転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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最近また冷え込みが激しいですね……
皆さんも体調にはお気をつけください


春日ツバキと丹花タツミ

あれから百夜道へ行く道中で見かけた立ったまま寝ている女性をひとまず寝かせられる場所へ移動させるため、彼女を抱えながら近場にあった公園を目指した俺様。

道中ぐっすりと俺様の腕の中で眠る彼女に抱き枕にされて彼女の甘い香りや柔らかくて温かい体の感触をこれでもかと叩きつけられながらも、歯を食いしばりながら理性を総動員してなんとか耐えきった俺様は近くにあった目的地の公園へとやって来ていた。

 

「し、死ぬかと思った……!」

 

ぜぇぜぇと息を切らしつつ、俺様は腰掛けたベンチに体を預けて脱力しながら思わず空を見上げる。

透き通る青い空に白い雲が浮かんでいるキヴォトスの空は、少しだけ俺様の心に平穏をもたらしてくれた。

 

「んー……むにゃむにゃ……」

 

そんな俺様の隣ではここまでお姫様抱っこで運んできた黒髪の女性がベンチで横になっており、風邪を引かないようにと毛布代わりにかけた万魔殿のジャケットを掴みながら幸せそうにスヤスヤと寝息を立てている。

 

「はぁ……心臓に悪かったぜまったく……!」

 

そんな彼女を見て俺様は安堵しつつも、天を仰ぎながら盛大なため息を吐き出した。

もはや言うまでもないけどこの女性のスタイルはそれはもう破壊力抜群であり、更には思春期の男子高校生を絶対に殺すと言わんばかりの服を身に着けている。

そんな女性から無防備に抱きつかれて体をグリグリと押し付けられるものだから、ここに来るまでの道中で俺様は生きた心地が全くしなかった。

なんせ一歩間違えば俺様の人生はそこで終了しかねないのだから、これで心労が募らない方がおかしいだろう。

 

彼女から漂ってくる甘い香り。

ほんのり赤くなった顔に顔に、すやすやとした寝息。

そして代謝がいいのかぽかぽかと暖かく、天然の湯たんぽと呼んでいいほど暖かな彼女の体温と柔らかい体。

どれをとっても思春期の男子高校生にはキツいものばかりだったし我ながらよく耐えきったと褒めてやりたい。

 

更に公園に到着してベンチに寝かせようとしても何故か俺様にしがみついて離れなかったし、四苦八苦しながらようやくベンチに寝かせたってのもあるからな……

何故あんなに俺様にしがみついて離れなかったのかは分からないけど……恐らく普段抱き枕を抱えて寝ているとかそんな感じなのだろう。多分。

 

まぁそれはさておき、とりあえずこれで往来の場でこの人が立ったまま寝るという自体は避ける事が出来た。

あとは風邪を引かないように暖かくしてやって、この人が起きるまでここで待機しつつ目が覚め次第事情を聞くと言う流れで問題ないだろう。

 

(はぁ〜……どっと疲れたな……)

 

何はともあれひとまず何とかなった。

俺様はその事に安堵しつつ、軽くため息を吐き出す。

やったことだけを考えれば道のド真ん中で寝ていたこの人をここまで運んできただけだから大したことはしていないはずなんだけど、道中色々ありすぎたせいで今日1日分の体力を使い切ったような気さえ感じる。

 

「んー……んんん……ふぁ〜……」

 

そんな事を考えながら空を見上げつつボンヤリとベンチで休んでいると、俺様の隣に寝かせていた黒髪の女性から眠たげな声が聞こえてきた。

その声を聞いた俺様は反射的にそちらへ視線をやると、黒髪はその場でもぞもぞと動きながらゆっくりと体を起こすと両手を上に突き上げて大きなあくびをする。

彼女が伸びをするたびにその豊かに実った2つの双丘が激しい主張をしてくるが、俺様はなるべく視界に入れないようにしつつ目を覚ました彼女に声をかける。

 

「おはようございます。目が覚めましたか?」

「ふぁ……んぅ、誰……?それにここは公園?私、確かパトロール中に寝ちゃったんだけどなんでここに……」

 

眠そうな目をこすりつつ、俺様と周囲の景色を交互に見ながら困惑したようにそう呟く黒髪の女性。

どうやらまだ寝ぼけているらしく、彼女はゆらゆらと体を揺らしながらあくびを頻繁に繰り返している。

 

「えっと、それで貴方は……?」

「あ……自己紹介が遅れてすみません。俺様はゲヘナ学園1年生、万魔殿議長代理の丹花タツミと言います。」

「んぇ……?ゲヘナの議長代理?ふぁぁ〜……なんでそんな人が百鬼夜行に居るの……?」

 

彼女は首をかしげつつ、眠たげな表情を浮かべながら俺様に対してそう問いかけてくる。

どうやら事態を飲み込めていないようだが、まぁ無理はないわな……ひとまず彼女にこれまでの経緯を説明するため、俺様は口を開いた。

 

