転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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少し言葉の強い話になります
ご了承ください

お気に入り登録が500を超えました、ありがとうございます!
これからも頑張って執筆しますのでたくさんの応援、感想いただけますと幸いです!


給食部と美食研究会と丹花タツミ

ゲヘナ学園給食部の日常は地獄である。

 

「愛清先輩!ラーメンとカレーあがりました!」

「ありがとうタツミ!ジュリ、これ13番と14番の番号札の子に持って行ってあげて!」

「はい!お待たせしました〜!」

「次は……カツカレーとハンバーグ定食だな!」

「ヤバっ、もう仕込んでた分の野菜が底を突きそうだわ……ジュリ!ごめんけど野菜の下ごしらえお願い!」

「分かりました!任せてください!」

「うぉぉぉぉ!俺様のフライパンさばきはレボリューションだぜぇぇぇ!!!」

 

時は昼12時。丁度ゲヘナの問題児どもの腹が鳴る時間。

嵐のように注文が乱れ飛び、給食部部長である愛清フウカ先輩と部員の牛牧ジュリが忙しなく動き回る。

そんな中、俺様はエプロンと三角巾を付けて厨房に立ってハンバーグを焼き始めていた。

 

「へいカツカレーお待ち!」

 

出来上がったカツカレーを注文した生徒のトレーに乗せて番号札を回収する。

ハンバーグをひっくり返し、片手間に米とみそ汁をよそっていき大皿にサラダを盛り付ける。

 

「タツミくん!きつねうどん入りました!」

「分かったぜ牛牧!すぐ作るから待っててくれよ!」

 

牛牧からオーダーを聞いた俺様は冷凍庫から冷凍うどんを引っ張り出し、包装を破いて鍋にぶち込んだ。

 

「ハンバーグ定食あがりました!これは俺様が持っていきますね!」

「ありがとう!それが終わったら日替わりランチをお願い!」

「了解!今日の日代わりは……唐揚げだな!」

 

日替わりランチの唐揚げをフライヤーに放り込んだ俺様は出来上がった料理を提供し、きつねうどんを仕上げにかかる。

 

「愛清先輩!唐揚げまとめて揚げときますよ!」

「ありがとう!どうせ余ったらまかないにしちゃうからじゃんじゃん揚げちゃっていいわよ!」

「アイアイサー!」

 

愛清先輩の許可を得た俺様は、仕込んであった唐揚げをフライヤーにしこたまブチ込み始める。

どうせ日替わりランチなんぞめちゃくちゃ出るんだ、クソほど揚げたところで問題はない!

 

「へいきつねうどんお待ちィ!」

「私が配膳しますね!次はカレーうどん3つとオムライスをお願いします!」

「わかったわ!タツミはカレーうどんをお願い!」

「了解っす!」

 

フゥーハハハ!厨房は地獄だぜぇー!!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「本当にありがとうタツミ。助かったわ。」

「いえいえ、このくらいなんてことないっすよ。」

 

時刻は昼の14時を過ぎた辺り。

ようやく学生共の注文も捌き終え片付けが一息ついたところで、俺様達3人は食堂の一角に座ってまかないを食っていた。

 

「タツミくんのおかげでいつもの2倍は早く終わりましたね!ありがとうございます!」

「気にすんな牛牧、丁度暇だったしな。」

 

まかないを食べつつ、礼を言ってくる2人に対してそう返しておく。

 

ちなみにメニューは日替わりランチの唐揚げの残りだ。

……うん、うまいな。

 

「この後は買い出しと仕込みっすか?」

「そうね、もう材料があまり無いから買い出しには行くとして……明日のメニューも考えないと駄目だし。」

「ここ最近日替わりランチのメニューが揚げ物ばかりだったからクレームが来ちゃってるんですよね……」

 

愛清先輩はくたびれた顔でそう言い、その隣の牛牧はアハハ……と苦笑いを浮かべていた。

いやもうホントにお疲れ様ですとしか言えない。

あとで2人には胃薬をプレゼントしておこう。

 

