転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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まさかのケイ実装でひっくり返りました
が、それ以上にリオの服装がヤバすぎてちょっと笑っちゃいましたね
ミレニアム勢との交流も今後描いて行けたらなと思います


万魔殿での業務と丹花タツミ

時刻はそろそろ太陽が真上になろうかと言う時間帯。

あれから執務室へと到着した俺様は、京極先輩やその後に出勤してきた棗先輩と共に積み上がった大量の書類の山を崩しにかかっていた。

 

ちなみに、ライブリーマイエンジェルであるイブキは今日は元宮先輩と一緒に羽沼議長の面会へ行くことになっているため二人で席を外している状態だ。

イブキが近くにいないと言うことで俺様のテンションは一段階ダウンしているが、まぁ仕方あるまい。

今日は可愛い可愛いイブキを羽沼議長に譲ってやるとしよう。感謝しろよ!しゃーなしだからな!

 

「えーっと、これは給食部からの材料の購入費用の申請か。これは承認だな。」

「タツミ、こっちには救急医学部からの薬品類の購入の領収証が来てるけどこれは承認でいいわよね?」

「はい、大丈夫です。」

 

俺様は手元のマグカップの中に入っているすっかり温くなったコーヒーを時々啜りつつ、ひたすら書類にペンを走らせながら印鑑を次々と押していく。

 

「えーっとこいつは美食研究会からの予算増額申請書……ってまたかよあいつら!?何度も予算の増額はしねぇっつってんだろ!それにこっちには温泉開発部からのやつもあるし……もういっぺんシメられてぇのかこいつらはよぉ!却下だ却下!今日の予算委員会でとことん詰めてやるから覚悟しとけよマジで!」

 

俺様はそう言いながら不承認の印鑑をドン!と叩きつけつつ、乱暴にその書類を処理済みの山へ放り込んだ。

まったく……暴れるたびに俺様や空崎委員長が何度も何度もボコしているのに本当に懲りねぇ奴らだ。

その上で平気な顔をして予算増額申請書を送りつけてくるんだから、こいつらの面の皮は鉄の扉よりも厚いんじゃないかと言わざるを得ないだろう。

 

と言うかこいつらが暴れることによりゲヘナが破壊されるのはまだ百歩譲って良いとしても、美食研究会や温泉開発部は他の学校の自治区でも平気な顔をして問題を起こすからタチが悪ィんだよな。

当然テロリストの仕業とは言えゲヘナの生徒が他の自治区で問題を起こそうもんなら外交問題になりかねないので、俺様は何度こいつらが暴れまわった後始末で他校へ訪れて謝罪をしたかなんてもう覚えていない。

 

その中でも、特にトリニティで問題を起こすのだけは本当に勘弁してもらいたい。

せっかく俺様と桐藤先輩とで何度も顔を合わせて話し合ったり交流会を開いて互いに少しづつ歩み寄ろうとしてるのに、連中が暴れまわるおかげで未だにトリニティの一般生徒たちからは白い目で見られているからな俺様。

桐藤先輩や歌住先輩が事情を理解してくれているのはありがたいんだけど、そのおかげで前よりも胃薬が手放せなくなっちまったぜまったく……

ゲヘナの生徒の責任は俺様の責任でもあるから仕方ないと言えば仕方ないんだけど、流石にそろそろ俺様の堪忍袋の尾が切れちまいそうだ。

 

まぁ黒舘ハルナも鬼怒川カスミもこの程度でへこたれる奴じゃないのはもうわかりきっているけど、だからこそ面倒というかムカつくと言うかなんと言うか……

各々の目標に向かって真剣なのは悪いことじゃないと思うけど、もう少し手段は選んで欲しい。切実に。

あと言っておくけど、お前たちの尻拭いしてんのは俺様や空崎委員長なんだからな……!

今度トリニティで暴れやがったら簀巻きにした上で謝罪の場に引っ張っていってやるぞマジで……!

