筆が乗って日常回みたいになってしまいました……ゆるして♡
あれから不知火防衛室長と当たり障りのない会話を続けていた俺様は受付の生徒に呼ばれて七神代行の手が空いたと報告されたため、不知火防衛室長と別れて連邦生徒会の会長室へと足を運んでいた。
「こんにちは、タツミ議長代理。」
「お久しぶりですタツミさん。お待ちしていました。」
「やっほータツミ。疲れてるところ悪いねぇ。」
「いえ、皆さんもお疲れ様です。」
室内には既に七神代行、岩櫃調停室長、由良木が揃っており……そして、先程まで書類を片付けていたらしい若干顔に疲労の浮かんでいる先生の姿がある。
「……あれ?先生?」
“やぁタツミ。こんちには。”
「あぁこんにちは……って、なんで先生までここに居るんだ?今日の話し合いには先生は参加しないはずだろ?」
“そうだったんだけど、私がさっきリンちゃんにお願いして参加させてもらうことにしたんだ。私だってタツミから今回のクーデターを目論んでいる黒幕の件については話を聞いてるし、協力するとも言ったからね。なら、私も一緒に混ざって話をする方が良いんじゃないかな。”
「それはまぁ……確かにそうだが。」
正直こちらとしても先生が一緒に話し合いに参加してくれるなら内容を一々纏めてモモトークで送らなくていいから楽と言えば楽だし、俺様としても先生には会談に参加して欲しかったから願ったり叶ったりではある。
先生には今朝方七神代行に送ったのと同じ内容をモモトークで送信しているし、不知火防衛室長が怪しいと言う点についての認識はここに居る人達と変わらない。
ならば一緒に話をした方がいいのは確実だし、前述した通り俺様としても元々先生にはこの会談に参加してもらえないか頼む予定ではあったけど……予想以上に先生の顔に疲労が浮かんでいるのが気になる。
そうでなくても、先生はただでさえ大量の業務を処理しつつ生徒達の悩みを解決している多忙な人だ。
これが元気そうならまだ良かったのだが、こんなに疲れている状態の彼女を付き合わせてしまうというのは……流石に気が引けてしまうからな。
「大丈夫か?さっきまで書類を片付けてたんだろ?疲れてるなら別に無理しなくても……」
“ううん、大丈夫。無理なんてしてないよ。それに私の大切な生徒達が危機に晒されているんだ。私だけが疲れを理由に黙って見ているのは出来ないからね。”
先生は笑顔を浮かべて当たり前のようにそう言った。
……そうだったな、この人はこういう人だった。
生徒のためならどんなことでも厭わず、自分がいくら疲れていようと関係なく協力を惜しまない。
そんなびっくりするほどのお人好し……それが先生だ。
本当ならシャーレに帰ってゆっくり休んでもらいたいけど、恐らく先生は俺様がそういったところで大丈夫だと言ってこの場に残ろうとするはずだ。
なら先生には疲れているのところ申し訳ないけど、ここは言葉に甘えて一緒に話し合いをしてもらうとしよう。
「ありがとう。ならよろしく頼むよ先生。」
“うん、任せておいて。”
俺様と先生は顔を見合わせながらそう言うと、ひとまずテーブルを囲むように並べてある椅子に既に着席して居る皆に習って空いている席へと着席しようとする。
……のだがテーブルを囲むように並んだ5つの席の中で空いているのは何故か左側を七神代行、右側を岩櫃調停室長が挟むように置かれている椅子のみであった。
つまり、丁度テーブルの片側に3つ並べられた席の中央しか空いていないという状況である。
その正面には先生と由良木が並んで座っているが、彼女達の隣に椅子は無く2人分の椅子が置かれてそこに二人が着席しているのみであった。
(えっと……いや、なんで?)
そのあまりにも不自然な状況に俺様は首を傾げる。
いや、席が5つピッタリ用意されていてそのうちの1つだけが空席なんだからあそこが俺様のために空けてくれている席だってのは見れば分かるぜ?
けど、一体全体何故その席が七神代行と岩櫃調停室長の間なんだよ。おかしいだろ、こういうのって普通は端の方に詰めて座るもんじゃないのだろうか……?
……そう言えば、この前先生を抜いた4人で話し合いをした時に七神代行と岩櫃調停室長の二人のうちどちらが俺様の隣に座るかで一悶着あったことがあった。
その時は呆れた顔の由良木が「私の隣に座れば?」と言って渋々事が収まったのだが……もしかすると、今回のこれは七神代行と岩櫃調停室長が揉めないために事前に用意しておいた対策だったりするのだろうか……?