ゲヘナ学園はキヴォトス3大マンモス校の一つと呼ばれているほどの規模を誇るので、当然所属している生徒の数も多いわけだ。

そのとんでもない数の生徒が昼飯時には腹をすかせてここに殺到してくるんだよなぁ。

ちなみに、給食部の人員は愛清先輩と牛牧の2名のみ。

その2名で毎日毎日ゲヘナの問題児どもの昼メシを作って対応していると言うのだから、頭が下がる。

この前なんて愛清先輩が2時間で目玉焼きを4000枚焼かないと行けないって死んだ目で言ってたからな。

激務ってレベルじゃねーぞ。

 

と言うか誰だよ日替わりランチのメニューに対して文句言ってるやつは。別に揚げ物でもいいだろ。

愛清先輩と牛牧は毎日必死に頑張ってんだぞ、礼を言うべき相手であって文句を言うなんてもっての外だろ。

ちなみに、給食部の給食の味だが不味いと評判らしい。

そりゃあれだけ大人数の昼メシを急ピッチで作ってるんだから、クオリティが落ちんのは当たり前だっつの。

愛清先輩がちゃんと料理したらめっちゃ美味いんだからな!食わせてもらった事あるから分かるけど!

もう文句のあるやつにはコンビニのおにぎりでも食わせとけばいいんじゃないかな。

 

……まぁそんなこんななので、俺様は非番の日の昼や万魔殿の仕事に余裕がある時は手伝っていると言う訳だ。

前世では飲食店でキッチンやってたこともあるし、今世でもイブキに飯とか作ってるからな。

あとたまにだがインスタント食品しか基本食わない空崎委員長や、万魔殿の皆にも作ったりしている。

 

んで、今日は学食でうどんでもササッと食って万魔殿に戻り書類仕事(いつもの風紀委員から回収した書類)を済ませようとしてたんだが、いつもより厨房内がバタバタしてたもんだから見かねて手伝いを申し出た。

後であのアホ議長から怒られるかもしれんが、給食部の人員増やせって俺様散々言ってるのに話半分でしか聞いてないあの人も悪いから知らねぇ。

何ならついでに予算も増やせって言ってやろうか。

と言うかゲヘナ、空崎委員長と言い給食部と言い労しいやつ多すぎないか?俺様心配になってきたんだが。

 

「タツミ、手伝ってもらったのは本当に助かったけどそっちは大丈夫なの?今日は非番じゃないんでしょ?」

「ん?あぁ、大丈夫っすよ。万魔殿に帰っても書類仕事しか特にやることないんで問題ないっす!」

 

愛清先輩が心配そうな表情でそう言ってくるが、親指を立てながら俺様は笑ってそう言った。

 

「すみませんタツミくん……私がちゃんと料理ができたらこんな事には……」

 

そんな俺様達の話を聞き、牛牧が申し訳なさそうな表情で頭を下げてくる。

 

「何言ってんだよ牛牧。俺様は大したことはしてねぇよ、頭を上げてくれ。な?」

「そうよジュリ。ジュリは仕込みや配膳とか片付けとかやってくれてるじゃない。給食部って言っても、料理するだけが給食部の仕事じゃない。仕込みとか含めて給食部の仕事なんだから。」

「ふ、フウカ先輩……!タツミくん……!」

 

目尻に涙をため、半泣きになりながら牛牧は愛清先輩に頭を撫でられていた。うーん、微笑ましい。

牛牧ジュリ。俺様と同じゲヘナ学園の1年生だ。

見ての通り給食部の部員で、主な仕事は仕込みや配膳や片付けといった愛清先輩のサポートとなっている。

給食部でありながら調理の担当を外れている彼女だが、それには深いわけがある。

 

