転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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過去の自分とアリウスと重ね合わせるタツミ
いよいよ戦いが始まります


アリウススクワッドと丹花タツミ

俺様の啖呵により、アリウススクワッドとの戦いの火蓋が切って落とされてしばらくが立つ。

俺様は盾とブークリエを構えながら、ひたすらアリウススクワッドの四人と対峙し続けていた。

 

「どうした!?さっきまでの威勢はどこへ消えたんだ丹花タツミ!」

「てめぇっ……!4対1で言うセリフじゃないだろ!」

 

錠前の蹴りを盾で防ぎながら俺様はそう叫ぶ。

そのすぐ後ろでは秤がサブマシンガンを構えながら錠前の隙をカバーしており、その更に後ろからは俺様の隙を狙って槌永の狙撃や戒野のスティンガーミサイルが絶えず俺様の命を刈り取るため容赦なく襲い掛かってくる。

俺様は狙撃を盾で防ぎ、ミサイルを転がって避けながら錠前と秤の銃撃を障害物を使って防いでいく。

 

(チィ、流石に分が悪すぎる……!)

 

強がってはみたものの、流石にこうも防戦一方だと厳しいものがある。

それに俺様の体力もここまで来るのに他のアリウス生やユスティナ聖徒会との戦闘を得ているため限界が近い。

さっきから腕は重いし、膝は笑ってるし、足は重りがついてるのかってくらいに上がらない。

けど、ここで戦いの手を止めたら待っているのは死あるのみなんだ。

先生や空崎委員長、氷室先輩と約束したからな……俺様は死ぬわけにはいかねぇ。

そして何よりこいつらの目を覚まさせるためにも、この勝負に負けるわけにはいかねぇんだ……!

 

「な、何者なんですかあの人はぁ!?」

「さっきから何度もリーダーが作った隙に攻撃してるのに全部あの盾で防がれてる……厄介だね。」

「……」

「うん、そうだね姫。ヘイローが無いってことは体は脆いはず。私はミサイルを撃ち続けるから、あいつの盾を引き剥がして弾を防げなくしよう。」

「わ、私も盾の取っ手を狙って狙撃します……!」

 

クソ!連中まず俺様の盾を剥がす方向にシフトして来やがったな……嫌なことをしてくれるじゃねえか。

俺様は知っての通りヘイローがないから、銃弾を1発でも食らったら即座に戦闘不能になりかねない。

そんな状態なのにこんな遮蔽物の少ない場所で盾を剥がされちまうと、それはつまり死に直結する。

 

「覚悟しろ!丹花タツミ!」

「クソッ!」

 

錠前のアサルトライフルの攻撃を盾を使って防いだ俺様は、即座に盾から顔を出すとブークリエの引き金を引いてフルオートの散弾を錠前へ撃ち込む。

錠前は即座にその攻撃に反応して側転をして銃弾をかわすと、そのまま俺様に近寄って蹴りを放ってくる。

俺様は体をひねってそれをかわし、ブークリエの銃床で錠前の肩を殴りつけた。

 

「くっ!やってくれるな!」

「お前こそ!口だけじゃないとは驚きだなぁっ!」

 

肩を抑えながら錠前が飛び退いた直後、秤のサブマシンガンでの援護がすかさず入る。

俺様はそれを盾で防ぐと、槌永と戒野のポジションを確認しつつ盾を持ち上げて秤に対して肉薄する。

 

「姫っ!くっ、やらせるか!」

 

秤に対して走り出した俺様の前に錠前が立ち塞がるが、俺様は盾を構えながら走って錠前に体当たりをする。

こいつらの動きを見たところ、リーダーである錠前が一番強いのは言うまでもないが槌永や戒野も相当訓練を積んできているようで隙のない動きをしてきやがる。

だが、そんな中で秤ただ1人は常に錠前のカバーをする形で戦っていることに俺様は気が付いていた。

 

「どけぇ錠前!」

 

俺様はその場で踏ん張る錠前の足を蹴って転ばせると、こちらへ向けてきたアサルトライフルを手から弾き飛ばした。

そして、その上を飛び越えて秤へ接近する。

 

「姫っ!」

「やらせませぇん!」

 

