転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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再襲撃と丹花タツミ

「ウフフ……まさか資金不足で止むなく引き受けた傭兵の仕事でタツミさんと出会えるとは。タツミさんはああ言っていましたけど、やはり私と彼は運命の赤い糸で繋がっているとしか思えないですわね♡」

「ちょっとワカモ!一体どうなってんの!?話が違うじゃん!給料分は働くって約束だったでしょ!?」

「しかし彼の傍に水着姿の卑しい女が多いのは気になりますね……特にシャーレの先生、彼女のあの規格外のスタイルは彼の傍に置いておくにはあまりにも……」

「ちょっとワカモ!ワカモってば!」

「タツミさんは誠実な方ですから体でなびく事など無いと思いますが、これはうかうかしている暇はありませんわね……それ以外にも水着の女がたくさんいますし、私も早くアレを着てアピールしなければ……」

「聞こえてないみたいですよ隊長。」

「これ、うちらが面倒見なきゃいけないの?」

 

「しかしタツミさんが何故ここに居るのでしょう。ここは所有権を手に入れるためにあらゆる集団が競い合っている場所だと聞いておりますが……」

「ちょっと聞いてんの!?ねぇワカモ!」

「いくらゲヘナ出身とは言え、あのタツミさんがそのような下劣な派閥争いに参加するとは思えませんし……まさか彼女達に騙されて……?」

「何1人でブツブツ言ってんの!人の話聞いてる!?」

「それに見たところあの連中とタツミさんは親しげな様子でしたし……お優しいタツミさんのことです、本来の目的を知らされず口先の言葉で信じてしまったのかも……」

「ワカモ!いい加減に……!」

「まぁそれも全てはタツミさんに聞けばいいだけのことでしょう……ウフフ、待っていて下さいねタツミさん♡貴方のワカモが今から参りますわ♡」

「はぁ?どういう事よ。あいつは敵でしょ?そもそも何で敵前逃亡なんてしたのよ。あんなヘイローのない男なんてさっさとぶっ飛ばしちゃえばいいだけじゃない。」

 

「……今、なんと?」

「は?いや、あんなヘイローのない男なんてさっさとぶっ飛ばしちゃえばいいって……」

「……ウフフ、思い上がりもいいところですわね。あの御方は貴方達のようなチンピラがどうにか出来るような相手ではありません。」

「なんだって!?喧嘩売ってんのアンタ!?」

「彼は敵ではありません。彼は私が壊すと決めたライバルであり……そして、将来私の旦那様になっていただく予定の方でもあります。」

「は?あんた何言って……!」

「そんな【私の】タツミさんに手を出すというのであれば……容赦はしませんよ?」

「な、何よその目つきは……!」

「ふふふ……今から貴方達に彼が私のものであると言うことをしっかりと教育して差し上げますわ……!」

「ちょ、ちょっとワカモ!?一旦落ち着きなさい……!」

「ウフフ♡ウフフフフ♡」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あれから一旦ホテルへ戻って小鳥遊先輩達と合流してワカモとの関係を洗いざらい吐かされた俺様。

初めて見る威圧感を放っているイブキを見て驚いたり、怒り心頭の黒見を落ち着けたりしつつも小鳥遊先輩の「またその連中が襲ってきたら危ないし、今後はなるべく単独行動は避けた方が良い」と言う方針により今後は特別な理由がない限りは団体行動をする事に決まった。

 

まぁ確かにヘルメット団は数だけは多いから1人で居るところを狙われると厄介だし、それに連中の後ろにはワカモだっているわけだからな。

少々面倒ではあるけど、小鳥遊先輩の言う通り安全策を取っておいたほうが良いのは間違いないだろう。

 

という訳でヘルメット団とワカモが襲ってきたせいで魚の一匹も釣ることが出来ずホテルへと帰っていた俺様達は改めて食料の確保を行うため、全員で先ほど砂狼先輩が見つめた釣り場へとやって来ていた。

 

「んー……釣れないなぁ。」

 