それは作る料理が全て【到底食えないレベルのゲテモノ料理】になるというモノである。

もはやメシマズなんてレベルではない。牛牧の料理は理解の範疇をはるかに超えている。

 

レシピ通りに作ったのにダークマターが出来上がるなんてのは序の口で、動いて毒を吐くパンケーキや、アツアツの油を噴射してくるフライドポテトなんて理解不能な代物もあった。

言うて料理だし食えるだろと思って食ったこともあるんだが、良くて悶絶、下手すりゃ食中毒になりかねないと言う災害レベルの料理……と言うか最早モンスターだ。

ちなみに俺様は食中毒になって数日寝込んでイブキにギャン泣きされてしまった、一生の不覚だ……!

本人曰く「料理が意思を持っちゃったみたいで……」と言っているそうで、彼女が作った料理が動き出す事はそう珍しい話でもないらしい。

 

と言うわけで、牛牧は現状仕込みや配膳等の調理以外の部分を主に担当しているというわけだな。

愛清先輩の言う通り給食部ってのは調理するだけじゃ回らないので、牛牧も立派な給食部の一員として役目を果たしていると言えるだろう。

本人はゲヘナでは片手で数えられるくらいのいい子なのでそれを負い目に感じているようだ。

悪意がないのにこうなっちまうってのはなんとも労しい話である。

 

「まぁなんだ、俺様で良かったらまた料理の練習に付き合ってやっからよ。だから元気出せ!」

「タツミくん……ありがとうございます!」

 

胸の前で両手を合わせながら、牛牧は涙をぬぐうと笑顔になってそう言った。

見ての通り牛牧はすごくいい子なので、愛清先輩はどうにか普通に料理ができるようになって欲しいと練習に付き合っているようだがあまり成果は振るわないらしい。

俺様も給食部を手伝った際に牛牧の料理の練習に付き合う事もあるが、結果はまぁ……察してくれ。

何度動き出した料理と言う名のモンスターをこの手で葬ってきたか分かんねぇ……

なんとか普通に料理できるようになれば良いんだが。

 

「……ん、ご馳走様でした。愛清先輩、食器洗うんで厨房借りますね。」

「あ、それなら私もそろそろ食べ終わるし一緒に洗うからそこに置いておいてもらったらいいわよ。」

「いえいえ、まかないご馳走してもらったんだしこんくらいやりますよ。」

「そう?ならお言葉に甘えようかしら。」

 

まかないを食い終わった俺様は手を合わせて席を立つ。

 

「……あら、本日はもう店じまいでしょうか?」

 

そして食器を洗うためにトレーに手をかけた時だった。

そんな声と共に食堂のドアが開くと、そこから数人組が入ってくるのがふと目に入った。

おそらく少し遅いがまた昼飯を食ってない生徒だろう。

ならもうひと頑張りするかと思い、その集団の先頭を歩く生徒を見やる。

 

「……!」

 

その女を認識した瞬間、俺様の体は動いていた。

すぐに俺様が座っていた席の傍に置いていたブークリエを引っ掴み、チャージングハンドルを引く。

そしてその隣に置いていたいつも使っている折り畳みシールドを手に取ると、取っ手のボタンを押して盾を展開し愛清先輩と牛牧を庇うように前へ出る。

 

「何しに来やがった……美食研究会!」

 

そして、目の前の連中に向かって声を張り上げた。

そう、そこに居たのはゲヘナでは知らない奴が居ないほど有名なテロリスト集団。美食研究会だったのだ。

俺様は盾を構えると、銃口を向けて威嚇する。

 

ゲヘナ学園美食研究会。

リーダーの銀髪の女、黒舘ハルナをリーダーとして活動するゲヘナでも屈指のイカれた連中だ。

時には不味いからという理由だけで飲食店を爆破したり、時には高級食材を輸送トラックから奪取するとか言う鬼畜じみた所業を行う部活動である。

……いやおかしいだろ、なんでこんなイカれた集団が部活動として認可されてんだよ。

ともかく、今目の前に居るのはそんな札付きのテロリスト集団であるわけだ。

 

