果たして協力を取り付けることは出来るのか……
あの会議から数時間後のこと。
俺様の発言により今回の事件を解決するためにRABBIT小隊の力を借りることにした俺様達は、RABBIT小隊の面々へ協力を要請するため子ウサギ公園を訪れていた。
そして辺りが真っ暗な闇に包まれる中で俺様と先生、月雪達RABBIT小隊の面々は彼女達のテントの前で焚かれている焚き火を囲みながら全員が全員お互いに難しい顔をしながら向かい合っている。
「……という訳なんだ。」
「なるほど、それで私達を尋ねてきたわけですか。」
一通り今回のヴァルキューレやカイザーとの癒着の件に関しての事情を説明し終えた俺様が息を吐くと、それに応答するかのように月雪も同じくため息を吐き出す。
ふと目の前の轟々と燃える焚き火に目を落とすと、ゆらゆらと揺れる陽炎が少し心を穏やかにしてくれた。
「あぁ。この前の浸水で生活の立て直しを図っている大変な時期にこんな事を頼むのは気が引けるんだが……それでも今頼れそうなのがお前達しかいなくてな。」
俺様はチラリと月雪達の後ろに貼られているテントに目をやりながら発言する。
どうやら豪雨からは少し経っているのと先生の助力もあったおかげで思ったよりはテントの修復は進んでいるようだけど、それでもメインのテント以外は未だに浸水の被害を受けている様子がありありと見て取れる。
RABBIT小隊の面々からすればひとまずは自分たちの生活の基盤の立て直しを図らなければならなのに、いきなりヴァルキューレへ忍び込むのを手伝ってくれなどと言われても……と言う話なのは重々承知の上だが、それでも前述通り今頼れそうなのはRABBIT小隊くらいしかいないのもまた事実ではあるのも確かだ。
元SRTのエリート部隊で実力があり、並々ならぬ正義感を持ち、そして所属がフリーなおかげでヴァルキューレへ喧嘩を売りに行っても外交問題にならない部隊……現状、そんな部隊はRABBIT小隊くらいしかいない。
本来ならば俺様がヴァルキューレへ乗り込んでいきたいところなのだが、俺様は仮にもゲヘナの議長代理だ。
そんな立場の人間がヴァルキューレへ忍び込めば理由はともあれ追求は避けられないだろう。
そのため彼女達の協力が得られないなら最後の手段として正体を隠した俺様とワカモの二人で潜入するしかないが、それは流石にリスクが高すぎるからな……
ちなみにRABBIT小隊の面々には黒幕がクーデターを企んでいることと、恐らく今回のヴァルキューレとカイザーの癒着の件が裏で繋がっていることは説明済みだ。
月雪達も最初は信じられないというような表情をしていたものの連邦生徒会に襲撃があって七神代行派の議員が病院送りにされていること、七神代行と仲が良い俺様が襲われたこと、そして今回のヴァルキューレとカイザーの癒着と順序立てて話すと思うところがあったのか渋々だが四人全員が納得はしてくれた様子だった。
なお、連邦生徒会や俺様を襲撃してきたのはFOX小隊だと言うことは彼女達には伏せてありあくまでも襲撃者は黒幕の雇った私兵部隊だと言う風に説明をしている。
これから協力を得ようという相手に嘘をつくのは申し訳ないけど、今その事を彼女達に伝えてしまっては彼女達の精神に多大な影響が出るのは確実だ。
それにFOX小隊は元SRTだから、現状は黒幕が動かしている私兵部隊と呼んでも決して間違いではないと思うのであながちまるっきり嘘ってわけでもないだろう。
……まぁ、罪悪感がないと言えば嘘にはなるけども。
「大変な時期にこんな面倒事に巻き込んじまうのは申し訳ないが……頼むみんな。力を貸してくれないか。」
“みんな、私からもどうかお願い出来ないかな?”
