転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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たくさんの温かいお言葉ありがとうございます!


狐のジレンマと丹花タツミ

「っ!!!」

 

ワカモから刺すような威圧感とともに放たれた、死にたいようだなと言う殺意のこもった言葉。

その言葉が発されると同時にワカモから感じる殺気は先程の比にならないほどに濃密になり、この殺気を直接向けられていない俺様でさえ息をするのも苦しくなるほどのものだった。

顔をしかめながらFOX小隊の面々へ視線を向けると、彼女の殺気を真正面から受ける形になったFOX小隊の面々は額に冷や汗を浮かべながら表情を歪めていた。

 

……まぁ、ワカモが怒るのも無理はない。

ワカモからしたら、あの夜の出来事は自分が恥ずかしいのを我慢して俺様を誘惑し続けて理性をぶっ飛ばしたという彼女からしてもあまり思い出したくない出来事なのはワカモの今の雰囲気を見ても明らかだ。

 

かくいう俺様とてワカモとのそういう行為をFOX小隊に覗き見されていた事実には顔から火が出そうになると同時に、人のプライバシーを侵害されたことに対しても別の意味で顔から火が出そうになっているからな。

このことは墓場まで持っていくつもりだったし、曲がりなりにも俺様だってワカモとは体を重ねた関係。

そのことを脅しの道具に使われようもんなら、ワカモほどではないけど俺様も怒りは沸く。

 

それに、そもそも天下のSRTともあろう連中が人の部屋をコソコソ覗き見して掴んだ弱みを盾に人を脅そうとするなんてそんなの言語道断も良いところである。

そんなの、流石にテロリストとまでは行かないけど秩序を乱す側の連中のやる事と言わざるを得ないだろう。

 

とは言え、相手はあのSRT所属の特殊部隊だ。

ワカモの怒りはご尤もだけど、頭に血が上った状態で勝てる相手ではないのは確かなのもまた事実。

そう思った俺様はとにかくワカモを落ち着けるために、彼女の頭に手のひらを乗せた。

 

「落ち着け、ワカモ。」

「タツミさん!ですが彼女達は……」

「……まぁそりゃあの夜のことを覗かれていたのは俺様だって恥ずかしいし、怒りだってあるさ。けど相手はあのSRTだし一度はお前を負かしているんだろ?なら、冷静さを失って勝てる相手じゃないだろ。」

「それはっ……そうかもしれませんが……!」

「それによワカモ。こいつらに覗かれたからってあの夜のことが無かったことにはならない……そうだろ?」

「……っ!」

 

そのまま頭をぽんぽんと撫でながら、俺様はワカモに対して優しくそう声を掛ける。

 

「まぁとは言え、あの夜のことを脅しの道具に使われるのは俺様だって我慢ならないからな……行儀の悪い狐共はここできっちり叩きのめして、あの記録は綺麗さっぱり破棄してもらわなきゃな。」

「……ウフフ。そうでなければ許せませんわ。」

 

そう言うと、ワカモから発せられていた先程までの立っているのも苦しくなる程の殺気は一気に離散していく。

……良かった、ひとまず落ち着いてくれたようだ。

 

「……何度浴びても慣れないわね、こいつの殺気は。」

「怯むなFOX3、何を言われようが私達は私達に与えられた任務を遂行するだけだ。」

 

その様子を見て、ワカモの殺気を浴びて冷や汗を流していたFOX小隊の面々は息を吐きながらそう言った。

俺様は慣れているからいいとは言え、常人であれば気絶していてもおかしくはないワカモの殺気を浴びて冷や汗を流すだけで済んでいる辺り、やはりこいつらは相当な実力者なのだろうな。

 

「で、でもこんな堂々と私達の前でイチャイチャするなんて流石昨日あんなことをしていただけはあるわね。」

「いや、今のはそれとは違う気もするけどね……」

 

ジト目でこちらを伺いながらそう言うFOX3と、苦笑しながらそう言うFOX2。

 

(……しかし、妙だな。)

 

俺様は盾を構えてそんなFOX小隊の動向を伺いつつ、心の中でそう呟くと首を傾げた。

と言うのも、一旦ワカモを落ち着けたとは言え昨日俺様とワカモが体を重ねたことをこいつらに掴まれている状況というのは依然として特大の爆弾には違いない。

 

で、あればだ。

何故FOX小隊……と言うかピンク髪のFOX2はその情報を掴んでいるという事をわざわざここで言ったのだろうか?

