転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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次回辺りからぼちぼちアビドスに絡みに行きます

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戦闘終了と丹花タツミ

「あぁもっと、もっとです!もっとあなたのすべてを私にぶつけてください!」

 

風を切る音と共に狐坂の蹴りが放たれる。

俺様の命を刈り取るために首に向かって一直線に向かってくるそれを頭を振ってかわし、ブークリエの銃床を狐坂の脇腹に向かって振る。

狐坂はそれを歩兵銃で受け止めると、そのままその場で一回転し再度蹴りを繰り出してくる。

構えた盾でそれを受け止め、そのまま盾を思いっきり押して狐坂を後ろへと飛び退かせた。

 

「ウフフ♡やはりそう簡単には壊させてくれませんわね……それでこそ私が夢中になる方、ですわね?」

「お前は俺様の何を知ってんだよ……!」

 

心底愉快そうな声色で笑う狐坂に対して得体のしれない不気味さを感じつつ、俺様はそう吐き捨てる。

周囲では不良たちと風紀委員達が衝突しており、お互いに負傷者も出ている程の激戦となっていた。

 

「あら……つれないですわね?シャーレの前ではあんなに情熱的に私を求めてくださったのに♡」

「タツミ!?お前こいつに何やったんだ!?」

「いや何もしてねぇんだが!?」

 

そりゃ確かに俺様を舐め腐っててちょっとムカついたから本気を出せと言いはしたけどよ……!

それ以外はホントに特になんもしてねえぞ!

 

「あら、私のすべてを受け止めてくれるのでしょう?」

「タツミ!?」

「全力だバカタレェ!全てとは言ってねぇだろーが!」

「ウフフ♡」

 

身体をくねくねと動かしつつそう言う狐坂。

その動き気持ち悪いからやめろマジで……!

それに誤解を招く表現をすんじゃねぇっつーの!

 

「災厄の狐を口説くってお前……」

「口説いてないが!?断じて口説いてないんだが!?」

「あら、照れ隠しですか?そんなところも愛らしいですわね♡」

「もう黙ってくれお前マジで頼むから!」

 

銀鏡先輩からの視線がどんどん冷たくなっていくのを感じつつ、俺様は大声を上げた。

 

「まさか災厄の狐に手を出すなんて、あなたは女なら誰でも良いんですか!?」

「だから手ェ出してねぇっつーの!」

 

銀鏡先輩の所持しているホログラム通信機に天雨行政官の姿が映し出され、ワナワナと震えながら絶叫する。

そもそも仮に俺様が彼女が欲しくて女の子にアプローチするとして、何で災厄の狐に手を出すと思うんだ?

いくらなんでもクレイジーすぎるとは思わないのか?

どう考えても自殺行為でしかねぇだろ……!

 

「あーもう!違うって言ってんでしょうが!銀鏡先輩も天雨行政官もいったん落ち着いてくださいよ!」

 

俺様は盾を地面に叩き付けつつ声を張り上げる。

 

「そもそも俺様とコイツは敵同士ですし、今は戦闘中ですよ!?冗談は後にしてください!」

「うっ……た、確かにそれはそうだな。」

 

俺様の気迫に銀鏡先輩が若干押されつつ返事をする。

なんか、こんなやりとりしてるけど今はめちゃくちゃ大規模な戦闘の真っ最中だからな?

クソ、それもこれも全部このふざけた仮面女のせいだ!

 

「お前のせいであらぬ誤解を受けてるんだが……!?どう責任取ってくれんだよ……!」

「あら、それは困りましたわね。ですが、私は貴方に夢中なのであながち誤解でもないのではないですか?」

「知らねぇよ!そもそもお前は何でそんなに俺様に執着してんだ!」

「あら、決まっているではありませんか。」

 

そう言うと、狐坂は手にした歩兵銃をこちらへと向ける。

 

「貴方を壊すのはこの私、ですからね♡」

 

瞬間、火薬の爆発する音が響き渡った。

俺様は咄嗟に盾に身を隠し、放たれた銃弾を防ぐ。

 

「銀鏡先輩!」

「あぁ、任せろ!」

 

