転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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青い海と丹花タツミ

あのあと、十六夜先輩とイブキと一緒に食材の下ごしらえやバーベキューセットの準備などを終えた俺様達。

そしてその直後、制御室の稼働を終えたらしい先生たちがキッチンへと戻ってきたのだが……何故かみんな息を切らしており、まるで戦闘後のような様子だった。

中でも小鳥遊先輩と黒見は特に死にそうな顔をしており今にも倒れそうだったので、急いで有り合わせの食材を使って簡単な疲労回復に効く即席のスープを作って二人に飲んでもらった。

 

で、落ち着いた所で話を聞くとどうやら制御室へ向かった先生たち5人だったのだが制御室を発見して電源を入れたところまでは順調にいっていたらしい。

そして、色々とシステムを確認している内にリゾート防御システムなるものを発見。

きっとリゾートの防衛を担ってくれるシステムだろうと特に疑問もなく起動すると、どうやら身元の確認が取れていなかった先生たちはリゾートの安全を脅かす敵対者として認識され大量の警備ロボットに排除されそうになりそこで激しい戦闘になったらしい。

まぁ確かにチケットこそあるけど警備プログラムの承認手続きをした訳ではないから、致し方ないだろう。

 

その後小鳥遊先輩を先頭に攻撃を仕掛けてくるロボットから制御室を守りつつその間に奥空がシステムに先生、アビドスの五人、俺様とイブキの身元を急いで入力。

それによってこの場の全員はリゾートを使用する関係者としてシステムに認識され、警備ロボットの攻撃が止んで事なきを得た。

そしてそこから改めて電気やガスなどのライフラインを復旧し、格納庫を確認してアビドスの皆の乗ってきたヘリに合いそうな部品も発見。

とりあえず一件落着ということで制御室を後にし、ここまで重たい体を引きずって帰ってきたらしい。

 

それはなんというかうん、お疲れ様としか言えない。

しかしリゾート防御システムなんてハイテクな機能がこの建物に備わっていたとは……黒見の話によると制御室のモニターには島中の監視カメラの映像が見れる警備室みたいな場所もあったらしいし、長年放置されていたであろう場所なのにと驚く他無いだろう。

更に監視カメラとロボットでこの島の安全をスキャンしながら安全の確保を行っているらしく、まさしく最先端の防衛用システムだと言える。

 

今は放置されてボロボロだけど、そんなミレニアムでもトップレベルの技術に匹敵するほどハイテクなシステムがあるんだ。

きっと全盛期はさぞ立派なホテルだったに違いない。

まぁ、今でも皆の頑張りによって全盛期とまではいかなくともそれなりに綺麗なホテルにはなっているけどな。

 

まぁそれはともかく、リゾート防衛システムが正式に稼働した今であれば俺様達の安全はある程度は担保されたと言ってもいいだろう。

奥空の話によると今は起動した警備ロボットが島中を警備しているらしいし、ヘルメット団やワカモの襲撃からも守ってくれるように設定をしてくれたそうだ。

警備ロボットは1体1体はそこまで強くはないものの数だけはいるおかげで小鳥遊先輩でも手を焼いたそうなのでそれだけの戦力があれば安心だろうな。

……まぁ、ヘルメット団はともかくワカモは警備ロボットの警備を掻い潜るなんてその気になれば容易だろう。

何もしなかった頃よりは格段に安全なのは間違いないだろうけど、一応警戒は緩めないことにしておこう。

 

まぁなにはともあれ、みんなのおかげでホテルの電気やガスが復活しただけじゃなくて俺様達の安全を守ってくれる警備ロボットまで付いてくるなんて嬉しい誤算だ。

先生たちには本当にお疲れ様、という他無いだろう。

 

と言う訳でホテルで快適に過ごす準備が整いヘリの部品も発見して帰りの心配もなくなった俺様達は本来の目的だったバカンスを楽しむために下処理を終えた食材とバーベキューセット、花火や浮き輪等の遊び道具一式などを持参してボートでここへ来るときに見えた太陽の光を反射してキラキラと輝く白い砂浜へとやって来ていた。

