転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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気がつけばもう1週間で今年が終わりますね
時間がすぎるのは早いもの……


連邦生徒会長代行と丹花タツミ

「……以上が今回の件の詳細になります、七神代行。」

 

時刻は夕暮れ時。連邦生徒会の生徒会長室にて。

あれからシャーレをでて連邦生徒会の総本山であるサンクトゥムタワーを訪れた俺様は、受付に七神代行にアポを取っていることを伝えて生徒会長室まで通された。

そしてにこやかに迎え入れてくれた七神代行に来客用のソファへ案内されると、そこへ腰掛けながら俺様はあの日起こったことをすべて彼女へと伝え切って今に至る。

 

「そのようなことが……頭の痛い話ですね……」

 

俺様の正面のソファに座りながら深い溜息を吐き、頭痛をこらえるように額を抑える七神代行。

まぁそりゃ連邦生徒会の身内にFOX小隊を使って殺人命令を下し、更には自分の席を狙うためにクーデターを企てている奴が居ると聞かされれば無理もない話だろう。

心中察するに余りあるものがある。

 

「……どうぞ、七神代行。」

 

そんな彼女に俺様は胃薬を1箱差し出した。

 

「いつも申し訳ありません、タツミ議長代理……」

「いえ。大体モモトークで伝えた内容通りですが、流石に状況が状況なので詳しくお話させてもらいたくて時間を取らせてもらいました。お忙しいのにすみません。」

「謝らないでくださいタツミ議長代理。むしろこちらがお礼を言うべきことでしょう。タツミ議長代理が伝えてくれなければ、私は無防備な背中を黒幕へ晒し続けることになっていたのですから。」

 

俺様が軽く頭を下げつつそう言うと、七神代行はにこりと笑顔を浮かべながらそう言ってくれた。

 

「……しかし、まさかFOX小隊の連邦生徒会への襲撃にそのような狙いがあったとは思いもしませんでしたね。」

 

七神代行は俺様から受け取った胃薬の箱を開封すると一つ中身を取り出して封を切り、口の中へ流し込み手元のコップの水を煽りつつそう言葉をこぼす。

 

「てっきりSRTの封鎖を決めた当てつけかと思っていましたが、まさかクーデターを狙って私の支持者を少しづつ減らすためとは……どこまでも卑怯な相手です。そう言えば最近は私に親しく接してくれていた役員達が急にそよそよしくなっている事もありますし、もしかしてそれも黒幕が裏で糸を引いているのかも……?」

「……あの、七神代行。こんな事を話しておいて今更こんなことを言うのもなんですけど、俺様の話を信じてくれるんですか?」

 

胃薬を飲み終えて軽く息を吐き出しつつそう言う七神代行に、俺様は神妙な顔をしながら口を開く。

 

「……?どういうことですか?タツミ議長代理。」

「いえその、正直今回俺様が話したことは早い話が七神代行の身内に自分の席を狙っている敵がいると言う聞く人が聞けば信じるに値しない話じゃないですか。」

 

不思議そうに首を傾げる七神代行に、俺様は手元のコップの水を喉へ流し込みながらそう言った。

そう、今回七神代行へ俺様が伝えたのは前述通り彼女の所属する連邦生徒会……その部下の中に自分の席を狙っている裏切り者が居るということに他ならない。

俺様で例えるならば、議長代理の座を狙っている人間が棗先輩達の中にいるぞと言われるよう物だ。

それも、親しいとは言え完全なる部外者の人間から。

 

俺様ならいつも自分の事を支えてくれて、苦しい時も楽しい時も時間を共にしてきた棗先輩達の中に裏切り者が居ると言われたとてそう簡単に信じる事は出来ない。

いくら伝えてきたのが親しい相手とは言え、相手はそもそも部外者の人間。タチの悪い冗談だと一蹴することだって決しておかしな話ではないだろう。

 

七神代行だって、今まで連邦生徒会長の捜索をしながら一緒に連邦生徒会を回してきた幹部の生徒達を信頼しているであろうことは俺様と変わらないと思う。

それなのに、彼女は何の疑いもなく俺様の話をすんなりと飲み込んでくれたわけだからな。

事は急を要するから押し問答をしている暇はないのでありがたい話ではあるんだが、こうもあっさりと飲み込まれてしまうと少し心配というかなんというか……うん。

 

「……ふふ、そのような事を気にしていたのですか?」

 

俺様がそう考え込んでいると、七神代行は口元に手を当てながら柔らかそうに微笑んだ。

 

「信じるも何も、今回の件はタツミ議長代理がFOX小隊との襲撃時に交わした彼女達との会話ログから客観的に見れば疑いようのない事実なのは確かです。それに私としてもFOX小隊の連邦生徒会襲撃の際に私の支持者だけが襲われたのも不審に思ってはいましたし、前から色々と引っかかる点はあったので……むしろ今はそういうことかとパズルのピースがはまってスッキリしています。」

「それは……そうかもしれませんけど……」

「ふふっ、それにタツミ議長代理はそんな嘘を付くような方ではないと私は思っていますからね。」

 

俺様の目を真っ直ぐに見据えながら、七神代行はきっぱりとした口調でそう言い切った。

 

「ですので、もちろん私は今回の話を信じますよ。」

「七神代行……はい!ありがとうございます!」

 