(……まぁ、今は考えていても仕方ないか。)
いずれにしろ俺様が席につかないと話し合いを始められないだろうし、女性の間の席に座るのに抵抗があるとは言え流石に立って話を聞くのは彼女達に失礼だからな……
そう考えた俺様はとりあえず空いている席へと移動すると、そのまま椅子を引いてその席へと着席した。
その瞬間、両隣から漂ってくるふわっとした甘い香り。
(……無心だぞ俺様。気にするなよ。)
俺様は心の中でそう呟くと、平静を保つ。
……と言うか、座る前から思ってたけどこの席って隣の七神代行と岩櫃調停室長との距離が近すぎないか?
腕なんてちょっと動かしたら当たっちゃいそうだし、普通はもっと距離を離すもんじゃないかと思うんだけど……
現に先生と由良木はわりと適切な距離を開けて座っているわけだし、同性同士でも近いなぁと思う距離なのに異性の間でこれはマズいとしか言えないのでは……
(……あまり意識しないようにしておこうかね。)
まぁ、考えても今はどうにもならないだろう。
着席した俺様は身につけているブークリエと盾の肩掛けベルトを外しそれをそっと床へ置く。そして目線をテーブルの上へと上げる時に、ふと七神代行と目が合う。
彼女の顔には隠しきれない疲労が浮かんでおり、目の下には大きなクマができていることからも彼女が明らかに眠れていない事は誰の目から見ても明らかだった。
連邦生徒会の膨大な仕事に加えて、今は黒幕の捜索にも手を付けている彼女のことだ。
きっと寝る間も惜しんで働いているに違いないし、それに加えていつ黒幕に寝首をかかれてもおかしくない状況を加味すると……ただでさえ確保するのが難しいであろう睡眠時間の、その短い時間の間ですら不安で満足に眠れないであろう事は日を見るよりも明らかだった。
彼女の整った美しい顔をこんな風に歪めてしまう黒幕に対する怒りを抑えつつ、俺様はそんな表情を浮かべている七神代行に対して口を開いた。
「大丈夫ですか七神代行。かなり疲れているようですけど、最近ちゃんと眠れてますか?」
「……大丈夫ですよ、タツミ議長代理。」
「いや、でも……」
「……確かに本音を言えば少しだけ疲れてはいます。ですが、今は休んでいる場合ではありませんからね。いずれにせよ早急に黒幕を見つけなければ本当の意味で安心して休むことは叶わないでしょうから。」
「確かにそれはそうかもしれませんけど……無理だけはしないでください七神代行。貴方がもし倒れれば悲しむ人は大勢いるんですから。もちろん、俺様だってその1人ですしね。ご自身の体は大切にしてください。」
「……ふふ、はい。そうさせていただきます。お気遣いありがとうございます、タツミ議長代理。」
俺様の掛けた言葉に対して、七神代行は明るい表情になると心底嬉しそうにそう言ってくれた。
……良かった、ひとまず少しは元気が出たようだ。
“……いや、タツミがそれを言う?”
「仕方ないよ先生。無自覚なんだからさ。」
“はぁ……なんで人のことはあんなに心配できるのに自分の事は傷だらけでも気づかないんだろうね……”
「いやぁ、良くも悪くもタツミらしいね〜。」
なお、そんな俺様と七神代行のやり取りを見て向かいに座っている先生と由良木がコソコソと何かを話しているが声が小さすぎるため聞き取ることは出来なかった。
そんな彼女達の姿に首を傾げていると、突然俺様の右の服の袖をくいくいと引っ張られる感覚を覚える。
その感覚に反射的にそちらを向くと、そこにはどこかむくれた顔を浮かべている岩櫃調停室長の姿があった。
「……岩櫃調停室長?どうかしましたか?」
「いえ、入室してきた時から気になっていたのですが……タツミさん、その首の絆創膏は一体どうしたのですか?」
俺様の首元に貼られている絆創膏を指さし、岩櫃調停室長は頬を膨らませながら拗ねたようにそう言ってくる。
……しまった、先生と七神代行には不知火防衛室長の事を伝える時にモモトークで絆創膏の件も疑われないように前もって言っておいたんだけど岩櫃調停室長や由良木には伝えていなかったのをすっかり忘れていた……!
