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「はぁ……今日も仕事しねぇとなぁ。」
ため息とともにそんな言葉を吐き出す俺様。
我ながら社畜精神マックスすぎんか……?
昨日も書類仕事、今日も書類仕事、恐らく明日も書類仕事。いい加減書類に対して拒否感が出てきそうだな。
あの風紀委員会の柴関ラーメン爆破事件から少し経つ。
小鳥遊先輩に【アビドスがピンチなら必ず力を貸す】と約束した風紀委員会と俺様だが、今のところアビドスから特に要請はなく何事もなく時間が流れている。
なお、天雨行政官は空崎委員長のお説教と俺様の監視の元反省文を1000枚書いたのがよほど堪えたのか最近は前までが嘘のように大人しくなっているようだ。
……そういやこの前貸したハンカチを返してもらう時にやけに距離が近かったんだが、何だったんだろうな?
あれから俺様に対しての当たりも心なしか柔らかくなった気もするし……うーん、よく分からん。
ちなみに、屋台として復活した柴関ラーメンにはこの前行ってきたが屋台になっても美味さは変わらずに俺様の大好きな柴関ラーメンの味だった。
店内の落ち着いた雰囲気も好きだったが、屋台のあの開放感のある感じも俺様は気に入ったぞ。
大将も元気そうだったし、どうやら黒見もまた柴関ラーメンでアルバイトとして雇ってもらったらしく俺様が行った時も笑顔で出迎えてくれた。
一時的とは言え柴関ラーメンが無くなってしまってもう食えないと思っていた俺様は、いつもの!と言っていつものがきちんと出てくる光景に感動しすぎて号泣してしまい黒見に若干引かれつつもハンカチを貸してもらった。
仕方ねぇだろ。もうこの光景見れねぇんだって落ち込んでたんだからよ。
……そういやあの時のハンカチ借りっぱなしなんだよな。
また柴関ラーメンに行った時に黒見に返しておこう。
俺様も天雨行政官のこと言えないかもしれねぇなぁ……
なお、復活祝いに万魔殿の皆を連れて行ったのだがイブキは屋台を初めて見るらしくキラキラした目で大変テンションが上がっていて可愛かったぞ!
大将や黒見も久々にイブキに会えて喜んでいたし、イブキも美味いラーメンを食って笑顔だったし言うことねぇな!うぉぉぉイブキ最高!イブキ最高!
ちなみに、羽沼議長はドヤ顔でラーメンを啜ってむせていた。ちょっと面白かったのは秘密だ。
万魔殿の皆も柴関ラーメンを気に入ってくれたようだし良かった良かった。
また、便利屋の連中とも柴関ラーメンで会ったためこの前の感謝も込めて4人分のラーメンを奢っておいた。
……奢りだって聞いた途端、アホみたいにトッピングを追加しだした浅黄と伊草にはデコピンしといたけどな。
なお陸八魔は羽沼議長が自己紹介すると白目をむきながら「ななな、何ですってー!?」と言っていた。
ワタワタと慌てる陸八魔はとても組織の長には見えなかったが、あの方が彼女らしいかもしれないな。
「にしても、今日も賑やかだなぁ……」
場所はゲヘナ学園の校舎前。
キヴォトスでも有数のマンモス校であるゲヘナの校舎前はそれはもうたくさんの学生で賑わう事で有名だ。
そして元気よく不良どもが喧嘩をしたり、チンピラどもが手榴弾をぶん投げたりして仲良く風紀委員にシバかれている事でも知られているな。
なお、この前は温泉開発部がショベルカーを発進させてバチボコに空崎委員長にシメられていた。
いつものごとく温泉開発部の部長がシナシナになりながら牢屋へぶち込まれていたが、まぁいつものゲヘナの日常だなーって感じである。
そんな校舎前を通り、俺様は風紀委員会へと向かう。
目的はもちろん万魔殿から押し付けられた書類の回収のためだ。
空崎委員長は押し付けられた書類は甘んじて受け入れると言っているのだが、そもそも押し付けている書類は元々は万魔殿で処理するものなので特に問題はない。
そもそも羽沼議長が嫌がらせで押し付けてるのがわりーだろって話だからなぁ……
これからも書類の回収はやめるつもりはない。
「……ん?何の騒ぎだ?」
風紀委員会の本部近くまで来た俺様は、普段なら校舎前で何かしらはドンパチをやらかしているゲヘナの学生達の視線が一箇所に集まってるのを発見した。
……おかしい。息を吸うように銃を撃っているゲヘナ生がこんなにも一点に集まって騒いでいるのは不自然だ。
一体何事かと思い、視線のもとに近寄ってみると……
「お、大人としてのプライドとか、人としての迷いとかはないのか!?」
“そんなものは無いよ!”