狐坂が排莢を行っている間、間髪入れずに銀鏡先輩の鋭い射撃が狐坂を襲った。

狐坂はそれをヒラリと交わすと、排莢を終えた銃を後ろの銀鏡先輩へと向ける。

 

「させるかよ!」

 

俺様は盾を構え、狐坂と銀鏡先輩の間へ割り込む。

腕に衝撃が走るとともに盾が銃弾を防いだ金属音が鳴り響いた。

 

「アコちゃん!後どのくらいで付きそう!?」

「急いでそちらへ向かっています!あと5分ほどなんとか持ち堪えてください!ヒナ委員長も間もなく現場に到着するとの連絡が入りました!」

 

通信機から天雨行政官の焦ったような声が聞こえる。

これだけの規模の暴動に対応できる援軍をあの短時間で即座に編成して、このスピードで現場へ送り込めるんだからやはり天雨行政官は優秀だよな。

……あの服装さえ無ければなぁ。

 

ともかく、空崎委員長も来ているのであれば後はとにかく時間を稼ぐだけで良いだろう。

こちらから攻めていく必要性は全くない。

盾から顔を出して狐坂を確認すると、今の通信を聞いたのか銃を片手にもう片方の手を頬に当てて考え込むような素振りを見せていた。

 

「あら、ゲヘナの風紀委員長ですか……流石の私でも分が悪いと言わざるを得ませんね。」

 

ゆっくりと首を横に振りつつ、狐坂はそう言った。

 

「ヒャッハー!奴らをひき肉にしてやるぜぇー!」

「このっ……!」

「オラオラァ!覚悟しろ風紀委員ども!」

「私達は不良なんかには負けない!」

 

周囲では風紀委員と狐坂に陽動されたのであろう不良達が激しく戦闘を行っており、銀鏡先輩の援護を受けられる位置をキープしつつ流れ弾を防いでいく。

 

「フフフ、今回はこのくらいにしておきましょうか。貴方も前より壊しがいが増えましたし……ね?♡」

 

そう言って狐面の下から俺様に視線を送ってくる狐坂。

背中に嫌な汗が流れる。俺様は狐坂を睨みつけた。

 

「ハッ、逃げるのか?」

「私の目的はあくまで貴方を壊すこと。ゲヘナの風紀委員長が介入してくればいくら私と言え分が悪いですしね……フフフ♡」

 

狐坂は狐面の下の口を動かしてそう言う。

……あくまで狙いは俺様ってか?

ったく、ろくでもない奴に目を付けられたもんだな。

 

「ではまたお会いしましょう、さようなら♡」

「あっ、待てっ!」

 

そう言うと、狐坂は相変わらず人間を辞めてる勢いで跳躍すると燃え盛るビルへと突っ込んでいきそのまま姿を消して行った。

……願わくばもう二度と会いたくないもんだけどな。

 

「クソ!逃げられちゃったよ……」

「気落ちしてる暇はないですよ銀鏡先輩。まだ不良どもの鎮圧が残ってます。もうひと頑張りしましょう!」

「……そうだな。覚悟しろ、規則違反者どもめ!」

 

銀鏡先輩と顔を見合わせて頷く。

俺様は盾を地面に突き立て、ブークリエを構えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

結局、あのあと空崎委員長と天雨行政官が合流した俺様達はそのまま不良相手にワンサイドゲームを行った。

元々狐坂に陽動されただけの連携もクソもない数だけの烏合の衆だったので、鎮圧に時間はかからなかった。

特に空崎委員長の強さはそれはもう鬼神の如きであり、もうあの人1人で良いんじゃないかな……というレベルには無双していた。

不良達が吹き飛んでいく姿を見てつくづくこの人だけは敵に回したくないと思ったからな……

天雨行政官も練度の高い風紀委員達で組んだ援軍部隊を的確に動かし、銀鏡先輩と俺様は前線で不良を蹴散らして空崎委員長と共に合流した火宮はすぐに負傷者の手当てに取り掛かって、今回の暴動は終息した。

 

「以上が事の末端ですね。」

 

