ギリギリ大丈夫かぁ!
俺様の部屋のトイレへ入っていったと思ったら、白のビキニから牛柄のビキニと言う衝撃的な格好に着替えて着た目の前の災厄の狐こと狐坂ワカモ。
クソデカい胸、くびれた腰、安産型の尻。そしてそれを支えるムッチムチのぶっとい太もも。
彼女の完璧すぎる肉体的を白と黒のまだら模様の水着が包みこんで余計にその存在をアピールしており、ワンポイントとして装着している長手袋やニーソックスも牛柄の模様で統一されているそれは、刺激が強いというレベルでは言い表せないほどには目に毒なものだった。
そのあまりにも男の理性を絶対に殺すと言わんばかりの水着と凶悪なスタイルに、俺様は思わず大声を上げながら慌てて視線を明後日の方向へ強引に逸らす。
「ななな、なんて格好してんだてめぇは!?」
「ウフフ♡いえ、あまりにもタツミさんが難攻不落なものですから私も強硬手段に出ようかと思いまして。」
「強硬手段って何のだよ!?」
「あら、殿方はこのような水着を好むと言う話を聞いたことがありますが違うのですか?」
そう言うと、きょとんとした顔で小首を傾げながら不思議そうな表情を浮かべてそう言うワカモ。
いや、そりゃその水着は男の夢みたいなもんだから嫌いなやつはほとんど居ないとは思うけどこの状況でそんなものを着て出てくるなんてのは反則だろうが……!
「ばっ……バカにすんじゃねぇぞお前!」
「あら、バカになどしておりませんわよ?今日の私はタツミさんに水着を見せに参っただけですので♡」
「だったら別にさっきの水着でも良かっただろ!?あれだってお前には似合ってたし……!」
「ウフフ、タツミさんに褒められたのは大変喜ばしい事なのですけど残念なことにタツミさんは視線を逸らすばかりでこちらを見てくださらなかったので……ですのでこの格好であれば私をしっかり見ていただけるかと♡」
そう言うと、ワカモは口元に手を当ててニッコリと微笑みながらそんな事を口走る。
いや、そもそもいくら敵だからとは言え水着姿の女性をジロジロ見るってのは失礼だろ!?
それに単純にワカモは顔も体も滅茶苦茶良いんだし、性格さえなんとかなれば引く手数多だと思う程の女だ。
そんな女に水着を着て自分のスタイルを強調するポーズを取って迫ってこられて、直視できる方がおかしいだろ!
それにそんな刺激的な水着を着られたら余計に見れなくなるっつーの!俺様の理性を消し飛ばす気かお前は!
「と言うかお前も若干顔が赤いじゃねぇか!恥ずかしいんなら今すぐ着替えてこいこのバカ!」
「ウフフ……なんのことでしょうか?」
ワカモは俺様に指摘されると、ほんのりと赤く染まった顔をふいっと逸らした。
いや、やっぱ恥ずかしいんじゃないか!自爆してんじゃねぇよまったくよぉ!
「それよりもタツミさん。私がわざわざ誰も居ないこの時間を狙ってこのような水着を用意して、あまつさえ身に着けてタツミさんの前に現れた意味……ここまですれば貴方とて私の真意に気づかないわけがないでしょう?」
「……うるせぇな、そんなのとっくに分かってるよ。」
ワカモの言葉に俺様はぶっきらぼうにそう返す。
……あぁ、分かってるよ。
そもそも女性が男が1人で過ごしていることが分かっている部屋に来るだけでもそいつに少なくとも悪感情を持っていたら出来る行動ではない。
その上で、あまつさえ普通の水着だけならまだしも牛柄のビキニなんて一歩間違えればコスプレの類に分類されるようなものまで用意してきているんだ。
ここまでされれば俺様だって気づかないわけはない。
……けど、それを認めるわけには行かない。
どんなに顔がよくても、どんなに俺様に対しての当たりが柔らかくてもこいつはキヴォトス七囚人の1人。
趣味で街を1つ消し飛ばすような、筋金入りのテロリストなんだぞ。
そんな奴にいくらアピールされたからと言って……はいそうですかなんて受け入れるわけには行かねぇんだよ。
そもそも、こいつは俺様の命を狙っているんだぞ。
その証拠に俺様は今まで何度だってこいつの襲撃を受けてきているし、本気で殺されそうになったことなんて両手の指を折るだけでは数え切れない。
前にも言ったけど、仮にワカモが俺様のことを本気で好きならば殺す気で襲撃を仕掛けてなんてくるか?
