転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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ワカモがトリニティで暴れていることを知ったタツミ
現場に急行してのお話になります


静山マシロと丹花タツミ

「撃て撃てぇ!正義実現委員会の連中を全員消し炭にしてやれぇ!」

「ヒャッハー!私のアサルトライフルが火を吹くぜ!」

「手当たり次第手榴弾投げるのたのしぃぃぃ!」

 

暴れる不良、崩れる建物、積み上がった瓦礫の山。

舗装された道路はコンクリートがえぐり取られて土が剥き出しになっており、周囲の建物は爆撃を食らったかのようにボロボロでかろうじて原型を保っている。

正義実現委員会の部員達と不良が衝突したことによる激しい怒号と火薬の爆発音が鳴り響き、辺り一面を土煙と硝煙が支配しているまさにこの世の地獄。 

仲正先輩からの報告を受け、狐坂が陽動した不良が暴れているという現場に到着した俺様、羽川先輩、仲正先輩の3人はそんな光景を目にしていた。

 

俺様は冷や汗をかきつつ、ブークリエのチャージングハンドルを引いて弾丸をチャンバーへ送り込む。

前方を見ると黒いセーラー服を着た正義実現委員会の部員達が事態の対応に当たっているようだが、常に結構な負傷者を出しているようで医療機関に当たる救護騎士団の部員達もこの場に出動している様子だった。

なるほど、流石狐坂が陽動に選ぶだけあって中々手強そうな不良どもだ。こりゃ一筋縄では行かなさそうだな。

 

「これは……被害が想像以上ですね……」

「くっ、通報があった時よりも確実に被害が出てるっすねこりゃ。早く加勢しないとまずそうっす。」

 

羽川先輩と仲正先輩は苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべてそう吐き捨てると、それぞれの武器を構える。

 

「ツルギの到着予定時刻は?」

「連絡によるともうすぐ到着するとのことっす。」

「分かりました。では、それまではなるべく怪我人を出さないように戦いましょう。」

「そうですね、現状怪我人が結構いるように見えますし前衛がこれ以上削られるのはまずそうですし……」

 

前方を見ると、救護騎士団の部員に手当されているのはショットガンを手にした前衛の子が多い様に見える。

そりゃもちろん前衛が一番被弾するから怪我人が多く出るのは仕方ないんだけど、流石にちょっと不良の数に対して怪我人の数が多いような気がするからな。

まぁ相手は不良のみならず狐坂も含まれているから仕方ないが、あれ以上前衛の人数が削られてしまうと正義実現委員会の陣形が崩壊しかねない。

 

「羽川先輩。俺様が前へ出ます。これ以上前衛が削られると陣形の維持が困難になっちまうでしょうし。」

「分かりました。援護は任せてください。」

「はい、頼りにしてます。」

 

俺様は折りたたみシールドを展開すると、羽川先輩とお互いに顔を見合わせながら頷きあった。

 

「この光景を見てもまったく動じないなんて、流石ハスミ先輩が評価するだけのことはあるっすね。」

「何いってんすか仲正先輩。そもそも俺様はゲヘナ所属っすよ?この程度の光景なんて日常茶飯事です。」

 

何ならゲヘナなら道を歩いてたら建物が爆発するし、道路だってコンクリートがえぐられるだけじゃなくてその下の水道管が破裂して辺り一面水浸しになって工学部が泣きながら修理する……なんてのは一般的な光景だ。

それに建物もボロボロになってるだけで済んでるし、辺り一面が焼け野原じゃないだけまだマシだろう。

……しかし、ゲヘナならともかくまさかトリニティでこんな光景を見るとは思わなかったけどな。

と言うかこれ桐藤先輩の胃が心配なんだけど……また今度胃薬を渡しておくとしよう。

 

「……そう言えばそうだったっすね。キミと話してるとどうもゲヘナって事を忘れそうになるっす。」

「そうですか?まぁ確かにあまりトリニティに偏見はないっすからね俺様は。」

「いや、偏見ってよりはその立ち振るまいの方なんすけど……まぁ今はそんなことどうでもいいっすね。」

「……?」

 

立ち振るまいってなんだ?

俺様、別にそんな変なことはしてないと思うんだが……?

