転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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今回は結構難産でした
ちょっと短めだけど許して……許して……


七度ユキノと丹花タツミ

突如姿を表した、セーラー服を着てケモミミを生やしたフルアーマーの黒髪の女子生徒。

こちらへ銃を向けていることから少なくとも敵意があると見ていいと判断した俺様は、盾を地面に突き立てながら大声を上げる。

 

「誰だお前は!いきなり狙撃しやがって何が目的だ!」

「……何故貴様にそんな事を言う必要がある。」

 

黒髪狐耳の生徒は俺様を睨みつけると、強い口調で吐き捨てるようにそう言った。

彼女はそのまま俺様に視線を固定すると、様子をうかがうようにこちらのことをじっと見つめてくる。

 

「……なるほど、ウチの狙撃手の攻撃をほぼ直感で躱す辺り腕は本物のようだな。」

 

そして、何かを確信したように頷くとそう言った。

……なるほど、どうやら狙撃してきたのはこいつではなくこいつの仲間のようだ。

 

「ケッ、狙撃するならもっと気配を消せってその狙撃手とやらに言っておけ!あんなミエミエの狙撃じゃ虫も殺せねぇぞ!」

「……減らず口を。」

 

俺様は挑発する様にそう言うと、彼女は顔をしかめながらこちらに対する敵意を隠そうともせずにそう言った。

しかし、この謎の生徒の立ち振舞い……かなり洗礼されていて攻撃を仕掛けようにも隙が殆ど見当たらない。

恐らくかなりの実力者だろう、目的はわからないけど最大限警戒して当たらないとまずそうだ。

 

「貴方は……っ!」

「……久しぶりだな、災厄の狐。」

「ふふ、ウフフフフ……えぇ、お久しぶりですわね。」

 

そんな事を考えていると、何やらワカモと黒髪の生徒がそんなやり取りをしているのが耳に入る。

口ぶりからするに、どうやら2人は知り合いみたいだ。

 

「……なんだ、知り合いか?ワカモ。」

「えぇ。彼女は元SRT所属の特殊部隊、FOX小隊の隊長である七度ユキノ。……昔私を捕らえて矯正局へ送り込んだ忌々しい因縁の相手ですわ。」

「なに、FOX小隊だって……!?」

 

ワカモの言葉に、俺様は目を見開いて驚く。

……まさか、ここでその名を聞くとは思わなかった。

そしてどうやらワカモの話によると、今目の前に居るこの黒髪の女がそのFOX小隊の体調である七渡ユキノとやららしい。

 

お互いに睨み合うワカモと七渡。

その尋常ではない雰囲気に背中に嫌な汗が流れるのを感じつつも、俺様はワカモの隣へ並び立った。

 

FOX小隊と言えば、前に七神代行から聞いた情報によると今ワカモが言ったようにワカモを逮捕して矯正局へ送り込んだり、それ以外にも数々の功績を上げたSRT特殊学園きってのエリート部隊のはずだ。

けど、そんなSRTの精鋭部隊であるはずのFOX小隊の隊長が何故こんな所にいるんだ……?

しかも、七度の口ぶりや態度からして俺様やワカモに強い敵意を向けてきているのは間違いないだろう。

 

……いや、ワカモに敵意を向けるならわかる。

なんせこいつは災厄の狐なんて呼ばれる大量破壊犯であり危険なテロリストだ、そんな犯罪者を前にすれば最大限警戒したり敵意をぶつけるのは理解出来るからな。

ましてや相手はSRTの特殊部隊、そう言う任務を請け負っていても何ら不思議ではない。

 

だが、何故か七度は俺様にまで激しい敵意を向けてきているように感じる……と言うか実際にそうだろう。

元SRTと言えばRABBIT小隊の月雪達もそうだけど、なんでこう俺様はSRTの生徒から敵意を向けられるかねぇ。

……まぁ、月雪達とは最近は結構打ち解けて来たけども。

それはともかく、俺様は単なるゲヘナの1生徒であって……犯罪をした覚えはないんだが?