と言うわけで、後処理を手伝ってから万魔殿に帰還した俺様は視察の結果も兼ねた風紀委員会の活動報告を羽沼議長に行っていて今に至る。

 

「視察の結果は報告書のとおりです。暴動の鎮圧結果は俺様も参加していたので今説明したそのままで受け取ってもらって構いません。」

 

今回は元々が風紀委員が戦闘訓練をするからその視察に行ってこいと言う仕事だったため、視察内容を報告書にまとめて羽沼議長に叩き付けたわけなんだが。

羽沼議長は報告書に目を通しながら露骨に顔をしかめている。

 

「おいタツミ。」

「何スか羽沼議長。」

「この報告書は一体どういうことだ?」

 

テーブルの上に俺様が作成した報告書を広げつつ、指でトントンと叩きながら羽沼議長は心底不愉快そうな表情でこちらを睨んでいる。

 

「どういうことも何もそのままの意味ですが?」

「……私の目に狂いがなければ、災厄の狐と戦闘を行ったとあるが?」

「えぇ、戦いましたよ。取り逃しちまいましたがね。」

「そうか……まぁ、それはこの際どうでもいい。」

「どうでもいいんかい。」

 

あの狐坂ワカモと接触したんだからもっと驚くかと思ったんだが、やけにアッサリしてんな?

まぁシャーレの一件で起こったことは全て羽沼議長に報告済みだし、奴と会うのは今回で2回目だからそんな驚いてないのかもしれねぇけども……

 

「風紀委員会の戦闘結果が全て満点なんだが、これについて申し開きはあるか?」

「申し開きも何も記載した通りですが?」

「嘘つけお前!全部の項目が満点などありえんだろうが!作るならもう少しマシな報告書を作れ!」

 

椅子から音を立てて立ち上がりながら、羽沼議長は俺様の前までツカツカと歩み寄ってくる。

あぁこれあれか。狐坂より風紀委員への憎悪の方が勝ってる的なやつかね?

 

「だって本当の事なんだから仕方なくないすか?訓練は俺様も参加しましたから分かりますけど練度は相当のものでしたし、暴動の鎮圧の際も負傷者こそ出ましたけど市民にケガ人はいなかった。あの災厄の狐が現場に居てですよ?以上を踏まえて満点にしてるんですが、何の問題があるのか言ってみろよ……!」

 

歩み寄ってきた羽沼議長へあえてこちらも近づき、鋭い視線をつくって睨みつける。

 

「問題しかないだろう。市民にケガ人がいなかったとは言えビルや建物を爆破されているではないか。」

「そんなのゲヘナでは日常茶飯事では?その辺の道歩いてたら建物くらい爆発するでしょフツーに。」

「しかも災厄の狐には逃げられているではないか。」

「連邦生徒会の特殊部隊でやっと捕まえられるバケモノを相手に怪我人出さなかっただけでも充分では?」

「それに、事前にあの行政官から連絡が来たとは言えお前を訓練に参加させたり暴動の鎮圧に連れて行ったのが気に食わん。お前は万魔殿所属なんだぞ?」

「万魔殿所属ではありますけど、今回は仕方なくないすか?行政官の言う通り訓練には参加したほうが肌で感じられますし、暴動の鎮圧も最終的には俺様が参加しますってOKしたから問題ないでしょうよ。」

 

お互い一歩も引かずに言い合いを続ける。

 

「それに万魔殿が生徒会である以上、傘下組織である風紀委員の手伝いすんのは当たり前じゃないすか。」

「今回はお前にケガがなかったから良かったものの、もしケガでもしていたらどうするつもりだったんだ?それこそ風紀委員の責任問題だぞ?」

「いやケガしてないのにそんな事言われてもなぁ……それはそうですが……まぁ今回はケガしなかったし良いじゃないですか。タラレバって奴っすね。」

「この……減らず口を……!」

 

羽沼議長が俺様を心配してくれているのはわかる。

なんだかんだ言いつつもこの人は部下をものすごく大切にする人だからな。伊達に長く付き合ってはいない。

俺様もこの人のそんな所は嫌いじゃないし、なんだかんだ言いつつもこの人に付いていこうと思ってる部分の1つではある。

 