目の前の海の上でゆらゆらと売れる釣り竿のウキを眺めながら、俺様はそう呟いた。

 

“シロコにやり方は一通り教わったけど、意外と難しいんだね……”

「と言っても基本は魚が食いつくまでは待ってるだけって砂狼先輩も言ってたしな。まぁ釣れなかったら食料は最悪俺様の持ってきたカロリーバーとかがあるし、そんなに焦んなくてもいいんじゃないか?」

「はい、それに私達もアビドスからお米とかお肉は持ってきていますからね〜☆いざとなったらそれを使ってバーベキューしちゃってもいいですし!」

「うへー。おじさんはこうやってのんびり出来るならずっと釣りをしていてもいいけどな〜。」

 

そんな俺様の横で並んで釣り竿を垂らしながら先生、小鳥遊先輩、十六夜先輩はそれぞれそう言った。

ちなみに俺様の右隣にはイブキが、左隣には黒見が何故か俺様にかなりピッタリとくっついて座っている。

イブキはともかく、なんで黒見までこんなに距離が近いんだ……先生や十六夜先輩ほどじゃないとは言え黒見もしっかり女の子なんだし、そんなに近寄られると甘い香りとか柔らかいものが当たったりとかで理性がヤバいから辞めてほしいんだが……無心。無心だぞ俺様。

 

「うへー、でもまさかタツミくんと七囚人の1人がそんな関係だったとはねぇ。」

「出会った時からのライバルでありながらピンチには共闘して、更にはファーストキスまでしちゃうなんて……まるで映画の主演の二人みたいですね☆」

“タツミとワカモの仲がいいのは薄々感づいては居たけどまさかそんな事をする関係だったなんて……”

「何度も言うけどあれはノーカンだからな。あんなのが俺様のファーストキスであってたまるかってんだ。」

 

小鳥遊先輩達の言葉に俺様は唇を尖らせつつそう言う。

そう、あれは戦いのことで頭がいっぱいだった俺様にワカモが半ば無理やりやってきただけのことであってお互いの同意の上ではない。

 

だからあれはノーカンなんだ。

俺様のファーストキスがあんなふざけた女と、しかも銃弾飛び交う戦場でだなんてそんなことあってたまるか。

 

“でもワカモみたいな美少女にキスされたら、男の子は嬉しいものなんじゃないの?”

「……まぁ嫌な気はしなかったけど、俺様の気持ち的に認めるわけにはいかないんだよ!そもそもあいつは俺様が倒すべきライバルであって、俺様の敵なんだ!そんなやつと馴れ合うなんてまっぴらごめんだね!」

“……ふふ、タツミってワカモのことになると結構年相応の男の子になるんだね。”

「はぁ!?どういう意味だよ!?」

 

確かにあいつと接している時は遠慮ない物言いとかはしてる気がするけど、俺様って普段はそんなに年相応じゃない振る舞いをしているのだろうか……?

 

「ふん!何が災厄の狐よ!今度タツミくんを襲ってみなさい!ギッタギタのボコボコにしてやるんだから!ね、イブキちゃん!」

「うん!イブキ、絶対あのお姉さんをやっつける!」

 

そんな事を考えていると、俺様の両隣にいるイブキと黒見が大きな声を上げながらそう言葉を発した。

二人の目はこれでもかと言うほどつり上がっており、口ぶりからしてワカモへの怒りがひしひしと伝わってくるほどには怒り心頭と言った様子だった。

 

そう、何故か先程から黒見とイブキは機嫌がものすごく悪いのである。

その気持ち自体は分からなくもないんだけど、俺様がワカモに怒るならともかくこの二人が怒っている理由が俺様には理解できなかったりする。

まぁでも、せっかく休みを取ってバカンスをしに来たのにそれを邪魔されたら怒り心頭にもなるか。

 

「あれ、もしかしてセリカちゃんってば焦ってる?」

「あ、焦ってなんかないわよ!でもそんな大胆なことする子が居るなんて思わなかったから……!」

「いや〜、青春だねぇ。」

「ちょっとその生暖かい目は何よホシノ先輩!」

 

うがーっ!と言う擬音が聞こえそうな勢いで身を乗り出し、小鳥遊先輩に対して講義をする黒見。

と言うかどうでもいいけど黒見、お前俺様の左隣から身を乗り出してるから必然的に座っている俺様の膝をまたぐ形になっていて結構ヤバいんだが……!