すかさず槌永の狙撃が飛んでくるが、俺様はそれを盾で受け流しながら秤に対して地面を蹴りながら近寄る。

秤……こいつはアリウススクワッドの中では恐らく一番戦闘に向いてない。その証拠に、ポジションは常に錠前の直ぐ側だし動きも四人の中では一番ぎこちなく見える。

まぁ弱いつってもそこは戦闘訓練を積んでいるんだろうから、その辺のアリウス生よりは余程強いのは間違いないんだが……

とは言え、アリウススクワッドの中だけで見ればこいつが連中のウィークポイントなのは間違いない。

それと、秤は何か理由があるのかは知らないがアリウススクワッドの連中とは手話を使って話をしている。

ならこいつの両手を塞いでやれば、仲間と意思の疎通を取ることすら困難になるはずだ。

戦場で頭数を減らすために弱点から崩すのは定石中の定石。まずは秤を無力化して、1人数を減らす!

 

「リーダー!」

「ミサキ!姫を守れっ!」

 

しかし、そうはいくかと戒野からのスティンガーミサイルが何発も俺様に対して撃ち込まれた。

さすがにあんなものを盾で受け止めたら盾がイカれちまう……!

そう考えた俺様は一旦秤への接近を諦め、近くにあった炎上している車の影に飛び込んだ。

直後、先程まで俺様がいた地点に大量のスティンガーミサイルが着弾して地面を消し飛ばす。

 

「クソ!人に向けてなんてもん撃ってんだ!」

 

俺様はそう吐き捨てながら車の陰から飛び出す。

すると、秤は既に錠前のすぐ後ろにポジションを取り直しており錠前は弾き飛ばしたアサルトライフルを拾いなおし、こちらへと素早く距離を詰めてくる。

 

「よくも姫を……!」

「ちっ、そんなに攻撃されたくないならそのお姫様とやらを戦場に連れてくんじゃねぇっ!」

 

錠前から繰り出されるアサルトライフルの銃床をブークリエで受け止め、直後に飛んできた槌永の狙撃を盾で受け流しつつその勢いのまま錠前にぶつける。

 

「ぐっ!?」

 

勢いに乗った攻撃に錠前の体が一瞬ふらつく。

すかさず俺様は追撃しようとするが、すぐに秤からのサブマシンガンの銃撃が飛んできた。

 

「チィッ!」

 

俺様は仕方なく盾を構えてサブマシンガンの弾を防ぐ。

そして盾から顔を出すと、体勢を整えた錠前が再度接近してくる。

そして錠前から繰り出された蹴りを俺様は体を捻ってかわすと、そのまま回し蹴りを錠前にぶち当てる。

 

「くっ……!?貴様、何故そんなに強い……!?」

「こちとら伊達にゲヘナで不良どもを相手にしちゃいねぇんだよっ!舐めんじゃねぇぞ!」

 

それに、錠前の格闘術など玄武商会の鹿山先輩のカンフーを極めた動きと比べたら亀が歩いている様なもんだ。

山海経へ行く度にボロ雑巾にされてる俺様を舐めるなよ錠前サオリィ!!!

 

「……中々盾を剥がすタイミングがないね。」

「り、リーダーが接近して戦ってるはずなのに隙がほとんどありませぇん!」

「……」

「分かってる姫。肉薄するのはやめて射撃を続けよう、いくらあの盾が頑丈とは言え撃ち続けていたらいつかは使い物にならなくなるはず。」

 

言うや否や、錠前が飛び退いたかと思うと戒野から大量のスティンガーミサイルが放たれた。

すかさず走ってそれをかわそうとするが、錠前のアサルトライフルの銃撃が飛んでくる。

 

「くそ!」

 

俺様はアサルトライフルの弾をスライディングしながら盾を構えて防ぐと、近くにあったガードレールの下を縫ってその向こうへと滑り込んだ。

 

「い、今のでもダメなんですかぁ!?」

「でもこのまま続けたら限界は来るはず。あいつの体力だって無限にあるわけじゃない。」

「ヒヨリ!再度接近して奴の体力を削る!援護を!」

「わ、わかりましたぁ!」

「クソ!よってたかってこいつら……!」

 

チクショウ、なんとか持ちこたえられているがこのまま防戦一方だとジリ貧もいいところだ。

今は援軍を望める状況でもないから、このまま防戦一方のままだと待っているのはいずれ体力の尽きた俺様がこいつらの手で始末される未来のみ。

そうならないためにもどこかで攻勢に出る必要がある。

撤退も考えたが、逃げるわけには行かない。

俺様がここを放棄してしまうと先生達が危ないんだ。

 

……とは言え、どうする?

