皆さんも体調を崩さないようお気をつけて
一寸先も見えない、深い深い闇の中。
俺様はそんな真っ暗な闇の中でとても心地良い眠気に包まれて惰眠を貪っていると、唐突に俺様の真っ暗な視界に一筋の光が差し込んでくる。
「ん……んん……」
その光を視認した俺様はうめき声を上げながら徐々に目を開いていくと、うっすらと開いていく瞳には昨日寝る前にベッドで横になった時に見た天井が映し出された。
それと同時に、雲がかかったようにボンヤリとしていた思考が少しづつ覚醒し始める。
……そうだ、俺様は確か昨日イブキと一緒にリゾートへ来てこのホテルに泊まっていたんだったな。
昨晩ワカモと解散した後にそのままベッドへ倒れこんじまったのだが、どうやら色々と昨日あった事を考えている内にそのまま寝落ちしてしまったらしい。
「んぁ……もう朝か……」
眠い目を擦りながら、俺様は気だるげにそう呟いた。
眠りから覚めてガンガンと痛む頭を抑えながらヨロヨロとベッドから起き上がった俺様は、寝ぼけ眼でスマホを手に取るとディスプレイに表示された時計を確認する。
すると、そこには【11:38】と表示されていた。
「……は?」
俺様は思わずそんな間の抜けた声を上げ、再度目をこすってから再度スマホのディスプレイを確認するが……そこには変わらず11:38と言う時刻を映し出すいつもの見慣れたスマホのディスプレイの姿があった。
「ははは……いや、マジ?」
乾いた笑いをしつつ、俺様はそう呟く。
どうやら、俺様は自分が思っている以上に疲労が溜まっていたらしい。
……まぁ、無理もない話だ。
昨日はリゾートへ来てからこのホテルの掃除から始まってヘルメット団の襲撃や、夜にはワカモの突然の訪問など色々なことが重なって起こりすぎていた。
おまけにそれに加えて普段の業務で蓄積された疲れもあいまって、気がつけばこんな時間になるまで盛大に爆睡をかましてしまったらしいな。
本来ならキッチリ目覚ましをかけておくべきだったんだろうけど、昨日はベッドへ倒れ込んでそのまま気絶するように眠ったおかげでそんな暇なんてなかったし……
なにはともあれ、確か今日はアビドスの皆はヘリの修理をして帰りの足を確保する手筈になっている。
俺様も修理自体は心得がないから手伝えないけど彼女達の昼食などを用意するつもりでいたし、これは大寝坊をしてしまったと言っても過言ではないだろう。
「くそ、やっちまったな……」
恐らく時間帯的に考えて誰かしらは起こしに来てくれているとは思うけど、爆睡していたせいで気づかなかったのだろう。くそ、俺様としたことが何と言う不覚……!
……ともかく、今は嘆いている場合ではない。
アビドスのみんなや先生は既にヘリの元へ行って既に修理を始めているはずだ。
今からでも手伝うには遅くないはず、なら隣で寝ているイブキを起こしてサッサと皆と合流すべきだろう。
そう思った俺様は、隣で天使のような顔で幸せそうに眠っているであろうイブキを起こすために我が妹の眠っているベッドへと視線をやるが……
「……え?」
俺様の思考に反してそこにイブキの姿はなく、ただ新品同然に綺麗に整えられたベッドが一つぽつんと鎮座しているのみだった。
「えっ……な、なんでイブキがいないんだ!?」
姉妹で寝ているはずの最愛の妹が居ないという現状を認識した俺様は軽くパニックに陥るが、まずは一旦落ち着くと俺様は目を閉じて息を大きく吸い込んだ。
……よし、これで少しだけ落ち着いた。
まぁ普通に考えたらイブキが居ない理由として真っ先に思いつく理由は、イブキが先に起きて俺様を起こさずに先にみんなと合流しているとかその辺りだろう。
けど、知っての通りこの島には俺様達以外にもワカモを初めとしたヘルメット団の連中もいる訳だからな……
もちろん連中がイブキを誘拐でもしようものなら骨の一本も残らないほどに連中を八つ裂きにしてやるが、まずは先生に連絡を取った方が良いのは間違いないだろう。
そう思った俺様はディスプレイのモモトークのアイコンをタップし、連絡先の一覧を起動する。
すると今までモモトークを交換してきた人達のアイコンがズラッと並ぶと共に【新着メッセージが100件以上あります】と言う表示がディスプレイに表示された。
……そういや、今までは仕事の途中とか仕事が終わってからちょくちょく新着メッセージを返していたからあんまりメッセージが溜まることは無かったけど今回はバカンスに来てるってこともあってあんまりスマホ自体を触っていないからな。