……まぁ、こいつならやりかねない気もするけど普通はそんなことするわけもないだろう。
なのでそれを加味して考えるとこいつが俺様のことをからかっているだけって可能性もゼロではないんだ。
だから、こんなことをされたからと言ってホイホイと手を出すつもりはない。俺様の理性を舐めるなよ……!
「であれば、女の期待には答えるのが男の役目……そうは思いませんか?タツミさん。」
「……お前がテロリストって肩書を綺麗サッパリ捨て去って、今からでも矯正局へ入って罪を全て償うってんなら考えてやるよ。」
「あら、それは出来ない相談ですわね。」
「そうか。ならこっちだってそれは出来ない相談だ。」
俺様はくすくすと笑いながら近寄ってくるワカモを見据えると、不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
大丈夫だ。心頭滅却すれば火もまた涼しと言うだろう。
無心になればこいつのでっかい胸も、安産型の尻も、ムッチムチの太ももも……いや、やっぱりキツイわ。
先程までの控えめな水着であれば段々と目を慣らすことも可能だっただろうが、この泳ぐことを放棄して男を誘惑することにステータスを振り切った水着を着た美女に対して目を慣らすなんて俺様には出来るわけもない。
俺様は再びワカモから視線を逸らすが、ワカモはそんな俺様の視線の先に強引にその姿を割り込ませてくる。
「ウフフ♡ここまでしてもまだ応えてもらえないとは……据え膳食わぬは男の恥という言葉がありますよ?」
「ハッ、毒の入った料理にがっつくバカがどこにいるってんだよ。そもそもお前は俺様の命を狙う敵でぶっ飛ばしてやりたい相手なんだぞ。お前は自分が俺様にとってどれほど危険な相手なのか理解してるのか?」
「ふふ、たしかにそれはそうかもしれませんね。ですがこうも言うではないですか、毒を食らわば皿までと。」
くそ……ああ言えばこういう。
本当にムカつく野郎だ。
「……物好きな奴だな。俺様のどこが良いんだよ。」
「私を相手に一歩も引かないその態度。人を身分ではなく個人として見て接する心遣い。自分のことは二の次で、人の心配ばかりをする呆れるほどのお人好し。毎日の鍛錬に裏付けられた強さ。他にも色々ありますが……一番はやはりタツミさんの優しさでしょうか。」
「……優しさだぁ?おいおい、そう思ってんならお前の目は節穴だぞ。俺様がいつお前に優しくしたってんだ?」
「ウフフ、なんだかんだと言いつつも今こうして私とキチンとお話をしてくださっている時点で充分にお優しいのではなくて?普通なら私は問答無用でつまみ出されても文句は言えないでしょうから。」
「おま……!自覚してんならこんなことすんなよな……!」
いつもの飄々とした様子でそう言い切るワカモに対して俺様は抗議の声を上げる。
「そもそも俺様は結構人を身分で判断してるぞ。お前だってテロリストだからって邪険に扱ってるだろ。」
「確かに表面上はそう見えるかもしれませんがタツミさんはご自身でその人と触れ合った上でその人をキチンと個人として見て接しておりますわ。でなければあの連邦生徒会代行とここまで懇意には出来ないでしょう?」
「お前!?なんでそのことを……!?」
「ウフフ♡まぁそれは今はどうでもいいではありませんか。話を戻しますが、確かにタツミさんは私のことをテロリスト扱いはされますが……その実、結構私自身の事を認めてくださっておりますわよね?」
「……そんな訳無いだろ。お前はテロリストだ。」
「いいえ、そうであるならば矯正局へ入って罪を償えば考えてやる等とは言いません。問答無用で私を糾弾するはず。だって私のことを糾弾する連中は、私が罪を償ったとて許さないような連中ばかりでしょうからね?」
そう言うと、ワカモはどこか陰りのある表情を見せながら俺様のことをまっすぐに見据えてくる。
「……それはお前が悪いだろ、趣味で街一つ消し飛ばすような奴は恨まれても文句は言えねぇよ。」
「ですが、貴方は私が矯正局へ入って罪を償うのであれば許してくださるのでしょう?」
