転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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今回は万魔殿編となります


【番外編】他生徒から見た丹花タツミ 万魔殿編

“……と言うわけで、万魔殿までやって来たわけだけど。”

 

“あの後もゲヘナ中で聞き込みをしたけどタツミに関する悪評は殆どと言って良いほど聞かなかったからタツミがゲヘナの皆から好かれているのはもう言うまでもないことだけど……万魔殿の皆はタツミと毎日顔を合わせて、その上で彼と触れ合う時間が最も長い組織と言っても過言じゃないからね……これは覚悟していかないとなぁ。”

 

“……よし!じゃあ行くとしよう!”

 

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〜万魔殿戦車長の場合〜

 

「……はい?タツミですか?突然何故そんな事を?」

“いやほら、タツミってすごくいい子じゃん?私でさえそう思うほどなんだから、普段から接してるイロハはどう思ってるのかな〜って気になってさ。”

「……そんな事を聞いた所で何になるんですか?」

“そこをなんとか!お願い!”

「はぁ……まぁ、別に減るものでもないし構いませんけれども。おかしな先生ですね。」

“あ、あはは……”

 

「そうですね。タツミのことは……とても頼りになる後輩だと思っていますよ。タツミの呆れるほどのお人好しさ加減は先生も知っているでしょう?私はそのお人好しさに何度も助けてもらったことがありますから。」

“うん。自分のことは二の次で、いつも誰かのために奔走してるよね彼は。”

「全くです。お人好しなのはタツミのいいところですけれど、少しは自分のことも労ってほしいですね。」

“……うん、それには完全に同意かな。”

 

「あとは……仕事もできるし、女性に対する気遣いも心得ている。口調は荒っぽいけど彼から感じる雰囲気は優しい人物特有のものですし、人の気持ちも敏感に察知してフォローしてくれたりもします。例えば、仕事で私が困っているとすぐ手伝ってくれたり、サボっているのをマコト先輩に秘密にしていてくれたり……全く、そういうところにはすぐ気づくのに私の気持ちにはちっとも気づいてくれないんですから。そこは彼の明確な短所ですね。」

“(い、イロハがジト目で頬を膨らませてる……)”

 

「……正直、彼のことは初めはただのイブキの兄だとしか思っていませんでした。」

“えっ、そうなの?”

「はい。そりゃキヴォトスでは滅多に見ない男子ですので珍しくは思いましたけど、それだけでしたね。むしろヘイローを持たない貧弱な肉体でよくゲヘナへの進学を選んだな……と思っていたくらいですから。」

“それはまぁ……うん、そうだね。私も未だにゲヘナの街を歩く時は驚かされるからなぁ。”

「私はもう慣れましたけど、ゲヘナの治安の悪さはキヴォトス随一ですからね。まぁ当の本人は『俺様がイブキと離れることなんてありえないぜ!』ってドヤ顔で豪語していましたけど。」

“あはは……タツミらしいね。”

「はい、本当に。あのクソボケ具合と妹バカさえなんとかなれば本当に非の打ち所が無いんですけどね。」

 

「タツミは仕事も最初はダメダメで書類もまともに処理できずに半泣きになりながらこなしていましたが……彼は決して泣き言を言いませんでした。失敗して何度マコト先輩やサツキ先輩に叱られても頭を下げて努力し、夜遅くまで書類仕事をこなして、徐々に力を付けて万魔殿での地位を高めていきました。」

“(……そっか、苦労したんだなぁ。)”

「当初から指摘されていたヘイローのない肉体でゲヘナに所属するという点も、風紀委員会のヒナ委員長や切り込み隊長に土下座をして初めは彼女達から邪険にされつつも反吐を吐きながら毎日ボロボロの泥まみれになるまで彼女達を相手に訓練をして、ヘイローがないハンデなんて覆してやると目をギラギラと滾らせていました。」

“(……タツミの強さの裏には血の滲む努力があったんだね。)”

「何度ヒナ委員長に地面に倒されても起き上がって食らいついていくタツミの姿には私も圧倒されました。気になった私はそこでタツミに何故そこまでするのか聞いてみたら……彼、なんて言ったと思いますか?」

“……なんて言ったの?”

