あれから七神代行との通話を終えてホテルの部屋から出て、先生から送られてきた座標を頼りに皆のいる場所を目指して歩いていた俺様。……だったのだが。
「……うーん、困ったな。完全に迷ったぞこりゃ。」
鬱蒼と茂ったジャングルの木々をキョロキョロと見回しながら、俺様はため息とともにそう言葉を吐き出した。
うーん……先程からスマホの座標に向かって歩いているはずなのだが、歩けども歩けども目的地が見えてこない。
……うん、これは完全に迷ったといって良いだろうな。
「……はは、なーんでこうなるかねぇ。」
そもそも丁寧に座標まで送ってくれてるんだから迷うなよって話なんだけど、俺様も大概方向音痴だよなぁ……
まぁ、嘆いていても状況がどうにかなるわけではない。
一瞬だけ先生に連絡を取って迎えに来てもらうことも考えたけど、今先生たちはヘリの修理をしているとのことなので手を煩わせるのもあまり良くない気がする。
やはりここは一つ、自分の足を使ってみんなのいる場所までたどり着くしか無いだろう。
「……それにしても。すごかったな、色々と。」
スマホのディスプレイに表示されたマッピングアプリを眺めつつ、俺様はボンヤリとそう呟いた。
知っての通り、俺様は先程まで突然通話を掛けてきた七神代行と通話をしていたわけなのだが……
その時に今度彼女と約束していた2人で海に行くって話になったんだけど、その時に着ていく水着を選んでほしいって理由で七神代行が結構な枚数水着を着て撮ったであろう自撮り写真を送ってきたんだよな。
言わずともわかると思うけど、七神代行はそれはもう抜群にスタイルが良い。
流石に先生や羽川先輩には劣るだろうけど、それでもワカモや十六夜先輩に負けてないほどにはスタイルの主張が激しい女性なのは間違いないだろう。
そんな女性が様々な水着を着て、その自撮り写真を男である俺様に次々と送ってくるんだ。
こんなの、男の理性を容赦なくガリガリと削っていく行為に他ならないだろう。
まぁ七神代行の声色的に海をとても楽しみにしている様子だったから言い出せなかったけど、昨日ワカモと発散していなければどうなっていたか分からないからな……
七神代行は最初の数枚は露出も少なめかつ手で胸や太ももを恥ずかしそうに隠していたのだが、あとに送られてきた写真になればなるほど開き直ったのか自分のスタイルを堂々と見せつけるような露出度の高い水着になっていたかつ堂々としたポーズを取っていたし。
まぁその、何度も言うが俺様だって男だ。
こんな物を送られては目に毒なのは間違いないわけで……
しかも後半になればなるほど水着の選び方も珍妙になっていたし……何故競泳水着とタイツを一緒に着る必要があるのだろうか?
と言うか一番最後のやつとかほぼヒモだろあれ!
あんな水着を嫁入り前の女の子が着ちゃいけません!