となると当然送られてくるメッセージを確認する暇もないので、これだけ溜まるのは当然と言えるだろう。
出来れば早急に対応したいところではあるけど、今はそれどころではないからな……
俺様は連絡先一覧をスライドして先生のアイコンの部分でスライドを止めると、アイコンに【新着メッセージがあります】と言う表示がされているのを発見した。
なるほど、どうやら俺様が連絡するよりも先に先生から連絡が来ていたらしい。
俺様はすぐに先生のアイコンをタップしてトーク画面を起動すると、送られてきたメッセージを確認する。
『“おはようタツミ。実は朝一でタツミとイブキの部屋に二人を迎えに行ったんだけど、部屋に行ったらイブキしか起きてなくってさ。タツミも起こそうかなって思ったんだけどイブキが「疲れてるから寝かせてあげて!」って言うから、私もそうしたほうが良いと思ったから先にイブキだけを連れて一緒にヘリの修理に行ってるね。目が覚めてこのメッセージを見たら、またヘリの座標を送っておくからそこまで来て欲しい。お昼ご飯はホシノ達で用意しておくね。疲れてるみたいだから、ゆっくり休んでから来てくれれば嬉しいな。”』
すると、先生とのトーク画面には彼女から送られてきていたそんなメッセージと共にアビドスの皆の乗ってきたヘリの墜落地点の座標が添えられていた。
……なるほど、どうやらメッセージによるとイブキが先に起きていたけど俺様を気遣って無理に起こさずに寝かせたままにしてくれていたってことらしい。
で、先生の話を聞く限りではイブキはアビドスの皆と合流してヘリの修理の現場に居るみたいだな。
「なんだ、良かった……」
俺様はひとまずイブキがヘルメット団に攫われておらず先生たちと行動していることを確認すると、安心感から大きなため息を吐き出した。
まぁこの島にはキヴォトス最強クラスの実力を持つ小鳥遊先輩を初めとしたアビドスの皆や先生、そして何より俺様が居るんだから誘拐なんて事はさせるはずはないんだが、それでも万が一ってこともある訳だからな。
それがないって分かっただけでも安心するってもんだ。
いやぁ、それにしても普段疲れているだろうから無理に俺様を起こさないでいてくれるなんて……
流石は俺様の自慢の妹、人を気遣える優しさを持っていてなおかつ可愛いいなんてやっぱりイブキは最高だぜ!
まぁそりゃそうだ。
なんてったってイブキは世界で一番優しくて、寝顔が天使で、そして可愛くて愛おしい自慢の妹なんだからなぁ!
うぉぉぉぉ!こうしちゃいられねぇ!とっとと寝間着から私服に着替えて、早くヘリの修理場所へ言ってイブキをナデナデしてやらないとな!ハーッハッハッハ!!!
そう思いつつ、俺様はニヤニヤ顔を隠すことなくスマホのトーク画面にメッセージを打ち込んでいく。
『おはよう先生、わざわざ迎えに来てもらったのに悪かったな。おかげさまで滅茶苦茶よく眠れて今起きた所だ。俺様も今から準備してそっちへ向かうとするよ。』
俺様は先生に今起きたことを伝えるためにそうメッセージを打ち込んで送信ボタンを押すと、モモトークを閉じてスマホをベッドの上へと放り投げる。
そして俺様は愛する妹に早く会いたい気持ちを抑え、手早く寝巻きに手をかけて脱ぎ去って行く。
「げっ、結構寝汗かいちまってるな……」
脱いだ寝間着が汗でじっとりと湿っているのを見て、俺様は若干顔をしかめながらそう言った。
いくらここが涼しくて快適な無人島と言えど、今の季節は夏真っ盛り。昨日は窓は開けていたけどイブキの寝冷えを防ぐためにエアコンを切っていたからな……
明け方はまだ涼しいだろうけど、今は太陽もそろそろ真上にやって来そうかどうかという時間帯だ。
こんな時間までエアコンも付けずに寝てたらそりゃ寝汗もかくか……仕方ない、一旦シャワーを浴びるとしよう。
そう思った俺様は着ているものを全部脱いで後で洗濯するために洗濯籠へと放り込むと、バスタオルを一枚持ってシャワールームへと入っていく。
すると、その過程でシャワールームに設置された鏡に映し出された俺様の全体像が目に入る。
「う……」
俺様は鏡に映る自分の姿を見て、額に手を当てた。
そう、何故なら俺様の上半身には昨日の夜のワカモとの激しい行為によって付けられた彼女からの大量のキスマークや歯型等の刻印が刻まれていたからである。