 

「ここで会ったが百年目……狐坂ワカモ。我がFOX小隊はここでお前を必ず逮捕する。」

「……ウフフ。」

 

そんな事を考えていると、七度はワカモの前に一歩近寄りながら鋭い眼光を飛ばしつつそう言う。

それを受けて、俺様の隣で七渡に視線をやっていたワカモが不愉快そうな声で笑い声をあげた。

そんなワカモの肩はぷるぷると震えており、全身からは尋常ではない怒りのオーラが滲み出ている。

 

「……落ち着けワカモ。」

「いいえ、落ち着いてなどいられません。」

 

俺様は明らかに冷静ではないワカモを落ち着けるために肩に手を置くが、ワカモは淡々とそう言い放った。

恐らく自分が前に打ち負かされた相手と言うことで、感情が昂っているのだろう。

負けず嫌いなのは悪いことではないし、俺様もワカモのこの負けず嫌いさがあるから俺様だって負けたくないって思っている節はあるけど今冷静さを欠くのはマズイ。

 

……と言うか、そもそも何で七度は俺様にまで敵意を向けてきているんだ?

確かに後輩であるRABBIT小隊と戦った事はあれど、FOX小隊の事は俺様も七神代行から聞いただけで彼女達とは接点などないし面識も何もあったもんじゃない。

それに、もしFOX小隊がワカモの逮捕を狙っていて襲撃を仕掛けてきたなら本来目的の外の人間である俺様に対しては注意喚起なり退避勧告なりをしてきてもいいはず。

彼女達とて特殊部隊、無関係の人間を任務に巻き込むようなことはしないはずだろう。

それをしてこないってことは、俺様はワカモと同じで連中からの敵としてみなされていると言う可能性が高い。

 

どういうわけかは知らないけど、目の前の七度は俺様とワカモの2人に対して強い敵意を向けてきている状態だ。

更に言うと小隊の隊長が1人で行動するなんて考えにくく近くに分隊員が待機しているのは確実と見ていい。

RABBIT小隊と規模が同じであれば隊長の七度を入れて合計4人……少なくとも、こちらを狙撃してきたスナイパーを含めればそのくらいの人数は待機しているはずだ。

 

俺様としてはSRTの生徒と戦闘を行うなんてまっぴらごめんだけど……1つ言えることがあるとすればこのまま行くと戦闘は避けられないだろうと言う事。

もしそうなった場合、怒りに任せて突撃するのは決して良策とは言い難いからな。

 

確かにワカモは強い。

それは俺様が一番よく知っている。

だが、相手は前にそのワカモを打倒したことのあるFOX小隊……SRTに所属するエリート部隊だ。

しかも彼女たちはRABBIT小隊のような経験の浅い1年生ではなく、幾度となく修羅場をくぐってきている3年生。

実力は折り紙付きなのは間違いないし、決して簡単に勝てる相手ではないだろう。

 

「確かに七度は前にお前を倒した相手かもしれないけど今は冷静になれ、でないと……」

「……タツミさん。私はその事で怒っているのではありませんよ。」

「……え?」

 

俺様が肩に乗せた手にワカモは自分の手の平を重ね合わせると、狐面を俺様へ向けながら口を開いた。

 

「私が怒っているのは、この薄汚い狐が私を逮捕したことももちろん少しはありますが……一番は、何よりもヘイローのないタツミさんを狙撃したことです……!」

 

重ねた手の平をふるふると震わせながら、ワカモは今まで聞いたこと無い恐ろしい声色で冷たくそう言い放つ。

 

「私は貴方に押し倒されて銃弾から庇われたので最初は状況を認識できませんでしたが、放たれた銃弾はあの太い木をいとも簡単に真っ二つにへし折るほどのパワーがあった……少なくとも、前にタツミさんがその身に受けた20mm弾ほどのサイズはあるくらいの弾丸でしょう。」

 