「えーっと、実は今度ゲヘナと百鬼夜行で交流会が行われる予定なんですけど俺様はその打ち合わせで百鬼夜行に来てさっきまで陰陽部と話をしていまして。」

「んぅ……陰陽部とお話してたの〜?」

「はい。それで話が終わって丁度お昼時だし腹ごしらえでもして帰るかと思っていたところに道の真ん中で寝ている貴方を見つけたものですから、風邪を引いてしまうとまずいと思いここまで運ばせてもらいました。余計なお世話でしたらすみません。」

「あ〜、なんだか妙に暖かくて寝心地が良いな〜と思ってたらそのせいだったんだね。ううん、迷惑だなんて事は無いよ。わざわざありがと〜。私は百鬼夜行連合学院2年生、修行部部長の春日ツバキだよ。よろしくね〜。」

 

目の前の黒髪の女性……もとい春日先輩はそう言うと、俺様へ向けて右手を差し出してきた。

 

「それなら良かったです。こちらこそよろしくお願いしますね、春日先輩。」

 

そんな差し出された彼女の右手に対し、俺様も自分の右手を差し出すと俺様達はガッチリと握手を交わす。

 

「その、すみませんでした春日先輩。寝ている貴方を運ぶためとは言え初対面の男が気安く先輩に触れるような真似をしてしまって……」

「ううん、大丈夫。タツミは私が風邪を引いちゃうと困るって思ったからここまで連れてきてくれたんでしょ?だったらむしろお礼を言うべきだし、そんなことくらいで私は怒ったりしないから大丈夫だよ〜。」

 

春日先輩はにへーっと言う柔らかい笑みを浮かべると、首をコテンと少しかしげながらそう言った。

 

「それに私は寝ていても悪意を持って近寄ってくる相手の気配くらいなら分かるからもしそうならその場で反撃してたけど、タツミからはそういう悪意は一切感じなかったし……むしろ温かいって思ったくらいだからね〜。」

「そ、そうですか?なら良かったですが……」

 

春日先輩はサラリとそう言うが……

寝ながらでも悪意を持った相手の気配を察知出来るって一体どういうことなのだろうか?

見たところ目の前の春日先輩はポワポワした雰囲気……と言うかかなりマイペースなのんびり屋に見えるし、あそこで寝ていたときだってかなり無防備にぐっすりと眠っていたように見えたんだけどなぁ。

……まぁ、とは言え立ったまま眠ることが出来るんだから只者じゃないことは確かなんだろうけど。

 

「そう言えば春日先輩。さっきパトロールの途中で寝てしまったと言ってましたけどそれは一体……?」

「ふぁ……えっと実は私達修行部は百鬼夜行の安全を守るために定期的にパトロールをしているんだけど……私ってお昼寝をするのが趣味だから、パトロールの途中でも眠くなっちゃうとたまにこうやって寝ちゃうんだよね。」

 

……いや、いくら昼寝をするのが好きだとは言えパトロールしながら寝るなんて芸当は普通できないだろ。

 

「それに私にとってはこれも修行だし……修行部の活動の一環でもあるからね。ふぁぁ〜……」

 

そう言って眠そうにあくびをする春日先輩。

寝ることが修行ってのはよく分からないけど……まぁ、見た目通り春日先輩は寝ることが好きなのは分かった。

 

と言うか、さっきから春日先輩の言っている修行部ってのは一体なんなんだろうか。

響き的には何かの修業をする部活動と言った感じだが……

で、さっき自分で言ったように春日先輩はそこの部長らしいけど……定期的にパトロールをしているってことは自警団的な何かなのかもしれない。

だとすると百鬼夜行の治安維持組織は何をしてるんだって話になるけど、まぁトリニティでも正義実現委員会以外にも自警団があるし……そんなものなのだろうか?

 

「えっと……春日先輩、修行部と言うのは?」

「あ、ごめんタツミには説明してなかったね。修行部って言うのは私を含めてそれぞれが別の目標を持って集まって出来た部活動のことで、各自その目標に向かって修行する部活動のことなんだ〜。」

「なるほど……」

 

……なんか、結構そのまんまの部活動なんだな。

しかし修行部か、ゲヘナではあまりそういう類の部活動は見かけないからなんだか新鮮だな。

これも百鬼夜行特有の文化なんだろうか?

 

「ちなみに、春日先輩は普段どんな修行をされているんですか?差し支えなければ教えて頂いても?」

「うん、いいよ〜。えっと、まず私が修行部で掲げている目標は究極に気持ちよくて快適な睡眠なんだ。」

「究極に気持ちよくて快適な睡眠……ですか?」

 

なんと言うか、さっき昼寝が趣味と言っていた春日先輩らしい目標ではあると思うけど……睡眠の修行って言われてもなんだかピンとこないな。

一般的によく眠るためには睡眠前にリラックスすることが重要と言われているけど、そう言ったものの研究とかをしているってことなんだろうか?

