転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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予想外の訪問者とは一体……?


予想外の訪問者と丹花タツミ

時はすっかり日も暮れて、辺り一面が漆黒の暗闇に包まれた静かな夜。

俺様達は日が昇っている内に目一杯海を楽しんだ海岸にて、そのまま俺様が組み立てたバーベキューセットを使ってバーベキューを行っていた。

 

「あ、ホシノ先輩。そのイカそろそろ焼けるわよ。」

「本当?じゃあもらっちゃおうかな〜。」

「イブキ、この魚もう焼けてるぞ。骨はお兄ちゃんが抜いておいたからな。」

「わーい!ありがとう!お兄ちゃん大好き!」

「なーにこのくらいお安い御用だ!俺様も大好きだぞイブキ!」

「えへへ……♡」

 

目の前のバーベキューコンロを8人で囲み、それぞれ会話を交わしつつ焼けた食材を楽しむ俺様達。

そんな中、俺様は黒見とともにバーベキューコンロで食材を焼きながらその横に俺様が持ち込んだ小さなカセットコンロを置きそこで一品物の料理を作っていた。

 

「わぁ!このエビチリ、とても美味しいです!」

「ん、こっちのタコとワカメの酢の物も箸休めに最適。さっぱりしていてとても美味しい。」

“このアワビのバター炒めもすごく美味しいし……やっぱりタツミの作る料理は最高だね。”

「おっ、そいつは嬉しいですね!さぁさぁ、じゃんじゃん作るからどんどん食ってください!」

 

俺様は下処理を終えた材料を調理して目の前のテーブルへ並べていき、それに手を付けた先生やアビドスの先輩方が口々に称賛の言葉を述べる。

俺様の作った料理を口へ運ぶ皆の目はキラキラと輝いており、とても美味そうに舌鼓を打っていた。

うんうん、やっぱり作った側としてはそうやって美味そうに食ってくれるのが一番嬉しいからな。

口にあったようで何よりだ。

 

「うへー。それにしてもお肉や海鮮をたくさん使ったバーベキューにタツミくんの作るたくさんの料理に……こんな豪華な晩御飯は初めてかもねぇ。」

「そうですね、私達は節約している日の夕飯はカロリーバーだけの日とかもありますから……」

 

黒見の焼いた肉やイカを頬張りながら、しみじみとそんな会話をする小鳥遊先輩と奥空の二人。

……まぁ、アビドスは毎月借金の返済で稼いだ金額の大部分をもっていかれているから稼ぎの少ない月は食費を切り詰めているとは黒見から聞いていたけどまさかそれほどまでとは思わなかった。

 

キヴォトスで販売されているカロリーバーは1食で1日に必要な栄養の3分の1を摂取できる優れモノだけど、腹には貯まらないし何より飯を食った気がしないからな。

そういうことであれば、腹いっぱいになるまで今日は俺様の料理とバーベキューを味わってもらうとしよう。

俺様は作っていた料理を完成させて皿に盛り付けてテーブルへ置き、次の料理の作成に取り掛かる。

 

「先生、みなさん。何か食いたいもののリクエストはありますか?材料は一通り揃ってるんで、大抵のものは作れると思います。」

“えっ、本当!?じゃあ私はイカ刺しを頼もうかな!”

「オッケーイカ刺しだな。分かった。イカならまだあるはずだからちょっと待ってろ。」

 

笑顔でリクエストを言う先生にそう答えた俺様は近くのクーラーボックスから新鮮なイカを取り出し、内臓を取り除いて包丁で切り分けていく。

そして切り終えたイカを皿に盛り付けると持参していた醤油としょうがを添え、先生の前に出した。

 

「はい、お待ちどうさん。」

“わー美味しそう!ありがとうタツミ!”

「いいってことよ。このくらいお安い御用だ。」

 

礼を言ってくる先生に対し、俺様は親指を立てながらそう言った。

アビドスのみんなもだけど、先生も普段はシャーレで徹夜してまで働いて毎日ろくな飯も食ってない生活を送っているみたいだからな……

こういう時くらい美味いもんを食って欲しいもんだ。

 

“んー美味しい!やっぱりタツミの料理は最高だね!”