「……あら、タツミさんではありませんか。」

 

先頭を歩いていた黒舘ハルナは俺様へ視線をやると、手をフリフリと振りながら近寄ってくる。

 

「動くな!動けば撃つぞ!」

「あら、何故そんなに警戒されているのですか?私達まだ何もしていませんけれども。」

「ハッ、よく言うぜ!テメェらが来て何か起こんなかった試しがねぇんだよ!」

 

そうでなくてもお前らはゲヘナはおろかキヴォトス中で指名手配されてるテロリストだぞ。

警戒するのは当たり前だろ……!

ちなみにこいつらは後ろでため息を吐いている愛清先輩を良く誘拐していく事でも有名であり、愛清先輩を誘拐されて1人で何とかしようとした牛牧が料理して食堂が大惨事に……なんてことも一度や二度ではない。

要は給食部にとってはこれ以上ないほどのクソ迷惑な集団なのである。

 

「この前は食堂の壁を爆破して給食部の車で愛清先輩を攫った挙句風紀委員会にシバかれて給食部の車を廃車にするし、その前は食堂のドアを破壊して愛清先輩を誘拐するし……何度も破壊される食堂が可哀想だろ!」

「そこは何度も誘拐されるフウカが可哀想って言うところじゃないの……?」

「うるせぇ赤司!その口を閉じろ!」

「えぇ!?私なんか変なこと言った!?」

 

赤髪のツインテールを揺らしつつ抗議する女、赤司ジュンコへ銃口を向けて俺様は叫ぶ。

愛清先輩が可哀想ってそんなの言わなくても分かるだろーが!

と言うかお前らが原因だろ……!

 

「まぁまぁ落ち着いてくださいタツミくん、今日はフウカさんを攫いに来たわけではありませんよ☆」

「信用できるか鰐渕コラボケェ!」

「た、タツミくん!落ち着いてください!」

「もう口が悪すぎるよぉタツミくん!笑って笑って!」

「誰のせいじゃ獅子堂オラァ!」

「ちょ、ちょっとタツミ!落ち着きなさいって!」

 

飄々とした様子でこちらをおちょくってくる鰐渕アカリと獅子堂イズミに対して思わずブークリエの引き金を引こうとするが、愛清先輩が肩を掴んで止めてきた。

その隣で牛牧も心配そうな表情でこちらを見つめている。

 

「止めないでください愛清先輩!牛牧!俺様はこいつらだけは許せないんですッ!」

 

そう、こいつらだけは俺様は許すことができない。

もちろん愛清先輩を攫っていって給食部を滅茶苦茶にするのは許せねぇ、日々頑張っている愛清先輩や牛牧の頑張りを水の泡にしちまってるわけだからな。

しかし、俺様が一番許せないのは……

 

「いくら気に入らないからって飲食店を爆破していいわけがないじゃないですか!」

 

そう、俺様がこいつらの事を一番許せないのは【気に入らない飲食店を爆破する】ってことだ。

前に一度、俺様が食事してた飲食店を爆破されてたまたま居合わせた空崎委員長と共にこいつらを縛り上げて牢屋にぶち込んだことがある。

その時の黒舘の言い分を聞く限りでは、飲食店側が明らかに客をナメている場合もあるってのは確かだ。

実際あの店は客を舐めてたし、接客も味も悪かった。

俺様も次は行かねぇと思ってた店ではあった。

だが、それが爆破していい理由にはならねぇんだよ。

 

それにこいつらは普通にマズいから、サービスが悪いから、接客が悪いから、なんか気に食わないから。

そんなしょーもない理由で何のためらいもなく爆破を決行しやがる。

 