 

「『絶対強くなって、イブキやみんなを守れるような強い男になりたいんです。もちろん棗先輩、貴方のこともです』って真っ直ぐな目で言われたんですよねぇ……」

“……なるほど?”

「私はどちらかと言うと当初は仕事のできないタツミに対して結構キツく当たっていたので、嫌われているものばかりだと思っていたのですが……まさかそんな風に思われているとは想像すらしていませんでしたね。」

“うんうん。”

「ただ訓練と違って実戦では彼にとっては一発で自分の命を奪いかねない銃弾が飛び交う場所です。初めての実践の場で彼は物陰で自分の銃を抱きかかえながらガタガタと震えて涙を流していましたが……それは仕方ないことでしょうからね。」

“そりゃそうだよね、誰だって怖いに決まってるよ。”

「はい。ですが毎日ボロボロになってまで訓練をしているタツミに対して……私は責める気には全くなれませんでした。それからタツミは更に訓練を重ねて、次の実戦では恐怖を抑え込んで戦い抜いて……今ではあの通り、ヒナ委員長とすらいい勝負が出来るほどになりました。男子3日会わずばなんとやら、というのは本当なんですね。」

 

「それ以外にもマコト先輩のやらかしを一緒に処理したり、愚痴を言い合ったり、時には一緒にサボったり、外交の時に私が失敗しかけた時に必死で頭を下げて庇ってくれたりと……そんな風に接している内に、私はいつの間にか彼に対して心を許していました。」

“そっか、頑張ったんだね彼は。”

「はい。そして今ではタツミは議長代理……今や誰も彼のことをヘイローのない貧弱な男子とは思わないでしょう。どこへ出しても恥ずかしくない、万魔殿の立派な1年生ですからね。」

 

「……正直、マコト先輩が不在の間だけとは言え彼に議長代理等という重い役職を背負わせることになっているのはひとえに私達の力不足に他なりません。だから、せめて私達はタツミが毎日笑って過ごせるようにサポートをしっかりしていきたいと思っています。」

“……うん、私も出来る限りのことはしてあげなきゃね。”

「はい。……でもまぁ、あの妹バカとクソボケ具合だけはどうにかならないものですかね?私、こう見えてもさりげなくアピールしているつもりなんですけどね。」

“うーん……タツミに好意を伝えるなら真面目に直球じゃないとダメなんじゃないかなぁ?あとタツミの妹バカは死んでも治らないんじゃない?”

「……薄々思ってはいましたけど、やっぱりそうですよね。はぁ……本当に罪な男なんですから。ふふっ。」

 

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〜万魔殿情報部長の場合〜

 

「え、タツミをどう思っているか?そりゃあもちろん可愛い後輩だと思っているけど……どうしたの突然。」

“いやほら、タツミってゲヘナはともかく他の学校からも全くと行って良いほど悪評を聞かないじゃん?”

「まぁそれはそうね。なんせ、タツミはゲヘナと犬猿の仲のあのトリニティでさえ上手くやれるくらいだもの。万魔殿の外交官としては満点以上と言ってもいいわ。」

“……あれ、タツミって外交官だったの?”

「あら、知らなかったの?正確には外交官じゃなくて平の議員……今は議長代理だけど、タツミって見ての通り人当たりがよくて気遣いも出来るし、人の気持ちに対して結構敏感でしょ?まぁ、私の気持ちに対してはちっとも気づかないクソボケだけど……」

“(……やっぱり、タツミってサツキの言う通り人の気持ちに対しては敏感だけど自分に向けられる気持ちにだけは鈍感だよね。自己肯定感が低いからなのか、それとも前世で自分に好意を向けられることがなかったから気づいていないだけなのかも……?)”