 

「うぉぉぉぉ!海だー!」

「わーい!うみだうみだー!」

 

両手を突き上げて海へ向かってそう叫ぶ俺様と、その横でまったく同じポーズを取りながらそう言うイブキ。

時刻は日が若干西に傾いている頃だけど、太陽の光を反射して輝く海はとても美しい。

 

「はぁ……ようやくのんびり出来そうね。」

「うへー。おじさんもう動けないよ〜。今日だけで一生分は働いた気分だねぇ。」

 

そんな俺様達の後ろで、まだまだ疲労の抜けきっていない小鳥遊先輩や黒見は俺様が設置したビーチパラソルの木陰で冷たいスポーツドリンクを飲んでいた。

まぁこの二人に関してはヘルメット団やワカモの襲撃の後に警備ロボットとも戦闘しているわけだし、疲れないわけがないだろうからな。休ませてやるとしよう。

 

なお、二人と同じく警備ロボットを戦闘を繰り広げた砂狼先輩は海を見るやいなや一直線に向かっていくとそのまま飛び込んで現在は水泳をしている。

さっきまで警備ロボットと戦ってその前は素潜りもしていたのにまだ泳げるなんて、いくら鍛えているとは言え砂狼先輩の体力には驚かせられるな。

 

「先生、バーベキューセットはこちらにお願いします☆」

“うん、分かったよノノミ。”

 

後ろではバーベキューセットに必要な道具一式を涼しい顔をしながら抱えて運ぶ十六夜先輩と、俺様の下処理を終えた食材を持った先生が荷物をおろしていた。

あ、もちろん俺様も荷物は運んだぞ。重たい荷物を女性陣だけに運ばせるのは男の名折れだからな!

 

……まぁ、あんなに重たいバーベキューセットを涼しい顔をして運ぶ十六夜先輩を見ると男としての自信がなくなって来そうになるけど。

トリニティのシスターフッドに所属している若葉先輩もこの前グランドピアノを軽々と持ち上げていたし、キヴォトス人パワーってやっぱすげぇや。

 

「それにしても海へ行って遊んでからバーベキューをしようだなんて……まだヘリの修理も終わってないのにこんな事をしている場合でしょうか?」

 

そんな風に考えていると、バーベキューセットを運ぶ十六夜先輩や先生を見ながら奥空が心配そうにそう呟く。

 

「大丈夫だよアヤネちゃん。私達もちょっとは羽根を伸ばさないとねー。ずっと掃除や修理ばっかしてたらバカンスの意味がないじゃん?」

「ホシノ先輩の言うとおりですよアヤネちゃん。せっかく海に来たんですから記念撮影もしましょう☆遊ぶ時はしっかり遊ばないと損ですよ〜!」

 

そんな奥空を見かねたのか、小鳥遊先輩と十六夜先輩は奥空へ近寄るとそれぞれそう声をかけていた。

 

「……先輩たち、準備するのもバカンスのうちとか言ってなかったっけ?」

「あはは、終わった話はもう忘れようよ。それにあと残ってるのってヘリの修理くらいじゃん?その辺は明日やればいいしさ〜。」

「そういうことです!準備はこれで終わり、今からはバカンスの時間ですからね〜☆」

「わーい!バカンスだー!」

 

十六夜先輩の言葉を聞き、俺様の横にいるイブキはぴょんぴょんと飛び跳ねながら喜ぶ。

だが、彼女達の言葉を聞いてなお奥空はどこか複雑そうな表情を浮かべていた。

 

「ヘリ……」

「まぁその、そんな気を落とすなよ奥空。それに先輩方の言う通りずっと掃除をしたりヘリのことばかり気にしてたらせっかくバカンスに来てんのに余計に疲れちまうだろ?今はヘリのことはひとまず置いておいて、頭を空っぽにして休みを満喫しようぜ。」