だが、それはそれとしてだ。

まぁ確かに今回訓練には天雨行政官と銀鏡先輩の口車に乗せられて参加したし、暴動の鎮圧も俺様が協力する義理はないと言えば無いんだけども。

それでも俺様は困ってる奴をほっとけるほど血も涙もない人間にはなりたくねぇから仕方がない。

それに実際に訓練に参加してみて天雨行政官の部隊を動かす能力や銀鏡先輩の実力等を再確認したり、風紀委員1人1人の練度も確認できたからな。

火宮の衛生兵としての能力も申し分なかったし、空崎委員長は……語る必要もないだろう。

更に暴動の鎮圧って言う実戦まで直接見てるんだからこれ以上ないほどの視察の精度のはずだぞ。

最初は乗り気じゃなかったけど、結果的には良かったと言えるだろう。なんだかんだで俺様も楽しかったし。

 

だから、俺様はそれも踏まえて報告書の項目を全て満点にしたわけなんだけどな。

【予算の増額を検討すべし】と言う備考を添えて。

 

「そもそも私は風紀委員の粗を探してこいと言ったんだぞ!何故風紀委員の評価が上がるような報告書を作るんだ!これでは予算の削減がしにくいではないか!」

「おいそれが本音だろ。」

 

だから、そもそも風紀委員の予算の削減したくて粗探しすんなら風紀委員に好意的な俺様を視察に行かせなければいいだけの話なんだがな。

羽沼議長が自分で行くのが一番いいのでは?

 

「そもそもアンタ満点だろうが何だろうが風紀委員の予算は減らすじゃないすか。」

「当たり前だろう!風紀委員に予算など不要だ!」

 

そんなことを口走る羽沼議長。

いや、流石に治安がこの世の終わりみたいなゲヘナ自治区において風紀委員がいなければもう既にゲヘナは焼け野原になっちまってると思うんだが……

ほんとにこの人風紀委員の事になるとコレだからなぁ……

 

「そもそもお前は何故そんなに風紀委員の肩を持つんだタツミよ。」

「あの人達とは仲良くさせてもらってますからね。それに万魔殿に何かあったときに風紀委員に頼れる方が心強くないすか?万魔殿も自前の戦力があるとは言え、風紀委員ほど大規模ではないですし。」

 

と言うか、いくら虎丸とかの装備があるとは言え正面から風紀委員とやりあえば負けるのは万魔殿だろう。

風紀委員には迫撃砲とかの火力を出せる装備品もあるわけだから、火力指数でもゲヘナトップレベルだ。

そういう意味ではクーデターなんて起こされたら一瞬で万魔殿は吹き飛んじまうわけだし、仲良くしておくのは政治戦力的にも効果的だと思うんだけどなぁ。

まぁ空崎委員長がそんな事をするなんてことは天地がひっくり返ってもあり得ないだろうが。

 

「フン、有事の際はヒナなどに頼らずとも我が万魔殿の戦力で充分だろう。」

「まぁそりゃ棗先輩の戦車隊や万魔殿の皆がいるんでそう簡単にどうこうできないとは思いますけどね。」

 

なんやかんやで万魔殿の戦力もバカにはならんしな。

 

「まぁそういうわけなんで、報告は以上っす。次の予算会議で検討しといて下さいね。」

「キキキッ……善処しよう。」

 

……絶対善処する気ないだろこの人。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「イブキ〜……お兄ちゃん疲れたよ〜……」

「お兄ちゃんいっぱいお仕事してたもんね!頑張ってえらい!イブキが褒めてあげる!」

「イブキィ……!お兄ちゃん嬉しくて泣きそう……!」

 

膝の上に乗せたイブキが俺様の頭を小さな手の平で撫でてくれるのを見て、俺様は歓喜の涙を流した。

 

今日の仕事は風紀委員の訓練の視察だったため、この後は特に仕事もないため何をしようかとウロウロしてとりあえずソファに座って考えていると、俺様を見つけたイブキが膝の上に飛び乗って来て今に至る訳なんだが……

あ〜それにしてもイブキニウムが体に染み渡るぜ……

 