俺様と先生は立て続けにそう言うと、その場で焚き火を囲んでいるRABBIT小隊の面々へ頭を下げる。
「……事情は理解したけど、正気か二人とも?お前たちの立てた作戦ではヴァルキューレの本部へ乗り込むって言っているようだけど、あの要塞に一体何百人のヴァルキューレ生が居ると思ってるんだ?。仮に私達に支援があったとしてもかなり厳しい話だとしか思えないぞ。」
そんな俺様と先生の言葉を聞き、胸の下で腕を組みながらそれまで黙って俺様達の会話を聞いていた空井が顔をしかめながらそう発言する。
「それに関しては私もサキに同感かな。タツミの話が本当なら帰る場所のない私達を利益のために追い出そうとしてるヴァルキューレとカイザーには心の底からむかつくけど、私達の今の装備は浸水した火器を売ってなんとか手に入れた型落ちの武器ばっかりだしねぇ……」
「い、今の私達の力じゃ多分即座に拘束されて一生狭い檻の中で暮らすことに……うぅ、そして私は誰からも気づかれずに忘れられていくんだ……」
続いてこれまた空井と同じく顔をしかめた風倉と、半泣きになり今にも泣き出しそうな表情を浮かべている霞沢の二人からもそのような言葉が飛び出た。
確かに風倉の言う通り、彼女達の今所持している武器はこの前浸水してしまい使い物にならなくなったSRT製の火器類を売って手に入れた型落ちの武器ばかりらしい。
だから、SRT製のものに比べれば火力も精度も低いから頼りないと言うのは充分に理解できるけど……
と言うか霞沢はまだネガティブになってんなこれ、別にお前達の実力ならそんなことにはならんだろ。
「と言うか、別に普通に通報すれば良くない?」
「一体どこへ通報するんだ?まさかヴァルキューレが不正を働いているから取り締まってくれってヴァルキューレに言うつもりじゃないだろうな?」
「……確かにそれはそうだけど。」
「3人とも。さっきも説明したけど今回お前たちに協力してほしい任務は何もヴァルキューレと真正面からドンパチやらかそうって任務じゃない。バレないようにこっそり侵入して、証拠だけを抜き取ってしまう……いわばスニーキングミッションってやつだ。」
「それはさっき説明してもらって理解したけど、いくらスニーキングミッションとは言えヴァルキューレ本部には詰めている兵隊以外にも監視カメラや防衛システムが大量にあるだろ。それは一体どうするんだ?」
「それに関しては心配ない。お前達には電子戦ならば右に出るものはいないくらい優秀な隊員がいるじゃないか。なぁ風倉?」
空井をの言葉を受けた俺様はそう言うと、大きな胸の下で腕を組んでいる風倉を見据えながらそういった。
「確かにヴァルキューレのサーバーはローカルサーバーだからそこへ直接ハッキングを試みるのは不可能だろう。けど監視カメラや防衛システムに限って言えばそうじゃないはずだ。そこを無力化さえしてしまえば侵入は可能になる……そうだろ風倉?」
「それはそうだけどさ、ヴァルキューレ内の監視カメラって一体どれだけの数があると思ってんの?防衛システムだってハッキング自体は可能だろうけどアクセスできるまでにかなり時間を要しそうだし、ハッキング出来たとしてそんなに長くは持たないと思うけど。」
「作戦内容はバレないように潜入して証拠を抜き取るだけだから、最悪1時間……いや、30分あれば問題ないだろう。それに監視カメラが多かろうが何もすべてを無力化する必要はないだろ。潜入ルートのカメラだけ潰してくれればこっそり忍び込むことは可能だろうしな。」
「それならまぁ、私ならできないことはないけど……」
俺様は風倉に対してそう問いかけるが、風倉は苦い表情を崩そうとはせずにそう言った。
「そもそもの話、何で私達が連邦生徒会長代行のためにそんな危険なことをしなくちゃならないんだ。お前には飯を食わせてもらった恩義があるし先生にはなんだかんだ世話になっているから私は別にいいけど、あの代行はSRTの閉鎖を決めた張本人だぞ?何で私達がそんな奴のために貴重な弾薬を使ってまで……」