黒見の綺麗な黒髪が目の前にあるし、少し目線を落としたら健康的な背中が……って見るな見るな!無心だぞ!

 

「……おにいちゃん?」

 

そんな俺様を見て、イブキは笑顔を浮かべつつも先程から相変わらず身震いするような威圧感を放っている。

ど、どうしちまったんだよイブキ……お兄ちゃんはお前をそんな子に育てた覚えはないぞ!?

 

「……ふぅ。取ってきたよみんな。」

 

俺様がイブキを見てそんな風に慌てていると、先程まで俺様達の近くで素潜りをしていた砂狼先輩が濡れた体をバスタオルで拭きながらこちらへと戻ってきた。

彼女の手には素潜りで取ってきたであろう大量の貝類や海藻類が抱えられており、同行して見守っていた奥空もその一部を持っている辺り相当大量な様子だ。

 

「おー、おかえりシロコちゃん。アヤネちゃん。」

「ただいまホシノ先輩。えっとサザエにアワビに……あとわかめもあるよ。」

「お疲れ様でしたシロコ先輩。とりあえず取ってきたものはこのかごの中に入れてもらえれば。」

「分かった、ありがとうアヤネ。」

「こりゃまた大量っすね。ありがとうございます砂狼先輩。お疲れ様でした。」

「ん、頑張った。」

 

えっへんと胸を張りつつ誇らしげにそう言う砂狼先輩。

素潜りをしていて水着が海水で濡れているせいで彼女の競泳水着が肌にぴっちりと張り付いてエライことになっているが、気合で目を逸らした俺様は砂狼先輩の持ってきた貝類の入れられたカゴに目をやる。

そこには砂狼先輩が宣言した通りアワビやサザエ等の貝類や、ワカメ等の海藻類がどっさりと入れられていた。

と言うか、アワビっつったら言わずと知れた高級食材だぞ。アワビほどじゃないけどサザエも結構高値で取引されている食材だし、よく取って来たな砂狼先輩。

 

「わー!すっごーい!」

「ほ、本当にすごい量ね……」

 

そんな大量の食材を見て、俺様の両隣のイブキと黒見もそう言いながら表情を綻ばせた。

 

「あぁ、これだけあれば食材には困らなさそうだな。」

“すごいよシロコ。これは私達も負けてられないね!”

「はい、大物を狙っちゃいましょう!」

 

砂狼先輩が取ってきた大量の食材を見て、俄然気合を入れて釣り竿を握り直す先生や十六夜先輩。

まぁ砂狼先輩がこれだけの食材を取ってきてくれたのに俺様達が魚の一匹も釣れないんじゃ申し訳が立たないからな、これは俺様も気合を入れる必要がありそうだ。

 

「それにしても……私達、またここに帰ってきちゃいましたね。さっきあんな事があったばかりなのに……」

 

そう考えた俺様が釣り竿に餌を付け直していると、奥空が海を見ながらそう発言した。

 

「まさか私達の他にも人がいたなんて……」

「むしろそう言うことがあったから今度はみんなで来たんでしょ。また襲われたら危ないし。特にタツミくんはヘイローがないし、今は防具だって身につけてないのよ?そのワカモとかいう奴から守らないと。」

「いや、別にそこまでしてもらわなくても自分の身くらいなら自分で守れるぞ黒見。それにそもそも奴とは何度もやり合ってるから手の内も分かってるし……」

「ダメ!そもそもタツミくんは今回は私が誘ったんだから、これくらいはさせてよね!」

「お、おう……分かったよ。じゃあ、お前がそこまで言うならお願いしてもいいか?」

「えぇ、任せておきなさい!」

 