「百歩譲って、まだ店員をボコるくらいなら分からんでもないですよ?何せここはゲヘナです、そんなのは日常茶飯事ですから。」

「いや、それはそれでどうなのかしら……?」

「けどいくらサービスが悪かろうが、何の罪もない【店の食材】まで爆破していい訳ないでしょう……!」

 

愛清先輩が見つめる中、俺様はリーダーの黒舘ハルナを睨みつけながらそう吐き捨てる。

 

「そ、それは……」

「なぁ黒舘。」

「……なんでしょう、タツミさん。」

「お前、生ゴミを食ったことはあるか?」

 

俺様がそう言った瞬間、場の空気が凍りつく。

いつも飄々としている鰐渕でさえ目を見開いて固まっており、後ろの愛清先輩と牛牧も硬直している。

 

「……いえ、ありませんわね。」

「まぁ普通はそうだよな。でも案外生ゴミもイケるもんだぞ?ゴミ箱を漁ってまだ食えそうなところを発掘してきて水でキレイにして、鼻つまんで食えば意外と食えるもんだ。腹も膨れるしな。黒舘も1回食ってみるか?」

「……遠慮しておきますわ。」

「そうか。まぁそりゃそうだよな。お前らは気に入らないからって食材を平気な顔して爆破できるくらいには食に困ってねぇんだからな?えぇ!?」

「……何が言いたいのですか?」

 

流石に黒舘も俺様の物言いに少しイライラしているようだ。眉をひそめ、言葉を投げかけてくる。

 

「この際だからハッキリ言うぞ、黒舘ハルナ。」

 

一呼吸おき、俺様は口を開く。

 

「食材を粗末に扱うような真似をしておいて、よく美食研究会なんて堂々と名乗れたもんだな?」

 

ありったけの憎悪を視線に込め、俺様は黒舘を睨む。

そう、俺様のこいつらが気に食わないことに対する一番の理由がコレだ。

気に入らない飲食店を爆破するってことは、そこに保管されている食材ごと爆破しているという事と同義だ。

俺様はそれが何よりも気に食わねぇ。

 

「世の中には毎日の食うものにも困る連中がたくさんいるんだぞ……!生ゴミを食わなきゃ生きていけなかった奴だって……もしかしたらいるかもしれないだろ!」

 

《おなかすいた……でもたべるものがない……》

《れいぞうこあけたら……またなぐられるかな……》

《ごみばこなら……おとうさんとおかあさんのたべおわったものがはいってるかも……》

《うぅ……くさい……でもたべなきゃ……おなかすいてるし……》

《……んぐぅ!?おぇぇぇぇ!!!》

《がまん……がまんしてたべないと……!》

《このままじゃしんじゃう……っ……》

《やだっ……!しにたくないっ……!》

 

忌々しい記憶が蘇る。

俺様はぶんぶんと首を振ってそれを払い飛ばす。

大丈夫だ……今世では大丈夫だ……!

だから思い出すなっ……!

 

「なぁ美食研究会。教えてくれよ。お前らが今まで爆破してきた食材があればどれくらいの料理が作れたんだ?その料理でどれくらいの食うものに困ってる奴が救われたんだ?どれくらい餓死せず済んだやつが居るんだ?」

 

え?美食研究会が爆破した食材が食うものに困ってる奴らに配分されたわけじゃないだろうって?

そんな事を思うならお前は食うものに困ってる連中に支援をしてきたのかだって?

……その食材をお前が食えたわけじゃないだろうって?