先程狙撃を受けて木っ端微塵になった木に目をやりつつワカモは怒りに震える声でそう言葉を紡いでいく。

 

「あの時は防弾チョッキと、どなたかは存じ上げませんがタツミさんのためにその方が作ってくださった薬のおかげでなんとかタツミさんは死の危機を免れました。しかし、今のタツミさんにあんなものが当たってしまっては今度こそ命の危機に晒されてしまっても何らおかしな話ではありません。」

 

……そうだな。それは確かにワカモの言う通りだ。

今の俺様の装備はブークリエといつもの折りたたみシールドのみ。つまりほぼ生身の状態と言ってもいい。

そんな状態で20mm弾なんて弾丸を食らってしまっては今度こそ上半身と下半身が別れることになるだろう。

 

そう言えば狙撃された時は無我夢中だったけど、よくよく考えたら銃弾の軌道から逆算するに狙撃手はワカモと言うよりは俺様を真っ直ぐに狙ってきていた気がする。

結果的に直線上に並んでいたからワカモにも当たりそうになって咄嗟にワカモを押し倒して庇ったわけだけど……

まさかとは思うが、狙われていたのってもしかしてワカモじゃなくて……俺様なのか?

 

だとすると何のために?

ワカモを逮捕すると言うのであればまだわかる。

FOX小隊はSRTに所属するエリート部隊、そう言う任務を受けるのであれば彼女たちより適任な相手は居ない。

だとすると、ワカモを狙った弾丸の軌道がミスによりズレて俺様を狙って飛んできたのか?

 

……いや、そもそも空井や風倉の話によるとSRTでの訓練は滅茶苦茶厳しいらしく射撃訓練一つにおいても一回でも的を外すと居残りをさせられるほどだったそうだ。

そんな厳しい訓練を受けている連中が実戦で目測を誤るかと言うと……可能性は否定できないけど、極めて低いとは言ってもいいはずだろう。

 

「……七度ユキノ。貴方の部下に命じて放たせた弾丸はタツミさんの丁度頭部を狙ったものでしょう?」

「……さぁ、たまたま風で軌道が流れたんじゃないか?」

「とぼけないでください。あの弾道はどう考えてもタツミさんを狙ったものです。貴方の部下の狙撃手がまさか風で目測を誤るなど、そんな愚行を犯すわけがないでしょう?この私に何度も狙撃を命中させたのですから。」

 

ワカモは淡々と、だが冷酷な声でそう呟いていく。

 

「……お前に部下を褒められても嬉しくはないな。」

「単刀直入に言いますわ、七度ユキノ。貴方達の真の目的は私ではなく、タツミさんなのではありませんか?」

「……なんだって?」

 

ワカモの言葉に、七度の肩が一瞬だけ跳ねる。

 

「……フン、見当違いもいいところだな災厄の狐。」

「タツミさんにはヘイローがないのですよ?それを分かっておきながらあの様な大口径弾を何の躊躇もなく撃ち込もうとするなんて……それが貴方達のやり方ですか?殺人を任務として請け負うだなんて、正義を掲げているはずのSRT特殊学園も随分と地に堕ちたものですね?」

「……言わせておけば随分と好き勝手を言ってくれるじゃないか災厄の狐。テロリストである貴様にそんなことを言われる筋合いなどない。」

 

七度はワカモを睨みつけながらそう言葉を返す。

 

「タツミさんは一度私を庇ったせいで20mm弾をその身に受けているのですよ!?もう一度あんな弾が当たりでもしたら、防具も何もない今は今度こそ……!」

「……大丈夫だワカモ。俺様はこの通りピンピンしてっからよ。」

 

俺様はそう言うと、怒りに震えながらそう叫ぶワカモに近づいて彼女の頭をぽんぽんと撫でる。

すると、ワカモは一瞬だけ体をピクリと跳ねさせると彼女から感じる殺気が少しだけ収まった。

 

「それに前にも言ったはずだぞ、俺様はお前以外の女に殺されてやるつもりはねぇってな。」

「タツミさん……」

「大丈夫だ、俺様はお前の手以外で死ぬつもりはない。だからそんなに心配すんな、な?」

「……ふふ、はい。分かりました♡」

 

ワカモは少し嬉しそうにそう言うと、その後は大人しく俺様に頭を撫でられている様子だった。

……まぁ勢いで言っちまったけど、俺様はお前の手でも死ぬつもりは無いけどな!イブキの花嫁姿をこの目で見るまで、俺様は死なんと決めているのだ!