柔らかな笑みを浮かべてそう言ってくれる七神代行に対して、俺様は感謝の言葉を口にした。

 

「……それよりも、今回タツミ議長代理が休暇中FOX小隊に命を狙われたのはひとえに私と親しくして頂いているからに他ならないでしょう。」

 

そう言うと、七神代行は表情を曇らせテーブルに置いていた手をぎゅっと握ってわなわなと震わせる。

 

「タツミ議長代理はあの空崎ヒナにさえ引けを取らない実力の持ち主ですが、貴方にはヘイローがない。一歩間違えば殺されていたのは間違いない事実です。」

 

七神代行はその青い瞳にギラギラとした怒りの炎を宿しながら、強い口調でそう言った。

 

「なので許せないのです。貴方を消そうとした黒幕が。貴方の命を奪おうとしたFOX小隊が。……そして貴方と親しくして命を狙われるきっかけを作り、今もこうして貴方に迷惑をかけてしまっている他ならぬ私自身が。」

 

肩をぷるぷると震わせ、俯きながらそういう七神代行。

……七神代行は一見すると無愛想で口下手だけど、その実は人の事を気遣う事のできる心の優しい人だ。

そして同時に責任感が強い性格でもあり、今回俺様が襲撃を受けたのが自分と親しくしていたせいだと言う自責の念があるのだろう。

 

「……本当に申し訳ありません、タツミ議長代理。」

 

そして、七神代行はそう言うとその場で俺様に対して深く頭を下げてきた。

 

「頭を上げてください、七神代行。」

 

そんな彼女に対して、俺様は間髪入れずにそう伝える。

その言葉を聞いた七神代行はゆっくりと頭を上げるが……彼女の瞳からは透明な液体がこぼれ落ちていた。

 

(……っ!)

 

そんな彼女の姿を見た俺様はすぐさまポケットからハンカチを取り出して彼女の手を取って握らせると、安心してもらえるように身を乗り出して七神代行の頭を優しくぽんぽんと撫でる。

 

「タツミ議長代理……?」

「貴方が謝る必要はありませんよ七神代行。そして責任を感じる必要だってありません。悪いのは全てFOX小隊、ひいてはその裏で糸を引いている黒幕なんですから。」

 

彼女の頭を撫でながら俺様は優しい口調で言葉を紡ぐ。

 

「前にも言ったと思いますが、俺様と七神代行は規模は違えど同じ立場の人間です。俺様は羽沼議長が、七神代行は連邦生徒会長が帰ってくるまでの代わり……それでいて周囲からは彼女達と同等の、下手すればそれ以上の結果を求められる。その辛さや苦しみを1人で抱えていてはいつかはパンクしてしまっていたでしょう。」

 

俺様は続ける。

 

「当然ストレスだって溜まります。辞めたくなった事なんて数え切れません。そんな時に愚痴や弱音を聞いてくれる人たちはもちろん居ますけど……それでも、同じ立場や同じ視点で悩みを共有できるのは俺様の中では七神代行たった1人しかいません。そして七神代行は俺様の愚痴や弱音を嫌な顔せず聞いてくれました。励ましてもくれました。俺様はその事に本当に感謝しているんです。」

 

そう、人はどうしたって生きて働いているだけでストレスが蓄積していく生き物。それをどうにか発散しないといつかは抱えきれなくなり、やがてパンクしてしまう。

ガス抜き、と言うのはとても重要なのだ。

 

「俺様にとって七神代行は悩みや弱音を吐ける人であると同時に、大切な友人です。貴方のせいで俺様が襲われただなんてそんなこと思ってるわけがないじゃないですか。貴方が気に病む必要はどこにもありませんよ。」

 

そうさ、そんなことを思っているわけがない。

七神代行は何も悪くなんてないし、むしろ今回の件に関しては黒幕から直接狙われている完全なる被害者だ。

そんな彼女が責任を感じる必要など一切ない。

 

「そんなに自分を責めないでください。さっきも言いましたけど、悪いのは全て黒幕なんですから。」

「ですがそれでも、私が貴方と親しくしていなければ貴方が襲われることは……」

「例えそうだとしても、俺様は七神代行と仲良くなれてよかったと思ってますよ?七神代行とお話するの、俺様は結構楽しみにしていますからね。」

 

俺様は七神代行を安心させるように笑顔を浮かべると、力強くそう言い切る。

 

「そ、そうなのですか?でも……私なんて無愛想なせいで周りからよく鉄仮面女なんて言われますし……」

 

……そうか?

七神代行って俺様と話しているときは結構笑ってくれたりするし冗談を言うとむくれたり、悲しかったら露骨に落ち込んだりと割と表情豊かな気がするんだけど。

 

「毎日のようにタツミ議長代理にモモトークを送って夜遅くまで愚痴を聞いてもらってますし、悩みの相談にも乗っていただいて負担になっていないか心配ですし……」

 

いや、それに関しては俺様も彼女の愚痴を聞いているうちにこちらもついつい仕事の愚痴などをポロっとこぼしてしまうせいでお互いに愚痴の言い合いや慰め合いになることも少なくないからお互い様なのでは……?