 

「まぁそれは置いておくとして。そんな感じだから外交へ行った先での評判も結構良いのよね。だからマコトちゃんも他校へ交流へ行く場合はタツミを連れて行って経験を積ませていたのよ。まぁ、マコトちゃんの場合はキヴォトスでも珍しい男の子であるタツミを見せびらかしているって節もあったけれど……」

“あはは……マコトらしいね。”

「でも、万魔殿に入ってきた頃は書類仕事に不備がありすぎて修正で1日を潰していたようなタツミが今や立派な外交官として1人で外交へ赴いているんだもの。当初から指導してきた身としては感慨深いわねぇ……」

“えっ、そこまでだったの?”

「それはもうすごかったわよ。何をどう書けばこんな不備だらけの書類が出来るんだってレベルだったし、私も何度も指摘したり叱ったりしたもの。けど、それでもタツミは根を上げなかった。半泣きになりながらも持ち前の根性と強い精神で取り組んで、今では立派なウチのエースになっているからね。」

“……そっか、いっぱい頑張ったんだね。タツミは。”

 

「まぁそういう訳だから、マコトちゃんと一緒に外交の場にいっぱい赴いて勉強した今ではタツミは主に外交関連の業務を担当しているわ。今は議長代理だから、そこまで他校へ行く機会はないけれどもね。」

“なるほど、そうだったんだね。”

「……まぁそのおかげでよく他校の女を引っ掛けてきちゃうのが欠点だけど。まったく、身近にこんな美女がいるのに失礼しちゃうと思わない先生?」

“(確かにハスミやリンちゃんを普段から見ていると間隔が麻痺しちゃうけど、サツキだってものすごいダイナマイトボディなんだよね……)”

「まったく、疲れた私にマッサージしてくれたり、コーヒーを入れてくれたり、書類仕事を手伝ってくれたり、仕事を失敗した私を庇ってケアまでしてくれたり、真っ暗な倉庫に2人で閉じ込められた時に手を握って励まし続けてくれたり、料理を作ってくれたり、寝落ちていた私に自分のジャケットをかけた挙げ句お姫様抱っこして私の部屋に運んでくれたり、散々私の心を弄んでおいて……釣った魚に餌をあげないなんて失礼な話よね?」

“あ、あはは……”

 

「……で、話は戻るけどタツミは顔が広いほうよ。連邦生徒会にトリニティに……ミレニアムには行ったことがないけど、山海経や百鬼夜行へも個人的に行っているみたいだしマコトちゃんも矯正局へ入る前はその二校への外交をタツミに任せようと言っていたわね。」

“なるほど……そうだったんだね。”

「……まだ1年生のタツミに議長代理なんて役を押し付ける形になってしまっているのは申し訳ないけどね。本来ならマコトちゃんの補佐で、3年生である私がやるべき役だから……タツミには本当に申し訳ないと思ってる。」

“けど、選挙で選ばれたなら仕方ないもんね……”

「えぇ。だから私達万魔殿は全力を上げてタツミをサポートするわ。彼が毎日、笑って過ごせるようにね。」

 

「それにしても、まさかタツミがトリニティのティーパーティーとすら打ち解けられるなんて想定外だったわ……それにトリニティへ行った時はシスターフッドのシスターに囲まれていたり、正義実現委員会にも顔を出しているみたいだし……ねぇ先生、一度トリニティにタツミは誰のものなのか教えてやるべきだとは思わないかしら?」

“け、喧嘩はダメだからねサツキ?”

「……えぇ、分かってるわよ。タツミが彼女達から慕われているのは他ならぬ彼自身が頑張った結果だもの。ゲヘナの生徒があのトリニティの生徒と仲良く出来るなんて昔では考えられないことだしね。」

“……それにしても、よくタツミがトリニティでシスターフッドや正義実現委員会と親しくしてるって分かったね?”