錠前は俺様に接近して銃撃や格闘戦、その後ろからは秤の的確なカバー。

さらにその後ろからは俺様の隙にピッタリと合わせて飛んでくる槌永の鋭い狙撃に、物量に物を言わせた戒野からのスティンガーミサイルの爆撃。

いくらなんでも突破口が無さすぎる、しかも連中の連携は恐らく風紀委員会にも負けないくらいのものだ。

俺様1人で風穴を開けるのはあまりにも苦しい。

せめて、あと一人でも一緒に戦ってくれる味方がいれば……!

 

「死ね!丹花タツミ!」

「くっ……!」

 

くそ、今は無い物ねだりしてる場合じゃねぇ……!

俺様は錠前の銃撃を盾で防ぐと、ガードレールを乗り越えて錠前に対して距離を詰める。

 

「いい加減に倒れろ丹花タツミッ!」

「断るッ!言っただろ!俺様はお前達みてぇな目をした負け犬が束になってかかってきても負けねぇんだよ!」

「うるさい!貴様に私達の何が分かると言うんだ!」

「少なくともこんなことがお前らが本当にやりたいことじゃねぇことくらいは分かるッ!」

 

お互いに叫びながら、蹴りと盾が衝突する。

 

「黙れ……!」

「お前らの後ろにどんな大人が居るかは分かんねぇし俺様はお前ら自身じゃねぇから偉そうなことは言えねぇけどよ!だからって、それがこんなことをしていいことにはならねぇだろうが!たくさんの人を傷つけていいことにはならねぇだろうがアリウススクワッドッ!」

「黙れと言っているだろうッ!」

「やだね!断るッ!!!」

 

そのままお互いに力を込めつつ、お互いに叫び合う。

 

「何が全ては虚しいだ!そんな与えられた虚しさに縋ってんじゃねぇぞこの負け犬どもがァ!!!」

「さっきから減らず口を……!」

「アリウススクワッド!これが本当にお前らのやりたいことなのか!?人を傷つけて、誰かを憎むことしか出来ずに、大人に搾取されて操り人形になることがお前達の本当にやりたいことなのかよっ!?」

 

俺様は前世で毒親に虐げられていたから分かるけど、子どものうちは大人ってのは本当に逆らえない存在だ。

俺様だって当時は抗う気なんて微塵も無かった。

何故なら抗ったところで状況が良くなることなんて決してない、むしろ余計に悪化するからだ。

だから何故抗わなかったのか、とは言わない。

 

「知ったような口を聞くな丹花タツミ!私たちの後ろに大人などいない!」

「嘘を付くな!ならその【目】はなんだ!?絶望に支配されて死んだように生きてるだけのその濁った目はなんだ!?俺様はな、その目は嫌ってほど見てんだよ!」

 

こいつらの目。

俺様は、それを前世の鏡って嫌ってほど見てきている。

 

「誤魔化せると思うなよ!大人に搾取されて来ているお前らが、そのことを大人に搾取されて来た俺様に隠せるわけがねぇだろうがっ!」

 

そう、普通に過ごしてる奴がそんな目はしないんだ。

隠し通せると思うなよ、錠前サオリ。

 

「疑問に思ったことはあるだろ?逆らおうと思って逆らってみたこともあるだろ?でも全部ダメだった!自分達はこいつの言いなりになるしかないって!それでしか自分の身を守れないって!自分の心を押し殺して!」

 

そうやって連中は子どもの心を折っていくんだ。

そして少しづつ、自分の考えを刷り込ませていく。

最低最悪……反吐が出るようなやり方で。

 

「俺様にお前達の何が分かるって?痛いほど分かるんだよ!だからこんなに必死になってんだろうが!」

 

そうさアリウススクワッド。

お前達は過去の俺様と同じなんだよ。

 

「俺様はなぁ!お前達みたいな奴の顔は見たくねぇんだよ!テロリスト如きに可愛そうだと同情するつもりはないけどよ!それでも俺様と同じ目に遭ってる奴に対して何も思わない程俺様は薄情じゃねぇぞ!」

 

俺様は叫ぶ。叫び続ける。

 

