデータを公開されればただでは済まない。
ゲヘナの議長代理と災厄の狐の一夜の過ちが表になんて出ようものなら、俺様は議長代理の座を剥奪された上でテロリストと親密な関係を結んだということで確実に矯正局へブチ込まれてしまうだろう。
そうなれば、当然エデン条約の一件で地に落ちた万魔殿の信頼を先輩達と共に各方面に頭を下げて回復してきたことが全てパーになってしまう。
だから、あの音声データを公開される訳にはいかない。
なんとしてもそれだけは阻止しなければならない。
……俺様は羽沼議長と約束したんだ。
羽沼議長が矯正局から出所するその時まで、万魔殿と彼女が戻ってくるための議長の座を必ず守り抜くと。
羽沼議長のためにも。
そしてそんな俺様の思いを汲み取って、日夜業務に相殺されながらも一緒に羽沼議長の帰ってくる場所を守ってくれている万魔殿の先輩方のためにも。
たとえ代理ではあるとは言え、今の俺様はゲヘナの長。
であれば俺様はゲヘナのトップに立つ人間として彼女たちはもちろん、ゲヘナの生徒を守る義務がある。
まぁ流石に温泉開発部や美食研究会のようなテロリスト共は例外だけど、それはともかく黒幕のくだらない思惑で万魔殿の皆を危険に晒す事があってはならない。
まぁ元はと言えば俺様がワカモに手を出したのが悪いんだから自業自得と言われればその通りではあるんだが……
ともかく、あのデータを黒幕側に握られているのは俺様にとってもかなり痛いということだけは確かだ。
そのため、俺様は黒幕を追い詰めた上で必ずあのデータをぶん取って確保しなければならない。
とは言え、俺様とてワカモとの一夜のデータをぶん取った後に破棄するつもりなんてものは毛頭ありはしない。
例えどんな理由があるとは言え、俺様は狐坂ワカモと言う俺様の事を想ってくれている女の子と体を重ねた。
それだけは、何をどうしたって変わらない事実だ。
だから、データを公表されるわけにはいかないとは言えデータそのものを消すのは現実逃避に他ならない。
ワカモとのデータはブン取った上で、しかるべきときが来るまでは大切に保管しておくべきものだろう。
ワカモに手を出した責任は必ず取る必要がある。
本人は気にするなと言っていたが、それでなぁなぁにしていては俺様は本当に最低な男になってしまうからな。
とは言え仮に、本当に仮に俺様がワカモに惚れたとしてあいつが今までやってきたことをキチンと矯正局で反省しない限りは例えどれだけ俺様がワカモのことを好きだろうが付き合うつもりはこれっぽっちもない。
彼女の俺様を想ってくれている気持ちは嬉しいし、正直今思い返してもワカモの告白を断ってしまったことに対しては激しい罪悪感が浮かんでくる始末だ。
けど、奴は七囚人のひとり。
災厄の狐なんて二つ名を持つ、凶悪な犯罪者だ。
だったら、俺様の彼女が犯罪者だなんてことは絶対に認めないしそもそも罪を犯した事に関して俺様は反省しない限りはワカモを許すつもりは決してない。
だから必ずワカモを捕まえて矯正局へブチ込んでやる。
そのうえで罪を認めた上でしっかりと反省して、矯正局で罪を全て精算した上で更生するならば……もしかしたらもしかすることはあるかもしれないな。
いずれにせよ、このモヤモヤとしたよく分からない気持ちにはいずれ決着を付けなければならないわけだし。
まぁとは言え、だからと言って黒幕からぶん取ったデータを公表するかと言われれば話は別だけどな。
そもそもデータを取られているならワカモのあられもない声が録音されているはずだし、そんなものを公表するなんてのは俺様とワカモに対する公開処刑でしかない。
仮に、もし仮に俺様とワカモが付き合うとなったらそのときにぼかして報告すればいい話だろう。
……こんなの俺様のワガママなのは分かっているけどな。
ワカモは罪悪感に漬け込んで俺様を手に入れても面白くないから今回のことは二人だけの秘密にしようと言っていたけど……いずれは、答えを出せるといいなと思う。
“あっ、そう言えばタツミ。”
俺様がそんな事をぼんやりと考えていると、突然俺様の正面のデスクに座った先生が声を掛けてきた。
俺様はその声にハッとなると、ひとまずワカモのことを頭の中に引っ込めると先生の目に視線を合わせた。
「どうした先生?」
“えっとその……RABBIT小隊の皆のことなんだけど。”
「あぁ〜……」
罰が悪そうな顔をしながら言いにくそうに言葉を絞り出す先生の姿を見て、すべてを察した俺様は思わず口からため息が漏れる。
うーん……どうするべきなんだろうな。
そもそも、RABBIT小隊の連中にとってFOX小隊は憧れの尊敬する先輩達のはずだ。