ハーッハッハッハ!!!

 

「こいつら、人の前で堂々とふざけた真似を……!」

 

そんな俺様達の姿を見て、七度は怒りの形相を浮かべて俺様へ向けて視線を向けてきた。

俺様は七度と相対するために彼女の方を向き……そして、彼女の赤い瞳と視線が交わる。

だが本来であればキラキラと輝きを放っているであろう彼女のその瞳は……底が見えないほどに暗く、そして淀みきった生気のないものだった。

 

(……っ!)

 

その瞳を見て、俺様は硬直する。

……なんて目をしてやがるんだ、こいつは。

 

「さて、丹花タツミ……だったな?」

「……あぁ。」

「聞いたと思うが、今回我々FOX小隊は矯正局を脱出したそこの災厄の狐……七囚人の1人である狐坂ワカモを逮捕するためにここまで来た。」

「……それは随分とご苦労さまなことで。」

「だが、彼女を捕らえるために放った弾丸から貴様は彼女を庇い……そして、あまつさえ今貴様は災厄の狐と並んで私と対峙している。これは我がFOX小隊、ひいてはSRT特殊学園への敵対行為とみなさざるを得ない。」

 

そう言うと七度は手にした銃をこちらへ向け、俺様の事を射抜かんばかりの鋭い眼光で睨みつけてきた。

 

「いや、確かに彼女を庇いはしたけどあれは不意打ちされて咄嗟に体が動いちまったというか……」

「言い訳は聞かん。貴様が何を言おうと、狐坂ワカモを庇い立てたという事実には変わりはない。」

「待ってくれ、俺様の話を……」

「それに我々は貴様と狐坂ワカモが親密な関係であると言う情報を掴んでいる。これは貴様と狐坂ワカモの結びつきを示すものに他ならない。よってその事実に基づいて、私達FOX小隊は貴様たち2人を拘束する。」

「……あぁ、そうかよ。」

 

まるで【最初からそうすると決めていた】と言わんばかりにこちらの話を聞かずに一方的にまくし立ててくる七度。そんな彼女の受けた俺様は盾を構えると地面へ叩きつけ、負けじと彼女を睨み返した。

ここまで来たらもう話し合いで解決できる望みは薄いと言う他ないだろう。

やむを得ないが、こうなった以上はもう戦うしかない。

何故ならそれがキヴォトスにおけるルールだからだ。

 

七度……もといFOX小隊は元SRT所属ということは本来正義側、秩序を守る側の組織だ。

だからワカモを捜索している事自体には何の不自然さもないし、むしろ彼女を逮捕するだけならば喜んで俺様はワカモを差し出していただろう。

俺様はワカモと体を重ねてしまったとは言え、それで彼女の罪がチャラになるわけじゃない。

しっかりと矯正局に入って罪を償ってもらえるなら俺様とてそれは喜ばしいことだからな。

 

けどさっきの狙撃は俺様にも当たる……と言うか俺様に当てるつもりで、あわよくばワカモにも当たれば儲けものみたいな弾道だったのは間違いない。

言われてみれば、確かにワカモの言う通りどう考えたって俺様を狙撃したとしか考えられない軌道ではあった。

そもそも、FOX小隊がワカモを逮捕するつもりならとっととワカモに対して不意打ちなりなんなりすればいい。

わざわざ俺様と一緒にいる所を狙う必要はないはずだ。

 

となると、FOX小隊の目的はワカモの逮捕ではなく……

俺様とワカモ、両方の身柄って事になる。

 