「お前達はテロリストだ!こんな事をして、たくさんの人を傷つけて……それは消えることのない事実だ!」

 

そう、それは今更どうやったって変えようもない。

 

「当然だ!人は過去には戻れないんだからな!今から過去に戻ってこの事を無かったことにしようと思ってもそれは無理な話だ!だから後悔って言葉があるんだよ!」

 

そうさ、今更いくら後悔したってもう遅いんだ。

例え大人に操られていたとは言え、お前たちのやったことが消えることは未来永劫有りはしない。

 

「けど、前に進むことは出来るだろ!前に進んで、反省して、人生をやり直す事は出来るはずだろうがっ!」

 

そう、こいつらのやったことは許されることじゃない。

だからしっかりと罪を償ってもらう必要がある。

そりゃ後ろ指は差されるだろう。

だが、罪を償ったあとにこいつらが自分の足で歩き出すのを否定できる奴なんてのは何処にもいないんだ。

 

「だからお前達には今回のことを謝って反省してもらう!反省した上で、ケツ引っ叩いて歩かせてやる!その上で人生をやり直せばいいだろうが!」

 

例え犯罪を犯しても、前に進む権利だけは誰にでもあるんだ。

なぁアリウススクワッド、それはお前たちも例外じゃないんだぜ?

もしそれを否定する奴がいたら……この俺様がぶん殴ってやるよ。

 

「今の大人が怖いなら先生を頼ればいい!今の環境から抜け出すんだ!あの人は大人に搾取されて来た俺様から見ても、聖人と言ってもいいくらいの人だ!先生ならお前達を救ってくれるはずだ……!あの人は悪人だろうがテロリストだろうが生徒の頼みならなんでも聞いちまう、俺様みたいな偽物のヒーローとは違って本当のヒーローなんだからな!」

 

だから、俺様はこいつらを倒さなきゃいけない。

そして引きずっていって、先生に突き出してこいつらを悪い大人から守ってもらわなければいけない。

その上で反省して、自分のやりたい事をやればいい。

今からだってやり直すことはできるんだから。

 

「だから……もうこんなことはやめろ!」

「……っ!」

「……姫、こいつの言う事に耳を貸すな。」

「……」

「姫っ!こんなのはただの戯言だっ!」

「……分かってるよリーダー。反吐が出る、こんな話。」

「な、何を言ってもこの世は残酷で無慈悲……辛いですね……苦しいですね……でも、仕方ありません。」

「そう、それが世界の真実だから。」

「vanitasvanitatumetomniavanitas……」

「全ては虚しい……そう、ただ虚しいだけ。私達はアリウススクワッド。今はただ、任務を遂行するだけを考えていればいいんだ。」

 

そう言って、俺様から跳躍して距離を取る錠前。

……まぁ今更俺様の説得でこいつらが改心してくれるなんて思っちゃいないさ。

やっぱり、ぶん殴ってやる必要があるみてぇだな……!

 

「ちっ……この分からず屋どもが。」

「……丹花タツミ。私達はもう戻れないんだよ。」

 

錠前はそう言って銃口を俺様へ向けてくる。

その声色は、どこか悲しいものだった。

 

「私達のような人殺しを受け入れてくれる場所なんてこの世にある訳が無い。ここが私達の居場所だ。」

「……これ以上無駄口を叩くのは無意味ってことか。」

「そういう事だ。貴様はここで必ず始末する。そしてその後に先生と羽沼マコトも始末させてもらおう。」

「ハッ、やれるもんならやってみろよ!」

 

盾をドン!と地面に突き立てる。

少しでも気を抜いたら倒れてしまいそうだ。

体中が痛い。息が苦しい。腕が重い、足が棒みてぇだ。

けど、負けるわけにはいかない。

先生を守るため、ゲヘナを守るため、トリニティを守るため、そして何より……こいつら自身のためにも。

偽善者と言いたければ言え、偽善だって何だっていい。

俺様はこいつらを助けてやりてぇんだ。

そう、俺様が憧れたヒーロー……ドラゴンマンのように。

 

そんな目をして欲しくない。世界は虚しくなんてない。

そりゃ生きていれば苦しいことはいくらでもある。

けど、それと同じくらい楽しいことだってあるんだ。

全部が無意味だなんてことはない。あるはずがない。

お前らくらいの歳なら、本当は人を傷つけることなんてしなくても好きなことを好きなだけしてもいいんだ。

テロリストになんてならなくてもいいんだ。

大人に搾取されなくてもいいんだ。

自分のやりたいことは……自分で決めていいんだ!