そう言って自分の胸をドンと叩きながら笑顔を浮かべてそう宣言する黒見。

 

「まぁ、そいつらがいなかったら別行動出来たんだけどね……それにしてもヘリの墜落にリゾート復旧に、今度はヘルメット団が襲ってくるなんて……次から次へとよく続くわね。」

「悪いことは続くって言うしねぇ。まーでもこれだけ悪いことが続いたなら、そろそろここらでドッカーンと良い事が起こったりしたりして?」

「だといいんだけどね……」

 

にへーっとした表情で釣り竿を垂らしながらそう言う小鳥遊先輩に対して、黒見が若干呆れながらそう言った。

 

「そ、そんなに楽観的で大丈夫でしょうか?ワカモさんは七囚人なんですよね?また襲われでもしたら……」

「ん、気にしなくていいと思う。あの女が襲ってきたら今度は皆で迎え撃てば良いだけの話。」

「そうよ!タツミくんを狙う女なんて私達で叩きのめしてやるわ!」

「そーだそーだ!セリカ先輩の言うとおりだよ!」

「そ、それでいいんですかね……?」

 

妙にやる気満々の3人に対して、若干苦笑いを浮かべながらそう言う奥空。

確かにさっきと違ってこっちにはキヴォトスでもトップクラスの実力を誇る小鳥遊先輩に加えて、十六夜先輩と黒見も合流しているから戦力としては申し分ないしそれに加えて先生の指揮もある。

いくらワカモが強いとは言えこれだけの戦力があるなら迂闊に手を出しては来れないだろうし、仮に襲撃してきたら迎え撃てばいいだけのことではあるのは確かだ。

……まぁ、いつ襲われるか分かったもんじゃない状態ってこと自体が結構マズいことは変わりないけどな。

俺様もイブキの安全にはしっかり気を配るとしよう。

 

「……じゃ、もう一回行ってくる。」

 

そう考えていると、スポーツドリンクを飲んで休憩を取っていた砂狼先輩はその場から立ち上がって再び近場の海辺へ走っていくと海中へと飛び込んで行く。

 

「あっ!シロコ先輩!……行ってしまいました。もうこれだけ食材があるんだからもう少し休めばいいのに……」

「しょうがないわよ。やる気になったシロコ先輩を止められないのは知ってるでしょ。」

“あはは、シロコらしいね。”

 

綺麗なフォームで勢いよく海へ飛び込んでいった砂狼先輩を見て黒見、奥空、先生がそう口にする。

何と言うか、砂狼先輩って表面上は冷静に見えるけど結構感情豊かだったりアグレッシブな部分があるよな。

 

「釣り竿が足りないから自分はダイビングで獲ってくるって、どこにそんな体力が……」

「まあ若者らしくていいじゃん。おじさんには真似できそうにないね〜。」

 

いや、貴方砂狼先輩と1歳しか歳違わないでしょうよ小鳥遊先輩……そもそも小鳥遊先輩は自分のことをおじさんおじさんって言ってるけど、普通に考えてそんなに可愛いおじさんが居るわけが無いんだよなぁ。

 

「ですがそのおかげで食料には困りませんね!サザエにアワビに……あとは私達がお魚を釣れば完璧です!」

 

ぱぁっとした笑みを浮かべながら、十六夜先輩が嬉しそうに砂狼先輩の獲ってきた獲物を見ながらそう言う。

 

「それにその人達がまた襲ってきても、話し合えばなんとかなるんじゃないでしょうか?もしリゾートが目的ならここは広いので、皆で仲良く分けて使うとか!」

「……いや、ヘルメット団はともかくワカモは話し合ってどうこう出来る相手じゃないっすよ十六夜先輩。」

 

そもそもあいつは自分の趣味で街一つを消し飛ばすような常識では測れない凶悪なテロリストだからな。

話し合って解決できる相手ならワカモはとっくに矯正局へぶち込まれているはずだ。

まったく、あいつは七囚人の1人とは言え悪いとこばっかじゃないんだから大人しく矯正局で罪を償うんだったら俺様だって考えてやらないことも……

 

っていやいや!何を意識してんだ俺様は!