確かにモモトークや通話をする頻度は普通の人よりは多いけど、七神代行は今まで頼れる人がほとんどいなかったんだからその反動だとしたら納得できる範疇だし。

……まぁ、とは言えここ最近はほぼ毎日やっているからそう考えるとちょっとばかし多いかもしれないけど。

 

「それにこの前はタツミ議長代理が休暇中にも関わらず電話をかけてしまうような面倒くさい女ですし……愛嬌もあって気立てもいい女性に比べれば、私なんてタツミ議長代理の友人にふさわしくないのでは……」

「そんなことはありませんよ。俺様だってなんやかんやでモモトークや通話中に逆に愚痴を聞いてもらうことだってあるじゃないですか。」

 

彼女の頭に置いた手を優しく動かす。

よく手入れされているのか、サラサラとした髪の感覚を手の平に感じながら俺様は言葉を続ける。

 

「それに、俺様は仲良くしたくないと思った相手にここまでする人間ではありませんよ?」

「タツミ議長代理……」

「それにそれを言うなら俺様だって普段はイブキのことが大好きな事くらいしか取り柄のない自他共に認めるシスコン野郎ですし、俺様はまだ1年生です。それこそ、俺様のほうが七神代行の友人としてふさわしいのか、友人でで居て良いのかって話になりませんか?」

「そ、そんなことはありませんっ!例え貴方がどんな方だろうと、貴方は私の大切な友人です!」

「でしょ?七神代行、友人って言うのはふさわしいとかふさわしくないとかじゃない。お互いがこの人となら楽しい時間を過ごせると思うかどうかが一番大切だと俺様は思います。そしてお互いにその人と楽しい時間を過ごしていたらいつの間にか友人になっている、もしくはなりたいからなる。そういう物なんじゃないですかね?」

 

そう、何もそんなに難しい話ではないのだ。

なりたいと思ったからなる、いつの間にかなっていた。

友人なんてものは、得てしてそういうものなのだから。

 

「それに何回だって言いますけど、悪いのは七神代行じゃなくて黒幕です。だから七神代行が謝る必要もなければ責任を感じる必要も一切ありませんからね?七神代行と仲良くなれて良かった、俺様はそう思ってます。」

 

七神代行の頭を撫でながら、俺様は真剣な表情を浮かべつつそう言った。

すると彼女は涙でキラキラと光る青い瞳を俺様へ向けると、不安そうな表情を浮かべる。

 

「大丈夫です、俺様はFOX小隊や黒幕には負けませんし殺されてやるつもりもありません。むしろ胡座をかいている黒幕を炙り出してギャフンと言わせてやりますよ。」

 

そんな彼女を安心させるため、俺様は七神代行へ向けてにっと笑顔を浮かべながら親指を立ててそう言った。

 

「……はい、ありがとうございます。タツミ議長代理。」

 

そんな俺様の顔を見て安心したのか、七神代行は不安そうな表情を明るくすると俺様の笑顔につられたかのようににっこりとした笑みを浮かべた。

うんうん、やっぱり女の子には笑顔が似合うよな。

 

「さ、涙を拭いてください七神代行。」

「はい。申し訳ありませんタツミ議長代理。気を使わせてしまって。こんな面倒な女、幻滅しましたよね……?」

「何を言ってるんですか。七神代行は毎日夜遅くまでキヴォトスのために頑張っているとても頑張り屋な人です。そんな人に幻滅するわけがありませんよ。」

 

俺様が握らせたハンカチで遠慮がちに涙を拭いながらそう言う七神代行に対して、俺様はなるべく彼女を安心させるように笑顔を浮かべ続けながら口を開く。

 

「安心してください、七神代行はとても素敵な女性です。俺様が保証しましょう。」

 

前にも言ったけど彼女は悩みを相談できる人も俺様くらいしか居らず、それでいて連邦生徒会に毎日のように舞い込んでくる書類を処理して各学園からのクレームの処理を彼女はたった一人でやっているんだ。

とてもじゃないけど、そんなことは俺様には出来ない。

七神代行はとても立派ですごくて、心の底から尊敬してしかるべき人物だと俺様は思っている。

 

それに何事もそうだけど、何かに対して真剣に取り組んで頑張れる人間というのは得てして素敵なものだ。

そんな頑張りすぎなほどに頑張っている七神代行を尊敬こそすれほど、幻滅することなどあり得ないからな。

 

「……本当にこの人は。」

 

俺様が心の中でそう思っていると、七神代行は何故か顔を赤くしながらソファからおもむろに立ち上がる。

涙を流したせいで喉が乾いたのだろうか……などと俺様がその行動に対してぼんやりと思っていると、七神代行はそうこうしているうちに俺様の座っているソファまで歩み寄ってくると俺様の隣へと座った。

2人分の体重をかけられたソファは少し沈み込み、バネがぎしりという音を立てる。

 

(……えっ?)

 

俺様が七神代行の唐突な行動に驚いていると、彼女はそのまま持っていたハンカチをテーブルへ置いたかと思えば俺様に向かって自然に体を寄せてくる。

その瞬間、彼女からふわっと漂ってくる女性特有の甘い香りが俺様の鼻をくすぐった。

そして互いの体が密着しそうなほど接近した時、七神代行は俺様の腰に手を回すとそのまま自分の体を思い切りぐいっと押し付けて来た。

 

(……っ!?)