「……だったら、大人しく諦めてテントを畳んでこの公園から出ていくつもりか空井?」
「……なんだって?」
険しい表情でそういう空井に対して、俺様は真剣な表情を浮かべながらそんな言葉を口にする。
「お前ら、月末までにこの公園から退去するようにって尾刃局長から言われてんだろ?という事は、お前達はこのままだと月末までには荷物をまとめて生活拠点であるここから出ていかなくちゃならないわけだ。そうなった時に、お前達にどこか行く宛があるってのか?」
「そ、それは……」
俺様が視線をぶつけながらそう言うと、空井はバツが悪そうに視線を焚き火へと落とした。
「この公園はお前達が必死に努力して手に入れた居場所なんだろ?それをカイザーなんてクズに奪われてもいいって言うのか?確かに今回の任務は七神代行を救うためでもあるが、同時にカイザーの手から子ウサギ公園を……ひいては子ウサギタウンを守るためでもあるんだよ。」
そう、何も今回の任務は七神代行や俺様の身だけが可愛くてこいつらに協力を要請しているわけではない。
今回に限って言えば、こいつらRABBIT小隊に対してもメリットを約束できるからこそ協力を頼んでいるのだ。
というのも仮にヴァルキューレとカイザーが何らかの取り引きを行った証拠が世間に露呈すればヴァルキューレはともかく、カイザーは世間の火消し対応に追われて子ウサギタウンの再開発どころではなくなるだろう。
そうなれば再開発の話は有耶無耶になることは確実だろうし、結果的に子ウサギタウンや子ウサギ公園の撤去は保留……更に言えば、ヴァルキューレがRABBIT小隊を追い出す大義名分だって失われるはずだ。
つまり今回のこの任務は黒幕を追い詰める戦いであると同時に彼女達の居場所を守るための戦いでもある。
「俺様はな、お前達がどれほど子ウサギタウンの住人から信頼を得るのに頑張ったか知ってるつもりだ。お前らが泥みまみれながらも努力して手に入れた場所を再開発で得られる利益なんかのために潰されてたまるかよ。」
そう、俺様達はこいつらが子ウサギ公園に滞在するためにどれだけ努力を重ねたかを知っている。
最初は冷めた目で見られながらも近所の子ウサギタウンの住人たちと交流を図ってボランティアを続け、徐々に信頼を勝ち取って今では余り物を分けてくれたり仕事を依頼してくれるほどの仲になっているんだ。
正直、暗殺なんてものを請け負っているFOX小隊なんかよりも余程真っ当にSRTの復興へ向けて支持を得ることを頑張っていると言っても決して過言ではないだろう。
「今回の件は連邦生徒会だけの問題じゃない。ヴァルキューレとカイザーの癒着が明るみに出れば、当然連中はその対応に追われるだろう。となると最早子ウサギタウンの再開発のことなんて後回しにせざるを得ない。それはつまりお前たちの居場所を守ることにも繋がる。更に言えば今回は正面から殴り合うわけじゃなくて潜入任務だし、付け加えるならそこに今回はシャーレや七神代行のバックアップも加わる。」
「先生や会長代行のバックアップ……ですか?」
「あぁ、そうだ。」
月雪の問いかけに俺様は首を縦に振ってそう言った。
そう、今回俺様が立案したこの潜入任務に関しては先生や七神代行に事情を話してあるため彼女達からの全面的なバックアップを受けることを取り付けてあるのだ。
「だから、今回の任務に限っては一時的に七神代行が先生と連携してシャーレの権限で正式な任務として承認されている。つまりこれはSRTとしての正式な仕事であり任務の依頼ってことになる。」
「SRTの……正式な仕事……」
「あぁ。だから何かあれば今回の任務は先生や七神代行が後ろ盾になってくれるし、もちろん俺様だって全力でお前達をサポートするつもりだ。」
焚き火を囲むRABBIT小隊のメンバーを1人1人ぐるりと見渡しながら、俺様は静かにそう告げていく。
