転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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今回は少しだけ短めです


魚と下ごしらえと丹花タツミ

あれからアビドスの皆とワカモの率いるヘルメット団の激しい戦いが幕を開け、先生の指揮の元でワカモ達を迎え撃ったアビドスの皆。

砂狼先輩がいないものの4人が揃ったアビドスの実力は伊達ではなく、中でもキヴォトスでも空崎委員長と並ぶくらいにはぶっちぎりの強さを誇る小鳥遊先輩が最前線で敵をなぎ倒しながら後ろへは銃弾を一発も通さない前衛として見習うべきような立ち回りを見せていた。

俺様はその姿を後ろから見ていたのだが、小鳥遊先輩の最前線で立ち回りつつも盾を上手く使って味方を守りながら道を切り開く戦い方は……まさに俺様の理想だ。

その力はワカモの激しい攻撃に一歩も引かずに渡り合い、何ならワカモを圧倒していたほど。

小さな背中に大きな物を背負って戦う彼女の姿を、俺様はしばし見つめてしまっていた。

 

そしてその後ろから十六夜先輩のガトリングガンよる弾幕支援、黒見の的確な狙撃もあり的確にヘルメット団の数を減らしていった。

流石のワカモもこれ以上は多勢に無勢と判断したのか一旦の退却を決めたようで「私は諦めません、また必ずお会いしましょう」と言ってそのままヘルメット団を引き連れてジャングルの中へと撤退していった。

 

こちらの勝利に終わったワカモとの戦い。

戦いを終えたアビドスの面々と先生は先程まで釣りをしていた海岸に座り込み、ひとまずの休息を取っていた。

 

「うぅ……なんなのよあいつ……強すぎでしょ……」

“タツミが絡んでいるからか、ものすごい執念だったね。”

「うへぇ……おじさんもう動けないよ。強いんだねぇワカモちゃんって。」

「お疲れ様でした皆さん。戦ってもらってしまってすみません。はい、スポーツドリンクです。しっかり水分補給をして熱中症には気をつけて下さいね。」

「はいどーぞ!ホシノ先輩!ノノミ先輩!」

「うへー、ありがとねーイブキちゃん。」

「わー!ありがとうございますイブキちゃん☆」

「ほら、黒見もしっかり水分補給しとくんだぞ。お疲れ様、ありがとな。」

「別に構わないわよ。タツミくんは防具を付けてないんだし危ないからね。それに後方から援護射撃はしてくれたんだし、それだけで充分ありがたいわよ。」

 

俺様が差し出したスポーツドリンクを受け取りつつ、ニッと笑顔を見せながらそう言う黒見。

そう、俺様は先の戦いで後ろに下がってはいたものの流石に何もしないのは申し訳がないので先生の許可を得て危なくない程度に前へ出て援護射撃をしたり、みんなの死角の敵を小鳥遊先輩達に知らせたりしていた。

 

今回、俺様は防具を万魔殿に置いてきちまったせいで前線に出て戦うことを禁止されているか。

なら、せめてこのくらいのことはさせてもらいたい。

流石に戦闘をアビドスの皆に任せっぱなしにするわけにはいかない、俺様もできる限りの事はしたいからな。

 

「ふう。ただいま、今回もたくさん……あれ、みんな?」

 

俺様がそんな事を考えていると、素潜りを終えた砂狼先輩が俺様達の元へと帰ってきたらしい。

彼女の声がした方を振り向くと、そこには両手に大量の貝や魚を抱えた砂狼先輩が立っていた。

 

“おかえりシロコ。”

「おかえりなさい!シロコ先輩!」

「……あ、お帰りなさいシロコ先輩。」

「あはは……お帰りなさいシロコちゃん☆」

「うぅ……体力が……死にそう……」

「もうおじさん動けないよ〜……」

 

そんな砂狼先輩を笑顔で迎えるみんな。

……まぁ一部死にかけている人もいるけど、先程までアレほどの激戦を繰り広げていたのだから仕方ない。

なんせ相手はあのワカモだ。体力の消耗も相当だろう。

 