子ウサギ公園に飯を作りに行ってやった時に月雪や空井はキラキラとした表情でFOX小隊の事を語っていたし、野宿生活を公園で送りながらSRTの復校と言う先の見えない茨道を進む彼女達にとっての数少ない心の支えになっているのは間違いない事実だろう。
それに風倉や霞沢……はよく分からんが、少なくとも月雪や空井はSRTの正義と言うものに誇りを持っている。
けど、今回FOX小隊が俺様を暗殺しようとした事は到底正義なんて呼べるものではない。
正義の反対は悪ではなく別の正義という言葉があるし、もしかしたら今回FOX小隊がやろうとしたことは彼女達なりの正義だったのかも知れない。
……けど、少なくとも殺人を平気で行おうとしたFOX小隊の行動を彼女達なりの正義なんて生ぬるい言葉で形容するのは間違いだと言い切ってもいい。
何も俺様の命が狙われたから言っているのではない。
例え誰の命を狙おうが、キヴォトスにおいて人を殺めることは禁忌。その後の一生を矯正局で過ごすことになってもおかしくないほどの重罪の中の重罪だ。
だから命を狙われたのが俺様だったとしても別の人物だったとしてもそんなものは関係ない。
今回に限っては、FOX小隊は間違いなく悪だと断じていいだろう。それは当然だ、彼女達はキヴォトスにおいて決して許されないことをしようとしたのだから。
まぁ一番悪いのはFOX小隊を脅迫して顎で使っている黒幕なのだが、彼女達にも間違いなく責任はある。
だから彼女達には必ず矯正局に入って、そこで罪を償ってもらわなくてはならないだろう。
被害者であると同時に加害者でもある彼女達を見ていると、アリウススクワッドを思い出してしまうな。
話は戻るが、そういうわけで今回FOX小隊は下手を打てばテロリストと呼ばれてもおかしくない行為をした。
その事実をSRTの正義を信じている月雪達に突き付けるのは簡単だが……同時に、それは彼女達の心の支えを一つ折ることにも繋がるわけで。
何をどうしたってFOX小隊が殺人を犯そうとしたのは事実だから、正直に伝えるべきなのは間違いないだろう。
だが、俺様も子ウサギ公園へ飯を作ってやりに行ってるおかげでそれなりに月雪達とは話せる仲にはなってきたとは思うけど……そもそもこんな自分達が信じているものを否定されるような事を言って信じてもらえるかと言うとまた別の話になってくるだろう。
ようやく彼女達と少し打ち解けてきたこの段階でそんな爆弾を投下しては、また彼女達との関係が険悪に戻ってしまう可能性だってある。
それに先生だってまだRABBIT小隊とはそこまで良好な関係を築けていない、と聞いているからな。
今彼女達にFOX小隊のことを話すと、空井や風倉辺りは受け入れられずに反発してくる可能性は高いと言える。
もちろん彼女達が俺様や先生の話を信じて、真実を受け入れてくれることもあり得ない話ではない。
RABBIT小隊の連中は1年生だが、SRTの狭き門をくぐったエリートの中のエリートたちだ。
正義感の強い月雪辺りなら、ショックを受けながらも飲み込んでくれる可能性は充分に考えられるが……まぁ、いずれにせよ不透明なことには変わりがないからな。
月雪達のSRTへの思いは本物だ。
俺様もそれは応援してやりたいし、月雪達には言ってないけどなんとか七神代行に掛け合ってSRTを先生の指揮の元で再建できるような案がないかを先生と共に相談もしていくつか法案のサンプルも作っている。
SRT自体に罪はないから、俺様としても正しく運用されるなら復校にはどっちかと言うと賛成ではあるしな。
(とは言え……)
真実は時として残酷である、とはよく言ったもんだ。
正直に伝えるか、それとももう少し良好な関係が築けるまでは黙っているか……難しい。あまりにも難しすぎる。
……ただ、俺様の中で答えは既に決まっていた。
「先生。確かに真実を伝えることは重要だ。けど……SRTの正義を信じて復校を目指している月雪達に今回の事を伝えるのは酷な話なんじゃないかと俺様は思う。」
“やっぱりそうだよね……でも、伝えないのもそれはそれで違うんじゃないかなって思うんだ。”
「それは俺様もそう思うぜ?ただ、現実としてRABBIT小隊の連中は現状シャーレのコンビニから廃棄品をもらって飢えをしのいで、テントで夜を明かす先の見えない不安定な日々を送っている。毎日不安なはずだ。苦しいはずだ。そんな連中にとってFOX小隊の存在は少なからず心の支えになっているのは間違いないだろう。SRTの復校を目指して頑張っているあいつらのためにも、その支えを折ることは……俺様には出来ねぇよ。」