「ヴァルキューレが私企業と結託して不正行為を働こうとしている……その可能性は高い。ほぼ間違いないと言っても過言ではないはずだ。でもその可能性がどれだけ高くてもここまで来たらもう正規の方法での解決は不可能なんだ……だからヴァルキューレ本部へ潜入し、確実な証拠を掴む。まさにSRTとして介入するべき事だろ?」
俺様のそんな呼びかけに対し、RABBIT小隊の4人はハッとしたような表情を浮かべると俯けていた視線を上に上げて俺様の事を見据える。
「もちろん嫌なら無理にとは言わない。無茶苦茶なことを頼んでいるのは俺様も理解している。だから、お前達の協力が得られないなら俺様は信頼できるツテを頼ってそいつとヴァルキューレへ潜入するつもりだ。」
「……理解できません。私達と貴方はそこまでの仲というわけでもないでしょうに。」
「なーに、俺様とお前らは同じ釜の飯を食った仲じゃないか。確かに付き合いは浅いけど、俺様はお前達のことは友達だと思っているからな。そんな俺様の大事な友達が居場所を奪われようとしている上に、俺様の大切な人達まで傷つけられようとしてるんだぜ?そんなものを黙って見ていられるわけがないだろう。なぁ?」
そう、RABBIT小隊の面々は確かに最初は敵だったし今でも生意気でムカつくことが多いけど……それでもなんやかんやで気安く接することが出来る、俺様にとっては数少ない同級生の友人なのだ。
だからもちろん七神代行を守るためというのはあるけど同時にこいつらの居場所を守ってやりたいというのも俺様の中にある気持ちとして嘘はないと断言できる。
SRTが廃校になって、ヤケになってテロ紛いのことを犯しちまったこいつらだけど今はしっかりと反省して子ウサギタウンの住人からの信頼を得ることが出来るくらいの立派な顔つきになったんだ。
そんな彼女達の居場所がなくなろうとしているなら、協力しない理由なんて無いだろう。
「SRTはキヴォトスにおけるあらゆる犯罪行為に対して真っ先に投入される特殊部隊だろ?今回の取り引きは完全なる違法行為だ……なら、それを元SRTであるお前たちが見逃して良いのか?SRTの復興を掲げている、お前たちが見逃しても良いことなのかよ?」
俺様は月雪達の目に一人一人視線をしっかり合わせ、真剣な表情で力強くそう問いかけていく。
そんな俺様の発言を聞き、先程までは気後れしていた彼女達の目には確かな情熱が宿っていくのを感じる。
「だから行こうぜ、RABBIT小隊。お前たちの掲げるSRTの正義を……その信念を俺様達に見せてくれ!」
そして俺様は最後にそう言うと、隊長である月雪へ向かって右手を差し出した。
その手を見た月雪はしばし迷っていたが……やがて彼女はふっと笑みを浮かべると、俺様の手をしっかりと掴む。
「分かりました。その任務、お引き受けしましょう。」「……ありがとう、恩に着るぜ。」
「いえ。まさか貴方にSRTとしての吟二を説かれることになるとは思いませんでしたが、確かにその通りです。私達はSRT所属のRABBIT小隊なのですから。」
月雪は俺様の目をまっすぐに見つめながらそう言った。
……いい顔になったな。この分ならもう大丈夫だろう。
「あ、ですが勘違いしないでください。私達は自分の居場所を守るため、貴方は大切な人達を守るため……今回はあくまで貴方と利害が一致したから協力するだけですからね。決して貴方が料理を作ってくれたから絆されたわけではないので、そこは忘れないで下さい。」
「あぁ、それでいい。こっちだってお前達を利用するような形で頼んでいるわけだからな。互いの目的のために思う存分お互いにこき使ってやろうぜ!」
「……本当に変な人ですね、貴方は。」
「おう、よく言われる。」
「……ふふっ。」
俺様が親指を立てながら笑顔を浮かべてそう言うと、それに釣られたのか月雪は若干苦笑いではあるものの同じくニコリとした笑顔を浮かべてそう言った。
うんうん、やっぱり女の子にはしかめっ面ではなく笑顔が似合うと思う。特に月雪は普段はずっと仏頂面だから分かりにくいけど、笑うと可愛いんだからもっと遠慮なく笑えばいいのにと思うことが多々あるからな。
「よーし!そうと決まればやってやろうじゃん!」