であれば、修行の一環としては納得がいくものだけど。

 

「そうそう。例えばいつでもどこでもぐっすりと眠れるように日頃から立ったまま眠ったり、寝たままご飯を食べたり、寝たまま戦ってみたり、寝たままパトロールをしてみたり、他にも寝たまま色んな事をしてるよ〜。」

 

前言撤回。

どうやら春日先輩の言う究極に気持ちいい睡眠の修行とやらは俺様の予想の斜め上を行くものだったらしい。

と言うかいくら修行を積んだからといって立ったまま眠れるようにはなれないと思うし、あまつさえ眠ったまま飯を食ったり戦ったりってそれはもう修行で身につけたと言うより本人の才能な気がするんだけど。

少なくとも俺様はいくら修行したってそんな芸当は到底できそうにないのは確かだろう。

 

……まぁそれはともかく。

なるほど、だから道行く人々はみんな春日先輩のことをスルーしてたんだな……何故なら、春日先輩が修行部の活動の一環で道で寝てるのはいつものことだから。

理由はともかく、ひとまず合点はいった。

 

あれ、でもそうするともしかして俺様って春日先輩の修行の邪魔をしちまったってことになるのか?

だとしたら、彼女には申し訳ないことをしてしまったと謝罪するしか無いが……

 

「だからそんな感じで、私は日々修行で気持ちよくぐっすり眠れる方法についての研究と修行をしてるんだ。」

「なるほど……でも、ただ寝るだけなんですよね?」

「……タツミ。寝ることを侮ったらダメだよ?きちんと寝るのは想像以上に難しいことなんだからね?」

 

俺様が考え込みながら相槌を打つと、春日先輩はそれまでの眠たげな表情が嘘のように真剣な表情を浮かべると俺様に向けて身を乗り出してそう言ってくる。

 

「人間は1日6時間以上の睡眠を取らないと脳がしっかりと休めずに仕事の効率や頭の回転率が鈍っちゃう生き物だって言われてるからね。タツミだって夜眠れなくて次の日のお昼に眠かった経験は一回くらいあるでしょ?」

「う……言われてみれば心当たりはありますね……」

 

確かに、俺様も万魔殿の仕事が忙しくて残業や徹夜が続くと生活リズムが崩れるせいかあまり眠れなくなることもないわけではないからな……

 

「でしょ?それに百鬼夜行だけじゃなくて、キヴォトスの生徒達は不眠症に悩まされてよく眠るコツや熟睡できる方法を求めてネットに質問を投げていることもあるくらいだし人間の3大欲求のうちの1つは睡眠欲とも言われてるからね。眠ることは健康に過ごすのに必要で、人間にとって大切なことでもあるんだから。」

 

俺様に視線をやりつつ真剣な表情でそう言う春日先輩。

春日先輩の言葉からは睡眠がとても大切なものだと言う事と同時に、彼女が普段からより良い睡眠を取る方法を探るために日々努力をしているんだなと言う情熱が伝わってくるものでもあった。

その姿を見て、軽はずみな事を言ってしまった自分自身の言動に腹が立つと同時に激しい罪悪感を感じる。

 

「すみません春日先輩。今の言葉は睡眠を甘く見ていただけでなくて、貴方の普段の努力をバカにする言葉でもありました。考えなしに口にして申し訳ないです。」

 

俺様はその場で立ち上がって即座に頭を下げると、春日先輩に向かって謝罪をする。

 

「えっ!?い、いや謝らなくても大丈夫だよ?別にそんなこと思ってないし、私はタツミを責めようだなんてつもりはないから……頭を上げて?」

 

そんな俺様に対して、春日先輩はわたわたと慌てたようにそう言うと頭を上げるよう促してくれた。

その言葉に甘えて頭を上げると、春日先輩の困ったような笑顔が目に入る。

 

「まさか謝られるとは思ってなかったら少しびっくりしちゃったけど本当に私はなんとも思ってないから、気にしないでね?ほら、座って座って。」

「いえ、しかし俺様は修行中の春日先輩をてっきり道で寝ているだけの人だと思ってここまで運んじまって修行の邪魔もしてしまいましたし……」

「……そんな事気にしてたの?大丈夫だよ、タツミは私を心配してここまで運んでくれただけで修行の邪魔をしようだなんて考えてないでしょ?」

「そ、それはそうですが……」

「だったら気にしなくても良いよ。さっきも言ったけどむしろお礼を言うのは私の方だし、初めて私を見る人だったら誤解されちゃうのも無理はないからね〜。」

 

そう言うと、春日先輩は自身の横を手の平でぽんぽんと叩いて俺様に座れと促してくる。

そんな彼女を見て俺様は再び頭を下げつつ、彼女の隣へと腰を下ろした。

 