ゲヘナの議長代理と災厄の狐の大スキャンダル……そんなものが公表された日にはキヴォトス中に激震が走ることは間違いないだろうし、俺様自身はともかく万魔殿のみんなや先生にまで迷惑がかかってしまうに違いない。

そんな特大の爆弾を所持しているならわざわざ敵にバラすよりも、黙って持ち帰ってタイミングを見計らって不意打ちで炸裂させるのが一番有効なはずなのだ。

 

しかし、FOX小隊はそんな強力な証拠を握っているにも関わらずにそれをしなかった。

わざわざ自分たちがそれを握っているって敵に知らせるって事は何か理由はあるはずだが……

 

(……)

 

FOX小隊の行動とワカモの仮説から考えるに、恐らくFOX小隊の目的は2つ。

1つはワカモの身柄の拘束、そしてもう1つは俺様の命。

現状だとこいつらの目的はその2つの可能性が高い。

 

となると……あえて情報をチラつかせてこちらの動揺を誘い、戦いの有利に進めるのが目的と言う可能性はある。

けど、連中はSRTの中でも様々な任務をこなしてきた経験豊富な百戦錬磨の3年生小隊だ。

過去にワカモに勝利している実績から見て、強力な証拠を放棄してまでそんなことをする理由は無いだろう。

となると、他に可能性があるとすれば……

 

「くっ……」

 

俺様は頭を回転させながらチラリとFOX小隊に目をやると、ショットガンを手にしたピンク髪のFOX2がボイスレコーダーを握りしめながら苦しげな表情を浮かべている様子が目に入ってくる。

その表情は隣の七度の淀み切った目とは違い、まだどこか諦めていないような……そして何よりも【人としてのラインを踏み越えたくない】意思を感じた。

……なるほどな。FOX2の表情を見て合点が行った。

 

恐らく、こいつらは間違いなく何者かからワカモの逮捕及び俺様を殺すように指示を受けていると見ていい。

そう確信できる理由はいくつもあるけど、一番の理由は七度の諦めきったような死んだ目とFOX2の葛藤しながらもまだ希望を捨てていない目だろうか。

 

恐らく七度は色々と葛藤した上ですべてを諦めたんだろう。だが、FOX2はそうではない。

人としてのラインを踏み越えるような行為……要するに俺様の殺害を実行したくない。

そんな意志を彼女からはひしひしと感じる。

であれば、FOX2がわざわざ俺様とワカモのスキャンダルなんて言う強力な証拠をあえて開示したのは戦闘を避けて俺様達と戦闘を行わずに拘束するために脅すためだったと考えれば辻褄は合うだろう。

 

……俺様は、2人のあの目を知っている。

七度の何もかもを諦め、逆らうことの出来ない人間からの指示に従うしか無い時に浮かべる目を知っている。

FOX2のこんなの嫌だ、自分はまだ諦めたくないという……逆らえない人間に抗う意思の篭った目も知っている。

そりゃそうだ、だってあの目は前世で俺様が浮かべていた目でもあるんだから……わからないわけがないだろう。

 

「……なぁ、FOX小隊。」

 

そう思った俺様はその場から一歩前へ出ると、FOX小隊の面々へ向かって声を掛ける。

 

「タツミさん……?」

「なんだ、丹花タツミ。まさか今更我々に降伏する気になったとでも言うのか?」

「ハッ、馬鹿言うんじゃねぇよ。銃を突きつけられて両手を上げて降参するなんて死んでもゴメンだね。」

 

七度の言葉に俺様は不敵な笑みを浮かべながら応える。

 

「……ならなんだと言うんだ。」

「単刀直入に言うぞ。……お前ら、誰からの指示を受けて動いてるんだ?」

「……っ!?」

 

露骨に顔をしかめる七度へ向かって俺様がそう言葉を発すると、七度は肩を一瞬ビクリと震わせるとその濁った瞳を大きく見開いた。

それと同時に、彼女の隣に並んでいるFOX2とFOX3もそれぞれの目を大きく見開くと体を一瞬震わせる。

 

「……何を言うかと思えば下らん事を。私達は私達の意思でお前たちを拘束しようとしている。それだけだ。」

「んなわけねぇだろ、なら何でお前はそんな死んだような目をしてて横のFOX2やFOX3の目には不安や戸惑いの色が浮かんでるんだ?自分たちで作戦を立てたのなら隊員の意思は統一されているはずだぞ?隊長であるお前と隊員の間で意思の相違があるなんて事はないはずだ。」

「そ……それは……!」

 

平静を装ってはいるものの明らかに声が震えている七度へ向かって、俺様は畳み掛けるようにそう言った。

 