……くそ、なるべく起きてから意識しないようにしていたのにこうして見るとワカモとそういう事をしてしまったという現実を否が応でも突きつけられてしまうな。
そしてそれは、同時に昨日ベッドの上で激しく乱れていたワカモの姿をも思い起こさせるもので……
「……考えるな。今はさっさとシャワーを浴びてみんなの合流しないといけないからな。」
俺様はブンブンと首を振って煩悩を吹き飛ばすと、悶々とした気持ちを汗とともに洗い流すためにシャワーのレバーをひねるのだった。
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「……ふぅ。いい湯だった。」
あれから熱いシャワーを浴び、汗を流してさっぱりとした俺様は部屋の中で着替えを行っていた。
昨日着ていた海パン(洗濯済み)を履き、上半身にTシャツを着てその上から薄い上着を羽織る。
そして部屋の鏡を見ながら首元のワカモからの刻印を覆い隠すように絆創膏を貼り付けた俺様は、全身をチェックして昨日の行為の跡が残っていないかを確認する。
「……よし、大丈夫そうだな。」
見た所上半身に付けられたものは全てTシャツで多い隠せているし、首元のものは絆創膏でなんとか誤魔化せるだろうからこれで問題はないはずだ。
先生には昨日虫刺されってことで説明してあるし、イブキや皆から詰められてもそう言えばいいだろうからな。
アビドスの皆や先生、そして何よりも我が最愛の妹であるイブキに嘘をつかないといけないのは非常に心苦しいのだけど……ワカモとの行為がバレるわけにはいかないからな、ここは心を鬼にするしかないだろう。
それしてもワカモのやつ、こんなにたくさん俺様にキスマークを付けてくれやがって……まぁその点では俺様だってワカモに大量のキスマークや歯型を刻み込んじまったからお互い様ではあるけど……
その中には首筋や鎖骨とか結構際どいところに付けてしまったものもある。あの時は俺様もワカモも理性が吹き飛んでいたとは言え勢いというのは改めて怖いもんだ。
……まぁそれはともかく、これで準備はOK。
ならいつまでもここにいる道理はないし、とっとと荷物を持ってヘリの墜落地点へ向かうとしよう。
そう思った俺様が朝飯代わりのカロリーバーをかじりつつ、荷物をまとめたリュックを背負ってベッドの上のスマホを手に取った瞬間だった。
【〜〜〜♪】
突然、手にしたスマホがブルブルと振動し始めたかと思うといつも俺様が着信音に設定している無機質なメロディが流れ始める。どうやら誰かから電話が着たようだ。
……ったく、こちとら急いでいるってのにこんな時に電話が来るとはなんとも間が悪いと言うか何と言うか。
俺様が心のなかでそう思いながらスマホのディスプレイを確認すると、そこには【七神リン代行】と言う文字が映し出されていた。
「……七神代行?」
ディスプレイに映し出された名前を確認した俺様は思わず静かな声でそう呟いた。
えっと……俺様、七神代行から連絡をもらうようなことをした覚えはないんだけど一体何があったんだろうか。
彼女から連絡が来る場合、大体はゲヘナ関連での業務連絡だけど俺様は彼女にバカンスに行くことを前もって伝えてあるから仕事の連絡である可能性は低いはず。
後はまぁ……最近は毎日のように夜にかかってくる仕事の愚痴の電話くらいだけど、バカンス中は自重するって言ってたからその線も薄いと考えられるだろう。
なら、もしかすると何かしらの緊急事態かもしれない。
そう考えた俺様は一にも二にもなくスマホに表示された通話ボタンを押すと、スマホを耳に当てて口を開く。
『……もしもし。タツミ議長代理でしょうか?』
「七神代行ですか?はい。そうです。タツミです。」
スマホのスピーカーから聞こえてくる、すっかり聞き慣れたノイズ混じりの七神代行の声。
それに返答するように、俺様はそう声を発した。
「どうかされましたか七神代行。何かゲヘナのことで緊急事態でもありました?」
『いえ、そういうわけではないのですが……その……』
俺様が電話の向こう側の七神代行に向かって少し身構えたようにそう質問すると、彼女は小さい声でそう呟く。
『えっと……その、ここ数日タツミ議長代理に電話をしていなかったので声を聞きたいなぁと思いまして。』
「……はい?」
もはや蚊の鳴くような声でボソボソとスピーカー越しにそういう彼女に対して、俺様は思わずそんな間抜けな声を出した。えっと……声を聞きたいって、俺様の声をか?