「SRTを解体した会長代行のためってのは気に入らないけど……確かにタツミの言う通り私達の居場所をくれてやるのは癪だからな。やれるだけのことはやってやるさ。」
「う、うん……私も頑張る……!」
月雪のそんな姿勢に感化されたのか、空井達三人もそれぞれ笑顔を浮かべると力強くそう宣言をした。
「はい。ヴァルキューレでトラブルがあった時にそれを調査する上位機関がSRTです。復興を目指す身として、今回の連邦生徒会からの正式なバックアップのある任務をこなすことはSRTの復興に必ず繋がるでしょう。」
「あぁ、俺様からもきちんとお前達の活躍を伝えると約束しよう。頼むぜRABBIT小隊。SRTのエリート部隊の実力……是非俺様と先生に見せてくれ!」
「えぇ。貴方に言われなくても。」
互いに笑顔を浮かべ、そう言葉をかわす俺様と月雪。
その後、俺様達はバチバチを音を立てて燃える焚き火を囲みつつ作戦内容について打ち合わせを行うのだった。
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「それでは、この手筈で進めたいと思いますが……」
「あぁ、構わないと思う。いい作戦だ月雪。流石は隊長を務めているだけのことはあるな。」
「貴方に褒められても嬉しくありませんが……まぁ、少しだけ感謝はしておきましょう。」
「……そういや、テントの復興の方は順調か?」
「はい。先生や子ウサギタウンの方々からの助力もあってどうにか寝泊まりするテントの修復は先日完了しました。後は武器や食料を保存しておくテントの復旧を急がなければなりませんが、そちらも近いうちに終わるでしょう。」
「そうか……その、悪かったな。お前達がそんな目に合っているにも関わらず助けてやれなくて。」
「……別に貴方が謝ることではないでしょう。貴方だってゲヘナの生徒会の仕事で忙しい中、私達の生活が安定するまではわざわざ料理をしに来てくれていたんです。感謝こそすれど、恨む理由がありません。」
「それでもだよ。あの豪雨は相当なもんだったし、お前達だって相当苦労したはずだ。月雪。お前は認めてくれないかもしれねぇけど、俺様はお前のことは大切な友達だと思ってる。友達が困っているのに手を貸せなかったって言うのは……俺様にとっては許せないことだから。」
「……その気持だけで充分ありがたいですよ。まったく、さっきまではあんなに自信満々に腹の立つドヤ顔を浮かべていたんですから急にしおらしくならないでください。調子が狂うではありませんか。」
「なっ……誰が腹の立つドヤ顔だって!?あれはお前達に発破かけるためには俺様が自信なさげだったらダメだって思ったからやっただけだバカ!」
「ふふっ、ならそのままその清々しいくらいのドヤ顔を浮かべていたらいいじゃないですか。少なくとも、さっきまでの落ち込んでいる顔よりはよっぽど貴方に似合っていると思いますよ?」
「こ、この野郎っ……!!!」
「……ふふっ♪」
(“なんだか楽しそうだね。うんうん。いいことだ。”)
「タツミ。飯を食わせてくれたことには感謝しているけど、任務となると話は別だ。私の足を引っ張るなよ。」
「ハッ、よく言うぜ空井。そっちだって頭に血が上って敵陣突撃なんかすんなよ?今回の任務はあくまで潜入任務、戦闘はしないにこしたことはないんだからな。」
「わ、分かってるわこのバカ!まったく、お前は私をなんだと思ってるんだ!?」
「え?すーぐ頭に血が登るイノシシだけど。」
「ぶっ飛ばされたいのかお前ェ!!!」
「まーまー冗談だって。けど、ドンパチやらかすわけじゃないとは言えやむを得ず交戦せざるを得ない場面は来るかもしれねぇからな。そうなった場合は……ポイントマンとしての実力、しっかり見せてくれよ?」
「……フン!お前に言われなくたって、嫌って言うほど見せてやるよ!後で吠え面をかかないことだな!」
「わんわん。わぉーん。」
「おいコラァ!!!バカにしてるだろタツミィ!!!」
“タツミー?あまりサキをいじめちゃダメだよー?”