「堂々と言うなぁ!?おかしい!ヘンタイ!歪んでるっ!」
「……は?」
おい……なんで先生が……
銀鏡先輩の足を舐めてるんだよぉぉぉぉぉっ!?
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“と言うわけなんだ。”
「……なるほどな、事情は把握したぜ。」
尋常ではない状況に血相を変えて割り込んだ俺様は、先生からゲヘナを訪ねてきた理由を伝えられていた。
結論から言うと先生から伝えられたのはただ1つ。
【小鳥遊先輩が攫われたので助けるために力を貸して欲しい】と言うことだ。
俺様と空崎委員長は何かあれば必ずアビドスに力を貸すと約束していたため、先生もそれを思い出してここへ来たと言うわけだな。
しかし、カイザーか……面倒だな。
カイザーコーポレーション。
ここキヴォトスで様々なサービス事業を展開している民間企業で、一般的には大企業の部類に入る。
民間軍事会社である通称カイザーPMCや、銀行、リゾート開発、インフラ、コンビニ経営などかなり広い分野に手を出している。
今回先生達が敵対しているのはその中の1つである、民間軍事会社のカイザーPMCと言うことだな。
カイザーはあまりいい話を聞かないし、キヴォトスでは煙たがられている部類に入る企業だ。
汚い手も平気で使うし、不良を雇って足がつかないようにしてるって話もあるし。
しかし、話を聞く限りでは小鳥遊先輩がカイザーPMCに単純に誘拐されたとは考えにくいんだけどな?
何せ小鳥遊先輩は原作でもそうだったが、キヴォトスでもトップクラスの戦闘力を誇っているはずだ。
その力は少なくとも空崎委員長と同格……だったと、俺様のモヤのかかった記憶には残っている。
力付くで誘拐しようと思ったら、それこそカイザーにどれだけの損害が起こるかなんて言うまでもないだろう。
それに黒見を始めとした対策委員会の連中だって黙ってはいないはず、それがアッサリ捕まった。
となると、誰かが裏で糸を引いてる……か?
……ここで考えても仕方ねぇか。
それにあんまり部外者が他校の問題に首を突っ込むってのも良くないだろう。
今は小鳥遊先輩を助けることだけを考えないとな。
まぁ、要するに先生は空崎委員長に用があってここへ来たけど対応した銀鏡先輩がそんなに容易く合えるわけないだろと言い、土下座して自分の足でも舐めたら……と冗談で言ったら本当に先生が土下座して足を舐めたと。
いやそれで本当に舐める先生も先生だが、銀鏡先輩も銀鏡先輩でなんでそんな事言ったんだよ……
「銀鏡先輩……いくらなんでもそれは……」
「ま、まさか本当に舐めるとは思わないだろ!?」
「いや、まぁそれはそうかもしれねぇっすけど……」
と言うか先生も結構ノリノリじゃなかったか?
ダイナマイトボディの大人の女性が女子高生の足を舐めるって結構絵面がやべぇぞマジで。
“大丈夫!私はイオリの足ならいくらでも舐められるよ!”
「先生ェ!?」
「なっ……!?バカ!変態!死ね!」
ドヤ顔でそう言う先生に対し、顔を真っ赤にしながらそうまくしたてる銀鏡先輩。
何を言ってんだこの人!?アンタ教育者だろ!?
と言うか小鳥遊先輩攫われてんだろ!?銀鏡先輩の足を舐めている場合じゃないと思うんだが……?
「……なんだか楽しそうね?」
「い、委員長!?」
俺様と銀鏡先輩が先生にドン引きしていると、後ろから空崎委員長がそんな事を言いながら歩いて来る。
……いや、何も楽しくないんすけどね?空崎委員長。
「自分の望みのために膝をつく姿は何度も見てきたけど、生徒のために跪く姿を見たのは貴方が初めてだわ、先生。」
……いや、空崎委員長。
この人跪いてるんじゃなくて足舐めてんだけど……?