ひとまず何かしらの緊急事態でなかったことにホッとしつつ、俺様はその場で首を傾げた。
確かに七神代行とはここ数日間は電話でのやり取りはしていなくてメッセージのみでやり取りしているから声は聞いてないけど、そうは言っても俺様は1週間前に連邦生徒会に顔を出して彼女と直接会って話をしている。
その時にやけに距離が近かったり、この前みたいにまた抱きつかれたりしたのだけど……まぁ今はその話はいい。
だから別にそんな長いこと声を聞いてないってわけでもないだろうし、そもそも俺様の声を聞いた所で何になるとも思えないのだけど……
まぁ、七神代行が声が聞きたいって言うなら減るもんでもないし別にいくらでも聞かせてやるけどさ。
「いや、それは別に構いませんが……なんでまた?」
『えっと……そ、そう!貴方の声は程よく落ち着く声なので、聞くととてもリラックスできるんですよ!』
「えっ……そ、そうなんですか……?」
何故か若干上ずった声でそう言う七神代行に対して、俺様は頭にハテナマークを浮かべながらそう言った。
別に俺様の声なんてどこにでも居る普通の男の声でしかないと思うんだけど、まぁ趣向は人それぞれだしな。
七神代行の趣味を否定するつもりは一切ないけれども。
『すみません、貴方がバカンス中だというのは前もって聞いていたのですけれど……どうしても我慢できず。』
「いや、俺様の声でリラックスできるならいつでも聞かせてあげますけど……」
深々と頭を下げていそうな七神代行を幻視し、俺様は彼女に対してそんな言葉をかけた。
それにしても、まさか七神代行がそんな遠距離恋愛中の彼女みたいなちょっとしたワガママを言ってくるとは思わなかったなぁ……
七神代行と言えば最初は真面目で責任感の塊みたいでちょっと近寄りがたいと思っていたけど、直接会って話をしたり電話で仕事の愚痴を聞いたりして関わる内に彼女も普通の女の子なんだなぁと思うようになった。
いや、まぁ堅物だし口下手なのはそうなんだけどなんと言うか人に対して弱みを見せない感じがあったからな。
人並みに悩んで苦悩して、俺様と同じ悩みを持つもの同士としては話も弾むし彼女と話すのは嫌いではないのだけど……今はちょっと急いでいるからな。
「すみません七神代行。今はちょっとだけ急いでますんで、また後でかけ直してもらっても構いませんか?」
『……すみません。大丈夫です。こちらこそ、大切な休暇の最中にお手を煩わせてしまい申し訳ありません。』
「い、いえ。別にそこまで謝らなくてもいいっすよ?」
通話口の向こう側で明らかに落胆した声でそう言う七神代行に対して、俺様は思わずそう言った。
一旦スマホを耳から離してスマホのディスプレイを確認すると、時刻はそろそろ12時になろうかと言う所。
先生に起床したって連絡をしたからなるべく早めに現地へ向かわなければいけないけど……まぁ、少しくらい七神代行と話す時間くらいはあるだろうし大丈夫か。
七神代行は普段から連邦生徒会長を捜索しながら押し寄せてくる大量の書類を捌いているだけではなく、各学園からのクレーム処理なども行っていて毎日ストレスがやばいであろうことは容易に想像できる……と言うか、この前通話した時に自分で言っていたからな。
あとこんな悲しそうな七神代行の声を聞いたら何もしないわけにはいかないし……ちょっとくらい遅刻してもまぁ事情を説明すれば許してくれるだろう、きっと。
「七神代行。よくよく考えたらちょっとだけなら時間がありますんで、一緒にお話でもしましょうか。」
『……え?よ、よろしいのですか?先程タツミ議長代理は急いでいると仰っていましたが……』
「いえ、構いませんよ。ちょっとくらい遅くなっても多分大丈夫だと思いますし。」
それに……七神代行はいつも頑張っているからな。
そんな彼女のちょっとしたワガママくらいは聞いてあげるのが男の余裕というものだろう。
『いえ、そんな気を使わないで下さい。お忙しいならまた掛け直しますので……』
「大丈夫ですよ。実は俺様さっき起きた所なんでここまで来たらこれ以上遅くなった所で変わらないですし。」
俺様は何でも無いようにサラッとそう言い放つ。
