転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

6 / 138
ほんの少しだけアビドスに絡みます


黒見セリカと丹花タツミ

「キキキッ!そいつは傑作だな!」

「笑い事じゃねーっすよアホ議長。」

「誰がアホ議長だ!」

「YOU」

「無駄にいい発音で言うなァ!」

 

ゲヘナ学園、万魔殿の会長室。

今日も今日とてアホ面を浮かべてワイングラスに入ったブドウジュースを飲んでる羽沼議長に対して、俺様はため息を吐いていた。

絵面だけ見ればホントにただの美人なんだがな……

 

「それで、結局先生とやらと協力してシャーレの部室を奪還したと言うことで良いんだな?」

「そういう事っすね、シャーレの詳細は今説明した通りです。七神代行が言うには、ですけど。」

 

結局、あの後シャーレの地下室へ足を踏み入れた俺様達は原作通り先生がシッテムの箱を起動するのを見届けた。なお、俺様は先生の説教により正座してたから足が痺れてへっぴり腰で歩いてたのは内緒だ。

何故か火宮と羽川先輩からも怒られたがそれも内緒。

あと、足がガクガクなのを早瀬先輩と守月先輩に大層笑われたけどそれも内緒だからな!内緒ったら内緒!

 

……まぁともかく、シッテムの箱を起動したことによりサンクトゥムタワーの制御権は無事に連邦生徒会が確保したようだ。

これからは連邦生徒会長がいた時と同じように行政管理が進められるらしい、ひとまず良かったという所だ。

……まぁ、連邦生徒会長失踪事件は解決してないんだけどな。それは追々連邦生徒会とシャーレが合同して捜索を行うことになったようだ。

なお、シャーレは権限だけはあるが目標は特にない組織らしく特に何かしないと行けないわけではないらしい。

要は何でも先生が好きにして良いと言うことだ。

どの自治区にも加入でき、戦闘行為を行え、どの学園に所属する生徒も加えられる超法的組織シャーレ。

……新たな火種にならないことを切に願う。

 

ちなみに、その説明を先生が受けている際にどさくさに紛れて七神代行が連邦生徒会に送られてくる仕事を先生に押し付けていたのは記憶に新しい。

まぁ連邦生徒会って超多忙だろうし、それに加えて今は会長の捜索に手を回す必要もあるだろうからなぁ。

あと、七神代行は狐坂を始めとした今回の騒動を起こした不良どもの追跡もやると言っていたし。

現状、やることのないシャーレの先生に書類を投げるのもまぁ理解できないことはない。

とりあえず目の死んでいる七神代行と、笑顔の引きつってた先生には胃薬をプレゼントしておいた。

 

なお、先生の活躍とシャーレの設立は既にニュースを始めSNSサイト等で話題になっている。

早速クロノスのパパラッチどもが突撃取材をしたりしているらしい。ちなみに元宮先輩も近々取材予定だ。

ちなみに、シャーレは当番制度を採用しているらしく俺様もそのうち当番で呼ばれるとかなんとか。

……ま、書類仕事なら万魔殿で慣れてるし別にいいが。

 

なお当番制度は明日から始まるそうで、記念すべき初日の当番は早瀬先輩になったらしい。

早瀬先輩はセミナーの会計らしいから事務仕事は本業の分野だろう、戦闘能力も申し分なかったがな。

あ、ちなみに連邦生徒会から借りた盾等の装備は返却しておいた。

またどこで戦闘に巻き込まれるかわかんねーし、面倒だがこれから外出時はフル装備にするとしよう。

 

閑話休題。

 

と、まぁそんなこんながあり俺様や先輩方は先生と別れるとそれぞれが所属する学園へ帰っていった。

そして羽沼議長へ説明を行い、今に至る。

 

「しかしトリニティの羽根つき共も来ていたとはな……このマコト様が居たらまとめて始末してやったものを。」

「やめんか。アンタが居たら煽りまくって戦争の引き金になりかねんわバカタレが。」

「誰がバカタレだ!」

「YOU」

「同じネタを2回もやるなァ!」

 

あかん、羽沼議長からかうの面白すぎるなこれ。

まぁそれはそれとして、今回連邦生徒会に向かったのが俺様で良かったような気はしている。

少なくともこのアホ議長でなくて良かったのは確かだ。

羽沼議長、筋金入りのトリニティ嫌いだからなぁ。

このアホ議長が直々に出向いていたら間違いなくゲヘナ嫌いの羽川先輩と大喧嘩になっていただろうし。

それに、そんなにゲヘナに偏見のない守月先輩にも喧嘩を売って悪印象を残していたのは間違いないだろう。

 