 

「ハスミ先輩。私は現場の指揮を採っている子に私達が合流することを伝えてくるっす。」

「分かりました。ツルギが来るまでは指揮は私が無線で出しますので現場の指揮官に併せて伝えてください。」

「はいっす!」 

「それではイチカ、タツミさん。行きますよ!」

「はい!」「了解!」

 

羽川先輩の指示が飛ぶ。

俺様はその指示を把握すると、指揮官の元へ走り出した仲正先輩を横目に盾を構えて戦場へと突っ込んで行く。

戦列では物陰で救護騎士団の部員達が負傷した正義実現委員会の部員の手当をしており、苦しそうな部員達の声が聞こえてくる。

 

俺様は急いで最前線に駆けつけるために足に力を込めるが、前へ行けば行くほどショットガンやサブマシンガンを持った部員の数が減っているのが見える。

……まずい、想像以上に前衛の数が足りていない。

その証拠に本来であれば後衛を努めているはずのスナイパーライフルを持った部員達が前衛と同じ位置で戦っており、相当余裕がないと言う事が伺える。

 

それにしても、正義実現委員会の部員達も決して弱いわけではないんだろうけどいかに普段から不良を相手にしている風紀委員会の部員達が強いかがよく分かるな。

空崎委員長や銀鏡先輩の影に隠れがちだけど、一般部員達も相当な実力者揃いなのは間違いないだろう。

とは言え、正義実現委員会の部員達も実力自体は風紀委員会の部員達とそうは変わらない様に見える。

 

違うのは……やっぱり実戦経験の豊富さだろう。

まぁ、そもそも平和なトリニティと違って世紀末な治安のゲヘナでは不良の鎮圧なんて毎日のことだからな……

環境が違う以上どうしても仕方のないことではあるんだけど、改めて普段からゲヘナの治安を守ってくれている風紀委員会には感謝の思いしかない。

  

まぁとは言え今は風紀委員会と正義実現委員会を比べている場合ではないし、そもそも正義実現委員会の彼女たちだって自分達に出来ることを必死にやっている。

なら、俺様が力を貸すのを渋る理由なんてものはない。

 

「撃て撃てー!」

「ちぃ……!」

 

くそ、不良の猛攻も段々と激しさを増している。 

このまま行けば押し切られてしまうのは確実だろう。

急がなければ……!

 

「そこをどけぇ!」

「くっ……ここは通しません!」

 

地面を蹴って走り続け、ようやく戦場の最前線が見えてきたときだった。

息を整えるために頭を上げた俺様の目に、1人の不良が手にした銃をバカデカイ対物ライフルを構えた正義実現委員会の生徒に向けている光景が飛び込んで来る。

対物ライフルを構えている部員の後ろには苦しそうに腕を抑えている正義実現委員会の生徒がおり、どうやらライフルを構えている生徒は彼女を庇っている様子だ。

 

まずい、不良の持っているのは高火力のショットガンだし対物ライフルを構えている子の周囲に遮蔽物がない。

あのままだとモロにショットガンを全弾食らっちまう。

ちぃ……!そうは行くかよっ!

 

「羽川先輩!援護は任せます!」

「はい!分かりましたっ!」

 

俺様は羽川先輩とそうやり取りをすると、地面を蹴る足に力を込めた。

 

「食らえ!」

 

ショットガンを構えた不良の叫び声とともに火薬の爆発音が聞こえ、ショットガンの散弾が発射される。

俺様は地面を蹴って不良と正義実現委員会の部員との間に割り込むと、盾を構えて散弾を防ぎにかかった。

瞬間、俺様の腕に衝撃が走ると共に盾が銃弾を弾く甲高い金属音が耳に飛び込んでくる。

……よし、なんとか間に合ったみたいだな。

 

「な、なんだお前は!?」

「ただの通りすがりのゲヘナ生だ!」

 

不良は俺様のいきなりの登場に驚きつつも、更にショットガンの引き金を引いて散弾を発射してくる。

俺様はそれを盾を構えて全て防いでいると、俺様の後ろから一発の射撃音が鳴り響いた。

この銃声は一度聞いたことがあるから間違いない。

羽川先輩の持っているスナイパーライフルの銃声だ。

彼女の持つスナイパーライフルから放たれた弾丸は俺様の前方の不良に直撃し、弾丸をマトモに食らった不良はうめき声を挙げながらその場に倒れ込む。

流石は羽川先輩だ、頼りになる。

 