あいつはライバル!そう、俺様のライバルなんだ!

いつか絶対に超えて、泣かしてやるって決めてんだ!

そもそもあいつは七囚人なんだぞ!

ちょっと助けられたり気遣われたからって、俺様がお前みたいなテロリストに靡くと思わないことだな!

ハーッハッハッハ!!!

……はぁ、何を考えてんだろうな俺様は。

 

「ま、まぁ完全に不可能というわけではないでしょうけど……仲良くまでは難しくても、お互いのスペースを決めるとかそんな風には……」

「ダメよアヤネちゃん!タツミくんを狙ってくるような危険な連中をこの島に置いておく訳にはいかないわ!」

「いや、別に連中は俺様を狙ってきたってわけじゃなさそうだけどな……?リゾートハンターがどうとかって言ってたし狙いはリゾート自体な気もするが……」

 

と言うか、黒見のやつさっきからやけに張り切ってると言うか俺様に対して過保護なんだけどどうしたんだ?

 

「……まぁでもワカモさんと言う方はシロコ先輩とは相性が悪そうでした。シロコ先輩のあの人を会わせるのは避けたほうが良いかも知れませんね。」

「ん?そうなのか?」

「はい。先程対峙している時にワカモさんの事を見る目がものすごかった気がするので……」

 

奥空はため息を吐きつつ、砂狼先輩が潜っているであろう海の辺りを見ながらそう言った。

なるほど、そうだったのか。俺様はワカモがいきなり現れたことに気を取られすぎてそこまで気にしている余裕が無かったから全く気づかなかったぜ。

まぁ砂狼先輩とワカモの相性がよく無いんだろうなってのはなんとなく分からなくもないが……

 

「見つけたよ!こんなところに居たのね!」

 

俺様がそんな事を考えていた時だった。

突如、その場に先程聞いたばかりの声が響き渡る。

 

「……まさかとは思うが。」

 

その声を聞いた瞬間にズキズキと痛む頭を抑えながら声のした方を振り向くと、そこには先程の赤髪のヘルメット女を先頭に据えたヘルメット団の連中が立っていた。

 

「おいおい……またお前らかよ……」

“噂をすればなんとやら……って言う奴だね。”

 

俺様はため息を吐きながら釣り竿をその場に置くと、持ってきていた盾を素早く展開してブークリエを構える。

そして一瞬遅れてヘルメット団を視認した他のみんなもそれぞれの武器を手に取り、俺様と先生の前へと躍り出てヘルメット団の前に立ちはだかった。

 

「あんた達ね!さっき先生や皆を襲ってきたっていうヘルメット団の連中は!」

「うへー。さっき撤退したっていうのに随分と早いおでましだねぇ。面倒くさいなぁ。」

 

黒見が目を吊り上げてヘルメット団の連中を威嚇し、小鳥遊先輩も口調こそのんびりとしているものの自身の武器であるショットガンを構えて誰よりも最前線へと立っていた。

俺様は先ほどの皆の言いつけを守り前にはでないようにしつつも、先生やイブキの傍を陣取って2人を守りつついざという時はすぐカバーに入れる位置をキープする。

 

「まさか本当にまた来るとはね!さっきは私は何も出来なかったけど、今回は手は出させないわよ!」

「ま、待ってセリカちゃん!戦う前にまずは落ち着いて話し合いを……!」

「そうですよ!リゾートは広いんですから、皆さんそれぞれ別の場所で楽しめばいいじゃないですか☆」

 

歯をむき出しにして威嚇を続ける黒見に対して奥空が慌ててそう声をかけ、十六夜先輩が奥空に同意するようにそうヘルメット団へと語りかける。

 

「別の場所で楽しむって何さ!うち達はここを奪い取りに来てるんだっての!分けて使うなんてハナっから頭にないわよ!」

 