「タツミさん……ですが……」

「タツミくんの言うとおりです!心配することはないですよアヤネちゃん。倉庫に部品もいっぱいありましたし明日皆でやれば大丈夫ですから。」

「ん、修理には最低でも1日はかかりそうだし今からやるよりも明日からやったほうがいいと思う。それに暗いところでの整備は危ない。明日頑張るためにも今はゆっくり羽根を伸ばそう。」

「ノノミ先輩……シロコ先輩……ありがとうございます。」

 

俺様や先輩方の言葉を聞き、目尻に涙を浮かべながらそう言う奥空。

……ヘリが墜落したのは奥空のせいでもなんでもないからそこまで責任を感じる必要はないだろうけど、奥空は見た目通り真面目な性格で責任感も人一倍強いからな。

彼女も普段のアビドスの金策やスケジュールの管理で疲れているだろう。先輩方の言う通り、しっかり羽根を伸ばしてもらいたいもんだ。

 

「……そういえばあの変な奴ら、あれからずっと見ないわね?警備システムのおかげなのかしら?」

「もしかしたら島の外に追い出されたのかも……あの時の警備ロボットだけでもかなりの数いましたしね。」

「……だと良いんだけどな。」

 

確かに奥空の言う通りここからぐるっと見渡すだけでもかなりの数の警備ロボットが稼働しているのが見えるし一見すると俺様達には近寄れないように見える。

けどさっきも言ったけどヘルメット団はともかくワカモの隠密力はどんな厳重な場所へもやすやすと侵入できるほどなので、警戒しておくに越したことはないだろう。

 

「まぁ向こうもなにか移動手段はあるだろうしそれに乗って帰ったんじゃないかね〜。」

「わざとではなかったんですが、酷いことをしちゃったかもですね……」

「最初に攻撃してきたのはあっちなんだし、気にすることないんじゃない?私達は自分たちのリゾートを守っただけだし……」

「それに先生やタツミくん、イブキちゃんも守ったしねぇ。」

「そうそう、皆も守っ……たのは今関係ないでしょ!?荷物運んだならシート敷いておいてよね!私は色々と道具を取ってくるから!」

「あはは……じゃあ私もセリカちゃんを手伝いに行ってきますね。」

 

何故か顔を赤くしながらそう言うと、運んできた荷物のある場所へ向かってダッシュで駆け寄っていく黒見。

そんな黒見を追いかけて、奥空も小走りで荷物の元へと向かっていった。

 

「うへ、青春だねぇ……」

“じゃあ私達もそろそろ始めようか!”

「……うん、そうしよっか。」

「はい!目一杯楽しみましょう!」

 

先生の言葉を聞き小鳥遊先輩は頭のサングラスをかけながら、十六夜先輩は着ていた上着を脱いで綺麗に畳みながらそう言った。

……想像はしていたけど十六夜先輩、上着脱ぐと肌面積がとんでもないことになっているな。

なるべく直視しないように気をつけておかねば、うん。

 

(さてと……)

 

それじゃあ、俺様とイブキも楽しむとしようか。

ゲヘナでは滅多にお目にかかれないような、この真っ青でキレイな海を!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ひゃー!つめたーい!」

「ほらほら!こっちよイブキちゃん!」

「やったなーセリカ先輩!えーいっ!」

 

あれから少しした頃。

俺様は目の前で海の中に入って戯れているイブキと黒見

を眺めつつ、十六夜先輩の持ってきてくれたバーベキューセットの組み立てを行っていた。

 

……え?お前海を楽しむんじゃなかったのかよだって?

何を言ってんだ!目の前でイブキが海に入って友達と一緒にきゃいきゃい笑顔ではしゃいでるんだぞ!?

その光景を眺めているだけでこの世のどんなことよりも楽しいに決まってるだろうが!

 

あーくそっ!こんなことなら使い捨てのカメラでもいいから持ってくるんだった!イブキのあんな天使の様な笑顔を保存できないなんて……俺様一生の不覚……!