 

「ったく、何が悲しくて飲食店を吹き飛ばす連中や温泉開発とか抜かして建物をぶっ壊す連中に予算をよこしてやらねぇといけないんだよ……」

「仕方ありませんよ。テロリストとは言え、彼女達も一応ゲヘナの部活動ではありますからね。」

 

俺様がため息を付きながらそう言うと、そんな俺様の横のデスクで書類にペンを走らせている棗先輩がいつものダウナーな声色でそう呟く。

 

「ぐぬぬ……本来ならあんなテロばかり起こす連中に一銭も予算はやりたくないのに部活精度を盾にしやがってあいつら……こうなりゃもういっそ今日の予算委員会で風紀委員会と一緒に連中をボコボコにぶちのめして……」

「……それが出来れば苦労しませんよ。」

「まぁそうですよねぇ……」

 

気だるそうにコーヒーを啜る棗先輩の言葉に、俺様は死んだ魚の眼をしながらそう言った。

 

「それよりも、今度の百鬼夜行との交流会の件での打ち合わせは順調ですかタツミ?」

「あ、はい。そっちは大方滞りはないですよ。」

 

棗先輩の問いかけに、俺様はそう答える。

今朝届いていた百鬼夜行からの連絡の書面を見てももう大体の段取りのすり合わせは終了しているし、後は桑上先輩と細かい部分の調整をしていけば特に問題なく交流会を開催できるだろう。

 

「先方と打ち合わせしてもう大体の予定は既に決まってるので、あとは細部を調整すれば問題なさそうですね。バスのチャーターの方はどうなってます?」

「それに関しては今まさに交流会へ参加する生徒の希望用紙を回収して集計中なので、それが終わり次第数に合わせてバスをこっちでチャーターする予定です。」

「わかりました、ではそちらはそれでお願いします。」

 

パラパラと手元の書類をめくりながら報告してくる棗先輩に対して、俺様はそう言葉を返す。

確か参加希望用紙の提出の締切日は昨日だったはずなので、そう言うことであれば棗先輩のまとめてくれた分で人数とバスの台数は最終決定という事でいいだろう。

なら、それが決まり次第桑上先輩にはモモトークで詳細を送っておくとしますかね。

 

「ただ……ウチのことですから、締切日の後に参加希望用紙を提出してこない事を願いますけれど。」

「あぁ……確かにウチの生徒ならやりかねないわね。」

 

心底面倒くさそうにため息を吐きながらそう言う棗先輩に対して、京極先輩が苦笑しつつ相槌を打つ。

 

「まぁさんざん締切日までに希望用紙は提出するように呼びかけてますからね。それにも関わらず期限を過ぎてから提出してくるようなバカは泣いても喚いても連れていきませんよ。人数が変わったら俺様たちだけじゃなく百鬼夜行の皆さんにも迷惑がかかりますからね。」

 

最初は締め切り日を過ぎてから参加希望用紙を提出してくる奴はチャーターしたバスとロープで繋いで走って付いてこさせるつもりだったのだが、よくよく考えると桑上先輩にはバスの台数と参加人数を伝えて段取りをして貰う予定なのにいきなり参加人数が増えましたなんてことになったら段取りがすべて崩れかねないからな。

今回の交流会では渦巻映画村に招待して和楽姫を見せてくれるだけじゃなく、百鬼夜行の名物料理等も出してくれる予定なので人数が1人変わるだけでも席の確保や料理の材料の準備等予定が大きく変わることが予想される。

たかが1人分と思いがちかもしれないけど、普段から給食部のヘルプに入って厨房を手伝っている身としては1人分増えるだけでかなり大変なのを知っているからな。

であれば、さっきも言ったように百鬼夜行側に迷惑をかけるわけにはいかない。

 

まぁもちろんゲヘナの生徒がルールだからと言って大人しくはいそうですかと引き下がるような連中でないのは承知済みだが、何と言おうがルールはルールだからな。

それに甘やかしちまうのは本人のためにも良くないのでなんと言われようと締切日を過ぎてからの参加希望は余程の理由がない限りは認めないつもりだ。

 

……え?

もしその場でその生徒が暴れたらどうするのかって?

そりゃ決まってんだろ、ここはゲヘナだぞ?