だが、ヘルメットを被った赤髪の女はこちらへ敵意を剥き出しにしながらそう叫んできた。なるほど、向こうがその気ならこりゃ開戦は避けられないだろうな。

 

「望むところよ!あんた達全員、ボコボコに……!」

「……ウフフ♡」

 

そして黒見がヘルメット団へ向けて武器を構え、引き金に指をかけようとした時だった。

その場に、これまた聞き覚えのありすぎる声が響く。

 

「この声は……!」

「まぁそりゃお前はヘルメット団に雇われてんだからこいつらが来るならお前も居るだろうな……!」

 

余裕綽々で飄々とした、ムカつく女の声。

俺様がこの声を聞き間違えるはずもない……!

 

「ウフフ♡またお会い出来ましたね、タツミさん♡」

「ワカモ……!やっぱりてめぇかよ!」

 

狐面を被りつつ、ゆっくりとヘルメット団の後方から俺様達の前へと躍り出てくるワカモ。

だが奴の格好は、先ほどまで身につけていたいつものヒラヒラした和服とは違っていた。

 

白を貴重とした、控えめなデザインながらもしっかりと存在感を主張する白のビキニ。

ワカモは更にそこに頭に大きな薄紫色の花飾りをつけており、いつもはサラサラと風になびかせているその黒髪を後ろで一つにまとめあげている。

更に左の太ももにはワンポイントで花飾りの付いた紐のようなアクセサリーを付けており、これまた花柄模様の大きな上着を肩から羽織って巨大な日傘を手にしていた。

百鬼夜行出身のワカモらしい、和をモチーフにしたデザインで固められた水着。

その水着を身にまとったワカモは……不覚にも、とても可愛いと一瞬だけ思ってしまった。

 

「ウフフ♡いかがですかタツミさん、私の用意した水着は?」

「あ……あぁ……似合ってるんじゃないか?」

「まぁ!ウフフ♡ウフフフフ♡」

 

ワカモの普段とはかけ離れた雰囲気に、俺様は思わず軽口を叩くのも忘れてそう言葉を返してしまった。

と言うかワカモの奴、和服を着ている時からスタイルがいいとは思っていたけど水着になるとこんなにも凶悪なわがままボディなのかよ……!

水着のデザインはおとなしめだけど逆にそれがワカモのスタイルを引き立たせており、普段のヒラヒラとした和服の下に隠したダイナマイトボディをこれでもかと言わんばかりに陽の光の下にさらけ出していた。

 

大きな胸、くびれた腰、ムッチムチの太ももに安産型の尻……こんなの先生や羽川先輩と大して変わんないぞ!?

思春期の男子にとっては目に毒でしかないわぁ!

 

「……っ!」

 

そのあまりにも刺激的な光景に、思わず俺様は素早く視線をそらした。

くそっ!ワカモのやつ、撤退したかと思ったら水着を着てくるなんて一体どういう了見をしていやがる!

 

「ウフフ♡まさかタツミさんにそこまで素直に褒めていただけるとは……このワカモ、感無量ですわ♡」

「う、うるせぇ!馬子にも衣装だって思っただけだ!」

「相変わらず素直じゃないんですから……まぁそういうところもタツミさんらしいのですけど♡」

 

そう言うと、狐面に手を当てて愉快そうに笑うワカモ。

 

「こんなこともあろうかと、水着を持ってきておいて正解でしたわね♡ウフフ、恥ずかしがらずにもっと見ていただいてもいいのですよ?♡」

「うるせぇ!直視できるかドアホォ!」

 

あぁぁぁぁぁムカつく!

絶対俺様の反応見て楽しんでんだろこいつ!

やっぱこいつはいつか泣かす!絶対にだ!

 

“タツミが自分から水着の女の子を褒めた……!?”

 

俺様を見て驚愕したような表情でそう言う先生。

いや、これは褒めたって言うよりはビックリしすぎて思った言葉がそのまま口に出ちまっただけと言うか……!