「……すみません。ありがとうございます、春日先輩。」

「ふふっ。何度も言うけど大丈夫だよ。タツミってものすごく律儀と言うか、生真面目なんだね?」

「あはは……よく言われます。こんな偉そうな口調と一人称には似合わないーって。」

「確かにタツミの一人称はちょっと珍しいけど、別に年頃の男の子ならそういうものなんじゃないかなぁ?」

 

そう言うと、生暖かい目でこちらを見てくる春日先輩。

……なんか変な勘違いをされている気がするんだけど、まぁそれは今は置いておくとしよう。

 

(それにしても修行部……か。)

 

先程までのふにゃっとした表情に戻り、口元に手を当てながら大きなあくびをする春日先輩を見ながら俺様は頭の中でそんな言葉を呟いた。

それぞれの目標に向かって修行するって事は部員一人一人の活動内容は違うと見ていいんだろうけど、そうなると端から見れば結構ふわふわしている集団に見られることもそれなりにありそうだが……どうなんだろうな。

 

「えっと……それで話が戻って申し訳ないんですが、春日先輩はその修行部の部長なんでしたっけ?」

「うんそうだよ。でも部長って言ってもほとんど形だけだから、そんなに偉いものじゃないけどね〜。修行部だって部員は私を含めて三人しかいない小さな部活だし。ただ、部員たちの模範になるためにもっと頑張って修行をしないと行けないなぁとは思ってるかな。」

 

そう言うと、春日先輩はその大きな胸を張りながらえっへんと言う擬音が聞こえてきそうないい表情をする。

 

「まぁ、こんなの当たり前のことなんだけどね〜。」

「そんなことありません、立派な志だと思いますよ。」

 

にへへと笑いながらそう言う春日先輩に対して、俺様はきっぱりとした口調でそう言い切る。

俺様は今は上に立つ立場の人間だから分かるけど、いくら部員の人数が少なかろうが一つの部活の部長……つまりトップの座に就くというのは簡単なことではない。

当然部長になるのなら所属している部員達の面倒を見る事もやらなきゃならないし、予算委員会などで生徒会へ提出する書類の作成業務も必要になって来る。

 

そしてこれが何よりも大切かつ重要なことだけど、上に立つとその組織の【責任】を背負う必要が出てくる。

これは本人が背負いたい背負いたくないで決められるものではなく、社会ではトップに立つ=組織の責任を背負うという至極当たり前の構図があるからな。

 

それに部員たちの模範にならなければいけないという発言は、彼女が部員たちに手本を見せなければならない立場であることを自覚した発言にほかならない。

つまり、彼女は眠そうな見た目とは裏腹にしっかりと上に立つと言うことを理解している人間だという事だ。

まぁたかが発言一つで彼女を分かった気になるつもりはないけど……それでも、春日先輩の言葉からは部を大切にしている気持ちみたいなものを感じたからな。

その証拠に、修行部のことや睡眠のことを語っている時の春日先輩の目はキラキラと輝いている。

きっと、春日先輩は修行部では部員たちから慕われて尊敬されている立派な部長を務めているのだろう。

 

見た目は眠たげでぽわぽわしている彼女だけど、案外根っこの部分はしっかりしているのかもしれない。

少なくとも、さっきの俺様の軽はずみな発言や修行の邪魔をしたことを気にするなと笑って許してくれる辺り器の広い人なのは間違いないだろう。

 

「そうかなぁ?私はそんな大したことはしてないよ。いつもよくその辺で寝て迷惑をかけたり、パトロールだって私一人でやってるわけじゃないし、陰陽部に提出する書類だってミモリに作ってもらってばかりだし……」

「いえ、いくら部長とは言え1人で部の運営は出来ないんですから部員に頼るのは当たり前ですよ。俺様だって、お恥ずかしながら1人では何も出来ないので万魔殿の先輩方にはお世話になっていますからね。」

 

あはは……と苦笑しつつ、俺様は春日先輩の目を真っ直ぐに見据えながらそう言い切る。

 

「け、けど私なんて寝てるだけでミモリとカエデにいつも迷惑をかけちゃってるし……こんな部長じゃいつか愛想をつかされるんじゃないかって心配で……」

「大丈夫ですよ、春日先輩。」

 

先程までとは違って少し不安げな表情を浮かべる春日先輩に対して、俺様は笑顔を浮かべてそう言った。

 

「少なくとも、さっきの言葉だけで春日先輩が決して形だけの部長ではないと言うことは俺様には充分伝わって来ました。春日先輩は部長としての自覚と責任をしっかり持って部員たちの模範になろうと頑張っているじゃないですか。それに春日先輩の言葉からはなんと言うかこう、優しさと言うか……部や部員のことを大切にしている気持ちみたいな優しいものを感じましたからね。」

 

俺様は春日先輩を安心させるように柔らかな笑顔を意識しつつ、親指を立てながら彼女へ言葉を発する。

 

「……うん。修行部は私の大切な居場所だし、ミモリもカエデもみんな大切な部員であって友達だからね。タツミの言う通り、私は修行部のみんなの事が大好きだよ。」

 