それに、頭部を狙ってきたってことは明らかに拘束ではなくて殺害が目的だったと言っていいだろう。

20mm弾は頭に当たればキヴォトス人でも救急車で病院へ搬送されるほどの威力を持つ強力な弾丸、そんな物が俺様の頭に当たりでもしたら……想像もしたくない。

危うく殺されかける所だった事実に胃から酸っぱい物が込み上げてくるが、俺様はそれを気合いで抑え込むと自分を奮い立たせるように盾を再度地面へ叩きつける。

 

(……SRTか。)

 

ふと、あの子ウサギ公園のキャンプでSRT特殊学園の事を語る月雪の顔が思い浮かんだ。

あいつはSRTが掲げる、何事にも折れずに曲がることのない屈強な正義に憧れてSRTを志したと言っていた。

キラキラとした目でそれを語る月雪……彼女のその根底には俺様とはまた違った正義なれど、悪を断じて許さないという強い心が宿っていたのは事実だ。

妥協や汚い仕事に塗れた現場を知らないその汚れのない正義は青々しいが……同時にとても綺麗なものだった。

だからこの場にいたのが仮にRABBIT小隊だった場合……俺様は何の躊躇もなくワカモの首根っこを掴んで差し出していたことだろう。

お互いに正義は違うけど、根っこの強気を挫いて弱気を助けると言う部分で俺様と月雪は同じ。

そんな彼女達ならば、ワカモをきちんと矯正局へ叩き込んでくれると信じられるからだ。

 

けど、FOX小隊は違う。

最初から俺様を狙ったかのような狙撃、まるでワカモのことが【ついで】と言わんばかりの対応。

そして……何よりも、七渡のあの濁りきった目。

あれはあの時のアリウススクワッドや俺様と同じだ。

やりたくもない事を強制させられ仲間や家族を守るために、こうするしかないんだと自分の心を偽っている……ドロドロに淀みきった目をしている。

そんな連中がワカモをきちんと矯正局へ送ってくれるかなんて保証はどこにもない。

それならば、俺様自身がワカモをとっ捕まえたほうがいいに決まっている。

 

だから、ワカモを捕まえるためにも今こいつらにワカモの事を差し出すわけには行かない。

非常に不本意ではあるけど、ワカモを守るためにも戦わなければならないだろう。

捕まえるために守るのもおかしな話だとは思うし、そもそもSRTの特殊部隊とドンパチなんてやらかしたら後で連邦生徒会からなんてクレームが来るかは分からないが……まぁそんなのは知ったことではない。

そもそも最初に命を狙ってきたのはあっちだし、ちょっとくらい反撃したって許されるだろう。

まぁ七神代行や不知火防衛室長の胃は破壊されることになるだろうから、また胃薬を差し入れないとだがな……

 

俺様は現状、FOX小隊がどんな境遇に置かれているのかは分からないしそんなのは想像すらできない。

だが、あのクソッタレな目をしている以上こいつらも何か逆らえない物に支配されている可能性は高い。

それがアリウススクワッドと同じ悪い大人なのか、それともこいつらの上司なのか……それは分からない。

 

……けど。

こんな目をしているやつを見て、黙って見過ごすわけになんていかない。

こういう輩は、アリウススクワッドと同じように一発ぶん殴って目を覚まさせてやらないといけないだろう。

まぁもしかしたら俺様の思い違いかもしれないけど……少なくとも、その疑念が晴れるまではこいつらにワカモの事を任せることなんか出来るわけがない。

 

たしかにワカモはテロリストで、こいつらは特殊部隊。

だから本来はこいつらにワカモの事を任せるべきなんだろうけど……色々懸念があるのは事実だし、何よりもワカモは俺様の超えるべき相手であってライバルであって……そして何よりも俺様の【獲物】なんだ。

そんなワカモを俺様から奪うつもりでいるのなら……それ相応の覚悟はしてもらわねぇとなぁ?