まぁ言うてヘリの修理がそんなに早急に終わるってこともないだろうし、先生の話によれば昼食も小鳥遊先輩たちで用意してくれるとのことらしい。
先生とやり取りをしてイブキが彼女達と一緒に居ることも分かっているから、心配することもないしな。
たしかにこれ以上みんなを待たせるのは申し訳ないけど別に七神代行とそんな長電話をするって訳でもないし……まぁ大丈夫だろう。多分、きっと。
『……すみません、タツミ議長代理。』
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。あまり気にしないでくださいね。」
『ですが私は休暇中に貴方に電話をかけ、あまつさえ急いでいる貴方を引き留めようと……』
「だから気にしないでください。確かに俺様は休暇中ですけど、こうして七神代行とのんびり電話をするのも悪くないですし。なんやかんやで俺様も七神代行に愚痴を聞いてもらって心が軽くなっている部分もあるので、むしろこっちが礼を言いたいくらいで……」
『タツミ議長代理……ふふっ。はい、ありがとうございます。』
俺様がそう声を掛けると、電話口の向こう側の七神代行は嬉しそうな声色でそう言った。
そしてその後しばし七神代行と近況報告や仕事の愚痴、今度行く予定の海について事等について30分くらい話した俺様は彼女との通話を終え、荷物を持って改めてヘリの墜落地点へと向かうのであった。
なおその際、今度彼女と海へ行く予定について話し合った時に七神代行が着ていく水着の話になったのだが……
『タツミ議長代理、今送った水着などはいかがです?』
「ちょ、これ露出度高すぎません!?もうちょっとこうパレオ巻くとかしましょうよ!?」
何故か結構大胆な水着ばかり着た自撮りをかなりの枚数送られ、昨日ワカモのおかげである程度回復した理性をまた削られることになったのはまた別のお話。
……これ、スマホの中身を他の人に絶対見られないようにしないとなぁ。
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「……我慢できずにタツミ議長代理に電話をかけてしまいました。休暇中にも関わらず、迷惑なのを理解していて彼に電話をかけてしまうなんて……端から見れば完全に面倒くさい女ですよね、私。彼女でもないのに……」
「ですがそんな私に対して彼は嫌な顔一つせず対応してくれました。それに私の水着の自撮りを送ったときの彼の反応……ふふっ、彼もやはり男の子なのですね。」
「しかしモモカやアオイにも言われてしまいましたが、彼に夢中になりすぎて仕事をおろそかにしないようにしなければなりませんね。会長の捜索に各学園からのクレーム処理……やることは山積みですから。」
「……そんな中、彼と話すことは現状では唯一と言っていいほどの楽しみになっています。今度彼と海へも行くことですし……ふふっ、今から待ち遠しいですね。」
「……さて、彼と話して満足したことです。何の憂いもなく海へ行くためにも、溜まっている業務を片付けてしまわなければなりませんね。」
「……ふふ、待っていてくださいねタツミ議長代理。」
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「遅いわね、タツミくん。」
“うーん、ちょっと遅れてるみたいだけどタツミは普段から頑張ってるからね。のんびり準備させてあげてもいいんじゃないかな?”
「……まぁそうね。タツミくんは普段からゲヘナの議長代理で忙しくしてるみたいだし、あんまり急かしちゃ悪いわよね……」
「はい☆それに今は警備ロボットもたくさん稼働していますからね、1人で居てもそこまで危険はないと思いますしゆっくりさせてあげましょう☆」
「そーそー。皆でのんびりしようよセリカちゃん。」
「もう!ホシノ先輩はのんびりしすぎよ!ほら、さっさか手を動かして!」
「ひ、ひ〜!ごめんってばセリカちゃーん!」
(“……ふふ、皆なんだかんだで楽しみながら修理をしているみたいだね。アヤネも笑顔だし、良かった。”)
(“それにしても昨日タツミの部屋へイブキを送っていった時に微かに感じたあの匂い……あれは本当に気の所為だったのかなぁ……?”)