もちろん、ぶちのめしたあと正座をさせて俺様が延々と説教をしてやるに決まっているじゃないか。

 

「まぁそういうわけなので、今から提出されてくる希望用紙はガン無視してもらって構いません。」

「わかりました。それでは集計が終わったら数を伝えますので、百鬼夜行への連絡はお願いしますね。」

「了解です。よろしくお願いします。」

 

俺様と棗先輩は互いに頷くと、それぞれ座っているデスクの書類に目を落として再度ペンを走らせ始める。

 

そう言えば百鬼夜行と言うと、陰陽部へ行った帰り際に偶然知り合った際にモモトークを交換した春日先輩から結構な頻度でメッセージが来るようになった。

内容は今日の夕飯や趣味の話、春日先輩が修行部でどんな活動をしたか等の他愛ない会話が多いんだけどそのやり取りの中で事あるごとに彼女は俺様を抱き枕にしようとする旨のメッセージを送ってくるんだよなぁ……

初対面の時もそうだったけど彼女の睡眠に対する熱意に関しては俺様も見習うべき所があるとは言え、流石にこれは勘弁してくれと思わざるを得ない。

春日先輩は出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいるワカモや七神代行ようなメリハリのある美しいスタイルとは違って、全体的に肉付きの良いスタイルをしている。

あんな見ているだけで悶々としてしまう柔らかそうなダイナマイトボディに抱きつかれたら今度こそ本当に変な気を起こしてしまってもおかしくはないからな。

 

ってか、そもそも何で春日先輩は俺様を抱き枕にするとよく眠れるんだろう?真剣に謎なんだが……?

俺様は寝ている彼女を運んでちょっと世間話をした程度なので、そこまで彼女に対して何かをしたという覚えはないんだが……一体何故なのだろう。

 

ちなみに、天地先輩や桑上先輩ともモモトークを交換したおかげか彼女達ともわりと他愛のない世間話を軽く交わす程度の仲になっている。

特に桑上先輩は今度見せてくれる予定の和楽姫の話を出すと楽しそうに和楽さんについて話し始めるので、彼女の様子を見ているとこちらもほっこりしてしまうな。

まぁとは言え彼女達は百鬼夜行のお偉いさん方だし、お互いに忙しい身なのもあって春日先輩みたいに頻繁にやり取りをしてはいないけども。

……と言うか、天地先輩も桑上先輩も春日先輩もそうだが百鬼夜行って際どい格好をしてる生徒が多いんだよな。

何て言うか日本がモチーフってことでもっとこう、着物とかの露出度の低いおしとやかな服を着ているイメージがあったんだけどあまりにも前衛的すぎるだろ。

ぶっちゃけ山海経といい勝負な気がしなくもないが、アレが今どきの百鬼夜行のトレンドなのだろうか……?

 

だとすれば男子である俺様には刺激が強すぎるから、せめて上着か何か羽織って欲しいもんなんだがな。

と言うか、単純な疑問なんだけど今は夏だからまだいいけどあんなに薄着で冬は寒くないのだろうか。

風邪を引いたら困るという点でも、もうちょっと着込んだほうがいいんじゃないかと思ってしまうけどな。

まだ胸の横を開けていないだけワカモの服装が健全に見えてくるぜ……まぁ、スカートの丈に関してはもう今さらだから突っ込むのは野暮ってもんだろうけど。

……まぁあの格好が百鬼夜行の文化って可能性もあるしあまり他校の服装をとやかく言うのも良くねぇか。

 

(百鬼夜行との交流会もそうだけど連邦生徒会の事もあるし、どっちみちゆっくりしてる暇はなさそうだな。)

 

俺様は心の中でそう呟くと、手元のマグカップを手に取って中に入っているコーヒーを啜る。

すっかり飲み慣れた独特の苦みと酸味が、口の中と書類仕事で疲弊した頭を少しだけ癒してくれた。

 

結局、あれから俺様と七神代行は岩櫃調停室長や由良木の協力を得つつ連邦生徒会内部でFOX小隊を操っている黒幕を探ってはいるものの……残念ながら、まだこれと言った手がかりは何も掴めていないんだよな。

 

七神代行は内部データを洗って怪しい幹部がいないか監視しているらしいが今のところそれらしき行動をしている幹部はいないし、岩櫃調停室長や由良木の目から見ても特に怪しいと思う幹部は今のところいないらしい。

この前七神代行を初めとして岩櫃調停室長や由良木と4人で顔を合わせて情報を交換したものの……俺様を含めた全員が渋い顔をしていたことからもそれは明らかだった。

 

俺様も最近は時間のある日はほぼ毎日と言っていい程連邦生徒会に顔を出しては挨拶回りをするついでに探りを入れているものの、俺様が怪しいと踏んでいた扇喜財務室長や不知火防衛室長も挨拶しに行った俺様を前にしても動揺する様子なんて1ミリも見せなかったからなぁ……