「ありがとなイブキ、お前は優しいなぁ。」

 

そう言って、イブキの頭に手を当ててわしゃわしゃと撫でる。

イブキはくすぐったそうに目を細めつつ、満面の笑みを浮かべた。

……やべぇ、妹が可愛すぎて俺様昇天しそう。

 

ちなみにイブキは俺様の膝の上に乗ってるわけだが、特に珍しいことでもない。

普段からイブキは俺様が座ってたら自然と膝の上に乗ってくるからな。

俺様としてもイブキの頭をすぐ撫でれるし、イブキニウムの効率的な摂取のためにもこの体勢は好きだ。

 

「……あら?イブキちゃんにタツミじゃない。」

「お、本当ですね!こんにちは二人とも!」

「あ、サツキ先輩!チアキ先輩!こんにちはー!」

 

仕事の疲れでボーっとしながらイブキを撫でていると、いつの間にか部屋に入ってきていた京極先輩と元宮先輩から声をかけられていたらしい。

イブキが元気よく手を振りながら挨拶をしている。

 

「どうも、お疲れ様です。」

「相変わらず仲がいいね二人とも!1枚撮ってもいい?」

 

そう言うと、元宮先輩はどこからともなくカメラを取り出して目をキラキラさせている。

 

「俺様は大丈夫ですよ。」

「イブキもー!」

「ありがとー!じゃあ二人とも笑って笑ってー!」

 

俺様とイブキは顔を見合わせると、お互いどちらからともなく笑顔を浮かべた。

 

「はいチーズ!……よし、よく撮れてるよー!」

「わーい!ありがとうチアキ先輩!」

「どういたしまして!後で写真あげるからね!」

「ほんと!?やったー!」

 

イブキは俺様の膝の上でニコニコしながらそう言った。

あぁもうほんとに可愛いなイブキは!

 

「それにしても前から思っていたのだけれど、二人とも仲がいいのはすごく良いことだと思うんだけどちょっと距離が近すぎないかしら……?」

 

京極先輩は俺様とイブキの顔を交互に見つつ、頬に手を当てながらそう言った。

……そうか?別に妹が兄貴の膝の上にのるなんてよくある話だろ?少なくとも我が家では昔からそうだったし。

 

「まぁまぁサツキ先輩。仲が良いのはいいことじゃありませんか。」

「それはもちろんそうなのだけど……」

 

元宮先輩にそう言われ、何やら考え込むような素振りを見せる京極先輩。

イブキはそんな2人を不思議そうに見つめていたが、何かを思いついたような表情で口を開いた。

 

「もしかしてサツキ先輩、お兄ちゃんのお膝の上に乗りたいの?」

「ぶっ!?」

 

京極先輩が吹き出す。

 

「でも残念でした!お兄ちゃんのお膝の上はイブキの特等席なのです!」

 

えっへん!と胸を張ってそう言うイブキ。

あまりの可愛さに俺様のSAN値がピンチである。

 

「そ、そそそそんな訳ないじゃないイブキちゃん!」

「あれ、違うの?イブキとお兄ちゃんをじーっと見てたからもしかしたらって思ったんだけどなー。」

「そ、それはちょっと2人の距離が近くないかしらって思ってただけよ!断じてタツミの膝の上に乗りたいとかではないわ!」

「あはは!サツキ先輩顔真っ赤ですよ!」

「うるさいわね!」

 

ぶんぶんと手を振りながら真っ赤な顔でそう言う京極先輩。

まぁ俺様としても膝の上にイブキ以外を座らせるつもりなんて毛頭無いから良いんだけど、仮に京極先輩が乗るってなると絵面がやべぇだろ……

 

「まぁタツミくんの膝の上に乗ってるサツキ先輩を見たいか見たくないかで言えばちょっと見たい気もしますね!いい写真が取れそうですし!」

「やめてください元宮先輩。俺様が社会的に死んでもいいんですか?」

「あははっ!冗談だってばー。」

 

ソファに空いていた俺様の横スペース。

そこに自然な形で座ってきつつ、元宮先輩はニコニコと人の良さそうな笑みでそう言った。

前から思ってたけど、元宮先輩も結構距離感近いよな。

今もイブキがいるとはいえ平然と隣に座ってきたし。

 

「ほら、サツキ先輩も一緒にどうですか?タツミくんの隣まだ空いてますよ?」

「え、遠慮しておくわ!」

「えーサツキ先輩、座ってくれないの……?」

 

イブキのなみだめ!