「おいおいイカを切っただけだぜ?まぁ褒めてもらえるのは作り甲斐があっていいけどよ。ありがとな。」

 

そう言いつつ俺様のイカ刺しを笑顔で頬張る先生。

 

“あー……ここにビールがあったら最高なのになあ……”

「別に持ってくりゃ良かったじゃねぇか。俺様達は未成年だから飲酒はダメだけど、先生が飲むだけなら別に問題ないだろ?」

“それはそうなんだけど、生徒の前でお酒を飲むのは先生としてどうなのかと思っちゃって……”

「いや、今回のこのバカンスは休暇なんだし少しくらいはハメを外したって誰も文句は言わねぇだろ。」

“うーん……それもそっか。惜しいことしたなぁ。”

 

そう言って紙コップに入ったジュースを口元で傾けつつ、少しだけ苦笑いをする先生。

まぁビールはこの場にはないものの、砂狼先輩が獲って着てくれた新鮮な魚介類は山のようにあるんだ。

思う存分楽しんで、普段の疲れを癒やしてもらいたい。

 

「さ、他にリクエストはありますか?」

「気合い充分だねタツミくん。ならおじさんはエビフライを頼もうかなぁ。」

「エビフライですね。分かりました!」

 

黒見の焼いたイカをパクつきつつ、のんびりした表情でそう言ってくる小鳥遊先輩。

エビフライとなると揚げ物になるから少し時間はかかるけど、食用油は持ってきてあるしフライパンでも作れるから問題なさそうだ。

 

「お兄ちゃん!イブキプリンが食べたいなー!」

「おう!もちろん用意してあるぞ!」

 

続いて、黒見に食べやすくしてもらったサザエのつぼ焼きを頬張りながらイブキがそう言ってくる。

もちろんイブキのプリンの用意に抜かりはない。きちんとそこのクーラーボックスにイブキの分と、みんなの分も用意してきてある。

俺様がイブキのプリンを忘れることなんてあり得ない、今回のバカンスへ行く際も何よりも真っ先にプリンが荷物に入っているかを確認したくらいだからな。

 

この俺様に抜かりはない。

イブキの笑顔のためなら俺様はいくらでも頑張れる。

 

「ただしご飯をきちんと食べてからだぞイブキ。約束できるか?」

「うん!分かった!約束!」

「よーしいい子だ!ご褒美に2つやるからなイブキ!」

「やったー!お兄ちゃん大好きー!」

「ゴハァ!」

「……はぁ。相変わらずの妹バカなんだからもう。」

 

俺様達のやり取りを見て、苦笑しつつもどこか楽しそうにそういう黒見。

そんなこんなで、楽しくも騒がしい夜の砂浜でのバーベキューの時間は過ぎていくのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あれからしばらくして。

結局、夜の砂浜にて思う存分にバーベキューを楽しんだ俺様達8人は砂狼先輩の獲ってきた獲物の殆どを胃の中に収めたのちにバーベキューセットを片付けた。

そしてその後、アビドスの皆が持ってきていた花火を打ち上げようと言う話になったため、そのための機材をアビドスの皆と準備して打ち上げ花火を行う事になった。

 

夏の夜空に色とりどりの火の花が咲き乱れ、それが真っ暗な海に反射して輝く光景はとても幻想的で現実離れしており俺様達は言葉をかわすのも忘れて食い入るようにその光景を目に焼き付けていたなぁ……

そしてアビドスの皆が持ってきた花火を使い切るまで花火を楽しんだ俺様達は、すっかりと暗くなったジャングルをバーベキューセットなどの機材を持って移動し今日宿泊するホテルへと戻ってきた。

 

その後は機材を格納庫へ収納し、思いっきり遊んで疲れたのでひとまず風呂に入ろうと言う事になった俺様達。

そのためまずは俺様がホテルの大浴場に先に入り、後から女性陣が入るという形で決定した。

ちなみに俺様が先に入る事になった理由は単純。

男のほうが風呂に入る時間が短いから、それだけだ。

 

まぁそういうわけなので、俺様は女性陣よりも先にひとっ風呂浴びさせてもらって今は割り振られた俺様とイブキの相部屋にてコーヒーを飲んでくつろいでいる。

時間的に丁度今頃女性陣が入浴している頃だろう、風呂から上がったらキッチンの冷蔵庫で冷やしたドリンクでも持っていってやるとしよう。

 

ちなみに女性陣は風呂から上がった後に何やら談話室に集合して女子トークやらトランプ大会やらをやると言っていて、イブキもそれに参加することになっている。

俺様も誘われたけど流石に女子トークに混ざるのは気が引けるため、イブキをよろしくお願いしますと伝えて一足先に自室にてくつろいでいることにした。

 