「お帰りなさい、お疲れ様です砂狼先輩。」

「何があったの?皆すごく疲れてるみたいだけど……」

「えっと、実はですね……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後、砂狼先輩に今までワカモ率いるヘルメット団との戦闘行為を説明した俺様とアビドスの皆。

話を聞いた砂狼先輩は顔を露骨に不快そうにしかめ、ワカモに対する不快感を顕にしていた。

 

「……あの女。」

 

眉間にシワを寄せながら、不機嫌そうにそう言葉を吐き捨てる砂狼先輩。

そりゃ楽しいバカンスに水をさされたんだ。そんな表情だってするし、悪態の一つだって出るだろう。

とは言え砂狼先輩のワカモに対する嫌悪感は黒見に負けず劣らずと言ったものがある。

……こりゃなるべく会うのは避けたほうがいいだろうな。

 

「そんなことより、今回も大量だねシロコちゃん。」

「ん、頑張った。」

 

そんな砂狼先輩の表情を察知したのか小鳥遊先輩が声を掛けると、砂狼先輩はたちまち柔らかな笑顔を浮かべてピースサインをした。

砂狼先輩が獲ってきてくれた獲物を見ると今回は先ほどのサザエやアワビなどの貝類に加えて魚や甲殻類の姿もあり、先ほどよりもバリエーションが豊かだ。

 

「うんうん!これだけあれば食料には困りませんね!ありがとうございますシロコちゃん!」

「ん、ぶい。」

「わー!お魚さんがいっぱい!シロコ先輩ってすごいんだね!」

「ん、日頃体を鍛えているおかげ。イブキも私みたいに毎日トレーニングをすれば出来るようになるよ。」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ねながらはしゃぐイブキの頭を優しく撫でながらそう言う砂狼先輩。

奥空の話によると砂狼先輩はアビドスまで毎日自転車で通っているらしく、それ以外にも体力作りのトレーニングを欠かさず行っていているらしいからな。

その証拠に素潜りなんて普通なら体力をかなり消耗する運動をしても息一つ乱さずにケロっとしているし、彼女の体力は底なしなのかも知れない。

まぁそれはそれとして、素潜りをして魚や貝を捕まえてくるイブキも悪くないかもしれねぇな!

 

「しかしさっき獲ってくれくれたものと合わせると本当に大漁ね……食べきれるかしら、これ。」

「いけるんじゃないか?俺様達は皆で八人いるわけだし充分すぎる量だとは思うけど流石に食べきれないってことはないだろ。」

 

それに、米などの炭水化物と違って魚や貝ってあんまり腹に溜まらないしな。

確かに砂狼先輩が獲ってきてくれた獲物が入ったカゴはパンパンだけど、案外ちょうどいいくらいの量なんじゃないかなって思ったりしているけど。

 

「それにもし食べきれないなら俺様が日持ちするような料理にしてやっからよ。」

「あぁ、そう言えばタツミくんって料理出来るんだったわね。」

「おう、ゲヘナの給食部のヘルプに入ったりイブキの飯を作ったりしているからな。腕には自信があるから期待しててくれていいぞ。」

“うんうん、タツミの料理は美味しいからね!今から楽しみだなぁ。”

 

そう言いつつ、満面の笑みを浮かべる先生。

 

「先生はタツミくんの料理を食べたことがあるの?」

“うん。タツミは当番でシャーレに来る度に料理を作ってくれるんだけど、これがまた美味しくて……”

「……まぁ先生は生徒のために毎日身を粉にして働いてくれてるのにカップ麺やインスタント食品ばっかじゃ体に悪いからな。栄養のあるもんも食ってほしいしよ。」

 

先生も料理が出来ないってことはないんだろうけど、シャーレの仕事が激務すぎるせいでカップ麺や菓子パンが主食になってるみたいだからな。

当然そんな食生活を送っていてはいつかは体を壊すのは目に見えているので、せめて俺様が当番の日くらいは栄養のある料理を作って食ってもらおうってわけだ。

 

……しかし、シャーレの連日のえげつないくらいの仕事量はどうにからなねぇもんなのかな。

この前シャーレに行った時は先生のデスクの上に俺様が普段万魔殿で1日に処理する書類の5倍くらいの量の書類が積み上がっていたし、忙しすぎて先生の顔から魂が抜けかけていたからな……