「ふふっ、万魔殿情報部長の実力を舐めてもらっては困るわよ先生?」

 

「それにしても、あのトリニティの正義実現委員会の副委員長には要注意ね。あれは完全にタツミのことを狙っている危険な目をしているわ。」

“……あれ、サツキってハスミと面識ってあったっけ?”

「エデン条約の後処理の時にティーパーティーの桐藤ナギサがゲヘナに来たことがあるんだけど、その時に護衛として正義実現委員会の剣先ツルギと羽川ハスミも一緒に来ていたのよね。剣先ツルギはタツミとは普通に親しげに話していたけど、羽川ハスミがタツミと話すときのあの表情……あれは間違いなくタツミを狙っている目だったわ、あれは早くなんとかしないと危険ね。」

“き、危険ってそんな大げさな……”

「……ねぇ先生。羽川ハスミは私ですら一目みてびっくりしちゃうようなスタイルの持ち主だけど、私だって結構良いものを持ってると思わない?は……恥ずかしいけど彼女にタツミを取られるくらいなら、もういっそ……」

“ちょ、サツキ!ストップ!邪なこと考えちゃダメー!!”

 

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〜万魔殿書記の場合〜

 

「えっ、タツミくんですか?あはっ!先生ってば私からそんな事を聞いて何に使うつもりなんですか〜?」

“い、いや。何に使うつもりもないよ?ただ、チアキがタツミのことをどう思ってるのかなーって思っただけ。”

「んーそうですねぇ……タツミくんはなんと言うか、手のかかる弟って感じの男の子だなーって思ってますね。」

“……あれ、そうなの?”

「はい!タツミくんって仕事もできるし気遣いも出来る完璧超人に思われがちですけど、ああ見えて結構奥手な所がありますからね。万魔殿に入ってきた時はそれはもう、私が手を引いてゲヘナの色々な場所を連れ回して案内をしていたものですから!」

“へぇー、タツミにもそんな時期があったんだね。”

「入学したてでは右も左もわからないでしょうからね!なので私が週刊万魔殿の取材のついでにタツミくんの事を各所に紹介したり、ゲヘナの地区を教えたりしていたんですよ。懐かしいなぁ。」

“そうだったんだね。”

「万魔殿に所属したてのタツミくんはなんと言うか若干世間知らずみたいなところもありましたからね!ですが色々手を引いて教えたおかげで、今やタツミくんはゲヘナのことを隅々まで熟知しています!つまりこれは私がタツミくんを育てたと言っても過言ではないのでは?」

“あ、あはは……”

 

「まぁそれはともかく、確かにタツミくんは仕事も気遣いも出来れば女の子扱いも上手い。それでいて他人の好意にはちっとも気づかないクソボケの中のクソボケ。まさにキングオブクソボケですが……タツミくんは一度頑張り始めると、自分が倒れることも厭わずに頑張っちゃう性格なのは先生も知っているでしょう?」

“う、うん。それは私も理解しているつもりだよ。”

「だから、私はいつもタツミくんが無理をしてるなーって思ったら無理矢理にでも仕事を手伝ったりするようにしてるんですよね。本人は『元宮先輩の手を煩わせるわけには……』って言ってるんですけど、やっぱり無理をしているのを放ってはおけませんからね!」

“そうだね、頑張りやさんなのは良いことだと思うけどそれでタツミが倒れちゃったら意味がないし。”

「その通りです!なのでイロハちゃんもサボりに誘ったり、サツキ先輩も仕事を手伝ったついでにタツミくんを引っ張って買い物に行ったり、イブキちゃんもタツミくんの膝に乗っかって休ませたり、私は取材に行くといって半ば強引に彼を引っ張っていったりと……結構タツミくんには息抜きをしてもらってますからね!マコト先輩もああ見えて、結構タツミくんが無理をしていないかに関してはよく見ていましたから。」

“そっか、愛されてるんだね。タツミは。”

「えぇそりゃもう!私達のタツミくんへの愛は海よりも深いですから!……ふふっ♡」

“(……なんか、今背筋に寒気を感じたような?)”