それどころか二人とも忙しいはずなのに殆ど初対面の俺様を丁重にもてなしてくれたし、もしあの二人が黒幕じゃないのであれば迷惑やあらぬ疑いをかけてしまったと誠心誠意謝るしかないだろう。

 

あれだけ入念に計画を立てて来るようなやつなのだからそう簡単に尻尾を掴むことが出来ないことは覚悟していたけど……これは思ったより長期戦になりそうだ。

現状こちらが派手に動いてしまえば黒幕に俺様達の動向を知らせることにもなってしまうので、じれったいがここは少しづつ確実に探りを入れていくしかない。

早期解決を図りたいのは山々だけど、その過程で皆を危険に晒すような事があっては本末転倒だからな。

七神代行の身を守るためにも、そして俺様の周りの人達に危害を加えないためにもFOX小隊を操っているクソッタレは必ず矯正局へブチ込まなければならない。

 

……ただ、なんだろう。

何か……形容しがたいんだけど、なんかこう何かが喉奥に引っかかっているような気がするんだよな。

 

特に……不知火カヤ防衛室長。

彼女と最初に顔を合わせた時のあの得体の知れない違和感は……俺様の気の所為なんだろうか?

 

(……まぁ、考えても仕方ないか。)

 

そもそも、現時点で彼女が黒幕だと言う証拠があるわけじゃないし今のところ俺様から見ても七神代行からみても彼女に特段怪しいと思う部分はない。

彼女は常にニコニコしていて人当たりも良く、七神代行の事だけではなく俺様の事も気遣ってくれるいい人だ。

それに話を聞いていて思ったが彼女もどっちかと言うとSRTの解体には反対していたみたいだし、SRTの生徒のことを心配しているような様子も伺えたからな。

確たる証拠もないうちから、俺様の単なる違和感だけで疑ってかかるのは失礼極まりないだろう。

 

とは言え、彼女も黒幕候補の1人であるのは間違いない。

しばらくは引き続き、七神代行達と連絡を取り合いながら少しづつ黒幕を炙り出していくしかないだろう。

あんな人の良さそうな人を疑うなんてことは本来であればしたくないけど……心苦しいが仕方ない。

 

それに現状、黒幕の目星は全く付かない状況だ。

正直、俺様達の置かれている状況はとても苦しいと言わざるを得ないだろう。

 

(……けど、それでもやるしかない。)

 

苦虫を噛み潰した表情を浮かべながら、俺様は処理した書類を処理済みの書類山の中へと放り込む。

 

そう、俺様は七神代行と約束した。

必ず彼女を守ってみせると……そう誓ったんだ。

 

ならばそこまでデカい口を叩いた以上はなるべく連邦生徒会へ顔を出すのは当たり前のことだし、何が何でも黒幕を炙り出してとっ捕まえてやる必要がある。

約束は守らなければならないし、それ以前に突然失踪した連邦生徒会長に変わって必死にキヴォトスの舵を取っている七神代行を危険な目に合わせるなんてことは……決してあってはならないことだからな。

 

前にも言ったけど、七神代行は連邦生徒会代行である前に一人の女の子でもある。

そんな彼女をいつ襲われるかも分からない不安や恐怖に怯えさせる黒幕を……俺様は許す事が出来ないからな。

 

(……覚悟しておけよ、黒幕の野郎。)

 

再度マグカップを手に取って傾けながら、俺様は心の中で力強くそう呟いた。

 

……それにしても、なんだか最近前にも増して七神代行の距離感が近いと思うのは俺様の気の所為なんだろうか。

この前顔を合わせた時なんて殆ど密着するくらいの距離まで近寄ってきたし、最近はモモトークからメッセージが送られてくる頻度も多くなっていて夜の通話の時間も長くなって来ているような気がするんだよな……

正直、あの時に熱っぽい表情をして抱きつかれた後から七神代行を変に意識してしまっている自分がいるので出来たら勘弁してほしいが……それを口には出来なかった。

 

言うまでもないけど、七神代行は今この瞬間も黒幕から虎視眈々と命を狙われている立場だ。

なのでその不安や恐怖を紛らわせるために俺様とやり取りをすることで少しでもそれを紛らわせようとしているという可能性は充分にあるし、そういうことなら俺様もできるだけ彼女の不安を和らげてやりたいとは思う。

 

ただ、顔を合わせるたびに俺様と体が触れるくらいまでの距離まで近づいてきたりされると……その……な?