 

彼女から感じる温かさと柔らかさ、そして甘い香りに俺様の脳は混乱寸前になる。

あまりにも唐突な出来事に俺様がその場で目を白黒させていると、七神代行はそんな俺様の事などお構いなしに俺様の腰に回した手に力を込めながらその抜群のスタイルを持つ体をグリグリと更に密着させてくる。

 

「ちょ、七神代行!?」

「……今のは反則ですよ、タツミ議長代理。」

「は、反則って何がですか……!?」

 

よく分からないことを言う七神代行に対して、俺様はテンパりすぎて思わず裏返った声でそう言う。

 

七神代行は涙で潤んだ目で俺様の事を上目遣いで見上げてきており、たわわに実ったその柔らかい2つの双丘を俺様にこれでもかと言うほど密着させてきている。

更に彼女は上半身のみだけならず下半身も俺様へ寄せてくると、その黒タイツに包まれたむちむちの太ももを俺様の足へと沿わせ完全なる密着状態を作り上げてきた。

 

ちょっと待ってくれ!頭の整理が追いつかないぞ!?

むしろ、反則って言いたいのはこっちなんだが……!?

熱っぽい表情を浮かべる七神代行の姿を見て思わず俺様はゴクリと生唾を飲み込むが、ふと俺様の脳裏にワカモの姿がよぎる。

 

「……っ!」

 

その瞬間俺様は反射的に腰を引いて彼女の体から距離を取ろうとするが、それを察したのか七神代行は更に腕に力を込めてガッチリと俺様をホールドして離さない。

 

「七神代行!まずいですって!こんなところを誰かに見られでもしたら……!」

「……タツミ議長代理はこういうことはお嫌いですか?」

「いや好きとか嫌いとかの問題じゃないでしょう!?」

 

そりゃもちろん男であれば七神代行のようなスタイル抜群の絶世の美女から抱きつかれて嬉しくないわけはないが、ここは連邦生徒会の生徒会長室だ。

そんなところで連邦生徒会長代行である七神代行と、ゲヘナの議長代理である俺様が抱き合っているところを見られでもしたらとんでもないスキャンダルになる。

 

……それに俺様には狐坂ワカモと言う、テロリストとは言えこんな俺様に対して一途な想いを寄せてくれてなおかつ好いてくれている女の子がいるのだ。

そんな彼女と体を重ねておきながら、七神代行とこんなに密着するのは良くないだろう。

 

「とにかく、まずいですって七神代行……!」

 

キヴォトス人特有のパワーにより力負けした俺様は慌ててそう言うが、七神代行は俺様の言葉を聞くと無言で自身のかけているメガネを外しコトリと音を立ててテーブルへ置くとそのまま俺様の胸に顔をぽふりと埋める。

 

「ちょっと……!?」

 

わたわたと慌てる俺様に対して、七神代行は俺様の胸に更に全身を寄せながらぐりぐりと頭を押し付けてくる。

全身に感じる彼女の温かさ、嗅覚をくすぐる彼女の甘い香りに脳がクラクラしそうになるがこれ以上この状態でいるのは流石に色々とマズいだろう。

俺様はやむを得ず彼女の肩を掴んで強引に引き剥がそうとするが、ふと俺様の手を添えた彼女の肩が僅かに震えているのに気がついた。

 

(……っ!?七神代行、震えて……?)

「……例え誰かに見られても構いません。お願いしますタツミ議長代理。今だけは……今だけは、少しだけこうさせてもらえませんか?」

 

すると、彼女は俺様の頭に変わらずぐりぐりと頭を押し付けつつも弱々しそうな声でそう言葉を発する。

そんな七神代行の言葉を聞き、俺様はハッとなった。

 

……そうだ。

七神代行は今俺様とこうしている瞬間も、連邦生徒会内部に潜んでいる黒幕からその身を狙われている。

 

黒幕の狙いはクーデターだ。

現状黒幕は連邦生徒会内部の七神代行の支持者を少しづつ減らすことにより彼女を孤立させるという方針を取ってはいるものの、仮にそれがうまく行かなくなればFOX小隊を差し向けて暗殺を企ててくる可能性は充分ある。

現に俺様はFOX小隊をけしかけられて殺されそうになっているわけだし、黒幕が自分の目的のためなら殺しをなんとも思わないクソみたいな人間だというのは証明されているわけだからな。

 

七神代行からすれば苦楽を共にしてきた連邦生徒会の信頼できる幹部たちの中にクーデターを企てている人物が居ると明かされたときは相当ショックだっただろうし、何よりも身内に黒幕が潜んでいるということは裏を返せば七神代行はいつ襲われてもおかしくない立場にある。

 

だから今のこの状況は怖いはずだ。不安なはずだ。

それはつまり、自分がいつ命を狙われてもおかしくない状況に置かれているということなのだから。

 

七神代行は連邦生徒会長代行などと言う重たい肩書を背負ってはいるもののその中身は真面目で律儀で……確かに少し堅物だったり口下手なところはあるけど、人を思いやることの出来る心の優しい1人の女の子なのだ。

そのような1人の女の子をここまで恐怖に震わせ、あまつさえ俺様が襲われたことを自分の責任だと思わせてしまうような黒幕にメラメラと激しい怒りが燃え上がる。

 

(……ふざけやがって。)

 