「大丈夫ですか!?」

 

俺様は散弾を全て防ぎきった事を確認すると、盾に備え付けられたレバーを引いてその場に盾を固定する。

そして、盾に背中を預けて後ろに居た2人の正義実現委員会の生徒に声を掛けた。

 

「えっ……げ、ゲヘナの生徒!?」

 

俺様に声を掛けられたバカデカイスナイパーライフルを持った生徒は状況が飲み込めていないようで、突然のことに目を白黒させながらそんな言葉を絞り出す。

 

「な、何でゲヘナの生徒がここに……?」

「今は細かいことは後です!怪我はありませんか!?」

「は、はい。大丈夫です……」

「良かった……俺様はゲヘナ学園1年生の丹花タツミと言います!訳あって暴動鎮圧の加勢に来ました!」

「ゲヘナの生徒が正義実現委員会に協力を……!?と言うか丹花タツミってあの……!?」

 

正実の部員は俺様が名を名乗ると、驚いたように目を見開いた。

……なんか仲正先輩の言う通り、正実の部員ってもしかしてみんな俺様のこと知ってるのか?

って、今はそんな事はどうでもいい!

 

「とにかくその怪我をしている子を連れて後ろに下がってください!貴方も獲物がスナイパーライフルって事は本来後衛のはずでしょう!?えーっと……」

「……私は正義実現委員会1年生の静山マシロです。」

 

バカデカイスナイパーライフルを構えた正義実現委員会の生徒は俺様にそう名乗ると、腕を抑えて蹲っている正実の部員に肩を貸して立ち上がらせる。

……ってか同級生だったのか。

この状況でも動じず冷静に仲間を守るための動きをしていたからてっきり上級生だと思っていたんだけどな。

どうやら相当肝が据わっているらしい。

 

「分かった、静山だな!よろしく頼むぜ!」

「……よろしくお願いします。」

「とにかくその子を連れて撤退してくれ!大丈夫だ、前は俺様に任せとけ!」

「し、しかしいきなりそんな事を言われても……」

 

静山は怪我をした正実の部員に肩を貸して撤退の準備をしてはいるものの、やはりいきなり現れたゲヘナの生徒である俺様を信じきれない用で渋い表情をしている。

……まぁ無理もないだろう。俺様だってゲヘナで不良の鎮圧をしている最中にトリニティの生徒が乱入してくれば混乱するし、すぐに信じるってのは無理は話ではある。

だが今は自体は一刻を争うから、ここはなんとしても俺様を信じてもらうしかない。

 

「大丈夫ですよ、マシロ。」

「えっ、ハスミ先輩!?」

 

そんな事を考えていると、俺様達の周囲の敵をあらかた処理し終わった羽川先輩がこちらへ近寄って来る。

静山は羽川先輩を確認すると一瞬目を見開くが、やがて安心したような表情を浮かべた。

 

「タツミさんは今回純粋に私達への協力を申し出てくれました。信じてあげてください、マシロ。」

「で、ですが……」

「……マシロ。貴方がゲヘナの事を良く思っていないのはよく分かります。ですがタツミさんはゲヘナの所属ではありますが私が信頼している程の素敵な方ですから……大丈夫です。信じてあげてくれませんか?」

「……分かりました。ハスミ先輩がそう仰るなら。」

 

静山はしばし考え込むような表情をしていたがやがて羽川先輩の説得に折れたのか、そう答えると肩を貸した部員を連れて後ろへ下がり始めた。

俺様はそれを確認すると不良たちの方を向き、盾のレバーを解除して盾を持ち上げる。

 

「さぁ行くぞ不良ども!俺様が前を張るからにはこれ以上前へ進めると思うなよ!」

 

そして不良たちへ向けて声を張り上げてそう言うと、持っている盾を地面へと叩き付けた。

ドン!と言う音が周囲に響き渡る。

 

「えっ……ゲヘナの制服を着てる生徒がいる!?」

「ほ、本当だ!敵!?」

 

だが大声を挙げたことにより周囲の正実の部員達は俺様の存在に気が付いた様子だった。

皆一様に困惑の表情を浮かべており、中にはゲヘナの生徒がトリニティの戦場にいることに関して訳が分からずに混乱している様子が見て取れる。

 

……まぁ無理もないだろう。

クソ、ゲヘナとトリニティの確執がこんなところでまで足を引っ張るとは政治ってのは本当に面倒だな……!