そう言うと、春日先輩は眠たさの混じっていない満面の笑みを浮かべると心から楽しそうにそう言った。

……この笑顔を見れば、彼女がどれほど修行部を愛しているのかなんてのは最早言うまでもないだろう。

 

「なら大丈夫ですよ。春日先輩、確かに一つの部の部長を務めると言うことは大変なことかもしれません。ですが慕ってない人に部員は付いていかない。それだけは確かだと俺様は思うんです。」

 

世の中には色々なトップが居る。

空崎委員長のように自らが現場へ出張って背中で組織を引っ張っていく人間もいれば、桐藤先輩のように全体のバランスを見ながら上手く纏め上げる人間も居るし、そして羽沼議長のようなバカで変なところで詰めが甘いけどそれでもどこか憎めないような人間だって居る。

 

それ以外にも組織や部活のトップってのは十人十色で誰一人として同じような人間はいないけど……全員に共通しているのは、自分が所属している組織や部下たちを心の底から愛しているということだろう。

それは羽沼議長だって、空崎委員長だって、桐藤先輩だって……それ以外の組織のトップだって変わらない。

そして当然俺様だって万魔殿のことを愛しているしこんな未熟な俺様について来てくれている先輩方のことは心の底から尊敬しているし、大好きな人達だ。

 

当然の話だけど、上の立場になるのであれば部下からの人望のある人物でないと下は全く付いてこない。

じゃあどんな人になら付いていきたいかと言うと……それさっきも言ったとおりだけど、自分の所属している組織や部下が好きな人間に他ならないだろう。

 

考えてみて欲しい。

自分の所属している組織を心から愛して普段から組織のためや自分達のために動いてくれる人間と、組織や自分達のことなどどうでもいいと言わんばかりの適当な態度を取ってくる人間。どっちに付いていきたいかと言われれば、当然前者に決まっているだろう?

なら、こんなにもいい笑顔で心から修行部のことを愛している春日先輩に部員たちが付いていきたいと思わないはずはないだろうからな。

 

それに……羽沼議長も言っていたしな。

多少仕事ができなくても、組織や部下のことを愛してさえいれば自ずと人は付いてきてくれるものだ……と。

 

「なーんて、今日会ったばかりの俺様が偉そうに言うことでもないとは思いますが……貴方のその修行部への愛は部員の皆さんにもちゃんと伝わっていると思いますよ。それは貴方自身が先程言っていた通り、部の仕事を部員が手伝ってくれているのが何よりの証拠です。」

 

そう、何度も言うけど上に立つ人間に人望がないのであれば下の人間はついていかないし従わないものだ。

部活で例えるなら、部長が仕事を抱えて困っていたとしても人望がないなら部員は決して部長の仕事を手伝ったりしないしやりたいことを尊重したりもしない。

 

けど、修行部はそうじゃない。

ちゃんと部員が春日先輩の事を助けてあげていることが彼女の言葉からは読み取れるし、それだけでも彼女が部員から慕われているというのが伝わってくる。

そりゃそうだろう、こんな嬉しそうな顔で部員のことを大好きだと言い切るような包容力のある部長に付いて行きたくないやつなんているわけがないんだから。

 

「だから胸を張ってください、春日先輩。貴方は立派な修行部の部長です。この俺様が保証しましょう。」

「……うん。そう言ってもらえるとなんだか自信が沸いてきたかもしれない。ありがとう、タツミ。」

 

俺様は春日先輩の目を真っ直ぐに見据えながらそう言葉をぶつけると、彼女は今日一番のとびっきりの笑みを見せながらそう言った。

 

「いえ、このくらいお安い御用ですよ。いやーそれにしてもこんな部員思いの部長を持てて、修行部に所属している人たちは幸せものですね。」

「……もー、褒めても何もでないよ〜?」

 

春日先輩は俺様の言葉を聞いて照れくさそうに頭をポリポリとかくと、嬉しそうにそう言った。

のんびりしているように見えて部員の模範になろうと頑張っていたり自分の掲げている目標に対して真剣だったり……なんとなくだけど、春日先輩が修行部の部長を任されているのも分かる気がするな。

 

「……ふふっ。」

「ん?どうかしましたか春日先輩?」

「ううん、何でも無いよ。ただ、なんでさっきタツミに抱えられている時に温かさを感じてよく眠れたのか……その理由が少し分かった気がするだけ〜。」

「……???」

 

再び眠たげな瞳を携えて意味深にそういう春日先輩に対して、俺様は言葉の意味がわからず首を傾げる。

 

「春日先輩、それってどういう……?」

「言葉通りの意味だよ?私はさっき説明した通り究極に気持ちいい睡眠を目標にして日々修行してるんだけど……さっきタツミに抱えられている間やタツミを抱き枕にして眠っている間は、今まででやってきたどんな修行よりも一番気持ちよく眠れたんだよね〜。」