(“匂いだけなら昼間にあれだけ皆の水着姿を見てきたんだしタツミも男の子なんだなぁで済んだけど……タツミは首に絆創膏を貼ってたし、しかもシャワーを浴びていたみたいだし……それにタツミの言い分自体に矛盾はなかったけど、途中で目が泳いでいたからね。”)
(“もし仮にそういう事が起こったなら先生として見過ごすわけには行かないけど、となると相手は一体誰なんだって事になってくるけど……”)
(“アビドスのうちの誰か……は私と一緒に居たから考えられないし、そうなるとタツミに行為を持っていてそういう可能性がありそうなのは……ワカモしかいないよね。”)
(“これでもし、ワカモがいつもより露出度の低い服装をしていたり彼女の首にも絆創膏が貼ってあったとしたら……もうクロだとして見ていいだろうね。”)
(“……そんな事はないと思うけど、念の為今度ワカモと会った時に彼女に対して探りを入れておこうかな。”)
(“もし二人がそういう関係になったのなら先生としては祝福すべきだろうけど……彼を想っている子達の事も心配だからね。それにきちんと避妊をしているかも確認しないといけないし……”)
(“まぁまだ二人がそういう関係だって決まったわけじゃないけど……もしそうなら、まずはお説教からだね。”)
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『……ユキノ小隊長、今なんと仰いました?』
「丹花タツミと狐坂ワカモが夜にホテルで密会し、体を重ねるという破廉恥な行為を犯していた。」
『にわかには信じがたい話ですが、本当なのですか?』
「あぁ。耳を疑う気持ちは分かる。私も最初報告を聞いた時は自分の耳がどうにかなったのかと思ったからな、しかし……これは紛れもない事実だ。」
『ははぁ、なるほどなるほど。あの悪名高い災厄の狐もやはり1人の女、本能には逆らえなかったわけですか。』
「……報告は以上だ。作戦内容の変更はあるか?」
『そうですねぇ……丹花タツミを暗殺すると言う命令に変更はありませんが、災厄の狐がその場にいるというのは好都合かもしれません。』
「……?いったい何が好都合だと言うんだ?」
『それはもちろん動機ですよ。こう言ってはなんですが丹花タツミは別に罪人でもなければ悪人でもありません。むしろ所属しているゲヘナからは議長代理を任されるほどには信頼されており、あの犬猿の仲で有名なトリニティでさえ彼を通せば話が通じますからね。』
「……つくづく食えない男だな。」
『えぇ。そしてそんな要人を暗殺するとなると、それ相応の動機が必要になるでしょう。もちろん皆さんは精鋭部隊、みすみす自分たちの素性を知られる事などないとは思いますが万が一と言うこともあります。その万が一のときに動機が必要なのですが、丹花タツミを暗殺する正当な動機を用意するのは当然容易ではなく、私も頭を悩ませていましたが……今ユキノ小隊長が報告してくださった事により動機は簡単に用意できそうです。』
「……わかるように説明してもらっても?」
『要するに丹花タツミと狐坂ワカモが体を重ねたと言うことはは二人は恋人関係、もしくはそれに近しい関係であることが伺えますからね。となると、当然今後その無人島内で丹花タツミと狐坂ワカモが接触する機会はあるでしょう。そこに、FOX小隊の皆さんが【狐坂ワカモを逮捕する】という形で強襲を仕掛けてください。』
「……どういう事だ。ターゲットは丹花タツミではなかったのか?」
『もちろんターゲットは丹花タツミですよ。ですが、彼と狐坂ワカモは体を重ねるほどに親密な仲……と言うことは、狐坂ワカモを襲撃すれば必ず丹花タツミは彼女を守るために立ちはだかるはずです。そうすれば丹花タツミはテロリストに協力した者と言う事になり、手を下す正当な理由になる。そうは思いませんか?』
「それは……確かにそうかもな。」
『それに、ついでに狐坂ワカモの再逮捕まで叶うとなればFOX小隊の評判はうなぎ上り。SRTの再建は固いものとなるでしょう。相手は狐坂ワカモと丹花タツミと言うキヴォトスでもトップレベルの2人ですが……FOX小隊の皆さんなら必ず成し遂げられると私は信じていますよ。ユキノ小隊長?』
「……了解した。FOX小隊、そのように作戦内容を変更した上で任務を続行する。オーバー。」