「……あぁ。確かに罪を犯したのは間違いないだろうがキッチリ反省して更生するなら、そいつに石を投げることは許さない。反省して前へ進む権利ってのは……誰にだってあるもんだからな。」
……そうさ、人生をやり直す権利ってのは誰にでもある。
矯正局で罪を償っている羽沼議長やアリウススクワッドのようにな。
「ほら、やはりお優しいではないですか。」
「……当然の考えだろ?」
「残念ながらタツミさんのような考えの出来る方はキヴォトスでは少数派でしょう。一度でも罪を犯せば永遠に罪人……そのように考える連中は少なくないです。」
何故か、トリニティに行った時に聖園先輩を糾弾して叫んでいる生徒たちの姿が目に浮かんで来る。
まぁそうは言うけど、実際罪を犯したって事実が消えるわけじゃないからある程度なにか言われるのは仕方ない部分ではあるだろう。
……まぁ、流石に聖園先輩に対してあんなことをするのはやりすぎだとしか言いようがないけど。
「なので私も人と関わることは半ば諦めていました。そんな事を思っていたある日、矯正局を脱出したその日に私と互角に勝負の出来るヘイローのない殿方が現れた。それが貴方です、タツミさん。」
そんな事を考える俺様に対して、ワカモは真剣な表情を浮かべながらそう言ってくる。
「初めは他の有象無象の連中よりも多少は歯ごたえのある相手、そんな認識でした。ですが何度も貴方と刃を交えるたびにヘイローがないにも関わらず私と戦えるだけの力、銃弾一つが致命傷になりかねないその身体で私を相手に一歩も退かないその胆力。タツミさんのそんな姿を見て、私はますます貴方への興味を深めてまいりました。もっと貴方の事を知りたい、もっと貴方と刃を交えていたい……そんな風に思った頃には、私は貴方に夢中になっておりました。タツミさんを超えたい、いつかタツミさんに膝を付かせてやりたい、タツミさんを壊すのは私、壊していいのは私。他の誰にもその役目は譲らないと……この私に認めさせる程には。」
「……そうかよ。」
「そして、私は貴方と関わる内に貴方の優しさや強さの根幹も何となくですが分かってきました。貴方は常に何かを守るために戦っています。それは時には妹さんであり、万魔殿の仲間たちであり、タツミさんと仲の良い方であり……そして、エデン条約のあの場では私をも守るために貴方は体を張ってくださった。」
ワカモは俺様に肌と肌が触れるギリギリの距離まで近寄ってくると、あの時ワカモを庇って出来た腹の傷があった部分に着ているシャツの上からそっと触れた。
熱に当てられた雰囲気や、ワカモから漂ってくる甘い香りに頭がクラクラしそうになってくる。
「タツミさん、私は気づいているのですよ?口ではなんだかんだと悪態をつきつつも、貴方は私の事を心配したり気にかけてくださっております。その証拠にいつか私が傷を負った際は手当てしてくれましたし、エデン条約のあの場でも身を挺して私を守ってくださった。」
「……そりゃいくらテロリストとは言え目の前で倒れられちゃ寝覚めが悪ィだろ。それだけだ。」
「ふふ、そういう所がタツミさんの素敵な所です。そして……そういう貴方の優しい強さ。それに私は心を撃ち抜かれてしまいました。貴方に庇われるまでこのモヤモヤしていた気持ちが何だか分かりませんでしたが、今ならはっきりと分かります。あれは恋情。そう、気づけば私はタツミさんに恋をしてしまっていたのだと。」
ワカモはそう言うと腹の傷からそっと手を離すと、俺様の目を真っ直ぐに見据えて口を開く。
「タツミさん。私は貴方が好きです。」
そして、真剣な表情でそう言い切った。
「よきライバルであり好敵手として、いつかは超えたい相手として、そして……1人の男性としても貴方のことをお慕い申し上げております。」
至って真面目な表情でキッパリとそう言うワカモ。
「……お前の気持ちは嬉しい。俺様だって男だ。お前みたいな可愛い女の子にそんな風に思われて嬉しくないわけがない。けど、現実問題としてお前はテロリスト。だから悪いけどお前の気持ちには応えられない。」