ちなみに、お別れする際に羽川先輩と守月先輩からはお礼を言われ羽川先輩とはなんとモモトークを交換した。

なんでも「2回も守ってくれてありがとう、今度お礼をさせてください」と言うことらしい。

イブキも連れて行っていいか聞いてみようかな、イブキ甘いもの超大好きだしなー。

甘味の本場トリニティのプリンとか食わせてやりてぇ。

絶好喜ぶだろうなぁイブキ。……想像したら鼻血出そう。

ちなみにこの事は羽沼議長には報告してない。

したら絶対面倒になるからな。

 

それにしても、羽川先輩はゲヘナの事が嫌いっぽいから大層驚いた。その事を本人に伝えてみると……

 

『あ、あくまでお礼のためですからね!?本来ならゲヘナの生徒と関わるなんて御免ですが、助けられて貴方に借りを作ったままなんて正義実現委員会の副委員長として許せませんので!』

『いいですか!これはあくまでもゲヘナに借りを作ったままにしないためですからね!……ふふっ。』

 

と、顔を真っ赤にしながら言っていた。

別にそんなに律儀にお礼なんてしてもらわなくてもいいんだがな、俺様特に何もしてねぇし。

前衛が後衛を守るのは当たり前の話だからな。

なお、羽川先輩とは火宮とも何か話をしていたのを覚えている。火宮もトリニティに対して偏見はない方だからあの2人も何か感じるものがあったのかもな。

……心なしか妙にお互い威圧感があった気がするが、それは見なかったことにしておこうかね。

 

ちなみに、早瀬先輩からもお礼とミレニアムにいつでも遊びに来ていいというお言葉を頂いた。

ミレニアムは最新鋭の発明品がたくさんある学校だから興味があったし、非常にありがたい。

 

……と言うか、よくよく考えたら狐坂と先生がほぼ全くと言っていいほど会話してないんだが大丈夫か?

確か原作ではシャーレに突入した時に狐坂と先生が対峙してそのまま一目惚れされるはずだったよな。

それが、あいつ俺様と戦ってそのまま退いていったせいで先生との絡みが無いんだよなぁ……

これってもしかして、結構不味かったりする……か?

クソ、前世の記憶が曖昧なせいで先生と狐坂が知り合ってないとマズいかどうか良く思い出せねぇ。

……まぁここで延々と悩んでても答えが出るわけじゃねぇしな、なるようになると思うしかねぇか。

 

あと、なんか万魔殿に戻ってくるまでに時々変な視線を感じる気がするんだよな……

……まぁ気の所為だろう!あまり深く考えないでおこう。

 

「ともかくご苦労だったなタツミ。怪我は……まぁ多少はあるようだが、無事で何よりだ。」

 

俺様が思考をぐるぐると巡らせていると、羽沼議長は腕を組み急に真面目になるとそう言った。

……なんやかんやで心配してくれるんだから、憎みきれないんだよなぁこの人。

心配されて嬉しい思ってしまっている自分が居る。

 

「だが、あまり無茶をするなよ?イブキが悲しむ。」

「先生と火宮からも言われましたよ。今後は気をつけるようにします。」

「何!?先生はともかく風紀委員からもだと!?おのれ風紀委員め!私の部下に説教とはいい度胸だなぁ!」

 

前言撤回。やっぱアホだわこの人。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……はぁ、どっと疲れた。」

 

結局あの後もアホなことを言いまくる羽沼議長にいい加減ツッコミ疲れた俺様は会長室を後にし、万魔殿の廊下をテクテクと歩いていた。

なお会長室を出るときに羽沼議長は「待て、まだ話は終わってないぞ!」とか言ってたけど連邦生徒会に行って起こったことは全部報告したしもういいだろ。

 

「さてと……これからどうすっかな。」

 

報告が終わったら執務室に行って残った書類仕事でも片付けようと思ったのだが、珍しく残っていた書類は羽沼議長が全て終わらせてしまったらしい。

……いやマジで明日槍振らねぇよなこれ?