とは言え、ここでその怒りを爆発させたところで何の意味もないのは明白だ。

俺様は湧き上がってきたその怒りを一旦飲み込むと、体を微かに震わせる彼女の頭に手を置くともう片方の手を背中に回して七神代行をぎゅっと抱きしめた。

 

……すまないワカモ、どうか許して欲しい。

目の前で恐怖に震える女の子を放っておくことは……俺様には出来ない。

 

「……大丈夫ですよ、七神代行。」

 

俺様は彼女の頭に置いた手を左右に動かしながら、背中に回した手をポンポンと軽く叩いて彼女を安心させる。

そんな俺様の行動に反応し、七神代行は俺様の胸に埋めていた頭をゆっくりと引き上げた。

 

彼女の青い瞳と目が合う。

再び涙で濡れそぼった七神代行の瞳は、宝石のようにキラキラと輝いていた。

 

「先程も説明しましたけど、俺様は黒幕がFOX小隊をけしかけて俺様を暗殺しようとしていた音声データを所持しています。それを使って脅しをかけていますから、しばらく黒幕だって派手なことはできないでしょう。」

「はい。それはお聞きしました。タツミ議長代理がしばらく襲われることがないのは安心ですが……けど……」

「えぇ、分かっています。だとしてもそれが七神代行の身の安全に繋がるわけではありませんからね。」

 

今にも泣き出してしまいそうな七神代行の頭を優しく撫でながら、俺様は安心させるような口調でそう言う。

そう、確かに俺様はFOX小隊と黒幕の繋がりを証明するデータを手に入れてそれを脅しに使ってはいるが、あくまでそれで防ぐことが出来る危険は俺様の周辺のみ。

メインターゲットである七神代行まではその程度のデータでは守ることは出来ないし、彼女がいつ襲われてもおかしくない状況に不安を覚えるのは至極当然の話だ。

 

「……すみません、タツミ議長代理。貴方がしばらく安全であることを喜ぶべきなのに、私は自分の心配ばかりして……上に立つ立場の連邦生徒会長代行である私がこれでは、不満を持つ幹部がでてくるのも当然ですよね。」

 

自虐的な笑みを浮かべながら、いまにも崩れてしまいそうな儚い表情でそう言う七神代行。

そんな七神代行を見て俺様は真剣な表情で彼女の青い瞳に目を合わせると、迷うことなく口を開いた。

 

「……そこまでです、七神代行。それ以上貴方が自分のことを卑下するのなら俺様は今ここで怒りますよ?」

「……えっ?」

 

七神代行は俺様の言葉に対して想像していなかったと言わんばかりの呆けた声を上げるが、俺様はそのまま彼女の頭を撫でながら言葉を続ける。

 

「まず、前提として貴方は今この瞬間にも黒幕から身を狙われていても決しておかしくはない立場です。なら、自分に降りかかる火の粉を警戒するのは当たり前のこと。自分の心配ばかりしているだなんて誰も思いません。」

 

そう、いくら屈強な人間と言えど自分が身近な身内からその身を狙われているとなればそのことで頭がいっぱいになっても何らおかしな話ではない。

ましてや七神代行は失礼ではあるが、キヴォトスにおいてはそこまで腕の立つ人間ではないと言う事実がある。

自分自身のことを心配するのは当たり前の話だ。

 

更に言うなら、FOX小隊はエリートの中のエリートが揃うSRTの中でも特に優秀な部隊だ。

俺様とワカモの二人がかりでも苦戦したそんな部隊に襲われては、七神代行はひとたまりもないだろう。

 

「それに、七神代行はいつもキヴォトスのために夜遅くまで頑張っているじゃないですか。疲れた体にムチを打って、頼れる人が多くない中で各学園と連携して日々積み上がる書類を処理しつつ、各学園からの苦情を処理して連邦生徒会長の捜索まで行ってるんですよ?」

 

七神代行の目の下に刻まれた深いクマ。

そのクマは失踪した連邦生徒会長の穴を埋めようと、七神代行が日々必死に頑張っている何よりの証拠だ。

そんな深いクマを俺様は思わず指でなぞりつつ、そのまま言葉を続けていく。

 

「そんな誰よりも頑張っている貴方に文句なんて言わせません。七神代行、俺様は貴方が連邦生徒会長の代行で本当に良かったと思っているんです。俺様はこれからも貴方が代行であることを断固として支持しますし、負担を減らすために出来ることがあれば是非言って下さい。俺様に出来ることならお手伝いしますから。」

「タツミ議長代理……」

 

消え入りそうな声でそう呟く七神代行。

俺様はそんな彼女としっかり視線を合わせ続ける。

 

「黒幕がなんと言おうが連邦生徒会の幹部がなんと言おうが俺様は連邦生徒会長代行は貴方が良い。貴方じゃないとダメだ。貴方の作るキヴォトスが俺様は何よりも好きなんですから。それは俺様だけじゃなくて、普段から貴方と良好な関係を築いている岩櫃調停室長だって由良木だってきっとそう思っているはずですよ。」

 

サラサラの彼女の髪に手を這わせつつ、俺様は七神代行の目からいつの間にか溢れてきていた涙を指でぬぐいとるとニコリを笑みを浮かべる。

 

「だから……貴方は俺様が守ります、七神代行。」

「……っ!」

 

そして、俺様は七神代行の宝石のような瞳を見据えながら一切躊躇することなくそう言い切った。

そんな俺様の言葉に、彼女は一瞬だけ体を跳ねさせる。

 

「大丈夫、黒幕には貴方に指一本触れさせやしません。安心してください。例えこの身が朽ちたとしても、必ず貴方を守り抜いてみせるとここで誓いましょう。」

 

そして俺様は七神代行の青い瞳に向かい、心の底から湧き上がってきた本心をぶつけた。

……そうさ。こんな恐怖に震えている俺様の大切な友人を傷つけるつもりなら、俺様は全力で彼女を守ってやる。

黒幕が何を思ってクーデターを企てているかは分からないが……俺様の大事な友人に手を出すというなら、それ相応の代償はキッチリ払ってもらわねぇとなぁ?