結局俺様は今先生が着ているのと同じタイプの、胸元にフリルと下にパレオのついた布面積が多いタイプの水着をチョイスしたから当日は平気なはずだ……多分。
まぁそんなこんなで大量の水着姿を送りつけられた俺様のスマホのフォルダには七神代行の多種多様な水着姿の自撮り写真が保存されているわけだが……
……うん、これは何が何でも隠し通さないといけないな。
と言うか俺様、昨日ワカモとあんな行為をしておいて今日は七神代行にこんなにたくさんの水着姿を送りつけられてドギマギしているなんて……ただでさえワカモにしっかりした返事を返せていないのに舌の根も乾かない内に他の女性に目移りするのは本当に最低としか言えない。
「……俺様はどうすりゃいいんだろうな。」
正直、ワカモからの告白にはびっくりしたけど彼女からの気持ち自体は本当にとても嬉しいものだ。
そりゃそうだろう。いくらテロリストとは言え、男ならあんな美女から想われて嬉しくないはずがない。
……いや、と言うか俺様が接する中でお互いの人柄や性格を知った上でそれでも気持ちをぶつけてくれたのが嬉しいと言うか、ワカモからそういう気持ちを抱いてくれたって事が何よりも嬉しいんだろうな、きっと。
知っての通り、俺様は前世では愛されなかった。
だから人から向けられる好意に対して鈍感だって自覚は自分でもあるし……それと同時に、人からの好意を知らない事による好意自体に対する恐怖心みたいなものもきっとあって……無意識にそういうことを避けているというか意識せずに接している部分があるのは間違いない。
そういう点では、俺様は未だに過去を引きずったままなんだろう……やっぱり、少し仕事が落ち着いたらカウンセリングか何かを受けたほうがいいのかもな。
……だから、そういう意味でもそんな壁をぶっ壊して俺様に思いの丈をぶつけてくれたワカモのあの気持ちはとても嬉しいものだった。
ただ、言った通り彼女は七囚人の1人。災厄の狐なんて異名を持つ札付きのテロリストで、大量破壊犯だ。
だから彼女が矯正局で罪をキッチリと精算するまで俺様はなんと言われようが彼女と付き合うつもりはない、例え俺様がワカモに惚れたとしてもそれは変わらない。
……まぁ話はそれたけど、ワカモからの気持ち自体は本当に嬉しかったからな。
それと同時にワカモとはライバルでもあって、お互いに超えるべき相手と認識してもいる。
きっとこれからもあいつとは何度も戦うことになるだろうけど……俺様は絶対に負けねぇからな!
……でだ。
何度も言うけど、ワカモからは告白もされたしお互いの体を重ねるなんて本来であれば付き合ってからすべき行為を俺様が耐えきれなかったせいでやっちまっている。
それなのに、七神代行と言う別の女性と2人で海へ遊びに行くというのは……それはワカモに対してあまりにも不誠実なんじゃないだろうか?
いやでも、そもそも七神代行とはワカモとこういう関係になる前から約束していたことだし彼女も楽しみにしているから今更やっぱナシでってわけにも行かない。
そもそも俺様とワカモはまだ付き合ってるわけじゃないし、こんな事を考えるのは俺様のただの自惚れと言う事も考えられなくはないけど……
……ダメだ、頭が混乱してきた。
くそ、こんなことなら前世でもっと女の子と積極的に関わっておけば良かったぜ……
「しかしワカモといい七神代行といい……俺様みたいな男のどこがいいんだろうな?」
自分で言うのもなんだけど、俺様の取り柄と言えばこの世で一番イブキのことを愛している位だと思うが。
そんな事を思いつつ、俺様はマッピングアプリとにらめっこをしつつひたすら足を動かしていたが……
「……」
不意に、俺様はその場でピタリと足を止めた。
……なんか、さっきからやけに視線を感じる気がする。
そう思った俺様は顔を上げ、周囲をぐるっと見渡してみるがそこには鬱蒼と茂ったジャングルが広がっているのみで人の姿を確認することが出来なかった。
「……気のせいか?」
俺様は首を傾げつつ、再度よく目を凝らして周囲をよく観察してみるが……やはりそこにはこの大自然にによって育まれた様々な草木で構成されたジャングルが広がっているのみで、人の気配等はまったく確認出来ない。
強いて言うなら警備ロボットは何台か稼働しているのが見えるけどあいつらは奥空がシステムに俺様の事を登録してくれているおかげで俺様には何の反応も示していないので、奴らから狙われているって可能性もないだろう。
となると、やっぱり俺様の気の所為ってことになるんだろうけど……
「……いや、どう考えても気の所為じゃねぇなこれ。」
その尋常ではない冷たい空気とプレッシャー、そして殺気に俺様は冷や汗を流して苦笑しつつそう呟いた。
形容しがたいけど、なんというかこう……まるで首筋によく研がれたナイフを突きつけられている様なこの感覚。
これは誰かに監視されていると見て間違いないだろう。
しかし、そうなると誰に監視されてるんだ……?