それに先生は毎日夜遅くまで働いているようだし、先生もこのバカンスで目一杯休みを満喫して欲しい所だ。

 

まぁもう少し連邦生徒会の方でも先生の負担を減らしてやってほしいんだけど、七神代行や岩櫃調停室長も連邦生徒会長の捜索をしながら連日えげつない業務を捌いていて、いっぱいいっぱいで余裕がないからなぁ……

俺様の方でもなんとかしてやれたらいいんだろうけど。

 

……そういや、料理といえばRABBIT小隊の連中は大丈夫だろうか。最近は夏真っ盛りって感じの気温だから、もらった廃棄弁当だってすぐダメになっちまうだろうしな。

一応俺様が日持ちのするよう加工した料理をクーラーボックスに入れて置いてきてやってるから、俺様が帰るまではそれでなんとか食いつなげると良いんだけど。

 

「ん、なら材料の下ごしらえも頼もうかな。」

 

そう考えていると、砂狼先輩が声を掛けてくる。

 

「はい、任せて下さい砂狼先輩。先輩のせっかく獲ってきてくれた食材を無駄にするわけには行きませんからね。一匹残らず美味しく食えるようにしますよ。」

「うん。ありがとうタツミ。」

 

俺様と砂狼先輩はそう言って互いに顔を見合わせると、お互いに笑顔を浮かべた。

ざっと見た感じだと砂狼先輩の獲ってきた獲物の中に毒があるような魚や貝は混じっていないようだし、これならすべての食材を余すことなく使う事が出来るだろう。

こんなこともあろうかと、玄武商会の鹿山先輩から食材の目利きの仕方を教わっておいて正解だったぜ。

それに魚や貝の調理法はこれまた玄武商会の朱城会長から教わっている。

彼女いわく魚や貝類は山海経の郷土料理……つまり中華料理には欠かせないらしいから、その食材に関する扱いも当然プロの域に達していて技術力もすごいしな。

そんなすごい人から教わっているから俺様も自信はあるし、遠慮なく腕を振るうとしよう。

 

「さて……それではみなさん。食料の確保も無事に終わったことですし、そろそろ制御室へ行きませんか?」

 

そんな事を考えていると、先程まで小鳥遊先輩や十六夜先輩と話し込んでいた奥空が口を開いた。

 

「うへー。そう言えば食料の確保を優先して制御室は後回しにしてたんだったね。すっかり忘れてたよ。」

「はい。ホテルの制御室は電気やガスを初めとした全ての動力源が集まっている場所です。快適に過ごすためにはまずは制御室を稼働させないと……」

「やっと色々終わらせたっていうのに今度は制御室……?もういい加減クタクタよ?」

「まぁとは言え制御室を稼働させないと水道もガスも使えないしな。水が出なけりゃ風呂にだって入れないし流石にそれは嫌だろ?」

「う……それはたしかにそうね……」

 

俺様の言葉に対し、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべつつそう言う黒見。

まぁアビドスの皆からすれば今日だけでヘリの墜落から始まってリゾートの復旧、ヘリの修理、食料の確保、ヘルメット団の襲撃と散々な目に合っている。

そりゃ疲れるのは当たり前のことだろうけど、泊まるはずのホテルの電気や水道が使えないってのは死活問題でしかないだろうからな。

黒見やみんなには気の毒だけど、もうひと頑張りしてもらう他無いだろう。

 

「うぅ……いつになったら休めるのかしら……」

「まぁまぁセリカちゃん。動力源の確保が終わったらのんびり休めるから、もう少し頑張ろう?」

 

落ち込む黒見に奥空がそう声を掛ける。

まぁ疲れていて休みたい気持ちはよく分かるからな。

俺様だってワカモの事でどっと疲れたし、いい加減どこかで腰を落ち着けて休みたいとは思うしよ。

 

「それにこれから快適にバカンスを送るためには制御室の稼働は必要なことだしな。」

「ん、それにこの地図によると制御室には格納庫兼倉庫もあるみたい。」

「格納庫がある……と言うことは!」

「うん、ヘリの部品も見つかるかもしれないね。」

 