聞いた話によると、RABBIT小隊の連中は拠点にしている子ウサギ公園の近くにある子ウサギタウンと言う小さな区画でボランティアのような事もやっているらしい。
初めは公園を占拠してSRTの違法な武器を振り回していたRABBIT小隊の事を快く思っていなかったらしい子ウサギタウンの人たちもRABBIT小隊の皆が真面目にボランティアに取り組む姿を見て、徐々に態度は軟化。
今では子ウサギタウンに住んでいる住人たちからはある程度信頼を置かれているらしく、店を営んでいる人からは余り物をもらえるようになったとこの前月雪が嬉しそうに話していたのを聞いたんだよな。
最初はテロリスト扱いだった彼女達が子ウサギタウンの住人に受け入れてもらえたのは先生の口添えもあるだろうが、一番は彼女達が真剣に頑張った結果だ。
聞けば子ウサギタウンの住人たちはRABBIT小隊が元SRTの生徒であることを知ると是非SRTの復校を果たして欲しい、自分達ももし今後SRTの復校の話が進んで仮に市民に復校の賛否を問う投票が開催されるとなったら必ず賛成に票を入れると言ってくれたらしい。
それを聞いたRABBIT小隊の4人は涙を流して喜んでいたと言うのを子ウサギ公園から子ウサギタウンに買い出しに行った時に住人から聞いているからな。
このまま少しづつRABBIT小隊が復校へ向けてボランティアなどで信頼を積み重ね、SRTの復校の賛成者を増やしていけば世間や連邦生徒会内での風当たりは必ず変わる。
そうすれば、SRTの復校だって夢ではなくなるだろう。
そんな頑張っている彼女達の心の支えの一つが、FOX小隊であると言うことはほぼ間違いないと言っていい。
正直、後輩がまっとうな手段でこつこつと信頼を積み重ねているのに対して先輩であるFOX小隊が汚い手を使っていることに対する憤りはあるが……それでも、RABBIT小隊にとってFOX小隊は憧れの先輩達だからな。
RABBIT小隊は今、子ウサギタウンの住人からの信頼も得て4人全員が前向きに復校へ向けて頑張りを続けている。
シャーレの廃棄品と子ウサギタウンからの貰い物で毎日腹いっぱい食える程度の食料は確保できているようだし精神的にも安定してきている時期だ。
それに子ウサギタウンの住人たちという心強い味方も得て、今の彼女達には復校の希望が見えている。
希望さえあれば、人は頑張れるものだ。
その希望をいらない絶望で塗りつぶす必要はない。
彼女達の頑張りを無駄にしないという意味でも、今FOX小隊の事を彼女達に伝えるのは避けた方がいいだろう。
それにさっきも言ったけど、俺様も先生もRABBIT小隊の連中とはまだそこまで親しい仲とはいい難いからな。
FOX小隊のことを伝えるにしても、もう少しRABBIT小隊の連中と親交を深めてからの方がいいのは間違いない。
今彼女達にFOX小隊のことを伝えるのは、かえって余計な亀裂を生みかねないだろう。
“……そっか、タツミは優しいんだね。”
「別にそんなんじゃねぇよ。あいつらは俺様がわざわざ飯作りに行ってやってんのにやれ野菜ばっかのメニューだの、やれ早くしろ腹が減っただの、やれもう来なくていいだのやかましくて仕方ねぇ。……けど、あいつらがあいつらなりに頑張ってるのは俺様だって分かってる。ならその頑張りには少しでも報いてやりてぇんだ。」
“タツミ……”
「まぁ、とは言えFOX小隊のやっていることはいずれは月雪達にも伝える必要はあるだろう。SRTの正義を掲げるならいずれRABBIT小隊が向き合わなきゃいけない真実であることに違いはない。……けど、それは今じゃないと俺様は思ってるってだけだ。」
冷めきったコーヒーを口にしながら、俺様は渋い表情を浮かべつつそう言った。
「まぁ今のはあくまでも俺様の意見だ。だからもし先生が今伝えたほうがいいと判断したなら伝えても構わないと俺様は思っているが……」
“ううん、タツミの言うとおりだよ。ミヤコ達は今SRTの復校へ向けて一生懸命頑張っているし最近は私が子ウサギ公園へ行っても前ほど邪険には扱われなくなった。きっと希望が見えて心に余裕ができてきたんだろうね。そんな彼女達の希望を砕くのは最善だとは思わないし、何より先生である私は生徒を守るのが仕事だからね。”
「……なんと言うか、先生らしいな。」
“そ、そうかなぁ?そんなに褒められると照れるよ……”
「いや別に褒めては……いや褒めてんのかこれ?あれ、よく分かんなくなってきたぞ……?」
まぁという訳で、先生との話し合いの結果FOX小隊のことをRABBIT小隊へ伝えるのはもう少し先の話となった。
とは言え、いつかは話さなければならない真実であることに間違いはないだろう。