先生やアビドスのみんなは論外として、この刺すような視線と気配はワカモとも違う気がする。
あと考えられるのはワカモと行動を共にしているヘルメット団の連中だけど、彼女達がこんな特殊部隊みたいな練度の監視ができるとは到底思えない。
……となると、その誰でもない第三者って考えるのが今のところ妥当だろうか?
そうでなくても、この島に来てからちょいちょい俺様の事を監視しているような視線は感じていた。
その時はここまで殺気立っていると言うか、様子を見ている感じがしたから襲ってきたら返り討ちにすりゃいいと思ってそんなに気にはしていなかったのだけど……
この殺気を向けられるとなると話は変わってくる。
少なくとも俺様を監視しているってことはこっちに友好的な存在じゃないことは確かだろうし、そうなると先生やアビドスの皆、何よりもイブキの身が危険にさらされる可能性だって充分に考えられるだろう。
それだけはなんとしても阻止しなければならない。
しかもこの感じ……相手は相当な手練と見ていい。
気配の殺し方に息の潜め方……俺様の中で一番近い知り合いで表現するとなると、まるでRABBIT小隊の霞沢みたいな感じがする。相手は狙撃手と見て間違いないだろう。
昨日までは感じる視線もほんの僅かなものだったから意識しないと気づかなかったけど、今日はどういう訳か結構な強さの視線や殺気などを感じるからな。
なんと言うか、気持ちが昂っているせいで昨日までは上手く隠せていた気配を殺しきれていない様子だ。
昨日と今日の間で何があったのかは知らないけどそのおかげで存在に気づけたのは不幸中の幸いと言うべきか。
(しかし……どうする?)
ぶっちゃけ監視されているならばこのまま俺様が人気のない場所まで誘導して単独でケリを付けたいところだけど、生憎敵の人数も正体もわからない状況だ。
しかも今の俺様は海パンにTシャツと上着のみ……いくらブークリエと盾があるとは言え、もし敵が複数人居るならば厳しい戦いになると言わざるを得ない。
ならば、考えられる手段は2つ。
一つ目は、とにかく先生たちと早く合流して事情を説明して一緒に戦ってもらうこと。
そして2つ目は、この場にいる警備ロボットの助けを借りて俺様がここで脅威になる存在を片付けることだ。
出来たら2つ目の手段を取りたいところではあるけど、警備ロボットの力は未知数。
頼りにしていい存在なのかどうかは定かでは無い以上は不安定な作戦と言わざるを得ない。
いずれにせよ、相手の正体も目的も不明なこの状況では俺様1人で対応に当たるのは適切とは言えない。
何かしらの助力があってしかるべきだろうし、そうじゃないと後で先生に大目玉を食らっちまうだろう。
となると……1つ目の作戦を目指すべきだな。
本来なら俺様1人でケリを付けて先生やイブキ達を危険に巻き込みたくないところだけど……こうなった以上はもうそうも言ってられない。
そもそもここで俺様が負けちまったらそれこそイブキ達が余計危険になる可能性だって充分ある。
ヘリの墜落場所まで行けば小鳥遊先輩もいるはずだし彼女の力を借りられるなら百人力だろうしな。
(……よし。)
方針は決まった、なら俺様のやることは一つ。
このまま監視に気づいていないふりをしつつ、何食わぬ顔でヘリの墜落地点まで行って先生たちと合流して事情を話して逆に強襲を仕掛けることだ。
さて、そうと決まればこのままいつまでもここで不自然に立ち止まっているのは良くないだろう。
「えーっと、確かこっちだったよな……」
俺様は監視している人物に聞こえるようにこれ見よがしにそう言うと、スマホのマップアプリに視線を落として再びジャングルの中を歩き始める。
無論、先生たちと合流するまでに襲ってくる可能性も考慮していつでも迎撃できるよう体制を整えながら。