「あ、あぁこれは昨日ちょっと揚げ物をしていた時に油が跳ねて火傷をしてしまいましてね……悪化するとダメなので、こうして保護している次第です。」
「え……揚げ物ですか?」
「はい、エビフライを作っていたんですけど尻尾の水を抜くのを忘れていて油がこう……ボン!って跳ねてしまいまして、それがここに直撃してしまったんですよ。いやーお恥ずかしい限りです。」
ハハハ、と乾いた笑いを浮かべながら俺様は絆創膏をトントンと指で叩きながら説明するが……
岩櫃調停室長はどこか納得の行かないという表情を浮かべると、その特徴的なタレ目かつ緑色の瞳で俺様を見据えながらすっと目を細めつつゆっくりと口を開く。
「……でも、いくら熱い油が首に跳ねたからと言ってそこまで大きな火傷をするものでしょうか?」
首をかしげつつそう言う岩櫃調停室長。
その声のトーンは先程よりも一段階低くなっており、俺様の言葉を疑っていることが伺えた。
そのただならぬ様子に俺様の背中に嫌な汗が流れる。
「い、いや……別にそこまで大きな火傷って訳じゃないんですけどほら、火傷してしまうと患部が結構痛痒いじゃないですか?なので無意識に掻きむしって悪化すると良くないってのもありますし、それに俺様はヘイローがなくて肉体強度も低いので念のためってだけですよ。」
「ふぅーん?そうなんですね……?」
……まずいな、こりゃ完全に疑われている。
何で拗ねたような表情を浮かべているのかは分からないしそんなに怒ったような視線を向けてきているのかも不明だけど、岩櫃調停室長のすっと目を細めて怪訝そうに絆創膏を見る目からして疑われているのは明らかだろう。
いやまぁ俺様だって苦しい言い訳なのは百も承知だけどこの下のワカモから付けられたものを見られるわけには行かないからな……くっ、その場の勢いだけでこんなもん付けやがって……!後で説教してやるからなワカモ……!
「はいはーいアユム先輩。その辺りにしとこうよ。別にタツミの説明におかしな部分はないし、タツミは明太子チップスを作れる程には料理上手なんだから別に普段から料理してるのはおかしいことじゃないんじゃない?」
なおも食い下がってくる岩櫃調停室長にどう言い訳をするか悩んでいると、それまで黙々と明太子チップスを食べていた向かいの席の由良木から助け舟が出された。
「この前だっていつもお世話になってるからってわざわざ私に手作りの明太子チップス作って持ってきてくれたしね。いやー、タツミって本当に律儀だよねぇ。」
“アユム、私もモモカと同意見だよ。確かにタツミはちょーっと女の子を誑かすのが上手だからアユムが心配する気持ちは分かるけど、その絆創膏の下には本当に揚げ物の時の火傷の傷がついているだけだと思うからさ。”
続けて、先生も由良木に続いて助け舟を出してくれる。
……いや先生。確かに助けてくれるのはありがたいんだけど女の子を誑かすのが上手いってどういう意味だよ……!
流石にそれは聞き捨てならないんだが……!?
“それに、いくらタツミが女の子にモテモテだからって流石にそんな場所に目立つ印を付けるほど後先考えないことはしないと思うよ?現状タツミとそういう事をしてる子はいないって私は聞いているし、心配しすぎなんじゃないかなって思うけどなぁ。”
おい、それはどういう意味だよ先生。
……悪かったな、後先考えない大バカ野郎でよ。
くそ、口を挟みたい。口を挟みたいけど下手なことを言えば自殺行為になりかねないだけにもどかしいぜ……!