昼間のヘルメット団のこともあるから1人で居るのは危険って話も出たけどあれからヘルメット団の姿は島で見かけないし、それに今現在も大量の警備ロボットがホテルやその周辺を監視してくれている状態だ。

こんな厳重な警備の場所に忍び込むようなアホはいないだろうし、それにいざとなったら武器は持ってきてあるからそれを使ってブチのめせば良いので大丈夫だろう。

 

「うー食った食った、ちょっと食いすぎたかもな……」

 

膨らんだ腹をさすり、俺様は苦笑しながらそう言った。

結局あの後も全員のリクエストに応えて料理を作り、バーベキューコンロでどんどん焼かれる新鮮な海鮮類をパクついていたんだけど皆で食べる楽しさや夜の海岸っていうシチュエーションもあってついつい食べすぎてしまったんだよな。

おかげで腹がパンパンだ、こりゃしばらくは動けそうにないかもな。まぁとは言え風呂に入って後はもう寝るだけだし、いらん心配と言うやつだろうけど。

 

「……まぁでも、こんなに頭を空っぽにして遊び倒せたのはいつ以来だろうな。」

 

俺様は手にしたマグカップの中のコーヒーを飲み込みつつ、ぼんやりとそう呟いていた。

 

羽沼議長が矯正局へ収監され、俺様が彼女が戻ってくるまでの代理としての議長に就任してからしばらく。

朝起きたら書類仕事をして昼飯を食ったら他校との外交があって、それが済んだら今度はゲヘナ内の各部署との連携や予算の会議などを行って……

毎日毎日仕事仕事。寝ても覚めても仕事。ここ最近で書類に俺様の名前の印鑑を押さなかった日はないってくらいには、最近の俺様の日々は多忙を極めていた。

 

後は連邦生徒会に顔を出して連携もしなきゃいけない。

まぁそのついでに七神代行や岩櫃調停室長と話せたり、矯正局へ面会に行ったりRABBIT小隊にメシを作ったり出来るからそれはいいんだけど……

 

しかもそれに加えて代理とは言え今の俺様はゲヘナのトップを務めている人間だ。周囲からの期待やプレッシャーに押しつぶされそうになった事なんて数え切れない。

何度も逃げ出したいと思ったし、京極先輩や棗先輩に役目を譲りたいと思ったこともあったけど……それでも俺様はゲヘナ全体の選挙で票をもらって選ばれたんだ。

 

ならばその期待には応えなければならない。

そう思って今まで万魔殿にこもって書類仕事をしたり、あるいはゲヘナの外へ出て外交をしてきたわけだけど……やっぱり気を張っている部分はあったんだろうな。

 

最近は忙しくてイブキにもあまり構ってやれず寂しい思いをさせていたし、今回のようにこうして無人島で仕事を事を忘れて遊び倒すのも悪くないかもしれない。

俺様もガラにもなくはしゃいじまったし。

 

と言うか俺様としては久々の休暇を取れた上にイブキとずっと一緒に居られて、その上でイブキとたくさん遊んでやれたし、普段構えなかった分も構ってやれた。

それに先生やアビドスの皆といっぱい遊ぶ事ができてイブキも喜んでいたし、当然俺様だって楽しかったしな。

 

……本当に今回、このリゾート地に誘ってくれた黒見を初めとするアビドスの皆には頭が上がらない。

最初にこの廃墟を見た時はどうなることかと思ったけど蓋を開けたら俺様達の力で立派なホテルへと生まれ変わったわけだし、何も言うことはないだろう。

 

バカンスが終わってゲヘナへ帰ったらまたあの仕事漬けの日々が戻ってくるんだろうけど……せめて、この島にいる間だけは仕事のことは忘れてのんびりするとしよう。

 

「……綺麗な月だな。」

 

真っ暗な夜空にくっきりと浮かび上がった綺麗な月。

俺様はその光景を部屋の窓から眺めつつ、マグカップを傾けつつ静かにそう呟いた。

 

「ウフフ……えぇ、本当に綺麗ですわね。」

「あぁ、ゲヘナじゃ滅多にお目にかかれないような光景だ。しっかり目に焼き付けておかないとな。」

 

俺様の後ろから聞こえてきたワカモの声にそう返した俺様は再びコーヒーを口に含み……

 

「ぶふっ!?」

 

そして、盛大に吹き出した。

ちょっと待て!何でワカモの声が部屋からするんだ!?