ちゃっかりホテルから持ってきていたらしい地図を広げながらそういう砂狼先輩に対して、小鳥遊先輩と奥空は表情を明るくしながらそう言う。

幸いアビドスの皆の乗ってきたヘリは墜落したとは言え修理すれば動かせる程度の損傷らしいので、確かにその格納庫からヘリの部品が見つかれば修理は可能だろう。

ここまで災難続きだったけど、やっと明るい兆しも見えてきたようで俄然テンションが上がってきた。

 

「良かった、これで修理が出来ますね☆」

「建物の掃除から始まってどんどん無人島開拓みたいになっているわね……」

「まぁ実際無人島開拓みたいなもんだしな……とは言え中々できる体験じゃないし、これはこれで面白いんじゃないか?」

 

実際、ここのところ仕事続きでロクに休めてなかった俺様としてはイブキとこんなに長い間一緒に居られるだけでも充分だしそこにアビドスの皆や先生もいるんだ。

それに掃除や釣りも中々楽しかったし、イブキも喜んでくれているので俺様としては言うことはないしな。

 

“じゃあそうと決まれば、早速向かうとしようか。”

「よーし!しゅっぱつしんこー!」

 

こうして、俺様達は砂狼先輩の獲った大量の食材を持って制御室を稼働させるために一旦拠点であるホテルへと戻るのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あれからしばらくして。

道中ワカモやヘルメット団からの襲撃も無く無事にホテルへと帰還した俺様達は、とりあえずホテルのライフラインを復旧させるために制御室を目指す事となった。

 

で、それはいいんだけど砂狼先輩が獲ってきてくれた大量の食材達をバーベーキューで使えるように下ごしらえを済ませておく必要があるのもまた事実。

そのため、先生や奥空達が制御室の稼働を済ませるまでの間に俺様とイブキはホテルのキッチンに残って魚や貝の下ごしらえを済ませる事にした。

先程も言ったけど俺様は食材の下ごしらえに関しては給食部のヘルプの際に牛牧と行ったり、玄武商会の朱城会長から直々に教わっているため慣れているからな。

牛牧は料理ができないだけで下ごしらえに関してはプロレベルの技術の持ち主だし、朱城会長もプロの料理人だけあって下ごしらえの技術は目を見張るものがある。

そんな二人と肩を並べて材料の準備をしてきたし、下ごしらえの技術には自信があるからな。任せて欲しい。

 

当然ヘルメット団の襲撃があったばかりで危険なので全員で行動したほうがいいのではないかと言う意見もあったけど、まぁ連中だってボコボコにされた直後だし体制を整え直すまでは大人しいはずなので大丈夫だろう。

ワカモに関しても流石に撃退された直後に再度襲ってくるような真似はあいつならしないだろうし、そういう意味でも今は襲撃の心配はしなくてもいいと言える。

 

とは言え、流石に俺様とイブキだけをキッチンに残していくのは心配だということで護衛兼お手伝い役として十六夜先輩が共に残ってくれることとなった。

というわけなので現在は俺様、イブキ、十六夜先輩の3人でキッチンにて材料の下ごしらえを行なっている所だ。

 

「わー!上手ですねタツミくん☆」

 

そんな事を考えていると、隣で包丁を握っている十六夜先輩が俺様が内蔵を取り除いて3枚におろした魚を覗き込みながらそう声を掛けて来た。

十六夜先輩はキラキラと目を輝かせて俺様がおろした魚を見つめているが、こちらを覗き込む際に結構近くまで寄ってきており若干前かがみになっているため彼女の大きな胸の深い谷間が丸見えになっている。

俺様は慌てて視線を目の前の魚へと固定すると、誤魔化すように口を開く。

 

「い、いえ……いつも給食部のヘルプで大量の料理を作ってますからね。このくらい朝飯前ですよ。」

 

若干震える声で俺様はそう呟く。

と言うか先生と言い羽川先輩と言いワカモと言い十六夜先輩と言い、俺様って男がいるにも関わらずあまりにもホイホイ肌を見せすぎじゃないか?