信頼してくれるのは嬉しいが俺様も男なわけだし……な?

こんな状態で今度七神代行と二人で海へ行こうって言うんだから……気をしっかり持つしかないだろう、うん。

 

大丈夫だ、狼狽えるな俺様。

ワカモとの一夜のことを思えば、あの程度のスキンシップくらいなんとも……

 

(……〜っ!!!)

 

って何を考えているんだ俺様は!?

やめろやめろ!そんな浮ついている場合じゃないだろ!

俺様は浮かんできた邪な考えをブンブンと頭を振って払い飛ばすと、小さなため息を吐き出した。

 

……それに、最近は何故かその様子を見て頬を膨らませた岩櫃調停室長からの距離も近くなっている気がするしモモトークの頻度も前に比べればかなり増えたんだよな。

この前なんて七神代行と岩櫃調停室長に両サイドに立たれて二人からほぼ密着されてサンドイッチにされるわ、何故か七神代行と岩櫃調停室長がいい笑顔を向け合いながらバチバチしてるわ、その様子を見た由良木が腹を抱えて笑っているわでそりゃもう心臓に悪かった。

と言うか、由良木は爆笑してねぇでなんとかしてほしかったぞマジで。俺様1人で何故かバチバチの七神代行と岩櫃調停室長をなだめるの超大変だったんだからな!?

 

まぁともかくそういうわけなので、今後も気をしっかり持って頑張っていくしか無いだろう……色々な意味で。

なお、岩櫃調停室長や由良木から聞いた話曰く七神代行は俺様と話している間は普段の堅い表情からは想像できないほど柔らかい雰囲気と表情になる……らしい。

理由は良く分からないけど……俺様の存在が彼女の負担を少しでも軽く出来ているなら、それはこちらとしても続けていきたいとは思っているからな。

 

(しかし万魔殿の業務に百鬼夜行との交流会、トリニティとの外交に連邦生徒会内部の黒幕の炙り出し……か。)

 

俺様は書類にひたすらペンを走らせながら、頭の中でそんな事を考えつつ苦笑する。

流石にあまりにも殺人的スケジュールがすぎる、正直言ってここまで業務量が多いともう笑うしかないだろう。

ただ言うて議長代理になった当初はその業務量に何度も殺されかけたけど、ある程度慣れた今の俺様ならばなんとかこなせないことはない量なのもまた事実だ。

猫の手も借りたい状況であるのは間違いないけど、少しづつ確実にやっていくしかない。

 

「……タツミ?どうかしましたか?」

 

そんな事を考えながらため息を吐き出していると、俺様の横のデスクで書類の処理を行っている棗先輩が少し眉間にシワを寄せながら心配そうに声を掛けてくる。

 

「いえ、少し考え事をしていたもので……大したことじゃないので大丈夫ですよ。」

「ならいいのですが……タツミは何でもかんでも1人で背負い込もうとする悪い癖がありますからね。」

「あはは、それは否定できませんね……」

 

ジト目でこちらを見ながらそう言ってくる棗先輩に、俺様は若干言葉に詰まりながらそう返す。

 

「タツミ、貴方が普段から膨大な仕事量をこなしながら外交に赴いたりしているのは私やサツキ先輩も理解しているつもりです。……だから、何か悩みがあるのならきちんと私達の事を頼ってください。いいですね?」

 

少しだけ表情をほころばせると、優しい笑みを浮かべながら俺様にそう言ってくれる棗先輩。

……棗先輩は普段はダウナーで憎まれ口を叩くことも多いけど、その実は万魔殿の仲間の事を案じて心配してくれる優しい一面があることを俺様はよく知っている。

確かにサボり癖はあるし面倒臭がり屋ではあるがやるべきことはキッチリとこなすし、書類仕事も外交もそつなくこなすその姿は未だに俺様の目標でもある。

 

そんな棗先輩が頼れと言ってくれているんだ。

こんなにも頼もしくて、嬉しいことはないだろう。

 

「……はい、ありがとうございます。棗先輩。」

 

棗先輩の不器用ながらも温かい優しさを感じつつ、俺様は頭を下げて棗先輩に感謝の言葉を述べた。

そんな俺様と棗先輩の姿を見て、京極先輩はこちらを見ながらニコニコと優しい笑みを浮かべている。

 