 

「うっ……」

 

京極先輩にこうかはばつぐんだ!

 

「わ、分かった座るわ!だからそんな顔しないでイブキちゃん!」

 

そう言うと、京極先輩は俺様の隣に腰掛ける。

さて、じゃあ流石に俺様が間に挟まってるのも絵面的にヤバいから俺様はどいてイブキを座らせるとしますか。

そう思った俺様はイブキの脇に手を通して持ち上げようとする。

 

「……お兄ちゃん?イブキ、まだお膝の上に座ってたいなー。」

 

が、ダメッ……!

イブキ、ここで渾身の拒否ッ……!

 

「い、イブキ?流石にこの状態は色々マズイというか……二人と一緒に座りたいならお兄ちゃんの膝の上じゃなくてもいいだろ?またやってあげるからさ。」

「やだ!イブキここが良い!」

「うごごご……」

 

ど、どうする?

流石に両隣に京極先輩と元宮先輩がいて、膝の上にイブキがいるこの状況はどう考えてもマズい。

具体的に言うと今の状況を棗先輩とかに見られると絶対零度の視線が飛んでくる。

羽沼議長は……俺様と変われとか言ってきそうだな。

それにこのソファ元々二人掛けっぽいから二人の体が近くて……あぁなんかもういい匂いとかするし!

色々ヤバいって!

 

「お兄ちゃん……ダメ?」

「駄目なわけないだろ!ずっと座ってていいぞ!」

 

はい、負けました。

兄は妹のおねだり攻撃には勝てないのである。

俺様の完全敗北だ……!

 

「あはは!まぁ別にいいじゃないのタツミくん。私は別に気にしないよ?ね、サツキ先輩?」

「そ、そうね!それに他ならぬイブキちゃんのお願いだし!それに私は別にタツミの隣なら構わないかなって……ゴニョゴニョ……

 

最後の方は蚊の鳴くような声で聞き取れなかったが、京極先輩はそう言うとふいっとそっぽを向いた。

し、しかしやっぱりこの状況はマズいんじゃないか……

 

「ふふ、両手に花だね?タツミくん。」

 

ニコニコとした表情でそう問いかけてくる元宮先輩。

やめてくれ!今必死に意識しないようにしてるから!

 

「あーっチアキ先輩!お兄ちゃんの両手はイブキの頭を撫でるのに忙しいんだよ!残念でした!」

「いやイブキ、それはそういう意味じゃなくて……」

「確かにそうだね!いやーイブキちゃんには敵わないなぁ!」

「認めるんかい!?」

 

イブキの頭をぽんぽんと撫でつつそう言う元宮先輩。

やっぱ万魔殿ってイブキ大好きクラブなのでは?

まぁ俺様の愛が一番深い自信があるがな!

 

「それでどうかなタツミくん?最愛の妹がお膝の上にいる状態で美女にサンドイッチされた感想は。」

「生きた心地しないんすけど……!どうすんすかこんなとこ棗先輩にでも見られたら……!」

「うーん……多分羨ましがりそうな気がするけどなぁイロハちゃん。」

 

羨ましがる?

あぁ、確かにイブキが俺様の膝の上に乗ってるもんな。

あの人なら「私もイブキを膝に乗せます」って言いそうだし、あながち間違いでもないか?

 

「あと、美女ってことは否定しないんだ?」

「え?そりゃまぁお二人とも美人ですからね。」

「……このスケコマシー。」

「何がですか!?」

「見てくださいよサツキ先輩このスケコマシを。ほんっとにこういうところですよね。」

「えぇ、それには完全に同意するわ。」

「何の話だよこれ!」

 

ちょっと褒めたくらいでスケコマシってなんだよ!