 

「皆さん聞こえますか!?副委員長のハスミです!そこにいるゲヘナの制服を着ている方は丹花タツミさん、今回この暴動の鎮圧に協力してくれることになりましたので我々の味方です!決して敵ではありません!」

 

が、そんなワタワタと混乱する正実の部員達に羽川先輩の凛とした指示が響き渡った。

 

「え、丹花タツミってあの丹花タツミ!?」

「丹花タツミって、ハスミ先輩と仲が良いっていう……」

「ゲヘナの生徒だけどすごく優しいんだよね?」

 

慌てていた正実の部員達は羽川先輩の号令を聞くとピタリと動きを止め、俺様と羽川先輩を交互に見つめる。

 

「タツミさんはご覧の通り前衛を努めてくれます!前衛で動ける方はタツミさんとともに前線の維持を!後衛は私と共に前線をサポートします!いいですね!?」

「わ、分かりました!ハスミ先輩の指示に従います!」

 

正実の部員達はそう言うと、先ほどまで混乱してワタワタとしていた動きがどこへやら。

キビキビとそれぞれの武器を構え、前衛は俺様と並ぶように陣形を構築し後衛はその少し後ろへ陣取ってしっかりと前衛のサポートの出来る体制に入った。

良かった、とりあえずは信用してもらえたようだ。

羽川先輩には感謝しないとな。

 

……しかし、さすがは正義実現委員会の部員達だ。

その動きは一糸乱れることはなく、普段からよく訓練されていることが伺える。

恐らく強さだけなら風紀委員会の部員達にも引けを取らないだろう。

そんな彼女達に後ろを守ってもらえるのだ。

これほどまでに心強いことはない。

 

「もうすぐツルギも到着します!これ以上前線を下げるわけにはいきません!ここを死守しますよ!」

「「「はいっ!」」」

「怪我人は後ろへ下げてください!自分で歩ける者は自力で撤退を!歩けない者は誰かが肩を貸してあげてください!」

「分かりましたっ!」

 

背中から聞こえてくる羽川先輩の指示を聞きながら、俺様はブークリエのチャンバーを確認する。

 

「……あの、タツミさん。」

 

しっかりと弾丸が送り込まれていることを確認し、ブークリエを不良へと向けて構えたときだった。

不意に、俺様の後ろから静山が声を掛けてくる。

どうやら負傷して肩を貸していた子を後方に下がらせて再度こちらへ合流してきたらしい。

額には汗が浮かんでおり、少し肩が荒く上下している。

 

「静山……?どうした?」

「その、先ほどは助けていただいてありがとうございました。貴方が弾を防いでくれなかったら私はあの子と一緒に地面に倒れていたかもしれません。」

「なーに気にすんな!あのくらいお安い御用だよ。それよりもお前に怪我がなくて良かったぜ静山。」

 

静山は申し訳なさそうにそう言ってくるが、俺様は笑顔を浮かべるとサラリとそう発言する。

 

「そう言えば、腕を抑えていたあの子は大丈夫か?」

「はい。先ほど救護騎士団の部員に引き渡してきましたが幸い骨に異常はなく、弾丸の当たった箇所の打撲だけで済んでいました。」

「そっか、そいつは何よりだ。」

 

静山は初めて少しだけ笑顔を浮かべるとそう言った。

それを聞き、俺様も同じく笑顔を浮かべそう発言する。

良かった……あの子も軽症だったんだな。

それならば、必死で走った甲斐があるという物だ。

 

「……あの、タツミさん。」

「ん?どうした?」

 

俺様が安堵のため息を吐いていると、静山から再び声をかけられる。

 

「その、何で私を助けてくれたんですか?私は自分で言うものなんですけどそもそもトリニティの正義実現委員会の部員です。ゲヘナの貴方からしたら憎むべき対象であって決して助ける対象なんかでは……」

「何だ、そんなことか。」

 

そんなの、理由は一つしかない。

 