「……そうですね。すみませんでしたタツミさん。疑うようなことをしてしまって。」
俺様が心の中でそんな風に悶々としていると、そんな彼女達の言葉を聞いて納得してくれたのか岩櫃調停室長は先程までのむくれた表情を申し訳なさそうな表情へと変えると俺様へ向けて謝罪をする。
「いえ、大丈夫ですよ岩櫃調停室長。俺様は別に気にしていませんから、どうぞお気にせずに。」
彼女からの謝罪を受けた俺様は頭を上げてくれとジェスチャーしつつ、笑顔を浮かべながらそう言った。
「ふふっ、ありがとうございますタツミさん。」
そんな俺様からの言葉を聞き、岩櫃調停室長は柔らかく口元に手を当てて笑いながらそう言った。
……良かった、ひとまずはなんとかなったようだ。
助け舟を出してくれた先生や由良木には後で感謝しておかなければいけないだろう。
騙していることに対して心がチクリと痛むけど……ワカモとの関係を知られるわけには行かないからな。
……そう言えばだけど。
先程からやけに七神代行が静かなのが少し気になるな。
前に会ったときも絆創膏の件に関しては突っ込まれたからてっきり今回も何か言われるんじゃないだろうかと内心ドキドキしていたけど……どうやら杞憂だったようだ。
恐らくだけど、前もって絆創膏の件を伝えておいたのが功を奏したのだろう。
まったく、心臓に悪い。
気分はまるで浮気した男の気分だぜ……
とりあえず岩櫃調停室長からの追求をかわしてほっとした俺様は手元に用意されていたグラスの水を煽り、軽くその場で息を吐いた。
「でも気をつけてくださいねタツミさん。先程ご自分でもおっしゃっていましたけど貴方にはヘイローがないんですから、どうかご自愛くださいね?」
そう言うと、片方の手を腰に当ててもう片方の手で人差し指を立てて俺様の顔へ持ってきながら岩櫃調停室長は普段のほわっとした感じで俺様にそう言ってきた。
「はい、次からは気を付けることにします。ご心配をおかけしてすみませんでした岩櫃調停室長。」
その言葉に対し、俺様は返す言葉もないと言ったような様子でそんな言葉を口にした。
先程までのどこか拗ねて不機嫌な様子の彼女からいつもの彼女の雰囲気に戻ってくれたことに安堵しつつ、俺様は岩櫃調停室長と顔を合わせてお互いに笑い合う。
しかし岩櫃調停室長って笑うと本当に上品なんだよな。
背中の羽と言いおしとやかな雰囲気といい、恐らく彼女の母校はトリニティなのだろうと言う事が予想される。
連邦生徒会は色々な学校から人材が集まって出来た組織だから幹部の特徴も様々なんだよな。
ある意味、前世で言う多国籍軍と言えるだろう。
「……そうですよ、タツミ議長代理。」
そんなやり取りを岩櫃調停室長としていると、突然俺様の左側に座っている七神代行が口を挟んできた。
言葉がかけられたことにより俺様は反射的にそちらの方を振り向くと……そこには、妙な威圧感を醸し出しつつニコニコとした笑みを浮かべた七神代行の姿があった。
「あ、あの……七神代行?」
「ふふ……今回は幸いにも【軽い火傷】だけで済んだから良かったですけど……次からはくれぐれも充分に気をつけて下さいね?タツミ議長代理は無防備なんですから、いつどこで誰が狙っているか分からないので……ね?」
彼女から感じる威圧感に俺様が気圧されていると、七神代行は俺様にずいっと顔を近づけてきながらドロドロと濁った目をこちらへ向けながら静かにそう言ってくる。
「い、いや……別に料理をしてただけなんですから狙ってるとかは関係ないのでは……」
「気 を つ け て く だ さ い ね ?」
「……はい、分かりました。」
その尋常ではない様子に背中に嫌な汗が流れるのを感じつつも、俺様はその場でコクコクと頷いた。
ー今のこの人に逆らってはいけないー
なぜかは分からないが俺様は直感的にそう感じていた。
……ヤバい。こいつはヤバい。
さっきの岩櫃調停室長が可愛く見えてくるほどに、この人は今とてつもなくヤバい状態だと言っていいだろう。
なんだこの雰囲気は。いつもの七神代行じゃねぇ。
もしかして残業しすぎておかしくなっちまったのか……?
軽い火傷と言う言葉をやけに強調していたのが少し気になるが、そんなことは最早どうでも良かった。
流石にヤバいと感じた俺様は先生と由良木へ助けを求めるが、向かいに座っている先生は七神代行を見て苦笑いを浮かべており由良木はどこ吹く風と言った様子で明太子チップスをバリバリと食べながら眠そうにしている。
くっ、ダメだ。これでは助け舟が望めそうにない。
そもそもさっき一回助けてもらったわけだし、ここは俺様自身でなんとかするしかないのか……!?
「あ、あの……七神だいこ……」
「もうリン先輩。いくら不安だとは言え、あまりタツミさんを怖がらせてはいけませんよ?」
七神代行のそんなただならぬ様子に背筋に寒気を感じつつもなにか言葉を絞り出すために口を開こうとすると、流石にこの状況を見かねたのか岩櫃調停室長がひょっこり顔を出すとそう言って口を挟んでくれた。
(な、ナイスです岩櫃調停室長……!)
ただならぬ様子の七神代行に対してもいつも通りの柔らかい口調でそう声をかける岩櫃調停室長に安心しつつ、俺様はほっと胸をなでおろす。
……あれ、でも岩櫃調停室長今不安だからって言ったか?