 

「それに、貴方は決して1人なんかじゃありません。先生だっていますし、岩櫃調停室長や由良木だっている。もちろん俺様だって。七神代行には頼りになる味方が居るんですから。まぁこんな青臭いガキが1人いきがったところで、何の気休めにもならないかもしれませんが……」

「……いいえ、そんなことはありませんよ。タツミ議長代理。」

 

俺様の言葉に七神代行は柔らかくニコリと微笑んでそう言うと、俺様の腰に回していた手を首の後ろへ持ってくるとそこでしっかりと両手を組んだ。

その影響で、必然的に俺様の顔は七神代行の整った顔とそれこそ文字通り目と鼻の先まで接近する。

 

(ちょっ……!?)

 

彼女の温かい吐息が、俺様の顔をくすぐる。

そのあまりの近さに俺様は思わず反射的に首を引こうとするが、彼女の手がガッチリと首の後ろで組まれている事によりそれは叶わなかった。

 

「……ずるいですよ、タツミ議長代理。そんな事を言われては、女性は誰だって勘違いしてしまいます。」

「えっ……?そ、それって一体どういう……?」

 

熱に当てられたような色っぽい表情を浮かべ、涙で濡れた瞳を潤ませながら囁くようにそう言う七神代行。

言葉の意味は分からないが、あまりの近すぎる距離に俺様は彼女の瞳から視線を外せなくなる。

 

「タツミ議長代理。先程貴方は私に夜遅くまでキヴォトスのために頑張っていると言ってくださいましたが……それは貴方とて同じ事ではありませんか。」

「い、いえ。俺様は万魔殿のみんな、そしてゲヘナのみんなを守るために頑張っているってだけであって……七神代行みたいにキヴォトス中を守るために頑張っているわけじゃないですよ。」

「それでも、です。そもそもゲヘナを守るためとさらりと言っていますがゲヘナはキヴォトス3大マンモス校のうちの一つなのですよ?その学園を守るということがどれだけ大変か……察するに余りあるものがあります。」

 

七神代行は首の後ろへ手を回したままそう言いつつ、俺様にそのまま体を預けてしなだれかかってきた。

彼女の柔らかくて温かい体の感触に、俺様の心臓はうるさいほどにバクバクと音を立てる。

 

「ゲヘナ程の学園の代表ともなれば日々処理しなければならない書類の数は膨大なはずですし他校との外交という名の牽制合戦でストレスを抱えたり、自校の問題児達の対処に奔走することだってあるでしょう。タツミ議長代理はきっと、毎日多忙な日々を送っているはずです。」

「……いえ、俺様なんてまだまだですよ。日々の業務だって万魔殿の先輩方に助けてもらわないと回りませんし彼女達には迷惑をかけっぱなしで……それに他校へ赴いても1年生だからって舐められることもしばしばあります。ただ、それでも議長代理の選挙で俺様に票を入れてくれた人たちのためにも頑張りたい……その一心で、先輩方の助けを借りてここまでやってこられていますからね。」

 

そう、俺様は何も1人で議長代理の業務を行っている訳ではない。

棗先輩達万魔殿のみんな、空崎委員長を初めとした風紀委員会のみんな、それ以外の色々なゲヘナの先輩達に支えてもらいながら俺様はなんとか議長代理と言う立場をこなすことが出来ているんだ。

確かに毎日毎日パンクしそうなほどに忙しいのは事実だけど、決して俺様1人の力ではないのだから。

 

「だとしても、本来であれば3年生が背負うべき責務を1年生であるタツミ議長代理が背負っていると言うのはとても立派なことだと私は思います。少なくとも、私にはそのようなことは出来ないでしょうから。」

「……七神代行、それは俺様を買いかぶりすぎですよ。」

「いいえ、そんなことはありません。それに業務を行うに当たって同じ組織の人間の助けを借りるのは当たり前のことです。私だってアユムやモモカの助けを借りながら業務を行っているので、何もタツミ議長代理が1年生だからと言う理由ではありません。」

「それは……そうかもしれませんけど……」

 

俺様に体をグリグリと押し付けてきながら、徐々に語気を強めつつそう言ってくる七神代行。

 

「そんな日々多忙で寝る間も惜しんで業務を行っている中でも、タツミ議長代理は私がモモトークを送るとすぐに返答を返してくれました。私が愚痴や弱音を吐きたくて通話をすると、貴方は嫌な顔一つせずに何時間でも私の愚痴に付き合って慰めてくれました。次の日の業務もあるはずなのに……貴方は何も言わずに私の話を受け入れて、同じ立場から励ましてくださったんです。」

 