そうしてひたすらその視線を引き連れながらジャングルを進んでいると、やがて少しだけ開けた場所へと出た。
(……まずい、近くに遮蔽物が何も無いぞ。)
太陽が差し込んで他の場所よりも明るくなっているちょっとした広場を見つつ、俺様は内心でそう吐き捨てる。
今まで引き金を引いてきていないことから相手に先制攻撃する意思は薄いことが感じられるけど、それでも監視されている以上気を緩めるべきではないからな。
そう思いつつ、俺様は広場を迂回するために進行方向を変更しようとした……その時だった。
俺様の視界の端に、何やら奇妙なものが映り込む。
「……ん?」
不意に俺様がそちらへ目を向けると、そこには島を守るために巡回をしている警備ロボットのうちの1体が無惨にもバラバラな状態になっている姿が目に入った。
「……え?」
俺様は思わずそう声を漏らすと、バラバラになった警備ロボットに近寄ってその場にしゃがみ込んだ。
そのままの流れでバラバラになった部品を拾い上げて確認してみると、警備ロボットは中身の配線が剥き出しになるほど激しく損傷しており外装も剥がれている。
それでいて備え付けられている銃座からは一発も弾丸が放たれていないところを見るに、遠距離から一発でズドンと行かれた可能性が極めて高いと見ていいだろう。
この激しい破損の具合からして恐らくスナイパーライフル……それも大口径弾だろうな。
少なくともこの破損具合だと槌永の所持している超大型ライフルと同等くらいのサイズはありそうな気がする。
これほど大きな弾の銃であれば銃声も相応にデカいはずだけど、俺様が記憶している限りでは銃声が朝から鳴ったということはなかったはずだ。
……となると、銃に消音器を付けているとみていいな。
俺様が把握している限りではこの島にいるみんな、それにヘルメット団やワカモでさえこんな一発で警備ロボットを木っ端微塵に出来るような大口径弾を使用する銃火器は所持していないはず……
やはり、俺様たちやワカモたちでもない何者かがこの島にいるのは確定事項と見ていいだろうな。
ちぃ、こっちはせっかくの休みを満喫している時になんて面倒なことを……!
ーガサガサッ!ー
俺様がそう思い、内心で舌打ちをした時だった。
突然、俺様の近くの茂みが揺れたかと思うと激しい音を立てる。
「……っ!?」
俺様はそれを視認するとその場で前転して茂みから素早く距離を取り、ブークリエにマガジンを差し込んでチャージングハンドルを引く。
「誰だ!?」
そして、俺様はそう叫びながら手にしたブークリエを茂みに向かって突き付けた。
もしもこの物音を立てた犯人の正体がここに転がっている警備ロボットを破壊した人物だとすると、逃がすわけには行かない。
とっ捕まえて何故こんな事をしたのかをキッチリと説明して貰う必要があるからな。
そう思いつつ、俺様はブークリエを力強く握って茂みを注視していると……やがてその中からガサガサと音を立てながら1人の人物が姿を表す。
その人物の姿を見て……俺様は目を見開いた。
「まぁ、人に名を聞きもせず問答無用で銃を突きつけるとはなんと野蛮な……あら?」
「なっ……お前は……!?」
そう、そいつは特徴的な和服を着込み銃剣付きの歩兵銃を持った女……狐坂ワカモその人だったからだ。
「ワカモ!?」
「……あら、タツミさんではありませんか。」
俺様が驚いたように声を上げると、ワカモはなんでもないような声でそういった。
……ひとまずワカモに戦闘の意思はなさそうなので、俺様は警戒を続けつつも一旦ブークリエの銃口を下げる。
「イブキさん達とご一緒だったのではなくて?」
「い、いや。それが昨日遅くまで起きてたせいでちょっと寝坊しちまって……今から合流するところだ。」