「ゲヘナだとか、トリニティだとかは関係ない。目の前にピンチになっている人が居たら助ける。それが俺様の掲げている信念……信じている正義だからだ。」

「信じている……正義……」

「それに、人を助けるのに理由なんていらないだろ?」

「……!」

「あと俺様は元々トリニティに偏見はそんなに持ってないしな。だからいきなりぽっと出の胡散臭いゲヘナ生と一緒に戦えなんて言われて不快かもしれないが……後ろは任せるぜ、静山。」

 

俺様は笑顔を浮かべると、静山へ向けてそう言った。

先ほど羽川先輩が言ってたけど静山はゲヘナの事をあまり良く思っていないらしいからな。

不快な思いをさせてしまうのは申し訳ないんだけど、今は協力してもらうしかない。

 

「ゲヘナにも貴方みたいな人がいるなんて……ふふ、不思議な人ですね。」

 

静山は静かにそう言うと、携えていた巨大なスナイパーライフルを構える。

 

「任せてくださいタツミさん。正義実現委員会の名に賭けて、貴方の背中は必ず私が守ってみせます。」

 

そして、今日一番の笑顔を見せるとそう言ってくれた。

……良かった。ひとまずは信用してくれたようだ。

彼女はこれほどまでに大きなスナイパーライフルを扱えるのだ。きっと実力も折り紙付きに違いないだろう。

 

「お、そいつは頼もしいな!よろしく頼むぜ、静山!」

「はいっ!」

 

俺様は静山と顔を見合わせて頷くと、ブークリエを構えながら再度不良たちの方を向いて連中を睨みつける。

そして盾を持ち上げると、すり足で前進を開始した。

 

「羽川先輩!静山!前へ出ますね!」

「分かりました!マシロ、前衛の援護をしますよ!」

「はい、ハスミ先輩!」

「さぁ行くぞ不良共!死にたい奴からかかってこい!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「くそ!なんだこいつ!?」

「な、なんでゲヘナの奴が正義実現委員会といっしょに戦ってるんだ!?お前ら仲が悪かったはずじゃ……!」

「ごちゃごちゃうるせぇ!そこで寝てろ!」

 

俺様はゴチャゴチャと何かをわめく不良どもにブークリエの銃口を向けると、そのまま引き金を引く。

ストックを押し当てた肩に衝撃が走り、火薬の爆発音と共に発射された散弾は不良どもに直撃すると彼女たちを地面へと叩き伏せる。

 

「マシロ!9時の方向にスナイパーです!」

「了解です、処理します!」

 

俺様が盾を構えて一番前に出ながら敵を攻撃を防ぎ、その横にショットガンを持った正実の部員達が横並びになってジリジリと陣形を押し上げていく。

その後ろからは後衛の部員達が前衛の死角となる敵に的確な射撃を飛ばし、進軍のサポートをしてくれている。

特に羽川先輩と静山の射撃の制度は凄まじく、敵のスナイパーの位置を的確に割り出して迅速に処理を行ってくれているためこちらは狙撃を警戒する必要がなく目の前の敵とだけ戦えばいいため非常に精神的にも楽だ。

 

「そこ!前に出すぎるな!俺様の横をキープしろ!」

「は、はいっ!」

「オラどうした!?お前たちの実力はそんなもんか!」

「なんだとこのっ……!」

「撃て撃て!あのゲヘナのクソ野郎を蜂の巣にしろ!」

 

俺様は気持ちが高ぶって突出しそうになる前衛の正実の生徒に声を掛けつつ、一番前に出て敵に向かって声を張り上げて挑発し攻撃をこちらへと向けさせる。

そして、飛んできた銃弾を全て盾で防ぎながら必要最低限だけ顔を出してブークリエの引き金を引く。

ブークリエから放たれた散弾は前方でアサルトライフルを乱射している不良をまた1人地面へと案内する。

 

「今だ!少し前へ出るぞ!」

「はい!」

 

敵の前衛が倒れた事により、陣形に穴が開く。

俺様はそれを見逃さずに共に前衛で戦う正実の部員へと指示を出すと、盾を持ち上げてジリジリと前進する。

正実の部員達も初めは俺様の指示を全く聞く気がないため羽川先輩を通して指示をだしてもらっていたのだが、俺様が前へ出て不良どもを蹴散らしまくり被弾しそうな部員達を庇っている間に自然と俺様からの指示も次第に通るようになったため今は前衛の指揮も行っている。

 