そう、俺様がお前達を助けようとしているみたいにな!

 

大丈夫。

これは人助けに救いを求めてるわけじゃない。

俺様が今やりたいことなんだ。だからやるんだ。

理由なんてそれで十分だろ?

不幸になるのは俺様だけで充分なんだから。

そう……人を助けるのに理由なんてものはいらないんだ。

だから、俺様はアリウススクワッドを倒す。

ただ……それだけだっ!

 

「来いよ!その濁った目ぇ、覚まさせてやる!」

「まだ言うか丹花タツミ!いいだろう、ここで死ね!」

 

俺様と錠前は同時に走り出すと、盾と蹴りが衝突する。

 

「姫!」

「……」

「姫っ!何をやっている!早くこいつを撃ってくれ!」

「……」

「くっ!ヒヨリ!」

「は、はいっ!死んでくださぁい!」

 

槌永の狙撃が襲い掛かってくる。

俺様は盾を傾けて錠前のバランスを崩させると、錠前の首根っこを掴んで横へ放り投げる。

そして槌永の狙撃を盾で受け流すと、地面を蹴って秤に対して突撃する。

何故かはわからないが、今秤の動きは鈍っている。

チャンスは今しかない……!

 

「ミサキッ!」

「分かってる……!姫!危ないからしゃがんで!」

 

秤が姿勢を低くすると同時に、その後ろから戒野のスティンガーミサイルが地を這うように発射される。

俺様は正面のミサイルにブークリエの散弾を当てて爆発させると、煙の中を通り抜ける。

そして煙の中を通り抜けた瞬間、背中に寒気が走った。

 

「……っ!」

 

俺様はその寒気を感じた瞬間、1にも2にもなくその場で地面に飛び込んだ。

直後、俺様の頭の上を槌永の狙撃が通り抜ける。

 

「い、今のでもダメなんですかぁ!?」

「ハッ、殺気でバレバレなんだよっ……!」

 

俺様はその場で素早く起き上がると、後ろから起き上がって追ってきた錠前の銃撃を盾で防ぐ。

そして錠前がマガジンを交換するのを確認すると、錠前に背を向けて秤のサブマシンガンの銃撃を防ぐ。

 

(撃ち終わるまであと2秒くらいか……?)

 

そう思っていると、秤のサブマシンガンからカシンと言う弾切れの音が聞こえた。

それを確認した俺様はマガジンを交換する秤に接近しようとしつつ、槌永の狙撃を盾を滑らせて受け流す。

 

「姫っ!くそ、やらせるかぁっ!」

 

そう叫び、後ろから再度マガジンを交換し終えた錠前による銃撃が襲いかかってくる。

俺様は即座に後ろに盾を引っ張ってその銃撃を防ぐと、マガジンを交換し終わった秤まで接近する。

 

「やれ!ヒヨリ!」

 

槌永の狙撃が再度飛んでくる。

だが、盾を前に持ってきては後ろから射撃してきている錠前の攻撃を防ぎきれない。

目の前ではマガジンの交換を終えた秤がサブマシンガンを俺様に向けており、その後ろからは戒野がスティンガーミサイルを構えている。

 

「いい加減に倒れろ!丹花タツミィッ!」

「チィ!」

 

俺様はその場でしゃがみ込み槌永の狙撃をかわす。

そして錠前の射撃が止んだ瞬間に、盾を力いっぱい前方に向かって突き出した。

盾と銃弾がぶつかる音が聞こえながらも、俺様はそのままの勢いでスライディングを秤に対して繰り出す。

盾を構えたままの渾身のスライディングは秤の足首にヒットし、秤はそのまま地面へ倒れ込んだ。

 

「姫ちゃん!」

「くっ……ミサキッ!」

「分かったリーダー!ヒヨリ、援護はお願い!」

「わ、わかりましたぁ!」

 

その光景を見て、持っていたスティンガーミサイルを投げ捨てた戒野が秤を助けるために接近してくる。

俺様はすぐその場で起き上がると、秤に対してブークリエを突きつけようと……したものの間髪入れずに槌永の狙撃が襲い掛かってくる。

 

「クソ!」

 

今が秤を無力化する絶好のチャンスだが、あんな大口径の弾を食らったら無事じゃ済まない。

俺様はそう吐き捨てつつ、盾を構えて狙撃を防ぐ。

その間に足元の秤は素早く起き上がり、俺様に向かってサブマシンガンを突きつけてきた。

俺様は盾を引っ張って秤との間に滑り込ませ、至近距離での銃撃を全て防ぎ切る……が。

後ろから落い着いた錠前が俺様に向かってアサルトライフルの銃口を向けてくる。

そして、槌永も次弾を俺様に向かって放って来た。

マズい……防ぎきれない……!