 

「タツミさん。」

「……あぁ、やるぞワカモ。」

 

俺様とワカモは互いに顔を見合わせ、頷きあった。

 

正直、テロリストをかばうなんてどうにかしていると俺様も自分でそう思うけど……どうあれ、ここまで来たらどのみちもう戦闘は避けられない。

なら、俺様がやることは一つだけ。

ここでFOX小隊をぶちのめして……裏で糸を引いている黒幕を引きずり出してやる!

 

「タツミさん、今回は私が前を引き受けます。貴方は安全な位置からの援護をお願いしますね。」

「は?何いってんだお前。それじゃ何のために俺様が盾を持ってるのか分からないだろ。」

 

ワカモはそう言いながら俺様の前へと躍り出るが、そんなワカモに声を掛けながら俺様も一緒に前へ出た。

 

「……先程も言いましたが、今の貴方は盾以外の防具を何も身につけておりません。その状態で最前線に立つと言うのはあまりにも危険すぎますわ。」

 

ワカモは俺様の肩に手を置くと、真剣な声色でそう言い切る。

……まぁ確かに、ワカモの懸念はご尤もだ。

今の俺様が所持している防具はこの折りたたみシールドのみ、もし弾丸が体に当たろうものなら俺様は最悪ここで死んでしまう可能性だってあるだろうな。

だが、それでも俺様は後方支援に徹するつもりはない。

 

そもそもこちらの戦力は俺様とワカモの2人だけなのに対して、相手は一個小隊規模の戦力を揃えている。

まずこの時点で数的不利なんだから、バラバラに動くよりもワカモと常にお互いをカバーできる位置で動いたほうがよっぽど安全なのは間違いないだろう。

それにアリウススクワッドとやり合ったときもそうだったけど、俺様はワカモと何度も命の取り合いをしているおかげでこいつの手の内は手に取るようにわかる。

それはすなわち次にワカモの取る行動が読めると言う事であり、味方として戦うのであれば一言声を掛けるだけで相手に作戦を悟られずに戦うことが可能ってことだ。

この強みを生かさない手はないだろう。

 

「なーに、心配すんなって。そりゃ相手はSRTのエリート部隊だけどよ……信念が揺らいでいる相手に遅れを取るほど俺様は弱くねぇぞ。」

 

そう言うと、俺様は七度に視線を向けると歯をむき出しにして好戦的な笑みを浮かべてみせる。

 

「それに言っただろワカモ。俺様はお前以外の女に殺されてやるつもりはねぇってな。」

 

そして、俺様はその好戦的な笑みを浮かべたままワカモに対してきっぱりとそう言いきった。

 

「もう、仕方ありませんわね。タツミさんはそう言い出したら聞かないのですから。」

 

そんな俺様を見てワカモは狐面の下から呆れたような、それでいてどこか嬉しそうな声でそう言った。

 

「……絶対に怪我をなさらないでくださいね。」

「当たり前だ。俺様を誰だと思ってやがる。そっちこそ俺様の足を引っ張るんじゃねぇぞ。」

「ウフフ……はい、全力でお供いたしますわ♡」

 

そして俺様とワカモは互いに拳を作ってそれを合わせると、お互いの武器を構える。

 

「……FOX2、FOX3、FOX4。総員、戦闘準備!」

 

そんな俺様達を見て、七度はトランシーバーの電源を入れると恐らく待機している分隊員達へ大声で指示を出し始めた。

 

FOX小隊、お前たちの目的がなんなのかは知らないが……

そんな濁りきった目をしたやつに、俺様とワカモが負けるわけがないに決まっている。

 

「さぁ行くぞFOX小隊!人の獲物に手ェ出したらどうなるかって事、その身に教えてやるよっ!!!」




大変申し訳ないのですが、諸事情により
次回の更新を10月24日とさせていただきたいと思います

楽しみにお待ちいただいている読者の皆さまをおまたせすることになり大変心苦しいですが、どうかご了承頂けますと幸いです
これからものんびり完結まで続けていきますので、どうぞよろしくお願い致します!
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