俺様は少しだけ考えた上で、ワカモに対してそう返す。
勘違いしないで欲しいんだけど、ワカモが俺様に対してそう思ってくれていることは滅茶苦茶嬉しい。
そりゃそうだろう。
男なら損得勘定を抜きにしても、こんな可愛い女の子から思われているなんて事実が嬉しくないわけがない。
だけど、ゲヘナの議長代理とテロリストが付き合ってるなんてことになったら大問題になりかねない。
それに……俺様はワカモの事を倒すべき相手だと認識している。俺様に好意を向けてくれている女の子だってことも薄々は分かっていたつもりだ。
だけど、俺様がワカモに抱いているこの気持ちは現状では到底恋と呼べるものとは言えない。
くそっ、前世でもっと普通の恋愛が出来ていれば俺様のこの複雑な感情にも答えは出せたんだろうが……
まぁ何にせよ、俺様がワカモに対して抱いているのは憎しみだけではないってことは確かだ。
女の子として気にしてはいるし、意識もしている。
だが確かに意識しているのは紛れもない事実ではあるけど、そんな中途半端な気持ちで付き合うなんてのはワカモに対して一番失礼なことだろう。
それにワカモは趣味で街1つ消し飛ばすようなことを今までに何度もやらかしているし、矯正局から脱獄した今でも各地で破壊活動を行っている。
だから、矯正局へ入ってその罪を償わない限りは……例え仮に俺様がワカモの事を好きになったとしても、付き合うわけにはいかない。
……結局、俺様はワカモのことをテロリストって身分で見ちまっているような気がする。
くそ……俺様に対してここまで好意を向けてくれる女の子に対してそんな対応しかできない自分が嫌になるぜ。
「ウフフ、貴方ならそう仰ると思ってました。ですが私は決して諦めません。必ず貴方を振り向かせて差し上げますから、覚悟しておいてくださいね?」
「……すまんな。お前の気持ちに応えてやれなくて。」
「あら、何をおっしゃっているのです。簡単に手に入っては張り合いがありませんもの。タツミさんは難攻不落の方がタツミさんらしいですからね♡」
「……あぁ望むところだ。やれるもんならやってみろ。」
結果的には俺様はワカモを振る事になったにも関わらずワカモは口元に手を当てて愉快そうに笑うと、まったくめげていないような様子でそう言った。
「……なんか、フッた俺様がこんな事を言うのも何だが思ったよりショックを受けてないんだな。」
「ウフフ、タツミさんの信念を考えれば今の私の告白を受け入れてもらえるとはハナから思っていませんでしたからね。それにチャンスは一度というわけではない。私は一度振られたからと行って諦めるほど意思の弱い女ではありませんことよ?」
「そうだったな。お前はそういうやつだったよ。」
諦めが悪くて、狙った獲物は逃さない。
狐坂ワカモと言うのはそういう女だということを、俺様は誰よりも知っている。
「ですが私の気持ちはこれで伝わったはずです。今回このような事をしている理由も。」
「……それはよく分かったけど、俺様はお前に手を出すつもりはない。」
「えぇ、分かっておりますとも。ですが貴方に惚れた女がここまでしていると言うのに手を出してすらもらえないとは……少し女として不安になってきますわね。」
「勘違いすんな。正直お前の今のその格好は俺様にとっては目に毒でしかねぇ。一歩間違えばこの場で飛びかかられても文句は言えねぇくらいには魅力的だ。」
「あら、では飛びかかって滅茶苦茶にしていただいても構いませんよ?♡」
「……馬鹿言うな。そういう行為ってのは恋人同士が同意の上でやるもんだ。付き合ってすら無いのにそんな行為に及ぶのは何よりもお前に対して失礼だろうが。」
そう、付き合ってもいないのに体だけ重ねるというのはあまりよろしくない行為であろう事は間違いない。
人によっては構わないという奴もそりゃいるだろうけど、少なくとも俺様はそう思う。
……まあ正直理性がやばいから、俺様が最低な男になっちまう前にその水着は着替えてきてほしいけどな!