「顔を上げてちょうだい先生。言ってみて、私に何をして欲しい?」
「……いや、委員長。先生は跪いてるんじゃなくて足を舐めてるんだけど……」
「……は?」
銀鏡先輩の言葉を聞いて、空崎委員長は口を開けたまま固まる。
……まぁそりゃそんな反応にもなるわなぁ。
「どうすんだよ先生。空崎委員長固まっちゃったぞ。」
“えっ、これ私のせいなの?”
「いやどう考えてもアンタのせいやろがい!」
「い、委員長!?しっかりしろ!ヒナ委員長ーっ!」
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「カイザーPMCの増援を発見、1個大隊の規模です。委員長。」
「分かったわアコ。」
「おいおい、アビドスに対して何の恨みがあんだ……?過剰戦力すぎんだろ……」
目の前を埋め尽くす、機械仕掛けのオートマタ達。
その銃口は全て俺様たちへ向けられている。
中には大盾を構えた3メートルはあろうかというオートマタや、シャーレ奪還戦にて戦ったクルセイダー1型戦車も含まれていた。
「分かった、準備して。」
空崎委員長の号令とともに、俺様は折りたたみシールドを展開しブークリエにマガジンを差し込む。
あれから先生に力を貸して欲しいと頼まれた空崎委員長は、すぐさま銀鏡先輩と火宮を連れてカイザーPMCと戦うために準備を始めた。
目的はもちろん、小鳥遊先輩を助けるため。
俺様も【アビドスがピンチなら必ず力を貸す】という約束を守るべく、急いで万魔殿へとんぼ返りし事情を説明して止める羽沼議長を振り切って空崎委員長と合流してここに立っていると言うわけだな。
……万魔殿に帰ったら全員からお説教を食らうだろうが、約束は守らないと駄目だからな。
拙者義理は果たす侍。義によって助太刀致す!
先生からの情報によると、小鳥遊先輩はカイザーPMCの第51地区の中央付近に囚われているとのこと。
今はその51地区にアビドス対策委員会がカチコミをかけているので、そこへ増援を通さずに先生達の背中を守り抜くのが今回の俺様達に課せられた役目だ。
「どうして私もここにいるんだ……」
「イオリはともかく何故私まで……?」
俺様と空崎委員長の少し後ろの方で、心底納得のいかなさそうな表情で銀鏡先輩と火宮はそう呟く。
「へっ、ビビってるんすか銀鏡先輩?」
「なっ!?ビビってるわけないだろタツミ!」
俺様が言うと、銀鏡先輩は頬を膨らませながら手をブンブンと振りながら詰め寄ってくる。
「私がカイザーPMC如きにビビるわけないだろ!何ならあのカイザーのオートマタ、どっちがどれだけ壊せるか競争でもするか!?」
「おっ、それいいっすねぇ!数をちょろまかさないでくださいよ?銀鏡先輩。」
「お前こそ、途中で私に泣きつくなよ!」
俺様と銀鏡先輩はお互いに顔を見合わせると、歯を見せて好戦的な笑みを浮かべた。
それを見て火宮はため息をつく。
「火宮も頼りにしてるぜ!ケガしたら頼んだぞ!」
「怪我をする事前提で話さないでくださいタツミくんっ!まったくもう……」
火宮は腰に手を当てて再びため息を吐いた後に、困ったような笑顔を浮かべた。
「まだ風紀委員の仕事も残ってるし、手早く片付けよう。」
「俺様もあのアホ議長が押し付けた書類回収しに行く途中だったから、帰ったらまた書類仕事かぁ……」
「……いつもごめんなさいね、タツミ。」
「悪いのは羽沼議長なんで……あなたが謝ることじゃないっすよ、空崎委員長。」
周囲を放置していくカイザーPMC達のことなどどこ吹く風といったような感じで、俺様達はそう会話する。
なんか最近は前にも増して風紀委員会へ押し付けられる書類が増えているからな。
それに比例して俺様が処理する数も増えてるわけで……
あー、戦闘が終わったら書類仕事とかマジでやってらんねぇ……帰ったらイブキに癒やしてもらおう。
「貴様ら、ゲヘナ風紀委員会だな!?ここで何をしている!武器を捨てて手を挙げろ!」
そんな事を思っていると、カイザーPMCの大群の中から色の違う赤色のオートマタが前に出てそう威嚇してきた。
恐らく隊長格か何かだろう、所持している武器も他のPMCの物より上質に見える。
……と言うか、俺様は風紀委員会じゃないんだが?