 

うるせぇな、んなこと知らねぇよ。

分かってんだよそんな事は。

そうだ、だからこれは俺様のワガママなんだ。

俺様が気に入らねぇから気に入らねぇんだ。

理由なんてそれで充分だろうが。

 

「なぁ……教えてくださいよ。黒舘先輩。」

 

そう、俺様がちょっとだけ食うものに困ってた時代があったから、目の前の自分達の気分でゴミ箱を漁らなくても安心して食える物を爆破する連中が気に食わない。

ただ、それだけの話だ。

 

「……アカリさん、イズミさん、ジュンコさん。今回は退くとしましょう。」

「は〜い☆」

「うーん、まぁしょうがないか!」

「えぇ!?ここまで来て帰っちゃうの!?」

 

黒舘はしばらく俺様をじっと見つめると、息を吐いたあとに美食研究会のメンバーに声を掛けると踵を返して歩き始めた。

 

「丹花タツミさん。」

「なんだ。」

「貴方がどんな人生を送ってきたのか私は知りません。ですが、私達を嫌う理由は理解できました。」

「そうかい、そりゃどうも。」

 

黒舘先輩は背中を見せたまま、話を続ける。

 

「ですが私達美食研究会はやり方を変えるつもりは毛頭ありませんので……そこの所はご了承くださいね?」

「分かってるよ、こんなクソガキの戯言を聞かされたくらいでアンタ達が大人しくなるわけねぇだろ。」

「ふふ、よくお分かりのようですわね。」

 

黒舘先輩はくるりとこちらを向くと、不敵に微笑む。

 

「あなたに信念があるように、私達にもまた信念があります。そしてその信念は互いに譲れないものです。」

「……そうだな。アンタの言う通りだよ、黒舘先輩。」

 

お互いに譲れないものがある。

それが黒舘先輩は美食研究会と言う活動で、俺様は食材を粗末に扱うやつを許せないと言う思いってだけ。

ただそれだけの話だ。

 

「……だから、俺様はアンタ達が大嫌いだ。」

 

構えたブークリエを降ろしつつ、俺様は絞り出すようにそう呟いた。あぁ……大人だな黒舘先輩は。

それに比べて俺様と来たら……あまりにもクソガキすぎて自分が嫌になる。

 

「タツミ……」

「タツミくん……」

 

心配そうな顔で俺様に声をかけてくれる愛清先輩と牛牧。……この2人には迷惑をかけてしまったな。

俺様は2人に対して頭を深く下げて謝罪する。

 

「申し訳ありません。愛清先輩。牛牧。」

「頭を上げて頂戴。別にタツミは謝らないといけないようなことはしてないわよ。」

「そうですよタツミくん!フウカ先輩の言う通りです!」

「……ありがとうございます。2人とも。」

 

何故か目尻に溜まった涙を万魔殿のジャケットの袖で拭いつつ、俺様は笑いながらそういった。

 

「ふふ、素晴らしい友情ですね。」

「……なんだ、まだ居たのかお前ら。とっとと帰れよ。」

「えぇ!?アンタ立ち直るの早くない!?」

 

ジト目で美食研究会共に目をやると、ビックリしたような赤司の声が食堂に響く。

うるせぇな……いつまでもメソメソしてたら愛清先輩と牛牧が心配するだろうが。

 

「次にお会いするときは敵同士ですね、タツミさん。」

「次【も】だろ。見かけたらボコボコにしてやるから覚悟しとけよ、テロリストども。」

 

俺様は歯をむき出しにし、攻撃的な笑みを浮かべた。

黒舘はそんな俺様を見て不敵に笑う。

 

「……と言うかハルナ。そもそもアンタ達何の目的で食堂に来たのよ?」

 

そんなやりとりをしていると、怪訝そうな表情を浮かべた愛清先輩が黒舘に向かってそう言った。

 

「そう言えばタツミさんが熱く語ってくるおかげで本来の目的を忘れていましたわね。」

「う、うるせぇな!元はと言えばお前らの日頃の行いのせいだろ!」

「うーん、否定できませんね☆」

 

何の詫びれもない表情でそうのたまう鰐渕アカリ。

いや少しは否定しろよそこは……

もう美食研究会じゃなくて飲食店爆破愛好会にでも名前を変えたらどうなんだ?