 

俺様が少し狼狽えながら質問をすると、春日先輩がサラリとそんな言葉を口にする。

 

「えっ……そ、そうなんですか?」

「うん。なんでだろう、私達初めて会ったはずなのに不思議だね?まぁさっきのやり取りで理由はなんとなく分かった気はするけど、究極に気持ちいい睡眠を求めるためにもこの機会を逃すのは勿体ないし……あ、そうだ!」

 

春日先輩はそう言ってその場でうんうんと唸りながら何かを考え込むような仕草を見せると、やがて何かを思いついたような表情で俺様へと視線を向けてきた。

……なんだろう、なんか猛烈に嫌な予感がするんだけど。

 

「ねぇタツミ。もし良かったら、今からもう一度抱き枕になってくれないかな〜?」

「えっ……はぁっ!?」

 

突然春日先輩の口から放たれた爆弾発言に、俺様は思わず素っ頓狂な大声をあげる。

 

「い……いや無理!無理ですって!」

「え〜?でもあんなに気持ちよく眠れたの初めてだったから、もう一度試してみたいんだけど……ダメ?」

「ダメです!そもそも俺様と春日先輩は初対面なんですよ!?抱き枕にするってことは抱き合うってことじゃないですか!彼氏と彼女がするならともかく、会って間もない男女でやることじゃないでしょ!?」

 

それにそんな事をされたらヤバいんだよ!

もちろん俺様が!色んな意味でな!

 

俺様はそんな事を考えつつ改めて春日先輩に目をやる。

目のやり場に困るような服装に、もはや制服ではなく旨を隠すための布切れと呼んでも良いような巫女服を暴力的なまでに押し上げている双丘。

スカートから伸びる魅力的な太ももに安産型の尻。

少し幼いけど、しっかり整った彼女の可愛らしい顔。

どれをとっても思春期の男には毒でしか無い代物だ。

寝る子は育つとはよく言ったもんだけど、何もここまで育つ必要は無いんじゃないのかと言いたくなるような装いに俺様の背中に冷たい汗が流れる。

 

こんな魅力的な女性と抱き合う?無茶を言うな。

そんなことをされたら俺様が社会的に死んじまうだろ。

それこそ、今度こそ本当にワカモに殺されかねない。

 

「うーん、別に邪な思いが無いなら大丈夫じゃない?」

「いや大丈夫なわけないでしょ!?」

 

首を傾げつつそう言う春日先輩に対して、俺様は冷や汗を流しながら両手を広げて大きな声で抗議をする。

 

(くっ、冗談じゃねぇぞ……!)

 

と言うか、いくらなんでもこれは春日先輩が男に対して無防備すぎるんじゃないのか?

同性同士ならいざ知らず、思春期の男にとって春日先輩のようなスタイルの良い女性は刺激が強すぎるんだよ。

 

しかも春日先輩のスタイルは出るところが出ていて引っ込むところは引っ込んでいるワカモや七神代行のようなスタイルではなく、全体的に程よく肉付きの良い体だ。

抱えて運んでいる時でさえ意識しないように必死だったのに意思を持って抱き枕にされるなんて無理だよ畜生!

 

そりゃキヴォトスには男子なんて殆どいないから慣れていないだけかも知れないけど、にしたって初対面の同性同士で抱き合うのだって結構ハードル高いだろ……!

ぽわぽわしていて眠たげな見た目どおり警戒心が薄いのかも知れないけど、流石にもうちょっと危機感というか羞恥心や恥じらいを持ってもらいたいんだが!?

 

……それともあれか?

もしかして俺様、男として全く見られていないとかか?

春日先輩は2年生で俺様は1年生だから、年下のガキに抱きつくことになんて一切抵抗なんて無いってことか?

まぁそれなら分からなくもないけど、それはそれで結構複雑というかなんと言うか……

 

「それにタツミからは私をどうこうしようなんて雰囲気は全然感じないし、何よりさっきは私のことをためらいなく抱えてくれてたのに何で渋るの〜……?」

「いや、それは春日先輩があの場で寝てたら風邪を引いちまうと思ったからでして……!俺様としてもあの場ではああするしか無かったと言うかですね……!」

「そんな事言わないでよ〜。これも私の修行の一環だと思って……ダメ?」

「うっ……だ、ダメです!ダメダメ!絶対ダメです!」

 

少し上目遣いでこちらを見ながらそう言ってくる春日先輩に俺様は一瞬言葉をつまらせるが、すぐに首をブンブンと横に振りながら大声を上げる。

 

もしかしたら春日先輩はマジで修行部の修行の一環として俺様を抱き枕にしようとしているのかもしれないけどこちらとしてはたまったもんじゃないからな。

そのより良い睡眠を追求する貪欲さや熱心さは見習うべきところがあるとは思うけど、流石に勘弁して欲しい。

 

「えーケチー……」

「ケチじゃありません!春日先輩、貴方はもっと恥じらいを持ってください!そりゃ春日先輩みたいな美人に抱きつかれて嬉しくない男はいませんけど、俺様だって人並みにそういう欲はあるんですからね!?」

「……なんか、タツミってお母さんみたいだね。」

「そこはせめてお父さんって言ってくださいよ!?」

 

と言うか、このやり取り前に先生ともやった気がするんだけど……?