俺様は盛大にむせこみながら後ろを振り向くとそこには昼間に見た水着を身にまとい、いつも被っている狐の面を外して素顔を晒したワカモの姿があった。

 

「こんばんはタツミさん、素敵な夜ですね♡」

「ゲホゲホ……!わ、ワカモ!?何でお前がここに!?」

「あら、決まっております。昼間は有象無象の連中が多くてタツミさんにじっくりと私の水着姿を披露できませんでしたからね。ぜひ二人きりで見ていただこうかと♡」

 

ワカモはそう言って口元に手を当てながらくすくすと笑うと、ゆっくりと俺様に歩み寄ってくる。

 

「ちょ、ちょっと待て!外には警備ロボットが大量に巡回していただろ!お前どうやってここまで来た!?」

「警備ロボット?あぁ、あのガラクタのことですか?あの程度のポンコツロボットなど、私の手にかかれば造作もありません。簡単に無力化出来ましたよ?」

 

小首を傾げ、まるでそうするのが当然とでも言わんばかりにさらっとそう発言するワカモ。

そう言えば、こいつは趣味で街1つを消し飛ばすような規格外の戦闘力を持っていることを忘れていた……!

と言うか昼間にワカモなら警備ロボットの目を掻い潜るなんて容易だって思ってただろうが俺様!

くそっ!完全に油断していた!

 

「……目的は何だ。奇襲か?今ここで俺様と殺り合おうってんなら受けて立つ。」

「ウフフ……先程も申し上げたように私が今夜ここへ来たのはタツミさんに私の水着姿をじっくりと見ていただくため。殺り合うと言うのも大変魅力的な提案ですが……今は私の姿をぜひ御覧いただきたいのです♡」

 

そう言うと、ニヤリと挑発的な笑みを浮かべて俺様にゆっくりと近寄ってくるワカモ。

彼女はその自慢のわがままボディを見せつけるような形で俺様に迫ってきており、更に今の彼女は上着を羽織っていないせいで真っ白な肌の面積がとんでもないことになっている。

あまりにも唐突すぎるワカモの登場に俺様はその場で硬直して動けないでいると、やがて俺様の前までやってきたワカモはニコニコしながら口を開いた。

 

「ウフフ♡いかがですか?私の水着は。」

「……昼間も言っただろ。似合ってるとは思うって。ま、馬子にも衣装ってやつだけどな。」

 

俺様は慌ててワカモから視線をそらしてそう言う。

ワカモの水着は普段はわりと派手めな和服を着ている彼女とは打って変わって、白を基調とした控えめなデザインながらも彼女のスタイルをより引き立たせている。

所々にあしらわれた花のアクセサリーも彼女の雰囲気ととてもマッチしており、正直俺様の好みのタイプの水着と言っても過言ではないだろう。

 

「ウフフ、ウフフフフ♡なんと勿体ないお言葉……しかしタツミさんから素直に褒め言葉をいただけるとは……このワカモ、とても感激です♡」

「う、うるせぇな!悪ィかよ!お前は顔と体だけはいいんだから仕方ねぇだろ!」

 

普段はヒラヒラとした和服を着ているからわかりにくいけど、ワカモのスタイルは先生や羽川先輩に負けてないくらいのダイナマイトボディだ。

そんな体を水着一枚と言う余りにも頼りない布で隠して俺様に迫ってくるワカモの姿に俺様の理性がガリガリと削られていく音がする。

 

「ほら、もっと見てください……♡」

 

そう言って、その自慢のわがままボディを強調するようなポーズを取って更に俺様に迫ってくるワカモ。

彼女の大きな胸、そこから覗く深い谷間。それに耐えきれずに視線を逸らすとそこにはムッチムチの太もも。

どこへ視線をやっても目に毒でしか無い……!

俺様は思わずワカモに背を向け、その場で目を閉じながら深く深呼吸をした。

 

落ち着け、こいつは七囚人の1人。街1つを趣味で消し飛ばすような凶悪なテロリストなんだぞ。

そんな奴がちょっと好みの水着で迫って来たからって狼狽えるな。こいつは俺様の敵で、ライバルなんだぞ!