万魔殿のジャケットが目に入らんのか?
「みんな、ここで全軍止めるわよ。先生には誰一人として近づけさせない。」
「了解ッ!頭数だけそろえても無駄だってこと、分からせてやりましょう!」
「タツミよりも一体でも多くやっつけてやる!覚悟しろよ、カイザーPMC!」
「後方支援はお任せください、ヒナ委員長。」
「みなさん、くれぐれも怪我のないように!」
それぞれの武器を構えながら、それぞれがそう言い放つ。
俺様はブークリエのチャージングハンドルを引くと、それを隊長格のカイザーオートマタへ向けた。
「おい!聞こえなかったのか!?武器を捨てて……」
「行こう。」
そして空崎委員長のデストロイヤーの銃声を皮切りに、戦いの火蓋が切って落とされた。
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「……手応えがないわね。その程度?カイザーPMC。」
空崎委員長のデストロイヤーが火を吹く度に、前方を埋め尽くしているカイザーのオートマタがバタバタと地面へ突っ伏していく。
「覚悟しろ!規則違反者……じゃないけど!」
銀鏡先輩の射撃が飛ぶ度に、大型の盾を持ったオートマタの頭部が割れ地面へ砂煙を上げて倒れ込む。
「判明している戦闘データを送ります!」
天雨行政官の戦闘データを受け取りつつ、俺様は目の前のオートマタの胴体を盾で殴りつける。
衝撃が腕に走ったとともに、殴ったオートマタはそのまま吹き飛んでいき後ろに居た味方を巻き込み停止した。
「タツミくん!怪我はありませんか!?」
「おう、かすり傷すらないぞ火宮!」
無線で心配そうにそう言ってくる火宮に力強く答えつつ俺様はブークリエの引き金を引く。
フルオートで発射された弾がオートマタどもに直撃し、着実に地面に叩き伏せ数を減らしていく。
「クソ!何をしている!相手はたった3人だぞ!?」
隊長格のオートマタが焦ったようにそう叫ぶ。
……まぁ、無理もないだろう。
これだけの数をそろえたカイザーPMCの舞台が俺様達3人にバタバタと倒されているのだから。
ちなみに、今の陣形は俺様が盾を構えて一番前へ。
銀鏡先輩と空崎委員長がその少し後ろに控え、お互いがお互いをカバー出来る位置をそれぞれ取っている。
とは言え、空崎委員長があまりにも強すぎるおかげで俺様は目の前の敵に集中していれば良いんだが。
何なら目の前の敵すらデストロイヤーで蜂の巣にされて行くという始末。
ここまで来たらもはや戦闘ではなく虐殺ショーである。
一応敵と2人の距離感や射線は意識しているので、何かあればすぐ射線へ割り込めるのだが空崎委員長も銀鏡先輩も隙がなさすぎて俺様がカバーしなくても大丈夫そうなんだよなぁ……
敵の狙いが空崎委員長や銀鏡先輩へ向いた瞬間に少しポジションを移動するくらいで済むし、何なら狙われても自分で回避してるからなこの2人。
「タツミ!今どのくらいだ!?」
「うーん、今ので50体目くらいっすかね?」
「なら私の勝ちだな!私は今ので52体目だぞ!」
「へっ、ここから巻き返してやりますよ!」
「言ったな!絶対負けないぞ!」
「……楽しそうね、二人とも。」
俺様と銀鏡先輩が笑いながら軽口を叩きあっていると、空崎委員長は気だるげにそう言った。
……しかし、マジで全然手応えないなこいつら。
陣形もぐちゃぐちゃだし、リロードのタイミングも丸わかり、戦車は空崎委員長が既にぶっ壊してるし、隊長もテンパってるのか指示がめちゃくちゃだ。
いくらこっちには空崎委員長がいるとは言え、この動き方はあまりにもお粗末と言わざるを得ない。
おいおい、仮にも民間軍事会社だろお前ら……?