不安ってどういうことだ……?
「甘いですよアユム。釘を刺しておかなければどこの泥棒猫にまた彼を傷つけられるか分かったものではありません。彼にはしっかり自衛してもらわないと。」
(いや自衛って何から自衛をするんですか……!?)
「むぅ……リン先輩がタツミさんの事を大切に想っているのは分かりますけど、私だってそれは同じ気持ちなんですからね?」
そう言うと、岩櫃調停室長は俺様に体を寄せてきたかと思うとそのまま身を乗り出すようにして七神代行にそう言葉をかけるが、俺様の右隣に座っている彼女が左隣に座っている七神代行へ身を乗り出すということは必然的に彼女の体が俺様に密着するわけでだな……!
「ちょ、ちょっと岩櫃調停室長!?」
俺様は唐突なことに大声を挙げながら椅子を引こうとしたが……このまま椅子を引いてしまっては支えを失った岩櫃調停室長が床へ激突するかもしれないと思い、とっさに後ろへ引こうとしていた腰を元へ戻す。
そして、なるべく彼女と密着しないように限界ギリギリまで背もたれへ体を押し付けるが……押し付ければ押し付けるほど、なぜか岩櫃調停室長もこちらへグイグイと体を押し付けてきた。
ワカモのものとはまた違う、それでいて確かな柔らかい感覚と甘い香りが俺様に襲いかかってくる。
“おぉ、いつも引っ込み思案のアユムがなんて大胆な……”
「……ねぇ、今日集まったのって話し合いするためじゃなかったの?私は一体何を見させられてるのさこれ。」
そんな彼女を見て感心したようにそう呟く先生と、呆れたような表情でテーブルに突っ伏す由良木。
いや、俺様だって出来たらさっさと本題に入りたいんだけどマジでなんなんだよこの状況……!?
「……アユムだけずるいです。」
そんな訳の分からない状況に俺様が目を白黒させていると、先程までのただならぬ雰囲気はどこへやら。
すっかり元のクールで落ち着いた雰囲気に戻った七神代行が、拗ねたような表情でそう言いながらそのダイナマイトボディを俺様へグイグイと押し付けてくる。
「いやずるいって何が……ちょ、ちょっと七神代行!?」
「ねーイチャイチャするのはいいけどさー。とりあえずさっさと本題に入らない?」
「いや別にイチャイチャなんてしねぇんだが!?と言うか由良木の言うとおりですよ二人とも!ここはさっさと本題に入って黒幕を探し出す対策を練らないと……」
まったくわけが分からず、それでいて2人の女性の違う柔らかさと香りを直接ぶつけられている俺様はしどろもどろになりながらそう言葉を絞り出すが……残念ながらその声は二人には届いていない様子だった。
「……負けませんからねリン先輩。」
「いや負けないって何がですか岩櫃調停室長!?」
「ふふ……望むところですよアユム。」
「あーもうわけわかんねぇよ!頼む助けてくれ先生!」
“……うん、タツミは一回刺された方がいいんじゃない?”
「いや何言ってんだよ先生!?先生!おい先生!そんな諦めたような表情してねぇで助けてくれ先生ェ゙ーッ!」
そんな俺様の必死の叫びも虚しく、その後も俺様はしばらく七神代行と岩櫃調停室長にわけも分からずもみくちゃにされるのだった。
正直生きた心地はしなかったけど、七神代行や岩櫃調停室長はとても楽しそうだったので……彼女達の普段の疲労を少しでも和らげられたのなら、まぁ良しとしておこう。
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「……ウフフ♡ウフフフフフ♡」
「情報収集のためにこのビルの上から連邦生徒会の一室一室を双眼鏡で覗いて調べていましたが……ウフフ、まさかこんなとんでもない物が見えてしまうとは……」
「あれは連邦生徒会代行と……連邦生徒会の調停室の室長ですね。薄汚い手で私のタツミさんに触るだけでは飽き足らず下品な体を押し付けて彼を誘惑するとは……なんと浅ましくて卑しいメス猫達なのでしょうか。」
「普通なら万死に値することですので即刻始末したいところですが……他ならぬタツミさんが共に守って欲しいと仰った相手ですからね。非常に不本意ではありますが……今回だけは見逃して差し上げるといたしましょう。タツミさんの寛容さに感謝することですね。」
「ですが……これは帰ってきたらしっかり【上書き】をしないといけませんね?タツミさん?♡」
次回こそ、本題の黒幕の尻尾を掴むための会議編です