まぁというわけで、俺様は今日やる仕事が特になくなってしまいこれからは暇なわけなんだが。

 

ラブリーマイエンジェルイブキに会いに行くのも手だが今日は非番の棗先輩と遊んでるって話だし、邪魔すんのも悪ぃしな。

京極先輩の催眠術に付き合うのは……しんどいからパスだし、元宮先輩は取材で出かけてて不在らしいし。

……困ったな、やることがねぇぞ。

 

「風紀委員会に顔でも出してみるかぁ?」

 

とは言えあちらも火宮が空崎委員長に今日あった事を報告しているだろうから、バタバタしてるかもしれないし訪ねていくのも迷惑な気がすんな……

羽沼議長が押し付けた書類は既に回収して終わらせてあるし、暇人に付き合わせちまうのも申し訳ねぇ。

 

「給食部は……そろそろ店じまいの時間か。」

 

時刻は夕方の17時を回ろうかというところ。

今からじゃ流石に給食部の仕事も明日へ向けての仕込みくらいだろうしな……

仕込みなら愛清先輩と牛牧でなんとかなるだろうし、かえって邪魔になる可能性もあるな。

また非番の日の昼に顔を出して厨房を手伝うとしよう。

あとはアホ議長に予算の増額を頼んどかねぇと……うまい飯こそが日々のエネルギーの源だからな。

 

じゃあゲヘナ自治区のパトロールでも……と思ったが、流石に狐坂と戦って死にかけてるのに舌の根が乾かないうちにドンパチしに行ったら今度はキレた先生にシャーレに呼び出しを食らいかねんな。

もう先生からの説教は勘弁願いたいぜ……なんか変なオーラでてたもんあの人。俺様泣いちゃう。

あと火宮からも怒られそうだし辞めておくとしよう。

 

ってか、さっきから思いつくことがことごとく仕事関係なのマジで終わってんな俺様。

こういうのをなんて言ったっけ?

えーっと、確かワーカーホリックっつーんだったか?

……空崎委員長の事言えねぇなこれじゃ。

 

「となると、久々にあそこに行くか!」

 

ぐるぐると頭の中をいろんな思考が行ったり来たりした末に、俺様はこの後の時間を趣味に使うことに決めた。

そうと決まれば善は急げだ!準備して向かうぞ!

 

【アビドス自治区】に!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

と、言うわけでやってきましたアビドス自治区。

相変わらず砂だらけで廃屋や廃ビルが目に付く地区だが、その分治安はゲヘナよりも良いからモーマンタイ。

俺様がこのアビドス自治区に来た目的はただ1つ。

 

ラーメンを食いに来たのである。

 

ここアビドス自治区には柴関ラーメンって言うそれはもうバチクソうめぇラーメン屋があるんだなこれが。

柴関ラーメンは元宮先輩の取材に付き合ってアビドスに来た時にたまたま見つけた店なんだが、一口食べただけで俺様は一瞬でファンになっちまったってわけだ。

それからはちょこちょこ暇を見つけては顔を出してる。

元々俺様がラーメン好きってのもあるが、あそこのラーメンはホントにうまいんだよなぁ。

問題があるとすれば、ゲヘナの自治区外だからあんま気軽には来れないってことくらいだ。

それ以外は本当に非の打ち所がない。

ゲヘナにもいくつか美味い店はあるんだが、今日は俺様の口がラーメンを欲している。

 

ちなみに、ゲヘナの飲食店で食事をしていると結構な頻度で強盗が来るし何なら時々店が爆破されたりする。

それは時には美食研究会とか言う店が気に入らないから爆破するイカれた奴らの仕業だったりするし、時には温泉を開発するとか言う名目でショベルカーやドリルで店を破壊する奴らだったりする。

何ならその辺のチンピラがむしゃくしゃしたから八つ当たり、とか言う理由だったりもする。

……マジでゲヘナってイカれてんな。頭ゲヘナかよ。

 

ちなみに、イブキも柴関ラーメンには何回か連れて行ったことがあるから今回も誘ったんだが今日は羽沼議長や棗先輩達と鍋パをやるらしいので泣く泣く断念した。

俺様も誘われたんだが……ほら、なんか今日はこれが食いたい!ってなる日ってあるだろ?