この反応……間違いない。

これはもう、FOX小隊の裏には彼女達を操っている黒幕が潜んでいると見て間違いないだろう。

 

「確かに綺麗事だけじゃ自分たちの居場所を守れない、それは俺様だって痛いほど実感している。俺様だって今はゲヘナを守る身だ、そのことは誰よりも分かる。……けど、これは流石にラインを越えすぎだ。百歩譲って部屋を覗き見したのはギリギリ許せるとしても、殺人に手を染めるなんてのは絶対にあっちゃならねぇだろうが。」

「くっ……!」

 

俺様の言葉に、七度は苦しげな表情を浮かべる。

 

「そんな事をすればお前たちはもう後戻り出来なくなる、死ぬまで人を殺したという十字架を背負って生きていくことになるんだぞ?キヴォトスにおいて殺しは禁忌とされている行為、それが何を意味するかはお前達にも分かるはずだ。」

「フン、そんなのは承知の上だ。」

「……それにこんな事をしたら、お前達を慕ってくれている月雪達はどうなるんだ?」

「……っ!」

 

そんな苦悶の表情を浮かべる七度に、俺様は畳み掛けるようにそう言った。

 

「な、なんで貴方がミヤコちゃんたちのことを……」

「色々あってな、今はたまにだけどメシを一緒に食う仲なんだよ。」

「えぇ……?何がどうなったらそうなるのよ?」

「まぁ色々あったんだよ。色々な。」

 

……うん、RABBIT小隊とは本当に色々な事があった。

子ウサギ公園を占拠する彼女達と戦い、成り行きでメシを奢ることになり、何度も足を運んでいる内に徐々に打ち解けて、今ではそれなりに気安くやり取りの出来る仲になっているからな。

いやはや、ファーストコンタクトは敵同士だったってのにこうなるなんて人生は本当に分からないものだ。

まぁそれを言うなら、ワカモだってファーストコンタクトは敵同士だったわけだが。

 

「でだ。RABBIT小隊の月雪達は言っていたぞ、いつかはFOX小隊の先輩に並べるくらいになりたいと。それはつまりお前達を心から尊敬していると言う事に他ならないんじゃないのか?」

 

俺様はFOX小隊へ向けて真剣な表情を浮かべると、淀みのない口調でそう言い切った。

そう、子ウサギ公園に何度もメシを作りに行って彼女達と話すようになってから分かったことではあるのだが月雪達RABBIT小隊はFOX小隊の事をとても慕っており、目指すべき目標として尊敬をしているのだ。

彼女達はFOX小隊が連邦生徒会を襲撃したことを知りつつも「なにか理由があるはず」と決して見捨てるような真似はせず、いつかSRTが復活した暁には一緒に肩を並べて戦いたい……そんな気持ちを抱いている様子だった。

 

特に月雪や空井がFOX小隊の事を語る目はキラキラと輝いており、その表情は憧れのスター選手について語っているスポーツ少年のように純粋で汚れないものだった。

それに普段はダウナーな風倉やあまり自分のことを主張しない霞沢もFOX小隊のことは楽しそうに語っていたしあいつらの表情を見るにRABBIT小隊においてFOX小隊は目指すべき目標なんだろうなと感じさせてくれる。

……それだけに、今FOX小隊のやろうとしていることは到底見過ごせるような話ではないんだ。

 

「なぁFOX小隊。お前達は元々はSRT特殊学園、つまり秩序を守る側の人間だったはずだろ。どこの誰から指示を受けてんのかは知らねぇが、いつからお前達は殺人を請け負うような集団になっちまったんだ?」

「それは……」

 

俺様の言葉を聞き、耳をペタンと寝かせて表情を曇らせるFOX3。

 

「……それに仮にここで殺人を犯したとして、お前達は月雪達にどんな顔をして会うつもりなんだ?血に塗れたその姿で、彼女達に顔向け出来るって言うのか?」

「黙れ……!」

「誰かの飼い犬になること。それがお前達のたどり着いた答え……FOX小隊の【正義】だって言うのか?」

「黙れと言っているだろうっ!!!」

 

俺様が淡々と言葉を続けていると、とうとう我慢できなくなったのか七度がその場で大声を上げる。

彼女の目は先程までの何もかもを諦めたような濁った目とは違ってギラギラとした激情に満ちていた。

……なんだ、そんな表情も出来るんじゃないか。

 

「貴様に私達の何が分かると言うんだ!私達は突然学校を解体され、路頭に迷いながらもSRT復興の道を模索して必死にここまでやって来たんだぞ!それを何も事情を知らない貴様に侮辱される筋合いはない!!!」