 

(ならせめて……!)

 

俺様は盾で秤を殴りつけ、その場から吹き飛ばす。

吹き飛んで地面に倒れた秤に戒野が駆け寄ったのを確認した俺様は、盾を錠前の方へ引っ張り寄せた。

 

「倒れてくださいっ!」

「これで終わりだ!丹花タツミ!」

「くっ……頼む、防げてくれよ……!」

 

錠前と槌永の同時攻撃を防げるかは分からないが、最悪心臓さえ守っておけば致命傷にはならないはずだ……!

半ばそう祈りつつ盾の取っ手を強く握った瞬間だった。

 

ーーーダァン!!!ーーー

 

錠前と槌永が銃を放つよりも先に、その場に一発の銃声が鳴り響いた。

そして次の瞬間、錠前の手からアサルトライフルが弾き飛ばされる。

 

「……!?」

 

錠前の顔が驚愕に染まる。

俺様も何が何だか分からなくて困惑するが、槌永のスナイパーライフルから聞こえてくる発砲音にハッとなるとすぐさまそちらへと盾を引っ張って移動させる。

直後、金属同士のぶつかる音と共に衝撃が俺様を襲う。

……どうやら、無事に防げたようだ。

 

「丹花タツミ……貴様何をしたっ!」

「あ?知らねぇよ!」

 

錠前は俺様を殺さんばかりの表情で睨みつけてくるが、そんな目をされても俺様だって困惑しているんだぞ。

とは言え、おかげで助かったのは紛れもない事実だ。

あのままだと槌永の狙撃は間違いなく俺様に当たって腕の一本でも吹き飛んでいたかもしれないからな。

ひとまず、俺様は内心でホッと安堵する。

 

しかし、今の銃撃は一体……

もしかしたら回復した空崎委員長が助けに来てくれたのだろうか?それとも、羽川先輩や剣先委員長を保護した若葉先輩がシスターフッドを連れて来てくれたのだろうか?はたまた、先生が来てくれたのだろうか?

俺様はぐるぐると思考を回す。

 

「嘘を付くなッ!貴様以外に一体誰が……!」

「……ウフフ♡」

 

そして怒り狂った様子の錠前が血相を変えて、そう叫ぼうとした瞬間だった。

突然、その場に聞き覚えのある声が響き渡る。

 

「知りたいですか?ならお答えしましょう。」

「この声はっ……!?」

 

そう、俺様がこいつの声を聞き間違えるはずもない。

何度も何度も襲撃を食らい、嫌でも覚えてしまった声。

その声の持ち主は近くにあった建物の屋上から俺様と錠前の間に着地すると、黒髪と和服をヒラヒラと風に揺らしながらゆっくりと俺様の横まで近づいてくる。

何故お前が……こんな所にいるんだよ……!?

 

「狐坂ッ……!?」

「ウフフ♡危ないところでしたね、タツミさん。」

 

突然姿を現した、通称災厄の狐こと狐坂ワカモ。

奴は狐面に手を当ててくすくすと笑うと、手にした歩兵銃を担ぎながら俺様の横に来て並び立った。

 

「狐坂お前……なんでこんな所に居るんだ?」

「あら、今はそんな事はどうでもいいではありませんか♡」

 

いや、どうでも良くはないだろ……?