その時が来たら残酷なことではあるが……RABBIT小隊のみんなにはしっかりと真実に向き合ってもらうとしよう。
「あぁそれと先生。次もし子ウサギ公園へ出向く機会があれば空井にしっかり野菜を食うよう伝えておいてもらえるか?あと風倉にはきちんと夜布団をかぶって寝るようにと、霞沢にゴミ箱に入るのは衛生上よくないから辞めとけって言っといてもらえると助かる。月雪は……まぁあいつは真面目だから、今んとこは特にないかな。」
“……なんか、ミヤコ達のお父さんみたいだね。タツミ。”
「おいおい冗談だろ?あんな反抗期真っ盛りのじゃじゃ馬どもの父親だなんて頼まれてもゴメンだぜ。」
“でもタツミはDU地区に来るたびに子ウサギ公園に寄ってご飯を作ってくれるって、この前ミヤコ達に会った時に嬉しそうに言ってたよ?廃棄品もいいけど、やっぱりタツミの作る料理が一番美味しいって。それにタツミはいらなくなった家電を譲ってくれたり、なんだかんだで訓練にも付き合ってくれるから助かってるってサキが。”
「そいつは光栄な話だが別に飯を作ってるのはあいつらがコンビニ弁当ばっかで栄養バランスが心配なだけだから礼には及ばないぞ?あと家電は万魔殿の給料が入ったから電子レンジを買い替えて、廃棄することになった古い電子レンジの処分に困ってたからむしろこっちが助かったし訓練も別に俺様も空井には学ぶことが多いからそんな気にすることでもないだろ。」
“……やっぱり、タツミはミヤコ達のお父さんだよ。”
「いやどこがだよ!?そもそも俺様が先輩ならともかく月雪達と俺様は同級生なんだが!?」
楽しそうにニコニコと笑う先生に対して、俺様は不服そうに抗議の声を上げながら書類を手元へ引き寄せる。
こうしてその後も先生とRABBIT小隊のことや今後のことなどの話をしつつ、日が傾いて来た頃にデスクの上の書類の山を処理した俺様はそのままシャーレを後にし七神代行の待つ連邦生徒会へと向かうのだった。
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「……あれ?ノノミちゃん何見てるの〜?」
「あっホシノ先輩☆いえ、何でもありませんよ〜☆」
「そう?なんだかスマホの画面を食い入るように見てたから、面白いものでも見つけたのかな〜って。」
「面白いものですか……うふふ☆確かに言われてみればとーっても面白いものかもしれませんね☆」
「え〜そんなに面白いの?ちょっと気になるかも?」
「ふふ☆ですが、ホシノ先輩にはちょっとだけ刺激が強いかもしれませんね☆」
「ん〜……?良くわかんないけどノノミちゃんが楽しそうならおじさんは嬉しいよ〜。」
「ちょっとホシノ先輩!またこんなところでぐーたらして!今日は応募してたアルバイトに行く日でしょ!ほらさっさと支度する!置いていっちゃうわよ!」
「うへっ!?すっかり忘れてた……ご、ごめんってばセリカちゃん!すぐ準備するから置いてかないで〜!」
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「ほっ……危うくホシノ先輩にバレちゃうところでした☆やっぱり学校にいる間はトイレ以外で見るのは辞めておいたほうが良さそうですね〜☆」
「……あの島でお昼間にワカモさんという方とタツミくんの間の雰囲気がちょっと怪しいと思っていたら、案の定でしたね☆タツミくんはうまく隠せたと思っているみたいですけど……あんなこれみよがしの絆創膏なんて貼ってたら白状しているようなものですね☆みんなは騙されちゃってましたけど、私の目は誤魔化せませんよ〜?」
「何せ、タツミくんのお部屋の前を通ったとき……二人の声がぜーんぶ丸聞こえでしたからね☆ふふっ☆」
「……うんうん、うまく撮れてますね☆これならタツミくんと個人的な楽しいお話が出来そうです☆」
「うわ、すっごいです♡二人ともこんなに……♡」
「…………っ♡」
「……ふふ♡セリカちゃんには申し訳ないですけど……これはとぉ〜っても楽しくなりそうですね〜☆」
「タツミくん、私には全てお見通しですよ〜……?♡」
エ駄死バージョン(R18)の近況ですが
ワカモともう1人の生徒で本編と並行して執筆を進めています
ただ筆が乗ってしまったせいでワカモよりもう1人のほうが先に完成しそうなんですよね……()
やはりエ駄死バージョンの最初はワカモがいいとは思いますのでワカモとの一夜が完成するまでもう少しお待ちください
ただ、もしワカモが最初じゃなくても大丈夫であれば次回の本編の更新時にR18の方で投稿できそうなので大丈夫そうであれば意見をもらえると嬉しいです!