今日はその日なんだよな。

俺様の口はラーメンを欲してる。

というわけで、万魔殿の女子達が鍋パをしている中で俺様は男の一人飯をしに来たわけだ。

 

そんなこんな考えているうちに、柴関ラーメンが見えてきた。柴犬形獣人の大将が大きく看板に描かれた遠くからでもインパクトバツグンの店だ。

俺様は店の前まで歩いていくと、引き戸に手をかける。

 

「いらっしゃいませ!1名様ですか?」

 

そして店の中へと入ると、元気のいい声とともに店員の女の子がこちらへパタパタと小走りで走ってきた。

ケモミミをぴょこぴょこさせ、黒髪を揺らしながらこちらへ来た彼女は黒見セリカ。

アビドス高等学校の1年生で、ここ柴関ラーメンでアルバイトしている女の子だ。

 

「おっす、黒見。」

「あら?タツミくんじゃない!1週間ぶりくらい?」

「多分そのくらいだな。中々暇が取れなくてよー。」

「万魔殿って忙しそうだものね……1名様ご案内しまーす!」

 

そう言って席に案内してくれる黒見の後を付いていく。

ちなみに黒見とは俺様が店でラーメン食っている時にいきなり襲撃してきたヘルメットを被った不良どもが店を荒そうとしたので、ソイツらを黒見と協力して追い払ったのがキッカケで仲良くなった。

同じ1年生同士と言うことや、俺様が半ば店の常連客と言うこともありそれなりに仲良くさせてもらっている。

 

「今日はイブキちゃんは一緒じゃないのね?」

「イブキは先輩方と鍋パするらしいから今日は一緒じゃないんだ、悪いな。」

 

案内された席に座りつつ、黒見が出してくれたお冷やを一口の飲みながら俺様はそう言った。

 

「そうなんだ……ちょっと残念かも。ご注文は?」

「んーそうだな……いつもので。」

「はいはい、いつものね。オーダー入りまーす!」

 

黒見はイブキが来てないことを確認すると少し残念そうな顔をしたが、すぐに手慣れた手つきで注文を取ると厨房に居る大将へオーダーを伝えに行った。

店内をぐるりと見渡しつつ、コップを持ち上げ水を一口飲む。良く冷えた水が喉を通る感覚が心地良い。

 

いやーしかし、いつ来てもこの店は落ち着くな。

地元では有名な店らしく店内は客が多くザワザワとしているが、その騒がしさも今は心地よかった。

そんな事を思いつつ、俺様はスマホを取り出していつも使っているSNSアプリを開いた。

スマホをスライドさせつつボンヤリと画面を眺めていると、どうやらシャーレの先生の話題で持ちきりの様だ。

 

『シャーレの先生ってどんな人なんだろう!』

『なんでもすっごい美人さんらしいよ!』

『キヴォトスの外から来た人なんだって!どんな人なんだろう……会ってみたいなぁ。』

『おっぱい!おっぱい!!!』

 

おい最後のやつ、煩悩が抑えて切れてねぇぞ。

……まぁ、気持ちは分からんでもないがな。

すぐに戦闘になったからあんま気にする余裕なかったけど、先生のスタイルってヤバすぎるからな。

俺様も男だ、本人は色々悩んでるかもしれないがあの体は目に毒すぎる。

羽川先輩が霞むレベルって相当だぞ。

 

『あと、現場に災厄の狐がいたらしいよ!』

『災厄の狐って狐坂ワカモのこと?え、矯正局に収監されてたんじゃないの?』

『なんでも逃げ出して騒ぎを起こして、それを先生が解決したんだって。』

『えー……ヴァルキューレの警備ガバガバじゃん。』

『まぁヴァルキューレだし……』

『ヴァルキューレなら仕方ないかー。』

「……ボロカス言われてんな。」

 

ヴァルキューレも連邦生徒会長失踪の影響でバタバタしてたんだろうよ……まぁそれでも矯正局から脱獄されてんのは流石にもう少ししっかりして欲しいけども。

その後も情報を集めていくが、それ以外にはシャーレの設立くらいしか話題になっていないようだ。

 

「お待たせしました!柴関ラーメン大盛り、チャーシュートッピングです!」

 

そんな事をしていると、黒見が元気のいい声とともに注文したラーメンを俺様の席に運んできてくれた。

ホカホカと湯気を立てるそれが目前のテーブルに置かれる。うーんこれこれ!

やっぱここに来たら柴関ラーメンだよな!もちろん麺は大盛り、チャーシューも追加してある。

俺様の「いつもの」だ。

 

「サンキュー黒見!いただきます!」

 

割り箸を取り出して割る。

パキリと言う音とともに割れた割り箸を手にした俺様は丼から麺を掬い上げ、少し冷ましてから一気に啜った。

 

「ん……うめぇー!」

 

瞬間、口の中で弾ける醤油の香りとコク。

麺も丁度いい硬さに茹でられており、濃すぎず薄すぎないスープと絡みとんでもない旨さを演出している。

 

「やっぱここのラーメンは最高だな!」

「本当に美味しそうに食べるわよねーアンタ。」

「おう!美味いからな!やっぱ大将は最高だぜ!」

 