 

「大丈夫だよ。見たところタツミにはヘイローがないみたいだから、もしタツミが邪な事を考えてても私がちょっと力を入れれば簡単に引き剥がせるし。」

「だからそういう問題じゃないんですってば!」

「それにタツミは私をどうこうしようなんて考えは持ってないでしょ?」

「いや、それはそうですけど……!」

 

頼む、もう勘弁してくれ!ただでさえ貴方をここまで運ぶまでの間に俺様の理性はガタガタになったんだぞ!?

それなのに今度は抱き枕になんてされてみろ、心臓がいくつあっても足りやしねぇっつーの!

 

「あ、ならタツミも良い機会だし修行部の活動をちょっとだけ体験してみるって言うのはどうかな?私も抱き心地には自信があるし、タツミも私を抱いて寝たらきっと気持ちよく眠れると思うよ〜?」

「いや言い方ァ゙!誤解を招くような言い方すんな!!」

 

そりゃ春日先輩を抱き枕にして寝ることが出来たらふっかふかでさぞ気持ちよく眠れるだろうけど、そんなの絵面的にも道徳にも許されることじゃねぇだろマジで!

 

ってかそんな事出来るわけねぇだろ!

ワカモや七神代行にどんな顔して会えば良いんだよ!

と言うかなんでこの人こんなグイグイ来んの!?いくら睡眠の修行がしたいとは言え、初対面の男に抱き枕になってくれなんてのは流石に警戒心がなさすぎるだろ……!

 

「むぅ……!別に私だって誰だって良いって訳じゃないもん……!私はタツミならいいかな〜って思ったから頼んでるのに〜……」

「いや、何で春日先輩はそこまで俺様を評価してくれてるんですか!?俺様達今日あったばかりですよね!?さっぱり分からないんですけど!?」

「もしかしてタツミってクソボケなのかなぁ……?」

「えっ……なにか言いました?」

「……ううん、なんでもないよ〜。ふぁ〜。」

 

春日先輩は大声で捲し立てる俺様に向かって何かを小声で言っていたような気がしたが、やがて大きなあくびをすると眠そうな目をこすりながらそう言った。

 

「でもさっきも言ったけど、私も修行部の部長である以上は部員たちのお手本にならなきゃいけないから修行に対して妥協はしたくないんだよね〜。だからなんでタツミを抱き枕にするとものすごく気持ちよく眠れるかって言うのは、私にとっては今一番知りたいことだと言っても過言じゃないんだよ?」

「いえ……その、俺様は別に春日先輩の修行とか睡眠に対する姿勢を否定したいわけじゃないんですよ?けど、いくら修行のためとは言っても初対面の男に抱きつくのは良くないって言ってるだけでして……!」

「うん、それは分かってるけど……うーん、じゃあこうしよう。タツミ、私とモモトークを交換してほしいな。」

 

何故か目を細めながらそう言ってくる春日先輩に対して俺様が狼狽えていると、彼女は何かを思いついたような表情を浮かべながらそんな言葉を発する。

 

「えっ……モモトークをですか?」

「うん。タツミの言い分だと初対面の男の子を抱き枕にするのが良くないんでしょ?なら、仲良くなってからだったら抱き枕にさせてくれるってことでいいよね?」

「いや別に仲良くなってからでも抱き枕にするのはダメですからね!?そりゃ俺様だって春日先輩とここで会ったのも何かの縁ですしモモトークを交換できるのは嬉しいですが、それとこれとは話が別といいますか……!」

「強情だなぁ……じゃあ、それはつまり私がタツミの気を変えればいいという事で良いんだよね〜?」

「いや良くないですけど!?と言うか、本当に何でそこまでして俺様を抱き枕にしたいんですか!?」

「もちろん寝るため……じゃなくて修行のためだよ?だから、私が気持ちよく寝たいからとかじゃないからね?」

「おい後半が本音だろこれ!?」

 

こうして俺様は春日先輩に半ば強引に押し付けられる形で彼女とモモトークの交換を行い、その後もしばらく公園のベンチで彼女と押し問答をしてようやく渋々と言った形で折れてくれた春日先輩。

その後も彼女から修行部の活動や部員の話を聞いたり万魔殿の仕事を俺様から説明したりと他愛のない会話をした後に本来の目的だった〆の甘味を食うことにしたんだが、せっかくだしと案内を買って出てくれた春日先輩の言葉に甘えて彼女と行動を共にさせて貰うことにした。