仕方がないので俺様の脳内に焼き付けておくとしよう。

 

……それに俺様の腹にはあの時の銃弾の傷があるからな。

流石に海に入って泳ぐとなると上着もTシャツも脱ぐ必要があるし、抜糸が済んで回復に向かっているとは言えまだまだ傷口は痛々しくてとてもじゃないけど見せられるもんではないだろうから仕方ないだろう。

先生やアビドスの皆にはあらかじめそれを言ってあるからか、皆も恐らく気を使ってくれているのか俺様を無理に海に入ろうって誘ってくる人は1人も居なかった。

 

なおその事を告げた際にアビドスの皆は申し訳なさそうな顔をしていたのだが、リゾートに誘ってくれた事自体は嬉しかったし丁度休みも欲しかったところだからむしろありがたい、ありがとうと伝えておいた。

実際ここへ来てからトラブルこそあるものの楽しく過ごさせてもらっているし、そもそもこの銃弾の傷は俺様がしくじっちまっただけだからアビドスの皆が気にすることはこれっぽっちもないわけだからな。

 

まぁせっかく海へ来ているのに海に入らないのもちょっと勿体ない気はするけど俺様としてはイブキと一緒にのんびり過ごせている時点で楽しいし、こんな普段の仕事のことを忘れて過ごせるような自然のきれいな島に連れてきてくれた黒見達には感謝してもしきれないだろう。

それにイブキも大層喜んでくれているようだし、俺様にとってそれ以上の喜びはない。

きっと今回のことはいい思い出になるだろう、なら俺様はもっとその思い出を楽しく過ごせる様にするだけだ。

 

当然皆からはバーベキューセットの組み立ては後でいいって言われたけど別に組み立てるのなんてすぐ終わるし俺様も終わったら合流して遊ぶ予定だからな。

ちゃっちゃと終わらせちまうとしよう。

 

ちなみに、小鳥遊先輩は黒見の隣で持ってきたクジラの浮き輪に乗っかって海の上にプカプカと浮かんでいる。

なんと言うかこんなときでもブレずにのんびりしている辺り、小鳥遊先輩らしいというかなんと言うか……

ただその視線ははしゃいでいるイブキや黒見を見つめており、最年長らしい笑顔を浮かべていた。

イブキや黒見が居るのは砂浜に近い浅瀬ではあるけど、浅瀬でも水難事故ってのは起こるもんだからな。

小鳥遊先輩が傍についていてくれるなら俺様も安心してイブキを預けられる、ありがたい限りだ。

 

砂狼先輩は……どうやらまだ水泳をしているようだ。

ここから見る限りだとだいぶ沖の方まで出ており溺れないか不安だけど、彼女のあのスタミナと身体能力があるならばその心配は杞憂ってやつだろう。

そして奥空はそんな面々を楽しそうに傍で見つめて……

 

「ほらほらアヤネちゃん!そんなところで突っ立ってないでこっちで一緒に遊ぶわよ!」

「わーい!アヤネ先輩も一緒に水のかけっこしよー!」

「えっ!?ちょ、ちょっとセリカちゃん!?イブキちゃ……わぷっ!」

 

……あ、今イブキと黒見の二人に捕まって海水を思いっきりぶっかけられているな。

海水をかけられた奥空は最初は呆けた顔をしていたが、やがて楽しそうな笑みを浮かべると両手に海水を掬い上げるとそれをイブキや黒見へ向かって掛け始めた。

うんうん、非常に楽しそうでほっこりするな。

 

そして最後に先生と十六夜先輩はと言うと、あっちの砂浜の方でビーチパラソルの下にビーチベッドを2つ設置してそこに座ってくつろいでいる様子だ。

ちなみにビーチベッドってのは海に行った時によく見る寝転ぶ時に使うアレのことだ。

しかし何と言うか、スタイルのいい女性が2人並んでビーチベッドで寝ている光景は映画の1コマのようだな。

 

うんうん、皆それぞれ思い思いに楽しんでいるようで何よりだ。

さてと……んじゃ、俺様もサッサとバーベキューセットの組み立てを終わらせちまってイブキ達の傍に行くとしようかね。

 

「えーっと、ここをこうして……」

 