まだゲヘナのその辺のチンピラの方が手応えがあるぞ?
……まぁ、普段からゲヘナの世紀末な環境に居て美食研究会や温泉開発部とかと戦ってる俺様が頭ゲヘナなだけなのかもしれんがな。
空崎委員長や銀鏡先輩と模擬戦したりもしてるし、狐坂ともやり合ったことのある俺様にとってはカイザーの兵士達は少なくともあまりにも生ぬるいものだった。
「思い出したぞッ!そのジャケット、ゲヘナ学園万魔殿のものだな!?」
「へぇ、万魔殿を知ってんのか。ゲヘナ内でも知らねぇやつの方が多いのに良く分かったな?カイザーの情報収集力も侮れないってか?」
「この風紀委員の腰巾着が!貴様などそこにいる風紀委員長がいなければ何もできない雑魚のくせに!」
「おーおー犬がよく吠えてらぁ。」
言いながら、俺様は目の前のワンワン騒ぐオートマタの顔面をブークリエのストックでぶん殴る。
「ぐおっ……!?このクソガキが……!」
「なんだまだ喋れたのか?そのクソガキ一人に苦戦してるのはどこのどいつだよ?」
「礼儀のなってないガキが……!」
「はっ、言ってろ!」
ギャーギャーうるさいオートマタの胴体を盾で殴りつける。
「ぐっ……!」
「しぶてぇな……そのガッツだけは評価してやるよカイザーPMC。」
「品のないガキめ……!貴様の所属している組織の長はどんな教育をしてるんだ……!まぁ貴様のような奴を部下として抱えてるんだ、どうせクズみたいな奴なんだろうが……」
……は?
「おい、今なんつったお前。」
俺様は一瞬でピーチクパーチクとうるさいオートマタに近寄ると、そのまま膝蹴りを打ち込む。
「ゴハァ!?は、ハハッ!貴様の所属している組織の長がクズ野郎だって言ったんだよクソガキィッ!」
「……そうだな、確かにあの人がロクでもないやつなのは認めよう。すぐ風紀委員に喧嘩売るし、下らないことばかり企んでるし、すぐ仕事を押し付けてくるし。」
しかも俺様と同じくらいイブキに懐かれてやがるしな。
「だがな……それがお前らみてぇなガキに揃いも揃ってボコボコにされてる三下が羽沼議長を侮辱していい理由にはなんねぇんだよ。」
「よく覚えとけカイザーPMC。ウチのトップは確かにろくでもないが、あんなんでもゲヘナのてっぺんだ。」
「だから……二度と羽沼議長を侮辱すんな!このクソ野郎がァッ!」
そう言って、俺様はオートマタの頭に押し当てたブークリエの引き金を引いた。
フルオートで発射された散弾が全てオートマタの頭に叩き込まれ、オートマタはそのまま地面へ倒れる。
「タツミ!落ち着いてください!」
「……すみません天雨行政官。少し熱くなりました。」
……ったく、こんなの俺様のガラじゃねぇんだがな。
だがまぁ羽沼議長をこんなクズ野郎に侮辱されるのは許せなかった、それだけだ。
「今の言葉、マコトが聞いたら喜びそうね。」
「恥ずかしいんで言わないで下さいね?空崎委員長。」
「ふふ、わかってる。」
何故か優しげな笑みでそう言う空崎委員長。
それに対して俺様は盾を構えつつ答えた。
「ば、化け物どもめ……!」
「……失礼ね。女性に向かって化け物だなんて。」
空崎委員長のデストロイヤーが火を吹き、オートマタがまた一人地面へ倒れる。
……まぁ確かに化け物じみた強さではあるけど、面と向かって化け物呼ばわりは良くねぇだろう。
「52体目ェ!」
盾で目の前まで肉薄したオートマタを殴り倒す。
「タツミ!こっちは今ので54体目だぞ!」
「へっ、こっちは最前線っすよ銀鏡先輩!敵なんて目の前にいくらでも居るんだから稼ぎ放題っすよ!」
そう言って俺様はブークリエを構え、引き金を引く。
火薬の爆発音とともに銃口から飛び出た散弾は2体のオートマタに当たり、地面へと彼らを案内する。
「今ので54体目!並びましたよ銀鏡先輩ッ!」
「やるなタツミ!けど負けないぞっ!」
「はぁ、この戦闘狂どもは……」
天雨行政官のため息が聞こえるが、戦闘中は気持ちを高ぶらせてアドレナリンをドバドバ出さないと駄目だから多少テンションがおかしくなるのは仕方なくねーか?