「す、すごい……彼がいるだけでこんなにも後ろに弾が飛んでこないなんて……」

「それだけではありませんよマシロ。タツミさんが前衛に加わったことにより明らかに前衛の消耗も抑えられている……彼が攻撃を一手に引き受けているおかげです。」

「ここまで敵の攻撃を気にせずに狙撃に集中できるなら狙撃手としては外すわけにはいきませんからね。ハスミ先輩が彼を評価する理由が分かる気がします。」

「それだけではなく彼は自分と後衛の位置に応じてポジションを変え、それでいて前衛で戦っている子達に何かあればすぐにカバーできる位置を常に取っていますからね……頼りになるでしょう?タツミさんは。」

「はい。こんなに安心して前を任せられるのはツルギ先輩以外では初めてかもしれません。こんな実力の持ち主がゲヘナに居たなんて……世界は広いですね。」

 

後ろで後衛を務める羽川先輩と静山が何かを話し込んでいるのが聞こえるが、銃声や怒号に混ざっているため内容までは聞き取れなかった。

……まぁ今は会話の内容を気にするよりは目の前の敵を倒して陣形を前に押し進めることだけに集中しよう。

 

(クソ、しかし数だけはムダに多いなこいつら……!)

 

ブークリエの引き金を引いて不良を地面に叩き伏せながら俺様は内心でそう毒づいた。

この暴動の首謀者は仲正先輩によると狐坂ワカモの仕業とのことだが、あいつが暴動を起こすときの傾向として不良を大量に動員するというものがある。

一体毎回どこでこんな人数を集めてくるのかは分からないが、とにかく奴は毎回これでもかと言うくらいの人数の不良を用意して暴れさせ自分はその陰で破壊活動を

行うという厄介極まりないことをしやがるのである。

 

もちろん奴1人で破壊活動をする場合もあるのだが、その場合も逃走手段をしっかりと用意しておいたりと……まぁとにかくテロリストとしての知恵の回るやつなのだ。

と言うか奴1人が暴れるだけでも地震や火事でも起こったのかってくらいの規模を破壊しやがるくせに、それでいて不良ってオマケまで付けてくるんだからたちが悪い。

その上で奴は暇さえあれば俺様を襲撃して殺し合いを強要してきやがるからな。

 

「……さぁ、そろそろ姿を見せたらどうなんだ?」

 

……とは言え、このままただひたすら不良共を相手にしているだけではいつまで経っても埒が明かない。

そう判断した俺様は首謀者である狐坂ワカモをこの場に引きずり出すため、深呼吸をして口を開いた。

 

「来いよ!お前の狙いはどうせ俺様だろうが!戦いたいなら相手になってやる!俺様は逃げも隠れもしねぇ!」

 

ここから先は細かいことはなしだ。

御託は抜きにしてとっととやり合おうぜ……なぁ狐坂!

 

「だからさっさと出てきてその辛気臭い狐面を見せてみろや!狐坂ワカモォ!!!」

 

そして、俺様は腹の底から大声でそう叫んだ。

 

「タツミさん!?いきなり何を……」

「……ウフフ♡」

 

俺様が突然大声を出したことに羽川先輩が困惑していると、突如その場に聞き覚えのある声が響く。

その声の持ち主は丁度左に位置する建物の屋上から飛び降りるとそのまま俺様の正面に位置する地面に着地し、その見覚えのある狐面を俺様達の前に晒した。

 

燃え盛る建物をバックに登場したサラサラの黒髪を揺らし、特徴的なヒラヒラした和服を身に纏い銃剣付きの歩兵銃を担いだ狐面を被った女……間違いない。

キヴォトス史上最悪のテロリスト、七囚人のひとり。

災厄の狐、狐坂ワカモだ。

 

「災厄の狐ッ……!」

「あれが災厄の狐……ものすごい威圧感です……!」

 

狐坂の登場にその場の空気が一気に凍りつき、前衛から後衛まで全ての正実の部員達の表情に緊張が浮かぶ。

羽川先輩や静山は真剣な表情をしながら手にした狙撃銃を狐坂へと向け、それ以外の部員達も手にしたそれぞれの武器の銃口を一斉に狐坂へと向けた。

だが、狐坂はそんなものどこ吹く風と言った雰囲気でゆっくりと俺様へと向けて歩を進めてくる。

 

「ウフフ……お会いしたかったですわ、タツミさん♡」

「あいにく俺様はお前みたいなテロリストには出来れば金輪際会いたくなかったんだがな……!」

「あら、照れ隠しですか?まったく、タツミさんはいつも素直じゃないのですから……」

「はぁ!?今の言葉のどこを聞いたらそんな解釈になるんだよこのドアホが!」

 

飄々とした口調で心底愉快そうにそう言ってくる狐坂。

クソ、やっぱこいつと居ると調子が狂う……!