海から聞こえてくる楽しそうな声を横目に、俺様は急ピッチでバーベキューセットを組み立てていく。

と言っても先程言ったようにそこまで時間のかかるものでもないため、10分ほど集中して作業を行い無事に組み立てを終えることが出来た。

さてと、じゃあこの後のバーベキューの準備もできたことだしイブキ達と合流して砂の城でも作るとしよう。

 

「あ、タツミくん。少しよろしいでしょうか☆」

 

……と思って、その場から立ち上がった瞬間だった。

突如、俺様の背後から十六夜先輩が声を掛けてくる。

 

「十六夜先輩?どうしましたか?」

「いえ、タツミくんが頑張ってバーベキューセットの組み立てをしてくれていたので良かったらお手伝いをさせてもらおうかと思って。」

「あ、それなら今組み立てが終わったところですよ。」

「え……も、もう終わったんですか?」

「はい。構造自体は単純なものでしたからそんなに時間はかかりませんでした。これで心置きなくバーベキューが出来ますよ。」

 

若干驚きながら目を丸くする十六夜先輩に対して、俺様は親指を立てながら笑顔でそう言った。

 

「……ふふ、タツミくんは頼りになりますね☆」

「いえ、このくらいお安い御用ですよ。」

「えっと、それじゃあ面倒ついでにもう一つ私と……それと先生から頼み事があるんですけど、良いですか?」

「頼み事ですか?はい、構いませんよ。」

 

十六夜先輩の言葉に対して俺様は二つ返事でそう返す。

……ってあれ、十六夜先輩だけじゃなくて先生もなのか?

 

「本当ですか!?良かったです☆」

 

俺様からの返答を聞いた十六夜先輩は「付いてきてください☆」と言うと、くるりと俺様に背を向けて先生の居るビーチパラソルの元へと歩き始めた。

俺様は手にしていたバーベキューセットの金網を組み立てた機材の上に乗せると、そのまま十六夜先輩の跡をついてビーチサンダルを履いた足で砂浜を踏みしめる。

 

……よくよく考えると内容も知らないままオッケーしちまったけど、まぁ十六夜先輩や先生だって皆と遊ぶ時間は欲しいはずだからそこまで時間はかからんだろう。

何を頼まれるのかは分からないけど、先生や十六夜先輩のことだし無茶な頼みはしないだろうからな。

そんな事を考えながら十六夜先輩の背を追って先生の待つビーチパラソルまでたどり着くと、ビーチベッドに横になっている先生に十六夜先輩が声を掛けた。

 

「先生、タツミさんをお連れしましたよ〜☆」

“ありがとうノノミ。ごめんねタツミ、バーベキューセットの組み立てをしてもらっちゃって。ありがとう。本当は大人である私がやるべきなんだろうけど……”

「別に構わないさ。そんな時間のかかるもんでもなかったしな。それに大人とかどうとか、今はそんなの関係ないだろ?先生だって普段は仕事仕事でろくに休めてねぇんだから、こんな時くらい羽根を伸ばしとけよ。」

“……ふふっ、うん。ありがとうねタツミ。”

「おう、気にすんな。」

 

俺様は先生と顔を見合わせてそうやり取りをすると、やがてどちらからともなく互いに笑顔を浮かべた。

 

「……で、俺様に頼みたいことがあるんだっけ?」

“あ、うん。そうなんだ。さっきまでバーベキューセットの組み立てをお願いしてたのに申し訳ないんだけど……”

「別に全然構わないぞ。で、その頼み事ってのは?」

“うん、実は日焼け止めを塗ってもらおうかなと思って。” 

 

先生はビーチベッドの横に置いてあったカバンから可愛らしいピンク色のポーチを取り出すと、その中から日焼け止めを取り出して俺様に手渡してきた。

 

「なんだそんなことか、そのくらいお安い……!?」

 

……ちょっと待ってくれ、今何つった!?

 

「……すまん先生。ちょっとよく聞こえなかったらもう一回言ってもらいたいんだが。」

“日焼け止めを塗ってくれないかな?”