「……タツミさん。」
「どうした?」
「もし、もしもですよ?もし仮に私が矯正局へ戻って全ての罪を清算すると言ったら……貴方は私のものになっていただけるのでしょうか?」
「……そうだな、考えてはおくとするよ。」
「ウフフ、分かりました。ですが今のはあくまでも仮の話……今後も私は趣味もタツミさんも諦めるつもりはありませんので、覚悟してくださいね♡」
「あぁ望む所だ。お前が暴れるなら俺様が完膚なきまでに叩きのめしてやる。後で吠え面かくんじゃねぇぞ。」
「はい、望むところですわ♡」
俺様とワカモは互いに顔を見合わせ、笑顔を浮かべる。
うんうん、やっぱりこいつはこうでなくっちゃな。
さぁしんみりした雰囲気は終わりだ、とにかくずっとその牛柄のビキニでいられると俺様の理性が危ない。
そろそろそこのトイレで着替えてきて……
「ですので……今だけはこうさせてください。」
もらおうと思った瞬間だった。
突然ワカモはただでさえ近かった距離を更に詰めてくると、そのまま俺様の腰に手を回しこれでもかと言わんばかりに主張するわがままボディを押し付けてくる。
「……!!!???」
あまりにも唐突な行動に俺様は目を白黒させつつ、反射的にワカモの顔に目をやるとワカモは目をうるませながら上目遣いでこちらを見上げてきていた。
彼女の体温、息遣い、体の感触をいきなり全力でぶつけられた俺様の思考と理性はショート寸前になる。
と言うか当たってる、当たってるって!豊かな2つの丘が当たってるって!恥ずかしさでどうにかなりそうだ……!
「……その、タツミさん。すみませんでした。私を庇ったせいでその様な大きなお怪我をさせてしまって。」
そんな目をぐるぐると回す俺様とはうって代わり、目尻に涙をためながら俺様の腹の傷に再びそっと手の平を重ねながら震えた声でそう言うワカモ。
その声にハッとした俺様がワカモに視線をやると、よく見ると彼女の肩がかすかに震えているのが分かった。
その姿を見た瞬間、考えるより先に体が動く。
俺様は反射的にワカモの頭に手をおいて、彼女の頭を優しく撫でていた。
「何だ、そんな事気にしてたのか?別にこのくらいなんともねぇよ。もう抜糸も済んで傷口も塞がってるし内臓に損傷もないみたいだから、あんま気にすんな。」
「何ともないわけないでしょう?あのような大口径弾を腹に受けているのに……」
「言っただろ、俺様はお前以外の女に殺されてやるつもりはねぇってよ。……ま、お前にだって命をくれてやる気は微塵もないけどな?」
ワカモの頭をぽんぽんと撫でてやりながら、俺様は不敵な笑みを浮かべてそう言った。
「ですがそれでも、私が油断をしなければ……」
「ワカモ。俺様はお前を守ったことに後悔はねぇ。それにあの時に約束したろ。あの場では俺様はお前には指一本触れさせねぇってよ。」
「……!」
「だからそんなに気にすんな。一緒に戦って、俺様を心配してくれる女の子を守れたんだ。むしろ男としては誇るべき事であって、お前が気にする必要はない。」
「タツミさん……」
「だからこの傷は名誉の負傷、お前を守った事に対する証だ。だからあんま気にすんなよ、な?」
そう言うと、俺様は親指を立てながら笑顔を見せる。
俺様の顔を上目遣いで覗き込んでいたワカモは少しだけ表情をほころばせると、小さな声で口を開いた。
「……ずるいですよタツミさん。」
「ん?なんだって?」
「いえ、何でもありません。相変わらず貴方は女たらしのクソボケだなと、そう思っただけです。」
「はぁ!?いきなり悪口とはいい度胸だなぁオイ!上等だ!次会った時は敵同士だからな!絶対にボコボコにしてやるから覚悟しとけよ!」
「タツミさんこそ、私に負けて泣かないで下さいね?」
「誰が泣くかアホォ!」
くそっ、ちょっと慰めてやったらすぐにこれかよ!