 

「むう……イブキはいっぱい褒めてもらったもん!」

 

そして頬を膨らませながらそう言うイブキ。

心配するなイブキ!イブキの水着姿は万魔殿で試着したときや今日ここまで来るまでにもう10回以上は褒めたし何よりもその水着は本当にイブキに似合ってるからな!

目の前のワカモなんて、イブキの可愛さに比べたらちょーーーっとだけ似合ってるくらいなもんだ!

 

「あんたが例のワカモって人ね!何が目的かは知らないけど、タツミくんは私達が守るんだからね!」

「あらあら……ウフフ。どうやらタツミさんの傍には発情した卑しいメス猫が居るようですね?」

「だ、誰がメス猫ですってぇ!?」

 

黒見はワカモを視認すると銃を構えて睨みつけながら威嚇するが、ワカモにそう言葉を返されるとうがー!と言う擬音が出そうなほどに目を吊り上げる。

 

「おい落ち着け黒見!取り合うんじゃない!」

「離してタツミくん!あのメス狐にはいっぱつ食らわせてやらないと気がすまないわ!」

 

流石にマズイと思った俺様は慌てて黒見の方を掴んで静止するが、熱くなっている黒見はそのまま銃を構えて今にもワカモへと突っ込んでいきそうな雰囲気だ。

 

「……そこのピンク髪の方とメガネの方はともかく、先生やそこの茶髪の女はタツミさんのお側に置いておくには少々危険がすぎますわね。そのような駄肉を見せつけてタツミさんを誘惑するのは辞めていただけますか?」

“だ、駄肉って……うぅ、確かに最近はちょっとだけ太ってきちゃったけどまだそこまで言われるほどじゃ……”

「うふふ、それを言うならワカモさんだって私達に負けないくらいの立派なスタイルじゃないですか〜☆」

 

ワカモにそう言われ、落ち込む先生とニッコリと笑顔を浮かべながら少し威圧的な口調でそう言う十六夜先輩。

……先生はともかく、十六夜先輩は少しカチンと来ていると見て良いな。

 

「……大丈夫ですよ先生、十六夜先輩。俺様がこんな事を言うのもなんですけどお二人のスタイルは駄肉どころか一切無駄のない完璧なスタイルだと思います。」

“タツミ……”

「俺様みたいな男にこんな事言われるのも気持ち悪いかも知れませんが、自身を持って下さい。」

「いえいえ、そんなことありませんよ!ありがとうございますタツミくん☆」

“うん、ありがとうタツミ。おかげで自身が持てたよ!”

「はい!なら良かったです。」

 

俺様の言葉を聞き、胸の前で握りこぶしを作ってそう言う先生と笑顔を見せつつそう言う十六夜先輩。

良かった、異性である俺様からそんな事を言われたら気色悪がるかなと思っていたけど二人とも少しは自身を取り戻してくれたようだ。

 

「と言うかおじさんたちは眼中にないんだね……確かにおじさんは先生やノノミちゃんみたいなナイスバディってわけじゃないけど……ちょっと複雑だなぁ。」

「わ、私だって少しはあるのに……」

「……大丈夫ですよ小鳥遊先輩、奥空。二人は先生や十六夜先輩とはまた違った良さがあるんですから自身を持って下さい。もちろん、黒見もな?」

「タツミくん……えへへ、うん。ありがとう!」

「……うへー。こりゃあプレイボーイだねぇ。」

「セリカちゃんの気持ちが少し分かりますね……」

 

いや、プレイボーイってなんだよ小鳥遊先輩……?