 

「そもそも何でトリニティにお前が居るんだ狐坂!ゲヘナならまだしも……いや、ゲヘナでもよくねぇけどよりによってトリニティで破壊活動なんてしやがって……!」

「それはもちろん最近タツミさんがよくトリニティに行かれておられるようでしたので……このワカモ、是非トリニティで破壊活動をしなければと思いまして♡」

「いや、なんでそうなんだよ!?お前の思考回路は一体どうなってんだ!?」

「あら、タツミさんは私が破壊活動をしたら必ず会いに来てくださるでしょう?」

「当たり前だ!こちとらお前が好き勝手街を破壊してるのを黙って見てるわけにはいかねぇんだよ!」

 

そもそもお前のせいでどれだけの人に迷惑がかかってると思ってんだこのテロリストが……!

ったく、今日という今日こそは許さねぇからな!

 

「さぁ、銃と盾を構えてくださいタツミさん。今日こそは必ず貴方を壊して差し上げますので♡」

 

狐坂はそう言うと、肩に担いでいた歩兵銃をゆっくりと俺様へと向けてくる。

 

「タツミさん。私は寂しかったのですよ?最近はずっとトリニティに居ることが多いため貴方を襲撃することも中々叶わず……」

「……あぁそうかよ。そいつは悪かったな。俺様は暇そうなお前とは違って毎日仕事で忙しいんでね。」

「あら、今どき女よりも仕事を優先する殿方は女性にモテませんわよ?」

「やかましいわ!余計なお世話だっつーの!」

 

と言うか誰が女性にモテないじゃコラァ!!!

人が気にしてることを平然と言ってんじゃねぇぞ!

俺様だって……俺様だってなぁ!?好きで毎日毎日仕事してるわけじゃねーんだぞ!?

なんだ!?お前の恋人は仕事だってか!?

やかましいわアホ!

なんでお前にそんな事言われなきゃなんねーんだ!

そもそも、そんな事お前に心配されることじゃねぇよ!

 

「ですが安心してください。例えタツミさんが世の女に見放されるほど仕事に相殺されていても、このワカモだけは貴方の事を想い続けて差し上げますので♡」 

「ケッ、そいつは光栄だね!」

 

まぁ、お前からどれだけ破壊衝動を向けられても嬉しくもなんともないがな……!

ったく、こいつ見てくれだけは良いんだからもっと大人しくすれば引く手あまただろうによ……!

 

「さて、お喋りはここまでです。銃と盾を構えてくださいタツミさん。」

「……いいぜ。そこまで言うならお前が満足するまでとことん付き合ってやろうじゃねぇか!」

 

俺様はペラペラと御託を並べる狐坂の姿を確認すると、奴の狐面を睨みながら歯を見せて笑う。

そして盾を地面に叩きつけ、ブークリエを構えた。

 

上等だ、やってやるよ狐坂。

いい加減お前のその狐面を見るのにも飽きていた頃だ。

今日こそはお前を叩きのめして、矯正局へブチ込んできっちりテロ行為を反省させてやるからな!

 

いいか、お前を倒すのは俺様だ。

今日という今日こそはお前に膝を突かせてやるよ!

 

「かかってこいよ狐坂!絶対に負けねぇからな!」

「ウフフ♡それでこそタツミさん……ですわね?」

 

お互いに言葉をかわし、武器を構える。

覚悟しろよ……この狐女!!!

 

「さぁタツミさん……戦り合いましょう?♡」

「上等だッ!行くぞ狐坂ァ!!!」

 

俺様は狐坂をまっすぐに見据えると、腹の底から声を出してそう叫ぶ。

そして俺様と狐坂は同時に地面を蹴るとどんどんと距離を詰めて行き……狐坂の蹴りと俺様の盾が衝突した。

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