……まぁでも、しおらしいよりこっちの生意気でムカつく方がワカモらしいっちゃらしいかもしれないけどな。
「……ウフフ、私を守った証ですか。」
「な、なんだよニヤニヤして……」
「ウフフ、いえ。なんでもありません。」
そう言うと、ワカモは頭を俺様の胸に埋めたかと思うとそのままグリグリと押し付けてくる。
「お、おいワカモ!流石にそろそろ離れてくれ……!」
俺様はワカモの両肩を掴みつつ彼女に対してそう言う。
正直、さっきからワカモから抱きつかれているせいで彼女の体温は間近に感じるし色々と柔らかい物が当たりまくっているしこのまま理性を保つのももう限界が近い。
このままだと本当に俺様が最低な男になっちまうから出来たらサッサと離れてほしいんだが、切実に……!
「……嫌です、今だけはこうしていたいのです。」
だが、ワカモは俺様の胸に顔を埋めながら腰に回した手に力を込めて更にその凶悪な体を押し付けてくる。
「た、頼む!そろそろ俺様も限界が近いんだ!俺様が最低な男になる前に、頼むから離れて……!」
「……タツミさん。」
俺様は慌ててワカモの肩を掴みながらそう言うが、ワカモは静かに俺様の名前を呟くとこちらを見上げて来た。
彼女の黄色い瞳は涙で濡れてまるで宝石のように輝いており、そのあまりの美しさに俺様は息を呑む。
「タツミさん、エデン条約の時に貴方は私にたくさんの借りを作ったのは覚えていますよね?」
「うっ……そ、それは確かにそうだけどよ……!」
ワカモの言葉に、俺様はしどろもどろになりながらそう答える。
確かにあの時はやむを得ずこいつの手を取ったけど、結果的にワカモの助力がなければ俺様はアリウススクワッド相手に状況を打破出来ずにすり潰されていただろう。
しかもこいつはその後に俺様を救護騎士団の本部まで肩を貸して送ろうともしてくれたし、こいつには大きな借りがいくつもあると言うのは確かな事実だ。
「その借りは……今ここで残らず返して頂きますね♡」
ワカモはそう言ってにっこりと微笑むと、その整った顔を俺様にどんどんと近づけてきた。
……ダメだ。俺様はさっきこいつを拒絶した。
だからこの行為もキッパリと拒絶しないといけない。
そう思った俺様は即座にワカモの肩を強く押し返そうとするが……彼女の潤んだ目や、熱を帯びて発情したような色っぽい表情に思わず一瞬手が硬直してしまう。
そしてその隙を見逃さずに……彼女の柔らかい唇が、俺様の唇にそっと触れた。
「……っ!」
あの戦場でワカモから半ば無理やりしてきた時とはまったく違う、優しくて温かいキス。
彼女の暖かい唇の感触をしばし感じた後に、ワカモが少し息を吐きながら重ねた唇を離した。
彼女の整った顔が文字通り目と鼻の先に来る。
「タツミさん……今夜だけ、今夜だけで構いません。どうかこのワカモと夜を共にしていただけませんか?」
「ワカモ……いや、それは……」
「タツミさんだって分かっているはずです。この破廉恥な水着は泳ぐためのものではなく、目の前の殿方を誘惑するためだけに身に着けているものであると。」
「それは分かってるけど、それでもこういうのはお互い付き合ってからじゃないとダメだ……!」
俺様は雑念をブンブンと振り払うように頭を振り、ワカモの目を真っ直ぐに見てそう言う。
もうこの際だから正直に言うと、今の俺様はいつワカモをそこのベッドへ押し倒してもおかしくない状態だ。
そりゃそうだろう。
こんなキヴォトスでも上澄みレベルの美人かつダイナマイトボディの持ち主が、牛柄のビキニなんて言うものを着て俺様に抱きついた上でキスまでしちまったんだぞ。
最早俺様の理性は破裂寸前、いつ爆発したっておかしくない状態を無理やり押さえつけている状態に過ぎない。
ここまで求められているなら応えるのが男なのかもしれないけど、それでもこの一線を越えてしまったら俺様達は前のような関係には戻れなくなる可能性だってある。
据え膳食わぬは男の恥とはよく言ったもんだが……
どうする……俺様は……一体どうすれば……
「タツミさん。」
目を白黒とさせながらそう考えていると、ワカモが俺様の名前を優しく呼んでくる。