 

……まぁ、少なくともこいつらは今は争うつもりはないらしいな。もし変な素振りしたらすぐシバくがな。

そう判断した俺様はブークリエのセーフティをかけるとシールドを折り畳む。

 

「えっとね、学園内を歩いてたら今日の給食を食べた人がみんな唐揚げが美味しかったって言ってたんだよ!」

「あの不味い不味いと言われているゲヘナ学園の給食が美味しいだなんて、ちょっと信じられませんよね☆」

「だからハルナが私達を誘ってここに来たってわけ。」

「ふふふ……そういう事ですわね。皆さんが美味しいと言う唐揚げ、ぜひ味合わなくてはと思いまして。」

 

……なるほど。

そういえばコイツら飲食店を爆破してる印象が強すぎて忘れてたけど本来は美味いもんを食うことを活動理念に掲げてるんだったな。

確かに今日の日替わりランチの唐揚げはまかないで食わせてもらったが美味かったし、評判になるのも納得の味ではあったからな。

普段不味い不味い言ってるのはケンカ売ってるとしか思えないが、美食研究会が食いつくのも無理はないか。

 

「……なるほどね。そういう事なら用意するわよ。」

「いいんすか?愛清先輩。」

「まぁまだ唐揚げは余ってるし……それに、食べに来てくれたなら料理を出すのが料理人ってものでしょ?」

 

そう言うと、愛清先輩は食べ終わったまかないのトレーを持って厨房へ入るとエプロンを付け始めた。

俺様と牛牧は顔を見合わせて頷くと、2人揃ってエプロンを付けて厨房へと入っていく。

 

「フウカ先輩!私もお手伝いします!」

「俺様も手伝いますよ、愛清先輩。」

「ありがとうジュリ、タツミ。じゃあちゃっちゃと作っちゃいましょうか!ハルナ、注文は?」

「日替わりランチ4つでお願い致しますわ。」

「わかったわ。」

「愛清先輩、俺様唐揚げ揚げときますね。」

「ありがとうタツミ、任せていいかしら?」

「あら、タツミさんも作ってくれるのですか?」

 

いつの間にか厨房の注文受け取り口まで来ていた黒舘ハルナはニヤニヤとした表情でそう言った。

 

「うっせぇな!愛清先輩に感謝しとけよ!」

「男のツンデレってどこに需要があるのよ……」

「はぁ!?デレてねぇよアホか!」

「恥ずかしがっちゃっても〜!」

「……愛清先輩。今から鉛弾定食に変更していいすか?」

「気持ちは分かるけどやめときなさい。」

「……うっす。」

 

俺様は渋々唐揚げをフライヤーへ放り込む。

 

「いいか!少しでも変な素振りを見せてみろ、お前ら全員ぶっ飛ばすからな!」

 

このあとめちゃくちゃ日替わりランチ提供した。

なお、唐揚げを食べた美食研究会は満足したようで珍しくこの日は何もせずに大人しく帰って行った。

……やっぱり美食研究会とはわかり合えることはないし、わかり合うつもりもない。

そもそも連中は札付きのテロリストだ。今度見かけたら絶対ボコボコにして牢屋にぶち込んでやる。

……まぁそれはそれとして、愛清先輩と牛牧と共に作った料理を美味いと言って食べてくれるのは悪い気はしないなと思う単純な俺様なのだった。

 

なお後日、何故か心配したような表情をした愛清先輩と牛牧からちょくちょく万魔殿に料理の差し入れが届くようになったのはまた別のお話。

 

「愛清先輩。牛牧。めっちゃありがたいんすけど、俺様今は別に生ゴミ食ってませんからね……?」

「そんなの分かってるわよ!」

「イブキちゃんと一緒に食べて下さいね〜。」

「わー!ありがとうフウカ先輩!ジュリ先輩!」

 

……まぁイブキも喜んでるし良しとしておくとするか!

お礼にまた今度厨房を手伝うとしよう。




こんな話書いてますが、作者は別に美食研究会は嫌いでありません
むしろお世話になってるんだよなぁ…(ゲーム内で)
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