「んじゃ、監視カメラや防衛システムのハッキングは私に任せてよ。ちょちょいっとやっちゃうからさ。」
「そいつは頼もしいな。頼りにしてるぞ風倉。」
「そりゃもう頼りにしちゃってよ!あ、そういえばさータツミ。後でまた肩のマッサージやってくれない?最近アンタうちに来てくれなかったら凝っちゃってさー。」
「……別にそのくらいなら構わないけど、月雪達にやってもらえればいいんじゃねーの?」
「いやぁ何故かミヤコやミユに頼むと恨めしそうに見られるんだよね……サキは面倒だからってやってくんないしひどくない?それに比べてタツミは嫌な顔一つやってくれるんだからねー、くひひ。あっ、もしかしてあれ?女の子の柔肌に合法的に触れるから?いやー相変わらずむっつりスケベなんだからー!」
「……やっぱマッサージすんのやめようかな。」
「あーごめんって!悪かったって!悪気はなかったんだって!」
「どこがだテメェ!完全に意図的だっただろ!」
「いやほんとに悪気はなかったんだってば!からかってやろうとは思ったけど悪気はなかったから本当に!」
「思いっ切り悪気あんじゃねぇかこのバカ!」
「な、なんだよいいじゃんか別に!合法的に女の子の体に触れるんだよ!?タツミだってこんな女の子だらけの環境で過ごして溜まるもん溜まってるだろうし、それを私で発散させてあげようって言ってるのに……!」
「だーっ!変な言い方すんなアホォ!勘違いされたらどーすんだ!俺様明日から表を歩けなくなるっつーの!」
「……それはそれで面白そうかもね?」
「何も面白くねーわ!」
“……モエ、その辺にしておいてあげてね。”
「た、タツミくん……私頑張るね。」
「おう、期待してるぞ霞沢。とは言ってもお前は狙撃手で室内行動には慣れていないだろうから、基本は月雪の指示通りに動いてれば問題ないはずだ。俺様もきちんとサポートするから、その時が来たらお前の射撃の腕をしっかりと俺様に見せてくれよ?」
「う、うん……!精一杯頑張る……!」
「よし、その意気だ!」
「えへへ……タツミくんの手、あったかい……」
「んー……なんか、霞沢を撫でてるとイブキを撫でてやっているときのことを思い出すなぁ……」
「……タツミくん。今は私の頭を撫でてるんだから他の女の子の事を考えるのは禁止だよ。」
「ん?お、おぉ……そうか。そいつは悪かった。」
「わ、分かってくれたならいい……えへへ……♪」
(“……多分、アレって普段イブキにやってる感じで頭を撫でてるんだろうけどあんな事されたら同年代の女の子は勘違いしちゃうよね。ミユも顔真っ赤になってるし。”)
(“しかし、ミユもそうだけどミヤコといいサキといいモエといい随分とタツミと仲が良さそうだね……やっぱりタツミが前まで時間を縫って料理を作りに来てくれていたから、みんなタツミに対して信頼を置いてるのかな。”)
(“一時はどうなるかと思ったけど、この分だと問題はなさそうだし……あとは作戦がうまくいくかどうかだね。”)
(“それにしても、やっぱりタツミってみんなの士気を上げる天才だよね。本人は否定してるけどあの個人個人をしっかり見た上での的確な演説は……上に立つ者としての才能みたいなものをひしひしと感じるなぁ。”)
(“……案外、マコトが矯正局から出所してもそのままタツミが議長を引き継いだりするかもしれないね。”)
次回、ヴァルキューレへ乗り込みます