俺様がその声にハッとなってワカモを見ると、彼女は俺様の腰に回していた手を離すと俺様から少し離れると部屋に備え付けられているベッドへと腰掛ける。
そして……ワカモは俺様に向かって両手を広げると、一言だけ小さな声で呟いた。
「……来て♡」
ーブチッー
その瞬間、俺様は自分の中で限界ギリギリまで張り詰めていた何かが切れる音をハッキリと聞いた。
「きゃっ……!?」
俺様はそのまま無言でツカツカとワカモへ歩み寄ると、彼女をベッドに押し倒してその上に馬乗りになる。
「お前が悪いんだからな。言っとくが手加減する気はねぇ……いいだろう、お前の望み通りにしてやるよ……!」
よくよく考えたら、こんな極上の女が誘惑してきているのに何もせずに帰そうとしていたなんて俺様はなんてバカなことをしようとしていのだろうか。
女性とこんな行為をするのは初めてだから上手く出来るかは分からないけど……まぁそんなのどうでもいいか。
「……はい、はいっ♡ぐちゃぐちゃにして♡タツミさんの好きなようにしてくださいっ♡」
俺様の目の前では、目にハートを浮かべて発情しきった一匹の女狐が俺様のことを今か今かと待ちわびている。
なら、その期待にはしっかり応えてやらないとなぁ!!
「あぁ、望み通りぐちゃぐちゃにしてやるよ!!!」
その後のことはよく覚えていないけど、ただワカモを欲望のままに貪ったことだけは……ハッキリと覚えている。
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『こ、こちらFOX4!ユキノ、聞こえる!?』
「……FOX4、今は任務中だぞ。」
『ご、ごめんFOX1!でも今すごく大変なんだ!』
「どうした、何があった?」
『いやその……それが命令通り丹花タツミを監視していて彼が部屋に1人で居たから報告しようと無線を出したんだけど、いざ電源を入れようとした瞬間に狐坂ワカモが丹花タツミの居る部屋に入ってきたんだよ!』
「……何?それは厄介だな。狐坂ワカモは言わずもがなだが、丹花タツミもカヤ室長の話では相当の実力者……だが奴らは昼間は争っていたんじゃなかったのか?」
『それは分からないけどとにかく狐坂ワカモが部屋に入ってきて、丹花タツミとしばらく話をしてたんだけど……そ、その……二人で抱き合ったりしてゴニョゴニョ……』
「……?どうしたFOX4、もっとハッキリ報告しろ。」
『そ、その……!しばらく話をした後に狐坂ワカモが丹花タツミに抱きついて二人でキスをしたり、ヤることをヤッたりしてるんだよぉ!』
「……は?」
『ど、どうしようユキノ!どうしたら良いと思う!?』
「抱き合う……?キス……?ヤることをヤる……?」
『ユキノ!?ちょっと!応答してよユキノー!!!』
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「ま、また私がビリだなんて……」
「いやー悪いねセリカちゃん。またおじさんが1位をもらちゃってさ。」
「うーもう一回!もう一回やるわよホシノ先輩!」
「いいよ〜。じゃあ今度は大富豪で勝負しよっか。」
「えぇ!絶対負けないんだから!」
「あ、あはは……もう夜も遅いから程々にねセリカちゃん……」
「すぅ……すぅ……」
「イブキちゃん、すっかり寝ちゃいましたね☆」
“昼間タツミと一緒にいっぱい遊んでたからきっと疲れちゃったんだろうね。タツミにここまで迎えに来てもらうのもあれだから私が部屋に戻る時に送っていくよ。”
「ん、よろしくお願いね先生。ひとまずイブキには毛布をかけておく。」
「んぅ……お兄ちゃんだいすきぃ……えへへ……」
「ふふ、タツミくんの夢を見ているのでしょうか☆」
「ん、タツミもシスコンだけどイブキもタツミに負けないくらいにはブラコン。」
“うんうん、仲が良いのは良いことだからね。”
(“まぁ、時々イブキのタツミを見る目がちょっと湿っぽいのだけは気になるけどね……”)
(“それにしても、何だか嫌な予感がすると言うか……今後何事もなくこのバカンスが終わればいいんだけど。”)
すまないが本番の描写はカットさせてもらうぜ!
需要があるならRー18番で書くかもしれません