俺様は別にそんなつもりは一切ないんだが。

 

「ウフフ、先生や茶髪の女も大概ですが……一番危険なのはそこのメス猫の貴方。貴方はタツミさんのお側に置いておくにはあまりにも危険です。私の女としての本能がそう告げております。」

「こっちだって、あんたみたいな危険な奴をタツミくんに近寄らせるわけには行かないわ!覚悟しなさいよ!」

「あら、短気な猫はタツミさんに嫌われますわよ?」

「なんですって!?」

「落ち着け黒見。ワカモのいつもの減らず口だ。挨拶みたいなもんだから取り合わないほうが良い。」

 

俺様は耳を立てて威嚇する黒見にそう声を掛ける。

ワカモはいつもこんな感じで会話のペースを握ろうとしてくるからな……いや、案外何も考えてずに話してるだけなのかも知れないけど厄介な事この上ないぜまったく。

 

「タツミさんの妹は……ふふっ、とても可愛らしい水着をお召しのようですね。」

「……お?なんだ?お前もやっぱりイブキの可愛さは素直に評価してくれんのか?」

「えぇ、私とてそのくらいの小さな子にムキになるほど大人気なくはありませんので。」

「……イブキ、別にお姉さんに褒められたって嬉しくないもん。」

 

頬を膨らませ、不機嫌そうにそう言うイブキ。

 

「心配すんなイブキ。あのお姉さんがどう思おうがお前は世界で一番可愛いんだからな。」

「お兄ちゃん……えへへ、うん!ありがとう!」

 

そう言うと、花の咲いたような笑みを浮かべるイブキ。

うんうん、やっぱりイブキの笑顔は最高だな!

 

「とにかく!タツミくんには指一本触れさせないわ!」

「……ウフフ、血気盛んなメス猫ですこと。ですが安心して下さいタツミさん。人のいい貴方のことですから大方この方達に騙されてここへ連れてこられたのでしょうが、安心してください。今から私が貴方と妹さんを救って差し上げますので♡」

「は?いや、何いってんだお前……?」

 

騙されるって何がだよ?

俺様は黒見を初めとするアビドスのみんなの完全な善意によってリゾートに誘われてここに居るだけなんだが。

 

「別に俺様は騙されてなんかいねぇよ。と言うかいい加減その口を閉じろワカモ。これ以上みんなを悪く言うなら俺様だって黙ってないぞ?」

「ウフフ♡待っていてくださいねタツミさん♡」

「おいこらぁ!人の話を聞けバカ狐がぁ!」

 

クソ!こうなったらもう実力行使だ!

ちょっとかわいくて俺様の好みすぎるデザインの水着を着てるからって調子に乗ってんじゃねぇぞコラァ!!!

 

似合ってるとか、可愛いなとか、エッロ……とか!

そんなこと思ってない!思ってないからな!

自惚れてんじゃねぇぞ顔と体がいいだけの狐女ァ!!!

 

「行くぞみんな!コイツは絶対に泣かす!」

「えぇ!ボコボコにしてやるわ!」

「ま、待って下さい皆さん!戦う前にまず話し合いを……!」

 

互いの武器を構え、臨戦態勢に入る俺様達とワカモ達。

そんなお互いの姿を見て奥空が慌ててそう言うが、もうここまで来たら話し合いで解決できる問題を超えているだろう。

 

「話し合い?……うふふっ、問答無用ですわ!総員攻撃なさい!タツミさんと義妹さんをお助けしますわ!」

「こ、攻撃ィー!」

「うぅ……うちがワカモを雇ったはずなのに何でこんな事になってんのよー!」

 

ワカモの号令により、手にした銃を一斉にこちらへ向かって構えるヘルメット団の連中。

と言うか今ワカモがイブキを呼ぶときの当て字がちょっとおかしかった気がするけど、気のせいか……?

 

「うへー。こうなったら仕方ないか……先生、指示はお願いね。」

“分かった。タツミとイブキは危険だから後ろに下がっていてね。よし、行くよみんな!”

「はーい☆ちょっとお仕置きしちゃいましょう!」

「えぇ!ボッコボコにしてやるんだから!」

「うぅ……どうしてこんなことに……」

 

こうして、アビドスのみんなとワカモ率いるヘルメット団による戦いの火蓋が切って落とされるのだった。

……そういや、未だに素潜りをしている砂狼先輩の事をすっかり忘れていた。

彼女が戻ってきても大丈夫なように、俺様はイブキを守りながら彼女が安全に戻ってこれるスペースを確保しておくことにしよう。

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