「聞き間違いじゃなかったぁぁぁ!!!」

 

真顔でそう言ってくる先生に対して、俺様は頭を抱えながら絶叫を上げた。

なんかこのやり取り前にもやったことがある様な気が……って今はそんな事考えてる場合じゃないだろ!?

 

「いやいやいや!待て待て!おい!先生正気か!?」

“えっ?うん。全然正気だけど?”

「涼しい顔で言うなぁっ!」

“あ、ちなみにノノミの分もお願いしたいんだけど……”

「はい、ぜひお願いします☆」

「いや何でだよ!?おかしいだろどう考えても!」

 

とてもいい笑顔でそういう十六夜先輩に対して、俺様は思わず敬語を使うことも忘れてそうまくしたてた。

言わずとも分かる事だけど、今は先生の格好は俺様がこの前のショッピングモールで選んだ薄紫色のビキニだ。

フリルとパレオはきちんと付けているけど普段のスーツ姿の先生とは肌の面積が段違いだし、正直目のやり場に今でも困るような恰好なんだぞ。

そして十六夜先輩も黄色のビキニが悲鳴を上げるほどのスタイルの持ち主だし……え、俺様この二人に日焼け止めを塗らなきゃいけないの?

 

おいおい、俺様の理性を殺す気か?

ただでさえこの場には可愛い水着を着た可愛い女の子がいっぱい居る。あまりそう言う目では見ないようにしているけど、俺様だって立派な男。

思春期の男子高校生である俺様にはもはや精神修行の一環と言っても良いような場所なんだぞ。

そんな場所で日焼け止めを塗らないといけないなんて、拷問の一種だと言っても過言ではないだろう。

 

「と言うか、そもそも太陽ももうじき沈む頃だろ!?別に日焼け止めを塗る必要はないんじゃないのか!?」

“だとしても肌を焼くわけにはいかないよ!確かに太陽はだいぶ西に傾いてるけど、僅かな時間でも油断したらすぐに日焼けしちゃうんだからね!”

「そうですよ!日焼けは乙女の大敵なんですから!」

「だとしても何で俺様なんですか!黒見とかに頼めばいいでしょう!それに、二人とも嫁入り前の女の子なんだから男にホイホイ肌を触らせるんじゃありません!」

 

俺様は両手を広げ、必死に二人にそう訴えかける。

 

「……なんだか、お父さんみたいですね。タツミくん。」

“えー……この前水着を選ぶ時はやってくれたじゃん。”

「いや、水着を選ぶのと日焼け止めを塗るのはわけが違うだろ!前者は見るだけだからまだ良いけど、後者は肌に触れるんだぞ!?」

“タツミ。分かってるとは思うけど、私だって先生である以前に1人の女。嫌いだな〜って思ってる相手に日焼け止めを塗ってくれなんて頼まないよ?”

 

俺様が声を上げて講義していると、先生はその場で立ち上がって俺様に近づいてくると真剣な表情を浮かべながらそう言ってきた。

 

「い、いやそれはそうかもしれないけどよ……!」

「先生の言うとおりですよタツミくん!私も今回の事でタツミくんと触れ合って、信頼できる相手だと判断したからお願いしているので☆」

「い、十六夜先輩まで……!」

 

そりゃ俺様のことを信用してくれるのは嬉しいし、正直言うとこんな美女に日焼け止めを塗れるなんてのは世の男からしたら金を払ってでもやりたいくらいの事なのだろうと言うことくらいは分かる。

けど、現状ただでさえギリギリのところで理性を押し留めているのにこれ以上爆弾を投下されたら俺様の理性が保たねぇんだよ……!