「それに今のタツミくんは議長代理ですからね。毎日忙しそうにしていますし、そういう意味でも私達がしっかりサポートをしていかないといけません。タツミくんは責任感がとても強い子なので、必ず無理をするでしょうからね!それを止めるのも私達の約目ですから。」

 

「なので世間から見た彼は完璧超人にように見えるかもしれませんが、普段から万魔殿で接している私達にとってはすーぐ人のために無理をしようとする手のかかる男の子って感じですね!まぁ、そこがタツミくんの長所でもあるので無理に止めるつもりはありませんけど。」

“そうだね。呆れ返るくらいのお人好し、それがタツミの良いところであって……同時に悪いところでもあるけど。”

「えぇ、そのせいで悪い虫が寄ってくるわ寄ってくるわでまぁ……特にあの災厄の狐なんかは要注意ですよ先生。」

“えっ、災厄の狐ってワカモのこと?”

「はい。私の見立てではあの災厄の狐は完全にタツミくんにホの字になっていますからね!万魔殿の議長代理が災厄の狐と何か間違いがあってはダメですから、これは前よりもタツミくんをストーk……いや、安全のために監視する頻度を上げるべきかな……」

“……えっ?”

「それに前は山海経の梅花園であの保育士の姉妹にえらく体をくっつけられていたし、連邦生徒会でも会長代理や調停室長からアプローチされてたし、トリニティのシスターフッドでもあの黒髪のシスターの距離が近すぎてタツミくんがドギマギしていたから一度釘を刺して……」

“ち、チアキ……?”

「はっ!?あ、あはは!なんでもないですよ!とにかくそんな感じで、タツミくんは私達万魔殿のものって感じに私は思っています!私達以外の誰にも渡しません!」

“チアキ!?せめて本音は隠そうよ!?”

 

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〜タツミの妹の場合〜

 

「え、お兄ちゃん?もちろん大好きだよ!お兄ちゃんはいつもイブキと一緒に遊んでくれたり、お膝の上に乗せてくれたり、頭を撫でてくれたり、お料理を作ってくれるんだー!えへへ、いいでしょー先生!」

“うんうん。素敵なお兄ちゃんなんだね。はぁー、イブキは癒やされるなぁ。”

「……どうしたの先生?お仕事で疲れてるの?」

“あぁいや、ごめんねイブキ。ちょっと色々あってね。”

「そっか、あんまり無理しちゃダメだよ先生!先生が倒れたら色んな人が悲しむってお兄ちゃんも言ってたんだからね!」

“うん、肝に銘じておくよ。ありがとうね。”

 

“そう言えば、タツミはイブキと一緒にゲヘナへ入学したんだったよね?”

「うん!イブキは本当はしょうとうぶ?に通う予定だったんだけど、とびきゅう?でマコト先輩から『我が万魔殿へ迎え入れよう!』って誘われて万魔殿に入ったんだー!そこにお兄ちゃんも一緒に来てくれたの!」

“そっか、タツミらしいね。”

 

「それにね!お兄ちゃんはお家でもイブキのためだって言って色んな場所に連れて行ってくれたり、お父さんとお母さんと一緒に遊んでくれたり、家族みんなでお料理をしたり、写真を取ったりしていっぱいアルバムにしまってるんだー!」

“そうなんだ、すごく楽しそうかも。”

「うん!お兄ちゃんはもちろん大好きだけど、お父さんもお母さんも大好きなんだよ!」

“ふふ、素敵なご家族さんなんだね。”

 

「けど、お兄ちゃんってイブキが小さい頃は今みたいに優しく無かったんだよね。なんというか、ちょっと冷たかった気がするんだ。」

“……えっ、そうなの?”