「まぁ、そうだったのですね。私も雇い主であるヘルメット団の連中とこの辺りで落ち合う予定だったのですが、どういう訳か彼女達の姿が見えずに……こうして森を探していたところなのですよ。」
仮面の下でため息を吐き出しつつ、ワカモは珍しく面倒臭そうな声色でそう言った。
わ、ワカモの面倒そうな声なんて初めて聞いたぞ……なんと言うか、こいつもこいつで色々大変なんだな。
「ですが、そのおかげでこうしてタツミさんと出会うことが出来た……ウフフ♡まさに怪我の巧妙ですね♡」
そう言うと、狐面に手を当てながらくねくねと気色悪く体を動かしながらそう言うワカモ。
……前言撤回、やっぱりこいつはいつも通りだったわ。
俺様は通常運転なワカモの姿を見てため息を吐きつつワカモに視線をやると、ふと彼女の首筋や鎖骨部分にはいつも付けている首飾りの隙間からチラチラと絆創膏らしきものの姿が見えるのに気が付いた。
あれは……まぁ、もう言うまでもないだろうな。
俺様も昨日はだいぶ理性が吹き飛んでワカモの首やら鎖骨やらに刻印を刻んでしまったからなぁ……
とは言え、ワカモも見せつけるのではなくきちんと隠してくれているようで少しホッとした。
しかし、あの絆創膏を見ると否が応でも昨日のことを思い出しちまう……って、駄目だ駄目だ!
今はそんな事を考えてる場合じゃないだろ!?
「……ワカモ、こいつはお前の仕業か?」
俺様はブンブンと頭を振って煩悩を吹き飛ばすと、真剣な表情を浮かべて足元に転がっている警備ロボットを指さしながらワカモへそう問いかける。
「ウフフ♡面白いことをお聞きになるのですね?」
「……いいから答えろ。」
「もちろん違いますわよ?そもそも私ならこんな杜撰な壊し方はいたしません。外装から配線の一本に至るまで、残さず燃やし尽くして差し上げますので♡」
「……まぁ、そうだよなぁ。」
心底愉快そうに笑い声を上げるワカモをジト目で見つつ俺様はそう呟いた。
まぁそもそもこの警備ロボットは大口径弾を打ち込まれて壊された可能性が高いからワカモの仕業である可能性は低いけど、こいつは昨夜俺様の部屋に忍び込む時に警備ロボットを無力化している前科があるからな……
とは言えこの様子だと彼女が嘘をついている様子も無さそうだし、少なくとも今は信用して良さそうだ。
「しかし、このロボット……壊れ方を見るに相当大きな弾の銃で撃たれて居るようですね?」
「……あぁ、少なくともスナイパーライフルであることは間違いないだろうな。」
「なるほど。それは今私とタツミさんの2人きりの時間に水を差す、この不躾な視線と関係がある……と思っても宜しいのでしょうか?」
「いや、そこまではまだわからないが……その可能性が極めて高いのは間違いないだろうな。」
ワカモは周囲をぐるりと見渡すと、声色に若干の不機嫌さを混じらせながら吐き捨てるようにそう呟いた。
……なるほど、流石はワカモ。俺様と同じようにこちらを監視している視線にはとっくに気づいていたらしい。
そして警備ロボットを一目みただけで大口径弾のスナイパーライフルによる攻撃だと予測を立てる辺り、なんやかんやで俺様とワカモは考え自体は似ているのかもしれない……まぁ、だからなんだって話ではあるけど。
「なるほど……こちらへの様子の伺い方や気配の消し方を見るに、狙撃手の可能性が高いでしょうね。」
「あぁ……現時点で敵か味方なのかは分からないけど監視されている時点で友好的じゃないのは確かだろうな。」
「……目障りですわね。タツミさんが望むのであれば、消してきてもよろしいですけれども。」
「……いや、流石に派手に動いてイブキ達にまで危険が及ぶのは避けたいし何より俺様とお前だって別に味方同士って訳じゃないからな?」