お盆を胸に抱えてそう言う黒見に対し、俺様は親指を立てながら笑顔でそう言った。

やっぱここの大将って天才なのでは?こんなに美味いラーメンを作れるなんて尊敬の念しかないぜ。

そして、そんな俺様を黒見はテーブルの横でニコニコとした表情で見つめている。

 

「……ん?黒見、仕事は大丈夫なのか?」

「えぇ、今は少し落ち着いてるから大将にお友達と話してきてもいいぜって言われてね。」

 

そう言いつつ、黒見は俺様の向かいの席に腰掛けた。

店内をぐるりと見回してみると、先程まで多かった客がハケており俺様以外にあと数人になっていたようだ。

SNS見てて全然気づかなかったな……

しかし、そう言う気遣いができる辺り大将って本当にいい男だよな!流石だぜ。

 

「……ねぇ、アンタはシャーレって組織が設立されたことを知ってる?」

 

そう考えていると、向かいの席に座った黒見が神妙な顔をしながらそんなことを言ってきた。

 

「あぁ、知ってるぞ。と言うか俺様今朝連邦生徒会まで出向いてきたところだからな。」

「え!?そうなの!?」

「おう、万魔殿の仕事の一貫でな。」

 

ラーメンを食べつつ、黒見に対してそう言う俺様。

黒見は驚いたように目を見開いている。

 

「じゃあ、その赴任してきたって言うシャーレの先生っていう大人にも会ったってこと?」

「おう、会ったぞ。」

 

ズルズルと麺を啜りつつ、俺様はそういった。

その言葉を聞いた黒見は何やら考え込むような表情をしているようだ。

 

「……まぁ、黒見が連邦生徒会の人間をあんま良く思ってないのは知ってるよ。アビドスがこんなんだしな。」

 

コップの水を飲み、一息つくと俺様はそう言った。

ここアビドス自治区は昔こそキヴォトス最大級の規模を誇る学園地区だったのだが、今は大規模な砂嵐が発生して自治区全てを砂が飲み込んでしまって人がどんどん離れていってしまっている……と俺様は聞いている。

アビドス高等学校も黒見によるとかなり苦労しているようだし、連邦生徒会に何度も支援を要請しているものの中々返事が返ってこない……とこの前愚痴っていたし。

その事もあって、連邦生徒会の設立したシャーレの先生があまり信用できないんだろうな。

まぁ無理もない。そもそも黒見は何度か話してて思うが大人に対する不信感がかなり強めなタイプだ。

ぽっと出の大人で、しかもどちらかと言うと連邦生徒会側の組織であるシャーレの先生を信用できないのも無理はないかもしれない。

 

……まぁ俺様部外者だからあんま口出しは出来んがな。

アビドスの事情ってのも黒見との話で聞いたことでしか分かんないから。けど……

 

「……黒見、先生はいい人だよ。」

「……え?」

 

俺様は箸を丼の縁に置くと、テーブルに肘をつく。

 

「あの人はなんつーか……生徒のためなら自分が破滅することも厭わないくらい、生徒に対する愛がでかい。」

 

原作の先生もそうだったし。今日俺様が実際に会って話して触れ合った先生もそうだったからな。

今日だって、初めて会っただけの俺様を本気で心配して叱ってくれたし……

まぁ、道路に正座させられたのはキツかったけどアレは俺様も悪かったので仕方ないけどよ。

 

「生徒のためなら自分を蔑ろにしてまで助けちまうような、ある意味狂人とも言えるほどの聖人って所か。」

「……なにそれ、そんな大人がいるの?」

 

怪訝そうな表情でそういう黒見。

 

「まぁあくまで俺様から見たら、ってだけだけどな。ただいい人なのはマジだと思うぜ?」

 

スープを飲み干しつつ、俺様はそう言った。

 

「黒見達がどんな苦労をしてるのか俺様はよく分かんないし、余計なお世話だからそっちから話して来ない限りは口出しも詮索もするつもりはない。」

「……」

「ただ、先生は信用できる大人だと俺様は思う。困ったらシャーレに助けを求めてみてもいいんじゃねーか?少なくとも連邦生徒会よりは頼りになると思うぜ。」

 

そもそもブルーアーカイブにおいての【先生】ってのは常に生徒の味方だ。

それが例えテロリストでも、外道でも、悪人でも、生徒であれば必ず手を差し伸べて救ってくれる。

それが先生と言う人物だ。

……まぁゲームの人物像にかなり引っ張られてるのは間違いないが、あの先生も悪い人じゃないのは確かだ。

そもそも悪人ならシッテムの箱を起動できんだろうし。

 