 

そりゃ先生からしたら俺様なんて15歳のガキだし、十六夜先輩から見ても俺様は一個下の後輩だ。

だから別に問題ないと思っているんだろうけど……

何度も言うが、俺様だって健全な男子高校生。

そういう欲だって人並みにあるわけで。

 

けど、先生や十六夜先輩がここまで頼み込んでるんだ。

その頼みには応えてやりたいのもまた事実。

 

“それにセリカ達は楽しそうに遊んでるから邪魔しちゃ悪いしね。となると、もうタツミくらいしか頼めそうな人が居なくてさ。”

「はい。それに塗ってもらうのも背中だけにしてもらうつもりなので、お願いできないでしょうか?」

 

俺様が目を白黒させながら頭をの中でぐるぐると思考を巡らせていると、いつの間にか先生と十六夜先輩は俺様の前までやって来て手を合わせながらそう頼んでくる。

 

目の前でたぷんたぷんと揺れる4つの双丘。

その双丘を見て俺様の理性は……切れることはなく、俺様は深く息を吸い込むと一旦気持ちを落ち着ける。

そして、呼吸を整えた俺様は口を開いた。

 

「……分かった。日焼け止めを塗ればいいんだな?」

“引き受けてくれるの?”

「本当はあまり俺様みたいな馬の骨が先生や十六夜先輩みたいな美人の肌を触るのは良くないんだろうが……他ならぬ二人からの頼みだ。引き受ける。」

 

俺様はなるべく動揺を表に出さないように平静を装ってそう言葉を発する。

いや、まぁ正直に言うと今でも納得はしてないと言うかこの二人の熱意や誠意を無下にするわけには行かないから引き受けたって言った方が正しい。

 

何度も言うけど、俺様だって健全な男。

そういう欲だって人並みにあるし、女の子にだって興味津々なお年頃だ。

そんな男が、こんな男の理想をそのまま絵に書いたようなわがままボディの美女二人に日焼け止めを塗るなんてそれはもう理性がどこかへ行ってもおかしくない。

 

けど、二人の熱意や誠意には応えてやりたいし何よりも俺様の信用してくれているのは普通に嬉しいからな。

ならば、その信用には応えないとならないだろう。

きっと苦しい戦いになるとは思うけど俺様は負けない。

無心でやれば、きっとなんとかなるはずだ……!

 

「わぁ、ありがとうございますタツミくん☆」

“ありがとうタツミ。それじゃあ早速お願いしようかな。”

「あぁ、分かった。上手く出来るかは分からないけど、出来るだけのことはやってみるよ。」

 

えぇい!もうこうなりゃヤケクソだ!

やってやるよ!どうなっても知らねぇからなぁ!

 

こうして、俺様は砂浜に引いたシートの上にうつ伏せで2人で並んで寝転がった先生と十六夜先輩の背中に日焼け止めをしっかりと塗り込んだ。

先生と十六夜先輩の背中はケアをしっかりしているのかシミ一つ無い真っ白なシルクのような肌で手触りもスベスベで正直頭が爆発しそうだったが心のなかで素数を数えつつ、無心を貫いてなんとか理性を抑えきりつつも日焼け止めを塗りきった俺様。

 

そしてその後先生と十六夜先輩に礼を言われてからイブキ達と合流した俺様は水のかけっこをするイブキ達を見守ったり、イブキと一緒に砂の城を作ったり、ビーチバレーをしたりと思う存分に海を楽しむのだった。

なおその際、イブキや黒見の俺様を見る目がものすごかったのだが……それはまた別のお話。

 

「……お兄ちゃんのスケベ。」

「……私も日焼け止め塗ってもらおうかしら。」

「……ん?どうしたイブキ?黒見?」

「なんでもないよ、スケベなおにいちゃん?」

「ゴハァ!?」

「うわぁ!?ちょ、ちょっとしっかりしなさいよ!」

“き、気絶してる!?ちょっとタツミ!しっかりして!?”

「うへぇ。青春だね〜。」

「うーん……これははたして青春なのでしょうか……?」

「ん、タツミはシスコンだから。」

「本当にタツミくんはイブキちゃんに弱いんですね☆」

「うぉぉぉぉごめんなイブキィ!不甲斐ないお兄ちゃんを許してくれぇ!!!」

“うわぁ!?きゅ、急に起き上がった!?”

「忙しなさすぎるでしょもう!」

「ん、やっぱりタツミはド級のシスコン。妹バカ。」

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