まぁそりゃキヴォトスに男なんて俺様くらいしかいないんだし警戒が緩むのは分からなくもないんだけど流石に無警戒すぎるだろ……理性をガリガリと削られるこっちの身にもなってくれまったく……

 

それにしても、よくよく考えたらいつもヘルプに行けてる訳じゃないから普段から愛清先輩と牛牧はこの食材たちよりも遥かに多い食材の仕込みをしてるんだよな……

俺様が議長代理になってから予算の増額をしたり、設備の増設や機材の導入、人員の確保なども行っているため前よりは格段に環境は改善されたけどまだまだ問題は山積みだからなぁ。

彼女達のためにもまたゲヘナに帰ったら改善案をなにか考えなければ……

 

……って、また仕事のことを考えちまっているな。

いかんいかん。今はイブキやみんなと一緒の楽しいバカンスをしている真っ最中なんだ。

仕事のことは今は考えず、全力で楽しまなくちゃな。

 

「……どうしましたタツミくん?」

「あ、いえ。何でもないです。それより、十六夜先輩も上手にできているじゃないですか。」

 

俺様はそう言うと、十六夜先輩の目の前に置かれたまな板の上に乗っている魚の姿を見ながらそう言った。

その魚は内臓がキレイに取り除かれ、ウロコもキチンと剥がされて串が打たれておりこれならばあとは塩をふって焼くだけで充分美味しく食うことが出来るだろう。

十六夜先輩は普段あまり料理をしないらしいから俺様がやり方を軽く教えただけなんだけど、それでここまで出来るんだから相当筋がいいみたいだな。

 

「えへへ☆頑張っちゃいました!」

「普段料理をしないのに俺様がちょっと教えただけでここまで出来るのはすごいですよ。魚の内臓を取るのって意外と難しいんで、先輩は筋が良いんだと思います。」

「いえいえ、タツミくんの教え方が上手だったおかげですよ!とってもわかりやすかったですからね☆」

 

十六夜先輩は笑顔を浮かべながらそう言うが、それでも説明を聞くだけなのと実際にやってみるのとでは天と地ほどの差があるからな。

それに偏見だけど十六夜先輩ってアビドスの中では一番家庭的なイメージがあるし、やっぱりこういう料理に関することに対しては得意なのかもしれない。

 

「おにいちゃーん。これ、どこに置いたらいいのー?」

 

そんな事を思っていると、俺様が頼んでいた海藻の水洗いを頼んでいたイブキがボウルに入ったワカメ等を抱えてトテトテとこちらへ近寄ってくる。

 

「おぉイブキ!そこに置いておいてくれればいいぞ。うんうん、きちんと綺麗になっているな。流石はイブキだ!偉いぞー!」

「えへへ!」

 

俺様は組んできた井戸水で手を洗ってからイブキの頭に手を乗せて左右に動かすと、たちまちイブキは花の咲いたような笑みを浮かべた。

うんうん、やっぱりイブキの笑顔は最高だぜ!!!

やっぱりこれは今すぐキヴォトスの国宝に指定するべきなんじゃないのか?

こんなに天使のような笑顔を俺様が1人占めするなんてそんなのあまりにも勿体ないだろう。

今こそ七神代行と出来た縁を使って、ぜひとも七神代行にイブキの笑顔を売り込んで国宝にしてもらわねば!

ふふふ、夢が広がるな!ハーハッハッハ!!!

 

「ふふ、タツミくんとイブキちゃんは本当に仲がいいんですねー☆」

「そりゃもう!俺様はイブキをキヴォトスで……いえ、世界で一番愛していますからね!」

 

俺様は拳を作って前へ突き出しながら笑顔でそう言う。

サラサラの金髪の髪、愛らしい小さい角、ちっちゃい翼に尻尾、そして何よりもこのくりくりの目!

世界で一番可愛くて、優しくて、いい子で……例え目に入れたって痛くない、俺様の最愛の妹だ。

イブキのためなら俺様はなんだってやってやるさ。

 

「えへへ、照れるよお兄ちゃん……♡」

 

俺様の言葉に顔を赤くして、恥ずかしそうにそう呟くイブキ。おいおい見ろよこのイブキの圧倒的愛らしさを!

くーっ!やっぱりイブキは最高だぜ!