本当に俺様はいい先輩達に恵まれた。

ありがたい限りである。

……それと同時に、こんなにも良くしてくれて頼りになって尊敬する先輩達を危険に晒すわけには行かないという感情が俺様の中でより強い物になって行くのを感じた。

 

恐らく、今回のFOX小隊の件も棗先輩達に話せば恐らくみんなはなんやかんやで協力してくれるだろう。

けど何度も言うが俺様は先輩達を……そして何よりもイブキを危険に巻き込むのだけは死んでもゴメンだからな。

だから、この事を悟られるわけには行かないのだ。

 

……正直、この判断が正しいのかは俺様には分からない。

間違っている可能性だってある。

こんな大事になっているにも関わらず、先輩方にその事を隠して嘘をついている罪悪感だってある。

もしかしたら、すべてが解決したあとに先輩方からは何故自分達を頼らなかったんだって叱られてしまうことだってあるかもしれない。

 

決して先輩達を信頼してないわけじゃない。

むしろ逆、俺様は先輩達を何よりも信頼して大切に思っているからこそ……危険な目に合ってほしくないんだ。

だから先輩方の気持ちは嬉しいけど、FOX小隊や黒幕の件はこちらで決着を付ける必要があるだろう。

 

大丈夫、今回の件に関しては俺様には七神代行達……そして何より先生と言うとても心強い味方が居る。

彼女達と一緒ならきっと黒幕を炙り出して、矯正局へブチこむことが出来るはずだ。

だから万魔殿の皆にはこの事は黙っておく事になるけども……その分、普段の業務の事などに関してはお言葉に甘えて思う存分頼らせてもらうとしよう。

 

「で、一体何を悩んでいたんですか?」

 

コーヒーを啜りながらそう考えていると、棗先輩からそんな言葉がかけられる。

 

「あー……いや、ちょっと今日の予算委員会の事を思うと憂鬱でして。」

 

俺様は手にしたマグカップをデスクに置くと、少しため息を吐きながら誤魔化すようにそんな言葉を口にした。

嘘をついていることに対して俺様の胸がチクリと痛む。

けど……まぁ、実際予算委員会が憂鬱なことはあながち間違いのないことではあるわけだからな。

 

「棗先輩も前回の予算委員会は覚えてますよね?」

「予算委員会ですか?……あぁ、確かこの前の予算委員会では美食研究会や温泉開発部が会場で暴れて風紀委員会との全面抗争になったんでしたね。」

「はい。そのおかげで会場は木っ端微塵になってしまいましたからね……会場の修理費を捻出するために俺様がどれだけ苦労したか分かりませんよまったく……」

 

特大のため息を吐き出しつつ、俺様は書類にカリカリとペンを走らせながらそう答える。

こうなるから美食研究会や温泉開発部は予算委員会には入れたくないんだけど、学園規定で全部活動の参加が義務付けられている以上はどうしようもないからな。

前科があるだけに今回もやらないとは限らないので、しっかり目を光らせておく必要があるだろう。

建物が吹っ飛ぶなんてゲヘナじゃ日常茶飯事ではあるんだけど、それでも対応はしないとならないからな。

まったく……余計な仕事を増やさないで欲しいもんだ。

 

「しかもそれだけじゃなくて、その場にいた空崎委員長や天雨行政官もかなりお冠だったので彼女達をなだめるのにも滅茶苦茶苦労しましたからね俺様。」

「アコ行政官はともかく、いつもはあんまり怒らなくて穏やかなイメージのヒナ委員長もあの時ばかりはカンカンだったものね……今でもはっきり思い出せるわ。」

 

俺様が呆れながらそう言うと、俺様の向かいのデスクに座っている京極先輩が苦笑しながらそう言った。

そう、先程言った通り前回の予算委員会は美食研究会や温泉開発部が暴れたおかげでその場で風紀委員会との全面抗争になってしまったのだが……

その際、京極先輩の言う通り空崎委員長や天雨行政官が今まで見たことがないほど激怒してしまったんだよな。

 

空崎委員長は不良に対して容赦がないイメージがあるけど、あれで実は結構甘い対応をしている部分がある。

でなければそもそも美食研究会や温泉開発部を拘束したあとに釈放なんてするはずがないし、不良生徒を取り締まるときも彼女が全力を出すと病院送りになってしまうから手を抜いている節があるくらいだしな。