「そりゃ俺様はお前達の事情なんて分かるわけねぇよ。けど、これは流石にダメだってことくらいは分かる。」

 

俺様はこちらに向かって殺意をぶつけてくる七度に対して全く怯むことなく視線を合わせると、淡々とした口調でそう言い切った。

 

「さっきも言ったが、綺麗事だけじゃ自分たちの居場所を守る事が出来ないってのは分かるぜ?けど、これは流石にラインを超えてんだよ。人としての道を踏み外した先に、SRTの復興が待ってるとでも思ってんのか?」

「…………」

「それにこちとら命を狙われてんだぞ?なら文句の一つくらいは許されても良いと思うんだがな。」

「黙れ!減らず口を叩くな!」

 

俺様の事を鬼のような形相で睨みつけながら、七度は声を荒げる。

 

「それにお前は必死にここまでやって来たと言ってるけど、お前達がSRT解体後にやったことと言えば連邦生徒会への襲撃。で、今度は俺様の命を狙っていると来た。……おいおい、いつからSRTはテロ組織になったんだよ?」

「なら他にどうすれば良かったと言うんだ!SRTの復興のためには、あの人の指示に従うしかないっ!」

 

両手を広げ、七度は必死に悲痛な声を上げる。

……何だ、やっぱり裏に黒幕がいるんじゃねぇかよ。

 

「ユキノちゃん……」

「ユキノ……」

「……そうか。そいつが誰かのかは知らねぇけど……このままSRTの看板を背負って汚れ仕事を続けてSRTの名声を地に落として、本当にSRTが復興できると思ってんのか?」

「そ、それは……!」

「それにそんな事したら……お前達は汚れのない目で正義を語っていた月雪達にSRTの頼れる先輩としての背中を見せてやれなくなるだろうが。そんな事、この俺様がさせるかよ!!」

 

俺様は七度の目をまっすぐに見てそう吠えると、構えていた盾を地面へドン!と叩きつけた。

 

そう、そんなことは俺様が許さない。

目の前で人としての道を踏み外そうとしている連中を……そして、曲がりなりにも俺様に対して自分の中の正義を打ち明けてくれた月雪達の尊敬する先輩を……外道に落とすわけには行かねぇんだよ!!!

 

「ふざけた真似を……!分かったような口を聞くな!」

 

それを見て七度は手にした銃をこちらへ向けて構えた。

……いいだろう、相手にとって不足はない。

ここで全員ボッコボコに叩きのめして、目を覚まさせてやらねぇとなぁ!!!!

 

「……まったく、タツミさんは甘いんですから。」

「まぁそう言うなよ……今回も頼りにしてるからな?」

「仕方ありませんわね、お付き合い致します。」

「ありがとう、恩に着る。」

「……ウフフ♡」

「よし、行くぞワカモ!」

「はいっ!」

「行くぞ!FOX小隊、戦闘準備!」

 

俺様とワカモは互いに言葉をかわして頷き合うと、そのままの陣形を維持してFOX小隊へ突撃を行うのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……遅いわね、タツミくん。」

“うん、起きたからホテルの部屋から出発するって言ってからもう結構立つけど……まだ彼の姿は見えないし……”

「うーん、もしかしたらどこかで道にでも迷っちゃってるんじゃないかな〜?」

「えぇ?でも、あのしっかりしているタツミくんに限ってそんな事あるのかしら?」

「……ううんセリカ先輩。もしかしたらホシノ先輩の言う通りかも知れないかも。」

「え、そうなのイブキちゃん?」

「うん。お兄ちゃん、ああ見えて結構道に迷いやすいところがあったりするから……」

「そ、そうなんだ……」

“そう言えば最初に彼にシャーレの当番を頼んだときもシャーレの部室に来るまでに結構迷ったって言っていたような気がするかも?”