 

「あら、どうしたのですか?恥ずかしがらずにもっと見て頂いても良いのですよ?♡」

「うるせぇ!いいから何か上着を羽織りやがれ!今のお前の格好は俺様にとっちゃ刺激が強ぇんだよ!」

「ウフフ♡刺激が強いと言うことは、この格好はタツミさんの好みということでよろしいですか?」

「……あぁそうだよ!だから早く何か羽織れ!お前は俺様をからうことに夢中でこんなこと考えてもいないだろうが、俺様だって男なんだぞ!目に毒なんだよ!」

 

ワカモの言葉に対し、俺様は大声を上げてそう言う。

こいつにその事を認めちまうのは癪だけど、これ以上その格好を見せつけられるとこっちの理性が保たない。

ただでさえこっちはさっき先生や十六夜先輩に日焼け止めを塗って悶々としてんだぞ……!

そもそも来るタイミングが悪すぎるって話なんだよ……!

 

「ウフフ♡相変わらず照れ屋さんなのですから。」

「うるせぇ!もういい加減黙ってろお前ェ!」

 

……こう言うのは非常に癪だけど、正直俺様はエデン条約で一緒に戦ってくれた以降はこいつを女として結構意識してしまっている部分はある。

だって仕方ないだろう、不意打ちとは言え俺様はこいつとき……キスをしてるんだぞ。

しかもその時にワカモは俺様のことを案じるような言葉を言ってくれたし、そんなの意識しないわけがない。

 

そもそも、好意を持っていない相手にキスをする女性がこの世に存在しないことなど俺様でも分かる。

だから少なくとも俺様はワカモに悪く思われては居ないんだろうなとは思う……非常に迷惑な話ではあるがな。

 

まぁ、だからと言ってこいつに絆されるつもりはない。

何度も言っているけど、こいつは矯正局から脱出した七囚人の1人。指名手配されている札付きのテロリスト。

そして俺様の倒すべき相手で……いつかは必ず超えたいと思っているライバルでもあるんだから。

 

こいつにだけは負けたくない。負けられない。

いつかは完膚なきまでに叩きのめす。

そして、必ず泣かしてやる!

 

「ウフフ♡流石に強敵ですね。ですがそうでなくてはこちらとしても張り合いがありません……やはりタツミさんは難攻不落の鉄壁の盾でなければ♡戦いでも恋愛でも、それを打ち崩してこそ価値がありますものね♡」

「はぁ!?一体何を言ってんだてめぇはよ……!」

「ふふ、こうなれば仕方ありません。奥の手を使うと致しましょうか。少々お待ちください、タツミさん♡」

 

そう言うと、ワカモは俺様からすっと離れたかと思うと持ってきていた小型のカバンを持って俺様の居る個室に備え付けられたトイレの中へと入っていく。

一体何をするつもりなんだと身構えていると……やがて、トイレのドアが開いて中からワカモが出てくる。

 

「……!!!???」

 

そして出てきたワカモを視認した瞬間……俺様は目を見開いて息を呑んだ。

トイレから出てきた彼女はいわゆる【牛柄模様のビキニ】と言うやつを身にまとっており、先程までの控えめなデザインの水着とは違ってド派手な牛柄模様のあしらわれた衝撃的なデザインの水着に身を包んでいた。

しかも奴はどこで仕入れていたのかご丁寧に牛柄模様の長手袋とニーソックスを着用している。

そのあまりにも衝撃的で、蠱惑的な装いに俺様の視線は先程までの恥じらい等考えられなくなるくらいには彼女に釘付けになった。

 

「ウフフ……いかがですか?タツミさん。」

 

そう言って、ワカモは整った顔を愉快そうに歪める。

さっきまでの控えめな白いビキニでも隠しきれていなかったのに、そこから更にド派手な水着になったことによって最早隠しきれなくなってきた彼女の男の理性を必ず殺すと言わんばかりの肉体が迫ってくる。

……色々言いたいことはあるがこれだけは言わせてくれ。

 

「なんて格好してんだてめぇは!?エッチなのはダメ、死刑!!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あぁ〜……生き返るねぇ……」

「もう、ホシノ先輩ってばおじさん臭いわよ。」

「だってしょうがないじゃーん。お風呂が気持ちいいんだもん。」

「まぁ、それはそうだけど……」

“いっぱい遊んでからのお風呂だからね。こんなにいいお湯に浸かれると1日の疲れも吹き飛んじゃいそうかも。”

 