そもそも聞いてきたのは元宮先輩じゃん!

 

「……お兄ちゃん?誰にでもそういう事言ったらダメだよ?」

「いや言ってない、言ってないからなイブキ!?」

「ほんとに?お兄ちゃんカッコいいんだから、女の子は勘違いしちゃうんだからね?」

「それは安心していいぞイブキ!俺様なんかに勘違いを起こす女子はいねぇ!」

 

じとーっとした目でこちらを見てくるイブキに対して俺様は慌てて抗議する。

 

「ほんとにわるーいお兄ちゃんだねーイブキちゃん?」

「……うん。イブキ、お兄ちゃんのこういうところは心配だなー。」

「ほんとにねぇ、これで無自覚なんだから尚更よね。」

 

俺様を置いて何やら盛り上がっているイブキを含めた女性陣3人。……何の話だよコレ。

 

「じゃあお兄ちゃんが取られちゃわないように私たちでちゃんと捕まえておかないとね!」

「うん!」

「……イブキ?別に捕まえてなくてもお兄ちゃんはお前のこと大好きだぞ?」

「もーそれは分かってるよー!」

 

腰に手を当ててぷんぷんと言う擬音が出てきてそうな表情を浮かべるイブキ。

 

「お兄ちゃんに変な虫がつかないようにってこと!」

「変な虫?俺様に?」

 

いや、付くわけなくないか?

自分で言うのもなんだけど俺様はイブキが大好きなことだけが取り柄のただのシスコン野郎だぞ?

 

「そういう事なら心配はいらねぇぞイブキ!俺様に付く虫なんて居るわけねぇからな!」

「イブキちゃん、これはしっかり見ておかないとね。」

「……うん。」

 

何故か微妙そうな顔でそう言うイブキ。

……なんか釈然としないんだが。

 

「まぁ心配すんなってイブキ!俺様はイブキ一筋だからな!」

 

そう言ってイブキの頭をわしゃわしゃと撫でる。

 

「いや、流石に兄妹でそれはどうなのかしら?」

「愛があれば関係ないんすよ京極先輩!はっはっは!」

「えぇ……?そうなのかしら……?」

「と言うか、変な虫なんて言葉どこで覚えたんだ!お兄ちゃんはイブキをそんな子に育てた覚えはないぞ!」

「うん?えーっとね、マコト先輩!」

「あのアホ今度1発殴る!」

 

純粋無垢なイブキに何教えとんじゃあのキキキ女ァ!

 

「イブキに変な言葉を教えるんじゃねぇよ……!」

「まぁまぁ落ち着きなよタツミくん。イブキちゃんだっていつかは大人の階段を登る日が来るんだし、ちょっとくらい良いんじゃないかな?」

「イブキが大人の階段だとぉ!?いけません!俺様は彼氏なんて認めんからなイブキィィィ!」

「はぁ……ほんとにこれが無ければね……」

 

大きな胸の下で腕を組みつつそう言う京極先輩。

 

「あははっ!でも、これがないとタツミくんって感じがしませんからね!」

「それは……まぁそうね。イブキちゃんのことになると周りが見えなくなる方がタツミらしいわ。」

「それは褒められてるんすかね……?」

「何言ってるの!褒めてるわけないじゃん!」

「やっぱそうだよなチクショウ!」

 

そんなこんなで、騒がしい万魔殿での日常は過ぎていくのであった。

なお、このあと案の定羽沼議長と棗先輩に目撃されて何故か頬を膨らませた棗先輩とイブキを膝の上に乗せようとして「お兄ちゃんの方が良い!」と拒否されギャン泣きした羽沼議長に隣に座られたのはまた別のお話。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……まったく、いつも彼のそばには発情した卑しいメス猫がいるんですから。」

「その中でも特に危険なのは……彼の妹でしょうか?兄に対する愛情以上のものを感じますわね。」

「今回もゲヘナの風紀委員長が駆けつけてくるのは完全に想定外でしたわ……中々彼と二人きり、というわけには行きませんか。」

「これは……今まで以上に徹底して彼が一人になるタイミングを調べる必要がありそうですね?」

「……フフフ♡」

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