「……タツミくん、あんなにしっかりしているのに意外な欠点もあるのね。」

「ふふ、でも完璧な人間よりも少し抜けている部分がある方が親しみが持てると言いますし、そういうところも含めてタツミくんの長所なのかもしれませんね☆」

「ん、でもあのクソボケ具合は間違いない欠点。」

「あはは……容赦ないですねシロコ先輩。」

 

「……ん、でもこれは流石に遅すぎる気がする。」

“そうだね。タツミがホテルを出るって言ってからもうだいぶ経っているし、ホテルからここまでは15分もあれば到着できる距離だからね。”

「うーん……今のところ島を警備しているロボットから特に反応はありませんし、本当に道に迷っているだけなら良いのですが……」

「うーん、仕方ないなぁ。じゃあ、おじさんが探しに行って来ようかな〜?」

「えっ、どういう風の吹き回しよホシノ先輩?」

「んー……おじさんがここにいても修理を手伝えるわけじゃないからね。なら、タツミくんを探してくるほうが有意義かな〜って思ってさ。」

「ほ、ホシノ先輩が自分から人探しを申し出るなんて……!?」

「ん、明日は槍が振るね。」

「……うへー。後輩達からの評価が酷いよ〜。」

“ま、まぁまぁ……そういうことなら頼めるかなホシノ?”

「分かった、任せておいてよ先生。」

「あ、だったらイブキも一緒に行く!いいでしょ?」

「もちろんだよイブキちゃん。一緒に迷子になってるお兄ちゃんを探しに行こっか。」

「うん!ありがとうホシノ先輩!」

「うんうん、元気があってたいへんよろしい。それじゃあみんな、先生。おじさんはイブキちゃんを連れてタツミくんを探してくるから。」

“うん、よろしくお願いねホシノ。”

「気をつけて行ってきてくださいね☆」

「うん、ありがとう。行ってくる。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ……めんどくさいですね。」

「イロハ、この書類はどこに置けばいいのかしら?」

「あぁサツキ先輩。そうですね……そこの机に置いておいてもらえると助かります。」

「分かったわ。よっこいしょっと……ふぅ、これでいいかしらね。」

「ありがとうございますサツキ先輩。」

「構わないわよこのくらい。……それにしても、タツミは毎日こんな量の書類を処理していたなんてね。」

「マコト先輩は全て風紀委員会へ押し付けていたから分かりませんでしたけど、実際に処理するとなるとものすごい量ですからね……」

「しかもタツミは風紀委員会に出向いてマコトちゃんが押し付けた分の書類を取ってきて処理してたものね。」

「こんな殺人的な量、タツミが最近あれほど疲れていたのも納得です。それに加えて他校、特にトリニティへのエデン条約の後始末を含めた外交にゲヘナ内の問題の解決もあるとくれば……無理矢理にでもバカンスへ行かせたのは正解だったかもしれません。」

「タツミは休みの日も給食部や山海經へ行っているし実質的な休みなんて無いようなものだったものね……しっかり休んでもらえるなら、こちらとしても嬉しいわ。」

 

「はい、それにタツミはマコト先輩の代わりに議長代理を務めるようになってから明らかに無理をしているきらいがありますからね。」

「……そうね。私も無理はしないようにとは言っているのだけど、前まではあれほどイブキちゃんにべったりだったのに今ではイブキちゃんに構ってあげられないくらいには忙しそうにしているものね。」

「そうですね。イブキの相手は主にチアキが今はやってくれていますし、イブキもタツミの忙しさを理解しているようですが……」

「……やっぱりあの兄妹の仲の良さを知っている身としては、いつも一緒に居て欲しいわよねぇ。」

「はい、本当にそのとおりですね。」

 

「しかし議長代理という重圧に耐え、更にこの量の書類を日々捌きながら外交にも奔走する日々……1年生であるタツミにそんな役を押し付けてしまっていることに本当に申し訳なくなりますね。」

「……本当は1年生であるタツミにこんな重圧を押し付けるのは良くないのだけど選挙で決まったことであれば覆すわけには行かないものね。」

「なので私達もなるべく手伝ってはいますけど、自分の仕事もある上にこの書類の量では……おかげで最近は満足にサボることすら出来ていませんよまったく……ですが、私達にできることと言えばタツミを全力でサポートして負担を軽くすることくらいですからね。まぁマコト先輩が帰ってくるまでの辛抱ですから、私も程々にはがんばりますよ。」

「ふふ、そうね。マコトちゃんが帰ってきたら、椅子に縛り付けてでも仕事をさせてあげなくちゃ。」

「はい、そうですね。」

「さ、もうひと頑張りね。この書類仕事が終わったらチアキがそろそろマコトちゃんの面会から返ってくるはずだから、私達もコーヒーでも飲んで休憩しましょ。」

「ふふ……はい、ダルいですが頑張るとしますか。」




リアルが変わらず忙しくて少し落ち着くまで時間を要しそうなので、リアルが落ち着くまでは今後4日に1話投稿とさせていただきますと幸いです

楽しみにしている読者の皆様にはお待たせしてしまうことになり大変申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ
今後もどうぞよろしくお願い致します!
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