「うん。でも、イブキがちょっと大きくなった頃に急にお兄ちゃんが泣きながら謝ってきたんだ。『今まで自分の都合で冷たくしてごめん、これからはお兄ちゃんと一緒にいっぱい楽しい思い出を作ろう』って言ってくれて……それから、今みたいになったんだよね。」

“(……なるほど。タツミは前世で天才だったお兄さんのせいで家族からの愛を放棄されていたからね。イブキが天才児ってことで、その記憶が蘇ってしまったのかも。けど彼は両親に前世のことを打ち明けて気持ちの整理が付いたと言っていたし……それで、イブキともきちんと向き合えるようになったのかもしれないね。)”

「その後はお兄ちゃんはいっぱいイブキと遊んでくれたし、イブキもいっぱいお兄ちゃんに甘えたんだ。お兄ちゃんの事はずーっと好きだったからね!お父さんとお母さんが心配になるくらい、毎日ずっと一緒だったよ!」

“そっか、今では誰もが認める仲良し兄妹のタツミとイブキも昔はそんな時期があったんだね。”

「うん。けど、今ではお兄ちゃんはイブキが大好きだしイブキもお兄ちゃんが大好きだからね!今がよければ昔のことはかんけーないのです!えっへん!」

 

「でも、最近のお兄ちゃんはすごく忙しそうであんまり遊んでもらってないんだよね……マコト先輩の代わりにぎちょーだいり?になったから、前よりも忙しくなっちゃったって言ってるからしょうがないんだけど。」

“……そうだね、最近のタツミはすごく忙しそうにしているもんね。”

「うん。お兄ちゃんが大変なのは分かってるからイブキもイロハ先輩やチアキ先輩と遊んだりしてるんだけど……やっぱりお兄ちゃんと遊んだり、頭を撫でてもらうのが一番嬉しいかなぁ。」

“(そりゃそうだろう。イブキは飛び級できるほどの天才児だけど、その実まだ11歳の幼い女の子だ。大好きな兄に構ってもらえない寂しさは計り知れないな……)”

「でもお兄ちゃんがぎちょーだいりなのはマコト先輩が帰ってくるまでだし、お兄ちゃんが忙しいのにイブキのワガママでお兄ちゃんを困らせちゃダメだからね!イブキはいい子なので、ちゃんと我慢できるのです!」

“……ふふ、うん。イブキはとてもいい子だよ。”

「えへへ!」

 

「だから、イブキもちょっとでもお兄ちゃんをお手伝いするために最近はお仕事のお勉強をしてるんだ!サツキ先輩に教えてもらってるんだよー!」

“そっか、きっとタツミも喜んでくれると思うよ。”

「うん!早くお仕事出来るようになって、お兄ちゃんを手伝ったら早くお仕事が終わるし一緒に遊んでもらえる時間も増えるから。お兄ちゃんはそんな事しなくてもいいって言ってくれてるけど、イブキだって守ってもらってばかりじゃダメだからね!がんばるよ!」

“うん。私も心から応援してるよ、イブキ。”

「わーい!ありがとう先生!」

 

“そう言えば、イブキは万魔殿以外でのお友達はいるの?”

「うん!山海経のココナちゃんとは前にお兄ちゃんに連れて行ってもらってお友達になったんだけど、よくモモトークでおしゃべりしてるんだー!」

“あ、ココナちゃんとお友達なんだね。確かにココナちゃんはタツミと知り合いだし、そこの繋がりがあってもおかしな話ではないか……”

「お兄ちゃんは食べ物が美味しいからってよく山海経へ行くんだけど、ココナちゃんが教官をしてるばいかえん?も手伝ってるらしいんだって!流石お兄ちゃん!イブキの自慢のお兄ちゃんだよ!」

 

「……けど、いくらお仕事でも他の学校に行って女の子と仲良くしてるのは良くないよね。いくらココナちゃんとは言え、お兄ちゃんはイブキのものなのになぁ……?」

“えっ?い、イブキ……?”

「そうだよ、お兄ちゃんが一番好きなのはイブキなのにお兄ちゃんを取ろうとするなんて……それにシュンお姉ちゃんもちょっと危ないし今度一度……ふふふ……」

“イブキ!?帰ってきてイブキィー!!!”