……まぁそれが傍から見ると戦闘狂に見えるのかもしんねーけどさ。
「……ふふ、ちなみに私は今ので218体目よ。」
「何ィッ!?お、俺様と銀鏡先輩の四倍だと!?」
「さぁ2人とも、私に勝てるかしら?」
「い、委員長!?2人のノリに付き合う必要は……!」
「望むところだ!負けないぞ委員長っ!」
「右に同じくだ空崎委員長!ここから巻き返しだァ!」
「ふふ……さぁ、行くわよイオリ!タツミ!」
「了解ッ!」「もちろんっ!」
「き、貴様らァ!我々で遊ぶんじゃない!」
「……はぁ。」
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「カイザーPMC、撤退を確認しました。お疲れ様でした、みなさん。」
硝煙を上げるブークリエを下ろしながら、俺様は無線から聞こえてくる天雨行政官の言葉を受け取っていた。
あれからの戦闘はまさにワンサイドゲーム。
空崎委員長と銀鏡先輩と俺様が競い合うようにカイザーのオートマタを千切っては投げ千切っては投げし、戦意が完全に削がれたカイザーPMCはそのまま逃げるように撤退していった。
ちなみに記録は空崎委員長が312体、銀鏡先輩が104体、俺様も104体だった。
と言うか、1個大隊って確か600人前後のはずだからほぼ全部片付けちまったことになるのか。
クソ、空崎委員長は別格だからしたかないとは言え銀鏡先輩には勝ちたかったぜ……!
その後、先生からの通信が入りどうやらアビドス対策委員会の面々は無事に小鳥遊先輩を救出することが出来たようだ。
どうやら道中で便利屋も協力してくれたらしい、なんやかんやであいつらもいい奴らだよなぁ……
なお、その後通信でアビドスの面々と話をして……
「うへ〜、ありがとうね風紀委員長ちゃん達。おじさん迷惑をかけちゃったね。」
「気にしないで小鳥遊ホシノ。元々アビドスがピンチなら力を貸すという約束だった。私達はそれを果たしただけ。」
「タツミくん、ありがとう!最初のヘルメット団の時と言い、柴関ラーメンの時と言い、今回も助けられちゃったわね。」
「気にすんな黒見。俺様は約束を守っただけさ。また柴関ラーメン食いに行くよ、大将にもよろしく言っといてくれな。」
「えぇ、絶対来なさいよね!待ってるから!」
“ありがとう、みんな。”
というやり取りをした。
小鳥遊先輩も元気そうで何よりだし、何よりも対策委員会のみんなはそれぞれ笑顔を浮かべていた。
あの分ならもう大丈夫だろう。
ともかく俺様達は無事に課せられた任務を果たした。
はしゃぐ銀鏡先輩とハイタッチをし、空崎委員長にスポドリを手渡しつつ、軽いけがの治療を火宮にしてもらって天雨行政官がギャーギャーと俺様に小言を言う。
いつもの風紀委員の面々とのやり取りに安心感を覚えつつ、俺様達はゲヘナへと帰還するのだった。
なお、万魔殿に帰ったら勢揃いしていた羽沼議長達に正座させられてめちゃくちゃ叱られたのは言うまでもないだろう。
仕方ないじゃねーか!約束だったんだからよー!
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“……という感じかな。”
「なるほどな、分かったよ先生。サンキュー。」
シャーレの執務室にて。
今日の当番としてシャーレに赴いていた俺様は、あれからのアビドスの近況を色々と聞かせてもらっていた。
まず、アビドス対策委員会は先生の承認を得てアビドス高等学校としての正式な委員会となったそうな。
……ってか今まで非公式だったのかよ、それは色々面倒だっただろうし一安心だろうな。
なお、先生の活躍もあり小鳥遊先輩の件は解決したがアビドスの借金はまだ残ったままらしい。
なお、今回の一件でカイザーの理事は生徒誘拐事件の容疑者として指名手配を受けたとのこと。
まぁ正直連邦生徒会やヴァルキューレにあまり期待はできないけど、捕まって罪を償ってもらおうじゃないか。
なおカイザーコーポレーションは即刻解雇処分を行ったらしい、実に迅速なトカゲの尻尾切りである。
……それにしても、カイザーコーポレーションはアビドスで何をしたかったんだろうな?