 

「ふふ、良かったですねイブキちゃん。タツミくんみたいなとっても優しいお兄ちゃんがいて。」

「うん!お兄ちゃんは優しくてかっこよくてお料理も出来て……イブキの自慢のお兄ちゃんだからね!」

 

えっへん、と胸を張りながらそう言うイブキ。

いやぁ、そこまで褒められると流石に照れるなぁ……

常日頃からイブキにとってのいいお兄ちゃんでいようと努力を惜しんではいないものの、やっぱりこうして自慢の兄だって言われるのは嬉しいもんだ。

 

「いいなぁイブキちゃん。私もタツミくんのような優しいお兄ちゃんが欲しかったです。」

「ふっふーん!いいでしょーノノミ先輩!」

「あっ、そうだ!良かったら私もタツミくんの事をお兄ちゃんって呼ばせて頂いても宜しいでしょうか☆」

「えぇっ!?い、いやそれは流石に……」

 

屈託のない笑顔でそう言う十六夜先輩に対して、俺様は狼狽えながらそう言った。

と言うか、別に十六夜先輩が俺様のことを兄って呼んだからといって俺様が十六夜先輩のお兄ちゃんになるわけじゃ無いと思うんだけど。

そもそも十六夜先輩は俺様より歳上なんだし、仮に呼ぶとしても兄じゃなくて弟なのでは……?

 

「……ノノミ先輩、お兄ちゃんは渡さないからね?」

 

そんな十六夜先輩を見て、イブキは頬を膨らませながら俺様にくっつきつつそう言った。

 

「だ、大丈夫だぞイブキ!心配しなくてもお兄ちゃんはイブキだけのお兄ちゃんだからな!」

「……うん、そうじゃないと許さないからね?おにいちゃん?」

「お、おいイブキ……?」

 

俺様の上着の袖を指で摘みつつ、こちらに向かって笑顔を浮かべながらそう言うイブキ。

しかしその目は全く笑っておらず、本日何度目かわからないほどの底冷えするような威圧感を醸し出していた。

お、おいどうなってやがる……!今日だけでもう何度イブキのこの姿を見ているか分からないぞ!?

一体どうしちまったんだイブキ!?

 

「……ふふ、イブキちゃんは本当にお兄ちゃんっ子なんですね〜☆」

「うん、イブキはお兄ちゃんが大好きだからね♪だからノノミ先輩のお兄ちゃんにはなれないのです!」

「それは残念です……なら、弟くんになってもらうなら大丈夫ですよね☆」

 

いや何が大丈夫なんですか十六夜先輩!

そもそも貴方お兄ちゃんが欲しいって言ってませんでしたっけ!?いつの間にか弟になってますけど!?

 

「……それもダメだからね?ノノミ先輩。」

「うーん、イブキちゃんは強敵ですねぇ。」

「ノノミ先輩にそういうつもりがないのは分かってるけど、それでもダメったらダメなのー!」

「ふふ、冗談ですよイブキちゃん。そんなに怒らないでください☆」

「まったくもーノノミ先輩ったらー!」

 

俺様が困惑する中、先程までの威圧感が離散して手をブンブンと振りながらそう言うイブキ。

その後も十六夜先輩とイブキと共に、なんやかんやと騒がしくしつつも食材の下準備を進めるのだった。

それにしてもやけに制御室の方が騒がしかった気がするんだけど……俺様の気のせいだろうか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁはぁ……あいつら強すぎるでしょ!?」

「ウフフ♡タツミさんったら私の水着を似合っているだなんて……なんと勿体ないお言葉……♡」

「くそっ、また作戦の練り直しをしなきゃ……」

「ふふ、それにタツミさんは誤魔化しておられましたが視線はチラチラと私の胸や太ももに言っていたのを見逃しませんでしたよ……硬派で誠実なタツミさんも、やはり中身は年頃の男の子なのですね♡」

「あーもう!こいつは負けたって言うのにさっきからずっとこんな調子だし!一体どうなってんのよもう!」

「ウフフ、こうしてはいられません。今がタツミさんに私の気持ちを分からせる絶好のチャンスです。手始めに今夜あたり宿泊しているホテルの部屋に忍び込んで彼と同衾を……♡」

「何いってんのこの色ボケ狐は!もうやだぁ!!!」

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