「まぁ、あくまで俺様はこう思うってだけだから信じるかは黒見の自由だからな?」

「……ううん、そんなことないわよ。ありがとう。」

 

俺様の言葉を聞いた黒見は、少し考え込むような表情を見せたあとに表情を崩してふにゃっと笑った。

 

「私達、大人には散々痛い目を見せられてきてるからやっぱり簡単には信用できないけど、アンタがそこまで言うなら少しは信じてもいいかもって思えたわ。」

「そう言ってくれるのは嬉しいね……ま、大人が皆先生や大将みたいにいい人じゃないってのには俺様も同感だ。世の中にはクズみたいな大人もいっぱい居るからよ。」

 

と言うか、むしろ先生や大将が聖人すぎるんだよな。

本来は多少なりとも汚い部分があるのが大人って物だ。

なんなら汚い部分を大部分が締めている大人だって世の中にはうじゃうじゃいるんだから。

……そうだ。汚い部分が大部分を、な。

 

《この出来損ないが!!!》

《アンタなんか産むんじゃなかった!》

「……っ!」

 

……ったく、本当に大人ってやつはさ。

全員が先生や大将や【今世の父さんや母さん】みたいないい人ばかりだと世の中ハッピーなんだけどな。

 

「どうしたのタツミくん。難しい顔して……」

「……いや、何でもねぇ。ラーメン美味かったよ、ご馳走さん。黒見、会計を頼むぜ。」

 

席を立ちつつ、ポケットの財布から取り出したラーメン代を黒見に手渡す。

 

「あら、もう帰るの?」

「飲食店はこれからがピークだろ?あんま長居すんのもわりぃしよ。」

「ふふ、別にそんなの気にしなくていいのに。……はい、丁度ね。どうもありがとう。」

 

そう言って苦笑しつつ黒見はレシートを手渡してきた。

俺様はそれを受け取ると、ポケットへねじ込む。

 

「大将!ごちそうさん!美味かったっす!」

「おうタツミくん!まだゆっくりしていってくれてもいいんだぜ?セリカちゃんと話してたんだろ?」

「そろそろ帰んないと遅くなっちまいそうなんで……また近い内に来ますね!」

「お、そう言ってくれると嬉しいねぇ!」

「はい!今度はイブキも連れて来ます!」

「あぁ、待ってるぜ!気を付けてな!」

 

厨房で一息ついていた大将に声を掛けると、柴犬形獣人の大将はとびきりの笑顔でそう言ってくれた。

ラーメンの美味さもそうだが、大将の人柄も俺様は大好きだ。今度近い内にまた来るとしよう。

 

「んじゃ黒見、バイト頑張ってな。」

「えぇ、ありがとう。アンタもケガばっかしてイブキちゃん泣かすんじゃないわよ?」

「わぁーってるよ。色んな人にそれ言われんなぁ……」

 

俺様だって死にたかないんだから無理してるつもりはないんだが、気をつけるとしよう。

引き戸に手をかけ、外に出ると吹き付ける生暖かい風が俺様の頬を撫でた。

 

「んじゃ、またな黒見!」

「えぇ、近い内にまた来なさいよー!」

 

俺様は手を振り、挨拶をすると店の中へ戻っていく黒見を見届ける。

黒見の姿が見えなくなると、俺様は砂でジャリジャリしている地面を踏みしめながら歩き始めた。

ふと空を見上げると、キヴォトスの空に浮かぶ大きな輪っかが夕焼けに染まり日が落ちてきているのが見える。

 

「さてと、コンビニに寄ってイブキのプリンでも買って帰るとするか!」

 

イブキがプリンを食べて笑顔になるのを思い浮かべる。

うぉぉぉぉこうしちゃいられねぇ!早くプリンを買ってラブリーマイエンジェルイブキに届けなくては!

あとついでだし、棗先輩達の分も買って帰るとしよう。

羽沼議長は……まぁ適当でいいか。

 

「うぉぉぉぉ!待ってろよイブキィィィー!」

 

両手を高く突き上げつつ、俺様は走り出した。

それにしても……

さっきから妙に誰かの視線を感じる気がするんだが……俺様の気のせいなのだろうか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……ウフフ♡」




柴関ラーメンめちゃくちゃ美味しそうなんですよね
実際に食べてみたいなぁ…

次話は日常回の予定です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。