なおその際に春日先輩も戦いの際では盾を構えて最前線へ赴くらしいことから気が合って更に仲良くなっていたこともあり、甘味処も百夜堂ではなく彼女達修行部の行きつけの店を教えてもらったのでその店で食べたんだけど、そこで食った抹茶パフェは滅茶苦茶絶品だった。

店名も覚えたことだし、その店にはプリンも置いてあって注文したのだがそれも絶品だったため今度の交流会の時には是非イブキを連れて行ってやりたいものだ。

 

その後春日先輩の案内で百鬼夜行の土産屋を回ってイブキたちへの土産を購入し、わざわざ駅まで見送ってくれた彼女に礼を言って解散した俺様はそのまま電車へ乗り込んでゲヘナへと帰還するのだった。

ちなみに、何故か駅までずっと羽織っていて解散の際にようやく春日先輩から返してもらった万魔殿のジャケットからは甘い香りがした事をここに記しておこう。

 

なおその後、万魔殿へ帰ってイブキ達に土産を渡したら全員から絶対零度の視線を浴びせられることになったのだが……それはまた別のお話。

 

「まったく、また女を引っ掛けてきましたね?罰としてそこで3時間正座していてください。」

「ちょっと!?流石に理不尽じゃないっすか!?」

「上着から他の女の匂いぷんぷん漂わせておいて何を言ってるのよ……いい?今からお説教だからね?」

「か、勘弁してください京極先輩!いやもうこの際説教は受け入れますけど、せめて足を崩させて下さい!」

「ダメだよタツミくん!そんな事をしたら正座でビリビリした足をツンツンした時のタツミくんのいい表情が撮れなくなっちゃうもん!」

「いや、そんなもん撮る必要ないでしょ元宮先輩!?そんな写真撮って誰が得するんですか!?」

「……お兄ちゃん?ちゃんと正座……してくれるよね?」

「…………はい。ごめんなさい。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「んー……眠い……」

「あっ!おかえりツバキ先輩!」

「おかえりなさいツバキちゃん。」

「ふぁ〜……ミモリ、カエデ……ただいま〜……」

「パトロールお疲れ様でした。夕ご飯ができてますから手を洗ってきちゃってくださいね。」

「うん、ありがとうミモリ。このいい匂いは……今日はもしかしてカレーかな〜……?」

「はい、当たりです!カエデちゃんがどうしても食べたいとお昼に言っていたので作ってみました。」

「ふっふーん!なんてったってミモリ先輩のカレーは最高だからねっ!私もうお腹ぺこぺこだよー!」

「ありがとうございますカエデちゃん。私はまだまだ未熟者ですが、そう言ってもらえるのは嬉しいです。」

「そんなことないよ〜。カエデの言う通り、ミモリのカレーはとっても美味しいからね〜。」

「もう、ツバキちゃんまで……ふふっ、ありがとうございます。」

「ふぁ〜……それじゃあ、手を洗ってくるね〜。」

「はい。お願いしますねツバキちゃん。」

 

「んー!おいしー!」

「カエデちゃん、ほっぺたにカレーが付いちゃってますよ?慌てなくてもカレーは逃げませんから、そんなに急がずにゆっくり食べましょうね?」

「うん、分かったー!」

「〜♪」

「……あれ?どうしたのツバキ先輩?なんだかものすごくご機嫌みたいだけど、何か良いことでもあったの?」

「あれ……私そんなに顔に出ちゃってた〜?」

「うん、ツバキ先輩さっきからずっとニコニコしてるし鼻歌まで歌ってるからね!これは絶対に何か良いことがあったに違いないよ!この超絶可愛い修行部のマスコットのあたしが言うんだから間違いない!」

「ふふっ、今日も元気いっぱいですねカエデちゃん。」

「でしょー!ふっふーん!素敵なレディはいつも元気で笑顔なのが鉄則だからねー!」

 

「それで、一体何があったのツバキ先輩?」

「えっとね……実は今日のパトロール中に、とってもよく眠れる寝心地の良い抱き枕を見つけたんだよね〜。」

「寝心地の良い抱き枕……ですか?」

「うん。ちょっとしか抱いて寝れなかったのが残念だけど不思議と落ち着いて温かく包み込んでくれて……今まで試してきたどんな枕よりも寝心地が良かったんだ〜。」

「あ、あの寝ることに関しては誰よりもストイックなツバキ先輩がここまで褒めるなんて……!?」

「カエデちゃんの言う通り、ツバキちゃんは睡眠のことに関しては一切手を抜きませんからね。一体どんな抱き枕だったのか、少し気になるかもしれません。」

「そーそー!あたしも気になるよ!教えて教えて!」 

「ん〜?えっとねぇ……ゲヘナの男の子だよ?」

「……えっ?」

「なーんだ、ただの……ん?」

 

「げ、ゲヘナの……?」

「お……男の子……!?」

「うん、そうだよ〜♪」

 

「「ええぇぇぇーーーっっ!!?」」




次回は万魔殿でのお話の予定です
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