奥空の話によるとアビドス自治区の大半はまだカイザーコーポレーションが土地権を持ってるらしいし、謎は募るばかりである。
そんな事を部外者である俺様に話しても良いのかと思ったんだが……まぁアビドスの情報の管理をしているであろう奥空が話してくれたし良しとする。
今後何かの役に立つかもしれねぇし、頭の片隅にでも入れておくとしよう。
それと、今度アビドス対策委員会の皆から助けてくれたお礼として学校に招待されることになった。
俺様は約束を果たしただけなので別に良いと言ったんだけど、どうしても来て欲しいっていう黒見の強い要望があったらしい。
「是非タツミくんには遊びに来てほしいな〜。おじさんお世話になっちゃったし、おもてなしさせてよ。」
「キヴォトスでは珍しい男の方……色々お話を聞かせてくださいねっ♧」
「ん、タツミは強そう。アビドスに来たら是非私と戦おう。」
「タツミくん!絶対来なさいよね!」
「あはは……セリカちゃんもこう言ってますし、お待ちしていますねタツミさん。」
と、メッセージもいただいた。
時期はいつでも良いとのことなので、俺様の予定が空いている日にでも行ってくるとしよう。
ちなみに、空崎委員長を始めとした風紀委員会の皆も招待されていたようだけど彼女達はもう既にアビドスへの訪問を済ませたと言っていたな。
まぁこれで残っていたわだかまりも解消されたことだろうし、良かった良かった。
……あれ、ってことは俺様一人でアビドスに行くの?
「なぁ先生。俺様1人ってのはちょっと心細いんだが。」
“んー、なら私が一緒に行ってあげるよ。それなら問題ないでしょ?それにみんな歓迎する気満々みたいだしね。”
「……まぁ、それなら構わないぞ。」
黒見以外ちょっと面識あるだけだから空崎委員長達が居れば心強かったんだが……まぁ、仕方ない。
ともあれ、柴関ラーメンから奇妙な縁が始まったアビドス高等学校との一件はこれにて解決したのだった。
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「まったく、あれほど風紀委員会には関わるなと言ったというのにタツミの奴……!」
「しかも約束だからってほとんど面識のないアビドスを助けるために飛び出していっちゃったものねぇ……」
「タツミは結局あれからも風紀委員会とは仲良くしているみたいですね……マコト先輩、そろそろ本気でタツミに首輪をつけてもいいのでは?」
「それも本気で考えた方がいいな……まったく、自分に迫撃砲を撃ち込んだ相手に対してあの対応とはどこまでお人好しなんだあいつは。」
「まぁそこがタツミくんのいいところでもあるんですけどね!敵でも困ってたら助けてしまうあのお人好しっぷりは彼の個性でもありますし!」
「……でも、お兄ちゃんの悪いところでもあるよね。そのせいでお兄ちゃんに寄ってくる女の子が多いもん。」
(タツミもシスコンだけど、イブキちゃんもタツミに負けないくらいにはブラコンよねぇ……)
「こうなればタツミに風紀委員会への接触禁止令を……出したところでどうせ奴は関わるのを辞めんだろうな。」
「なら、私たちが今後あのようなことのないようにしっかり監視するしかないですね!」
「キキキ……あぁ、タツミを傷つけるやつは誰であろうと許すつもりはない。」
(マコトちゃんも口では何だかんだ言ってるけど、タツミのこと大好きよね……素直じゃないんだから。)
「まったく、罪な後輩ですよ本当に……私達全員をこんな気持ちにさせるなんて。」
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「へクション!」
“風邪かい?タツミ。”
「いや……これはきっとイブキが俺様のことを噂してるに違いない!うぉぉぉぉぉ!イブキ最高ッ!」
“(……あながち間違いでもなさそうだなぁ。)”
次回からは日常会と短編オリジナルストーリーを投稿していきます
パヴァーヌ1章は先生が進めていくので、タツミ視点ではスキップさせて頂きます