それに天雨行政官も普段はあんな感じだけど空崎委員長と同じで結構甘い部分もあるので、そんな二人が怒髪天で容赦なく黒舘や鬼怒川をボコボコにするほどだった……と言えば当時の二人の怒りの度合いがわかるだろう。

 

まぁ予算委員会は今後の部活動の指標を決める場でもあるし、活動報告で予算の増減も決まるわけだから風紀委員会にとっても死活問題となる場所なわけだしな。

そんな大切な委員会中に会場で暴れられたら……そりゃあの二人がカンカンになるのも無理はないだろう。

そもそもそんな大切な話し合いの場で暴れるなよという話ではあるんだが、生憎ここはゲヘナ学園だ。

そんな常識が通用するなら俺様はここまで胃を痛めていないし、苦労もしてないからな。

 

「ですが流石に美食研究会や温泉開発部も前回で懲りているでしょうから、今日の予算委員会では問題は起こさないのではないかと思いますが……」

「だと良いんですけど黒舘も鬼怒川もそんな事で懲りるような連中じゃないので……頼むから何もないことを祈るしか無いですね。」

 

その後もそんな感じで棗先輩と京極先輩の二人と業務処理を終えた俺様は、昼食を挟んだ後に午後から開催される予算委員会に出席するために会場へ赴いた。

そして始まった予算委員会では、各部活動の活動報告や成果発表を聞くことになったのだが……

 

「何故ですかタツミさん!私達はこんなにも美食に関して追求し、日々有益な活動をして居るというのに!」

「いや気に入らねぇ飲食店を爆破することのどこが有益な活動なんだよ!活動報告の殆どが飲食店の爆破記録じゃねぇか!?いい加減にしとけよ黒舘ハルナァ!!」

「……ふふ、美食の道は時に険しいもの。万人には理解されないことなのはわかっておりますとも。」

「何悟り開いたような表情してんだてめぇコラァ!こんなんで予算増やせるわけねぇだろ!ふざけんな!」

 

「ハーッハッハッハ!どうだいタツミ?我々温泉開発部の素晴らしい活動の数々は?」

「なーにが素晴らしい活動の数々だ!散々ビルや建物を破壊して更地にしやがって!美食研究会とやってること変わらないじゃねぇか!」

「そこに温泉があるから我々がいる。いや、たとえ温泉がなくとも我々がいる。その破壊活動の数々は温泉を掘るために必要な犠牲と言う奴だ。何かを成し遂げるためにはそれ相応の代償を支払わなければならない。それはタツミとて理解できるだろう?」

「理解は出来るけど、これはどう考えてもいらん損害に決まってんだろうがァ!」

 

「ハルナ……カスミ……覚悟は出来てるわね?」

「ちょ、ちょっと落ち着いてください空崎委員長!連中に腹が立つのはわかりますけど、ここでデストロイヤーをぶっ放したらまた会場が消し飛んじゃいますから!」

「止めないでタツミ。今日という今日はもう許さない、徹底的に懲らしめて分からせないと……」

「あぁぁ畜生!やっぱりこうなんのかよっ!!!」

 

なおその後、そこで行われた予算委員会では案の定美食研究会や温泉開発部が自分達の主張が通らないと見るや否や武器を取り出して暴れ出し風紀委員会が鎮圧するいつもの光景が繰り広げられたとだけ言っておこう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……FOX小隊に関する情報を掴んだのでタツミさんにお伝えするためにゲヘナまでやって来ましたが、何やらとんでもないことになっているようですね。」

 

「あれは……ゲヘナの風紀委員長ですか。流石の私と言えどあの中へ入っていってしまっては身動きが取れなくなりかねません。何より彼女達はタツミさんに危害を加えるつもりはないようですし……であれば、この会議が終わるまでタツミさんをお待ちするのが得策でしょうね。」

 

「それにしてもタツミさんは表情を見る限りかなりお疲れの様子……ウフフ♡であれば、お仕事で疲れた夫を労うのもまた妻の役目ですね♡」

 

「あぁ、そうと決まればこうしてはいられません!一刻も早くタツミさんがお仕事を終えた後に、疲れを癒してもらう準備をしておかないといけませんね♡」

 

「ウフフ……待っていてくださいね、タツミさん♡このワカモ、誠心誠意貴方をお支えいたしますわ♡」




日常回が続いていますが、そろそろ話を進める予定です
リンとのデートに百鬼夜行との交流会に連邦生徒会への顔出しとやることがいっぱいなタツミの明日はどっちだ
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