 

「……一体なんのつもりだ?」

「言ったはずですよ?貴方を壊すのは私の役目。」

 

狐坂はそう言って、手にした歩兵銃を錠前へと向ける。

 

「その役目を、どこの馬の骨かも分からぬような野良猫どもに譲るわけにはいきませんので。」

 

そして、狐坂は仮面の下から冷えた声でそう言った。

 

「災厄の狐だと!?何故こんなところに……!?」

「……リーダー、まずいかも。あいつ随分丹花タツミと親しげだよ。それに私達に対して敵意を向けてる。」

「うわぁぁん!て、敵が増えてしまいましたぁ!」

「……」

 

そうこうしているうちに秤を助け出して体勢を整えていたアリウススクワッドは困惑したような、焦ったような表情を浮かべながら狐坂に視線を送っている。

 

「それにしても、あのような野良猫達にここまで苦戦されるなんて……鍛錬が足りないのではなくて?」

「はぁ!?無茶言うな!こちとら4対1だったんだぞ!?タイマンならとっくにボコボコにしてらぁ!」

「あら、私は4対1でも負けない自信はありますわよ?」

「それはお前が規格外なだけだろ!?普通数の力ってのはすげぇもんなんだよ!」

「ウフフ♡……一度だけ負けたことはありますけど。」

「あんのかよ!?」

 

クソ!やっぱりこいつといると調子が狂う……!

と言うか、4対1とは言え狐坂を負かすってそいつらは一体何者なんだよ……こいつ滅茶苦茶強いんだぞマジで。

いや、それよりも……

 

「……よくここまで来れたな?ここに来るまでの道中にはユスティナ聖徒会……ガスマスクを被ったシスターみたいな集団がいただろ?」

「あの破廉恥な衣装を着た亡霊の事ですか?」

(いや、お前の格好も大概だろ……)

「よくわかりませんが、私が目の前に立っても何もしてこない単なる木偶の坊だったので蹴散らすのは簡単でしたわよ?」

「……は?何もしてこなかった?」

「はい。ただ、ガスマスクを被った生徒たちは私を見るなり攻撃してきましたので壊しておきましたけど。」

 

……どういうことだ?ユスティナの連中は俺様や風紀委員会、正義実現委員会を見ると襲ってきていた。

けど狐坂には何もしてこない?……何か理由があるのか?

 

「ウフフ♡タツミさん、あのシスターの事は今はどうでもいいではありませんか♡」

 

……そうだな。

狐坂の言う通り、今はそんな事はどうでもいい。

 

「タツミさん。あの幽霊のようなシスターや、そこの四人組がどのような存在なのかはわかりませんが……貴方と戦っている以上はタツミさんの敵、と言うことでよろしいのですよね?」

「……あぁ、そうだ。」

「それではこのワカモ。この場を切り抜けるためにタツミさんと共に戦うことをお約束しましょう。」

 

そう言うと、狐坂は俺様に手を差し出して来た。

 

「大丈夫です。途中で背中から刺すような真似はしませんわ。貴方を壊すのはこの私ですが、その時は今ではありませんもの。」

 

……どうする?

こいつの強さは俺様が一番良く知っている。

何度も何度も襲撃を受けてるし、こいつに殺されかけた回数なんて両手の指では足りないくらいだ。

……正直、一緒に戦ってくれるならこれ以上無いほど心強いのは間違いないだろう。

 

けどこいつは矯正局を脱出した七囚人のひとり。

災厄の狐なんて二つ名が付くほどの、凶悪な犯罪者。

大量破壊を趣味で行なうテロリストなんだ。

いくらアリウススクワッドがエデン条約を破壊したテロリストとは言え、テロリストを鎮圧するのにテロリストの手を借りるというのは……

 

……とは言え、今は味方が欲しいのは事実だ。

俺様1人では限界がある。

ゲヘナやトリニティからの援軍が望めない現状ではこの申し出は願ったり叶ったりなのは否定できない。

現にさっきだって、こいつがいなければ錠前と槌永の同時攻撃を防ぎきれずに大怪我をしていただろうしな。

俺様は悩んだ結果……狐坂の手を取った。

 

「……分かった。頼む、力を貸してくれ。」

「ウフフ♡貸し一つですわよ?タツミさん♡」

「……あぁ、分かってるさ。恩に着る。」

 

しっかりと狐坂の手を握りながら、俺様はそう言った。

狐坂はそれに対してコクリと頷く。

 

「さて、今から何をして頂くか考えておきませんと♡」

「はぁ……これが終わったら決闘にでもなんでも付き合ってやるよ。ま、勝つのは俺様だがな?」

「ウフフ♡それでこそタツミさん、ですわね?」

「ハッ、言ってろ。」

 