……そりゃ七神代行にはいつも世話になっているからな。

それに俺様は子ウサギ公園のRABBIT小隊のデモを鎮圧した直後にその事を報告した時も、疲れ切っていた様子の彼女に遠慮なく頼って甘えてほしいと伝えた。

であれば、彼女が頼ってきたり愚痴を聞いて欲しいと言ってくるならば俺様だってしっかりと相手をしてあげたかった。ただそれだけの話……のはずなんだけど。

 

「それに、タツミ議長代理は連邦生徒会に顔を出すと私に必ず会いに来てくださいますしこの前は私のために栄養のある料理だって作ってくださいました。マッサージだってしてもらいましたし、お恥ずかしながら疲れてウトウトしているときは貴方は自分の上着を私にかけて仮眠室まで私を抱えて運んでくださいました。そして、対面で愚痴を聞いてもらった事はもう数え切れません。」

 

七神代行は俺様に体重を預けながら静かにそう言うと、その整った顔を再び俺様の顔の目と鼻の先まで持ってくるとゆっくりと口を開いた。

 

「そんな……私が心からの信頼を寄せる男性から真っ直ぐに見つめられて、その上で貴方を守って見せると言われたのですよ?こんなの、勘違いするなという方が無理があるのではありませんか?」

 

甘い香りを漂わせ、真っ赤なトマトのように赤くなった顔で囁くようにそう言う七神代行。

 

「それは……」

「ですので、今回は素直に貴方の好意に甘えさせていただくことにしました。タツミ議長代理、自分の発言の責任はしっかりと取っていただきますからね?♡」

 

そう言うと、七神代行はいらずらっぽい笑みを浮かべながら柔らかく微笑んだ。

 

「……はい、もちろんです。必ず守ってみせますよ。」

 

普段の落ち着いている彼女からは見ないような意外な表情に一瞬ドキッとしつつも、俺様は七神代行に向かって笑顔を浮かべながら力強くそう言い切った。

 

彼女を黒幕の好きになんてさせはしない。

七神代行だってまた、俺様の守りたい人なのだから。

 

「はい、よろしくお願いしますね♡」

 

そして、俺様の言葉を聞いた七神代行は満足そうにその場でうんうんを頭を縦に振って頷く。

……ところで、さっきから彼女が口にしている言葉の中にずっと気になっていることがあるんだよな。

それを尋ねるために、俺様はおずおずと口を開いた。

 

「……あの、つかぬことをお伺いしますが七神代行。」

「はい、なんでしょうか?」

「勘違い……っていうのは……一体どういう事でしょう?」

「……はい?」

 

俺様がその言葉を口にした、その瞬間。

場の空気がピシリと音を立てて凍ったような気がした。

 

「……はぁ〜っ……この人は本当に……!!」

 

俺様の言葉を聞いた七神代行は先程まで浮かべていた熱っぽい表情を引っ込めると同時にどこか呆れたような表情にを浮かべると、眉間にシワを寄せながら大きなため息を吐きつつ口を開いた。

 

「いいですかタツミ議長代理。この際ハッキリと言いますけど、女性は好ましく思っていない男性とこうして密着する事はあり得ないことくらいは分かりますよね?」

「え?あ、はい。それはもちろん分かりますよ。」

 

そりゃそうだろう。

俺様だって、対して親しくもなければ好ましく思っていない女性と密着しようなどという事は考えないしな。

まぁ、親しくてもそんなに気軽にホイホイ密着するのは良くないと思うけど……今回は事情が事情だからな。

泣いている七神代行をあのまま放っておくことなど、俺様には出来なかったわけだし。

 

「であれば、こうして私が貴方に抱きついていると言うことは少なくとも私は貴方に悪感情を持っているわけではない……と言うことはご理解いただけますか?」

「えぇ、それはもちろん。七神代行が俺様の事を嫌っていたらそもそもこうやって二人で会って話なんてしないでしょうし、モモトークだって送ってこないはずです。それに、今回こうやって俺様の話を信じてくれることだって無かったでしょうからね。」

「えっと……そういうわけではないのですが……あの、ここまで言ってもまだ分かりませんか?」

 

いつも冷静沈着な彼女にしては珍しく頬を膨らませながら、不服そうな口調でそういう七神代行。

その明らかに拗ねたような表情を見て俺様の脳裏にはもしかしたら……という考えがよぎると同時に、俺様の脳内にはワカモの姿が浮かんで来る。

 

……そりゃ俺様だって、ここまでされたら流石に七神代行が俺様に対してただの友人以上として何らかの感情を抱いてくれていると言うことくらいは分かる。

けど……ワカモに対する思いに決着を付けられていない今それを受け入れることは俺様には出来ない。

そんな事をすれば、ワカモに対しても七神代行に対しても失礼に当たることは間違いないだろう。

 

「……はい。お恥ずかしながら。」

 

そう思った俺様は、七神代行の目を真っ直ぐに見据えながら静かにそう言った。

……まぁ既にこうして七神代行を慰めるためとは言え密着しているのだから、何を言っているんだと言う話だが。

 

(……すまんワカモ、俺様は最低な男だ。)

 

そもそも、仮に七神代行が俺様にそう言う感情を抱いていてくれていたとして……こうやって誤魔化してしまうのは彼女に対して失礼にあたるのではないか?