「あら、連れないですわね?昨日はあれほど激しく愛し合ったというのに……♡」
「う、うるせぇな!そもそも次に会う時は敵同士だって言ったのは他ならぬお前自身だろうが!」
仮面の口元に手を当てながらそう言うワカモに対して、俺様は大声でそう抗議する。
「あら、ウフフ♡昨日の私に無我夢中で覆いかぶさって激しく私を求めってくださったタツミさんは何よりも愛おしくて……そして格好良かったですよ?♡」
「お前に褒められても嬉しかねぇよバカタレ!と言うか今はそもそもそんな事を言ってる場合じゃ……!?」
俺様がワカモに向かって詰めより、ギャーギャーとそう言っていた……その瞬間だった。
突如、俺様の背筋に強烈な寒気が走る。
「っ……!ちぃっ!」
咄嗟に感じた命の危機。
考えるよりも先に体が動いていた。
俺様は一にも二にもなく即座にワカモを抱きかかえると、そのまま地面へ向かって押し倒す。
するとその直後……俺様達の頭上を、一発の弾丸が通過して俺様達の少し前方に位置する木に着弾する。
弾丸が着弾した木は【バキィ!】というけたたましい音を立て、真ん中から真っ二つに折れて地鳴りとともに土煙を上げながら地面へと倒れていく。
あんな太い木を一発でなぎ倒す破壊力……間違いない、警備ロボットを破壊した大口径弾の持ち主からの狙撃だと見て間違いないだろう。
俺様はワカモを守れた事にホッと息を吐きつつ、すぐに迎撃体制に入るためにワカモに声を掛けた。
「大丈夫かワカモ!?怪我はないか?」
「えっ……た、タツミさん……こんなところで2回戦をお望みなのですか!?」
「……は?」
すると、俺様の腕の中で抱きかかえられる格好となったワカモはアワアワとしながらそんな事をのたまった。
「いや、何を言ってんだお前!?」
「こ、こんな野外でしかも何者かの監視下の中でだなんてなんと大胆な……しかし、タツミさんが望むのであればこのワカモ、喜んで体を差し出しますわ♡」
「はぁ!?違うわこの色ボケ狐!アレを見ろ!狙撃だ!敵襲だって言ってんだよバカ!」
意味のわからないことを言うワカモに対し、俺様は銃弾が打ち込まれて倒れた木を指さして声を荒らげた。
その木を視認したワカモは先程までのアワアワとした様子はどこへやら、すぐに戦闘モードへと切り替わると体をはね起こしていつも使っている歩兵銃を構えた。
「……なるほど、敵襲ですか。」
「あぁ、どうやらそのようらしいな……!」
俺様もワカモと共に体をはね起こすと、そのまま流れるように折りたたみシールドを展開して構えながらそう吐き捨てた。
そして俺様とワカモは顔を見合わせると、お互いの背中を預けるようにポジションを取る。
「タツミさん。今は……」
「……あぁ。仕方ない。滅茶苦茶不本意ではあるけど……力を貸してくれ、ワカモ。」
……こいつとは次会った時には敵同士とは言ったものの、こちらを狙って狙撃をしてきた相手は俺様にもワカモにも当たるような弾道で銃弾を放ってきている。
と言うことは、こちらを監視していた相手は俺様とワカモの共通の敵である可能性が高いと見ていいだろう。
正直昨日あんな事があったこいつとすぐこうするのはどうかと思うけど……この緊急時にそうも言ってられないだろうから仕方ない。
「分かりました、お任せください♡」
「あぁ、頼む。」
俺様とワカモは互いに顔を見合わせると頷きあった。
そして俺様は盾を構え直して、いつでもワカモを守れるようにポジションを修正していると……
「……ほう、よく今の一撃を躱したな。」
その場に、淡々とした声が響き渡った。
その聞き覚えのない声に反射的に俺様がそちらに目をやると、そこには……
ゴテゴテの装備に身を包んだ、黒髪の頭に狐耳を生やしたセーラー服姿の生徒がこちらへ銃を向けていた。