「それにしても今日は色々なことがありましたね☆」

「ん、ヘリの墜落にリゾートの復旧に……ヘルメット団や狐女の襲撃……」

「うへー。色々ありすぎだよ〜。」

「……けどその後の海水浴やバーベキューパーティ、そして打ち上げ花火は本当に楽しかったです。」

「そうねアヤネちゃん。私も時が立つのを忘れてはしゃいじゃったし……」

「ん、それにタツミの料理もとても美味しかった。」

「でしょでしょ!お兄ちゃんのお料理はキヴォトスで一番美味しいからねー!」

「うん、あれは先生やイブキが絶賛するのも分かる。」

「しかも料理を作るスピードもすごかったですしね、私達が食べている間にもう次の料理が出来てましたし。」

“タツミ曰く普段から給食部のヘルプをしていたり、玄武商会で鍛えてもらっているからって言ってたけどあの味とスピードを両立できるのはすごいよね。私、女として自信がなくなってくるよ……”

「ん、ぜひウチの専属料理人として雇いたいくらい。」

「ダメだよシロコ先輩!お兄ちゃんはイブキのものなんだからね!」

「……冗談だよイブキ。」

 

「……でも一時はどうなることかと思ったけどなんとかなって本当に良かったわ。」

「ふふ、セリカちゃん最初はものすごく焦ってたもんね。」

「し、仕方ないじゃない!まさかリゾートのチケットが土地の利用券だったなんて思わないわよ!」

“まぁそれはそうだね。”

「そのせいで先輩たちにも迷惑をかけちゃうし、わざわざ時間を作ってここまで来てくれたタツミくんやイブキちゃんにも申し訳なかったし……」

「そんなことないよセリカ先輩!イブキはお兄ちゃんといっぱい一緒に居れて嬉しいし、それにバーベキューや花火だってとっても楽しかったもん!」

「イブキちゃん……」

「そうだよセリカちゃん。確かに最初は掃除とかで大変だったけど結果的には私だけのリゾートでゆっくり出来てるわけだしね。いやはや、チケットを当ててくれたセリカちゃんには感謝しないとね。」

「……ありがとう、ホシノ先輩。」

「いいっていいって、気にしなさんな〜。」

 

「それにしても、あのワカモって狐女……あいつからは危険な匂いがする。」

「うん、イブキもあのお姉さんは……なんだか嫌な感じがするよ。」

「確か先生やタツミさんの説明によると、あの悪名高い七囚人の一人なんですよね?確か彼女は定期的に街を破壊し回っていることから、付いた異名は災厄の狐……」

「……おじさんも彼女と戦ったから分かるけど、相当手強かったからねぇ。タツミくんはあの子と互角に戦えるんでしょ?いやはや、強いんだねぇ彼。」

「うん!お兄ちゃんは毎日頑張ってトレーニングしてるし、あんな狐のお姉さんには負けないんだから!」

「あの七囚人の1人と互角に戦えるって……どれだけ強いのよタツミくんは……」

“まぁ、そのせいでワカモから目をつけられちゃってるみたいだけどね……私としてはワカモも大切な生徒には変わりないから好きな事をして欲しいとは思うけど、街の破壊は良くないとは思うし……難しいところだね。”

 

「けど、彼女との関係をタツミくんから聞いた時はびっくりしちゃいましたね☆」

「ん、まさかタツミがあの女とキスをしていたなんて……セリカ、うかうかしてたらかっさらわれるよ?」

「わ、分かってるわよ!でもまさかあのタツミくんに対してそんな事する女の子が居るなんて聞いてないし!」

「ワカモさんからは全身タツミさん好き好きオーラが出ていましたからね……それに気づいていないタツミさんも大概だとは思いますが……」

“タツミはクソボケだからね。でも実際ワカモのことは強引にキスされたこともあってそのせいかは分からないけど結構意識しているみたいだし、案外タツミには行動で示すほうが良いのかもしれない。”

「こ、こうなったら私もタツミくんにちょっと大胆な水着を着て攻めてみようかしら……?」

「……イブキだって負けないからね、セリカ先輩。」

「ん、私だって負けない。今度ワカモが襲ってきたら返り討ちにしてボコボコにする。」

「……いや、そういう意味じゃないと思うよシロコちゃん。」

 

(“ふふ、タツミは本当に愛されているなぁ。彼の前世を知る身としては、今世でタツミがこれほど皆に愛されているのを見ると安心するよ。”)

(“……けど、やっぱり前から思っていたけどタツミって虐待の影響か自己肯定感が著しく低いんだよね。だからクソボケはクソボケなんだけど、愛を知らなかった故に他人からの自分への愛を感じるのは苦手なのかも……”)

(“……今後はその辺りのカウンセリングもしっかりする必要がありそうかな。タツミは前世で辛い目にあった、今世では必ず幸せになってほしいからね。”)

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