けど、俺様にはワカモとのこともあるし……何よりも俺様はワカモとは体を重ねているんだ。

であればワカモ以外の女性に目移りするのは彼女に対してあまりにも失礼すぎるし、しかしだからといって七神代行の気持ちを蔑ろにしてしまうのはそれはそれで……

……仮にもし七神代行が俺様に対してそういう感情を抱いていた場合……俺様は……一体どうするべきなんだろうか。

 

(……すみません、七神代行。)

「はぁ……前々から鈍感な方だとは思っていましたが、まさかここまでとは思いませんでした。」

 

その言葉を聞いた七神代行は瞳に溜まった涙を指で拭いながら心底呆れたようにそう言うと、むすっとした表情でそのままその整った顔を俺様の胸元へと埋める。

そして首に回していた手を今度は俺様の背中へと回すとそのまま豊満な体を更にこれでもかと押し付けてくる。

 

「ちょ、七神代行!?まずいですってば……!?」

「うるさいですね、じっとしていてください。このクソボケ。鈍感。にぶちん。女たらし。」

「いやひどい言い草ですね!?俺様はクソボケでも女たらしでもありませんよ!?」

「へぇ?どこがですか?私の目から見ても貴方は女たらしにしか見えませんよ?一体、その無自覚な言動で何人の女を堕としてきたんでしょうね?」

「ひ、人聞きの悪いこと言わないで下さい!俺様はそんなことしてませんって!」

「本当ですか?信用できませんね。」

 

目をすっと細め、じとーっとした表情で俺様の事を見つめながらそんな事を言ってくる七神代行。

と言うかさっきからずっと思っていたことだが、流石にそろそろこの体制でいるのはマズいと思うんだが……!?

 

故意なのか不本意なのかは分からないけどさっきから七神代行は俺様の体に手を回して、そのふよふよとした2つの双丘を俺様にグイグイと押し付けてきている。

更にその下では彼女の黒タイツに包まれた太ももが俺様の足にぴったりとくっついており、俺様と七神代行は今隙間がないほどにぴったりと密着している状態だ。

さっきまでは七神代行に心配をかけまいとずっと我慢していたけど、彼女からはずーっと鼻をくすぐる甘い香りが漂ってきているしそろそろ限界が近づいている。

 

「まったく……貴方という人は本当に……罰としてしばらくこのままでいて下さい。いいですね?」

 

そんな俺様の思いを知ってか知らずか、七神代行は俺様を抱きしめている手に力を込めると自分の体を更に押し付けてきながら俺様の胸に再び顔を埋める。

 

「ちょ、ちょっと七神代行……!流石にそろそろ……!」

「嫌です。離しません。私があんなに恥ずかしい思いをして攻めた水着をモモトークで送ったのに、何も分かってくれないタツミ議長代理なんてもう知りません。今度のプライベートビーチ……覚悟しておいて下さいね?」

「か、覚悟って何のですか……!?」

「知りません。ご自分で考えて下さい。言っても分からないタツミ議長代理には行動と言葉で示すことにしました、遠慮なんてしてやりませんからね。」

 

七神代行はグリグリと俺様の胸に頭を押し付けてきながら、あからさまにツンツンとした声色でそういった。

いや、覚悟って本当に何の覚悟なんだよ……!?

 

「すんすん……あ〜……疲れた体にタツミ議長代理の匂いすっごいキきますね……癖になりそうです……♡」

「あ、あの七神代行……?」

 

「ですが、タツミ議長代理の匂いに混ざって他の女の匂いもしますね。まったく、やっぱりどこかで女を引っ掛けているじゃないですかこの人は……もうこうなったら多少強引ではありますが押し倒して分からせるしかないかもしれませんね……」

「あの、もしもし?七神代行?もしもーし?」

 

「それに私が抱きしめようとした時のあの反射的に体を離そうとした行動……そして首筋に貼られた絆創膏……私から腰を引いて逃げようとしたのはタツミ議長代理の貞操概念がしっかりしているからだと思っていましたが……もしや、既に他の女に手を出されましたかね?だとすると私もうかうかしては……」

「ちょっと!俺様の話を聞いてくださいってば!?」

 

こうして、俺様はその後七神代行が満足するまで彼女に力強く抱きしめられるのだった。

その間、俺様は七神代行の胸や太ももの柔らかさや彼女から漂ってくる甘い香りに理性がガリガリと削られまくったのは言うまでもない。

 

……これ、ワカモにバレたら絶対殺されるよなぁ。




すみません、エ駄死版ですが前回のあとがきでワカモじゃなくてもう一人の方を投稿すると言っていたのですが
やはり最初にタツミが体を重ねたのはワカモなので、ワカモが一番でないと筋が通らないと今回の話を書いている内に思いました
ですので前回あんな事を言っておいて急に変更してしまい申し訳ないのですが、エ駄死版はワカモとのお話を書き終えるまでお待ち頂いてもよろしいでしょうか

時期的には来年の頭くらいには完成させられるペースで書いていきたいと思いますので、前回あんなことを言って余計な期待ばかりさせて申し訳ありませんがもう少し気長にお待ち頂けると幸いです!

読者の皆様に関しましては大変お待たせして申し訳ありませんが、その分気合いを入れてそりゃもうドスケベなものに仕上げてきますのでどうぞご了承していただけますと幸いです
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