ブークリエを構えながら狐坂とそうやり取りをする。

普段なら腹の立って仕方のないこのやりとりだが……

今だけは悪くないかもな。

 

「災厄の狐!何故お前がここに居るのかは分からないがその男に協力するなら貴様も敵と見なすぞ!」

 

俺様が狐坂とそんなやり取りをしていると、アサルトライフルを拾い直した錠前がこちらに銃口を向けながらそう叫んでくる。

 

「ウフフ♡いつも正面から見ているタツミさんの盾に守ってもらえるなんてこのワカモ、嬉しさでどうにかなってしまいそうですわ♡」

「よく言うぜ、お前なら守ってやんなくても勝手に弾を避けてんだろうが。」

「ウフフ♡私が女に生まれた以上は、殿方に守って貰うというのは一つの夢でもありましたので♡」

「……どうでもいいけど、戦いには集中しろよ?」

「えぇ、無論ですわ。手早くあの野良猫達を片付けて私と貴方の戦いを始めましょう?♡」

「……やっぱお前に頼むんじゃなかったかもしれねぇ。」

「あら、照れ隠しですか?♡」

「はぁ!?嫌味に決まってんだろ!」

 

錠前の呼びかけを無視し、そう言ってくる狐坂。

まったく……相変わらず話の通じない奴だ。

……けど、今はそんな飄々としてる狐坂の姿が何よりも頼もしく見えた。

 

「おい!話を聞いているのか!?」

「……躾のなってない野良猫ですわね?私とタツミさんが話しているのが見えないのですか?」

「なんだと……!?」

「言葉で言わないと分かりませんか?なら答えて差し上げましょう。私は貴方達の敵ですよ、ニャーニャーうるさい野良猫さん達?」

「そうか……分かった。」

 

錠前はそう言うと、こちらへ向けたアサルトライフルの引き金に手をかけた。

当時に他の3人もこちらに対して武器を構える。

 

「ならここで丹花タツミと共に死ね!災厄の狐!」

「あら……貴方達如きが私とタツミさんを殺せると思っているのですか?なんと身の程知らずな……」

「……おい、その辺にしとけ狐坂。」

 

俺様は盾を地面に突き立て、狐坂に呼びかけた。

 

「言っとくが殺すなよ?あいつらは確かにテロリストだけど、情状酌量の余地はあると思ってるからな。」

「……相変わらずお優しいのですね?ですが、それでこそタツミさん……といったところでしょうかね?」

「お前は俺様の何なんだよ……まぁ半殺し程度なら許す。容赦なくボコボコにしてやれ。」

「はい、お任せください♡」

 

俺様は狐坂と狐面越しに顔を見合わせると、お互いに頷いた。

しかしまさか、こいつと一緒に戦うときが来るなんて……本当に人生ってのはわからないもんだな。

 

「行くぞ姫!ミサキ!ヒヨリ!」

「……了解。」

「……」

「わ、分かりましたぁ!」

 

俺様と狐坂、アリウススクワッドは互いに睨み合う。

それぞれの武器を握る手に力が籠もる。

 

「タツミさん。」

「ん?」

「私の背中、お任せしますね?」

「おいおい俺様を誰だと思ってんだ?言われなくてもお前には指一本触れさせねぇよ。」

「あら、思ったよりも情熱的なお言葉ですね?それは私に対する告白ということでよろしいですか?♡」

「んなわけねぇだろバカタレ!お前の脳内はどうなってんだよ!?」

 

普通に考えて今から一緒に戦うから背中を守るって意味以外の何だってんだよ!

くそ、ダメだ!やっぱこいつムカつくかもしれん……!

 

……とは言え、こいつの実力が確かなのは今まで何度も戦ってきた俺様が一番良くわかっている。

この状況下では何よりも頼もしいのは確かだろう。

 

「はぁ……まったく、おい狐坂。」

「あら、何でしょう?」

「頼りにしてるからな?」

「……ウフフ♡お任せください♡」

 

俺様が短くそう言うと、狐坂は少し間を置いて仮面の下から嬉しそうな声でそう言った。

 

「……行くぞ。」

「はい。遅れを取らないでくださいね?タツミさん♡」

「そっちこそ、俺様の足を引っ張るなよ!」

 

そして俺様と狐坂は互いの武器を構えると、アリウススクワッドに向けて突撃を開始した。

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