 

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〜万魔殿議長の場合〜

 

「キキキッ!よく来たな先生!このような狭っ苦しい場所で申し訳ないが、盛大に歓迎しよう!」

“う、うん。それはありがたいんだけどあまりふんぞり返らないほうがいいんじゃないかなマコト……後ろのヴァルキューレの子がすごい目でこっちを見ているよ……?”

「あぁ、彼女は生まれつき目付きが悪いらしくてな。勘違いされやすいとよく嘆いているんだ。」

“……あれ、あのこの知り合いなの?”

「面会時間の時に面会室を監視している看守らしいのだが何度も顔を合わせる内に話す中になってな。なに、目つきこそ悪いが中々良いやつだぞ。」

“そ、そうなんだね……”

 

「……で、何だ。タツミのことだったか?」

“うん。マコトから見て、タツミはどんな子に見える?”

「そうだな……タツミは仕事も出来れば他人を思いやる優しい心を持った少年と言う長所と、一度言ったことは絶対に曲げない頑固な部分や他者のためであれば自分を顧みない若さ故の無鉄砲さと言う短所を抱えた青い奴……と言う感じだろうな。」

“……なるほど?”

「知っての通り、私はアリウスと共謀してトリニティと風紀委員会を陥れようとした。本来であれば問答無用で極刑になってもおかしくはない所業をしている。」

“……けど、今はきちんと服役して罪と向き合ってるんじゃないのかな?”

「それは全て奴……タツミのおかげだ。本来、私はエデン条約後に行われた裁判で永久に矯正局への収監と議長の座を剥奪されてもおかしくなかった。それをタツミはその場で何の躊躇もなく頭を下げ、私を庇い、私のために謝り通してくれた。その所業は一歩間違えばタツミ自身の地位も脅かすものだったに違いないだろう。」

“…………”

「だがそのおかげで私はこうして矯正局で反省するだけで済み、出所後には議長の座へ戻ることが決定している。タツミが各所で築いてきた人脈、そして彼自身の持つ他者を思いやる心、そして他社のためであれば自分を顧みない無鉄砲さ……それに私は救われたからな。」

“マコト……”

「キキキッ……どうだ、いい男だろう?タツミは。」

“うん、本当にね。”

 

「……先生、タツミはゲヘナで上手くやっているか?」

“うん。まだ慣れない仕事に四苦八苦しているけど、万魔殿の皆の力も借りて立派に議長代理を務めているよ。”

「……そうか。なら良かった。私のせいでタツミには議長代理などと言う思い責任を負わせてしまっている。この前の面会でサツキに心配するなとは言われたが元はと言えば私のせいでタツミに負担をかけてしまっているからな……本来タツミはまだ1年生だ。これから経験を積んでいく歳であり、決してトップに立つような時期ではないのに……申し訳ない限りだ。」

“大丈夫だよマコト。タツミは強い子だ。確かに前までは1人で抱え込むことも多かったけど最近は万魔殿の皆がきちんとサポートしているおかげで人に頼る事も覚え始めているみたいだし、私も何かあれば助けになるからさ。”

「……すまん先生。恩に着る。」

“ううん、これくらいお安い御用だよ。任せておいて!”

 

「キキッ、そう言ってもらえるのは頼もしい限りだ。先生、このマコト様が信頼をおいている貴方にだから言っておくが……タツミは恐らく、心の何処かに闇を抱えている部分があると私は踏んでいる。」

“……えっ?”

「それが何なのかは私には分からん。だが出来ることであれば、私はタツミのその心の闇も払拭してやりたいと思っているよ。それがあいつの上司の……それ以前に何よりも、共に過ごす仲間としての役目だからな。」

“……タツミから聞き出そうとは思わないの?”

「キキッ、誰にだって人に話したくない心の闇の1つや2つくらいあるものだろう。タツミはああ見えて不安事や懸念があれば相談をよくしてくるタチだ。そんなタツミが話したくない事情となれば、よほど彼にとってデリケートな問題……そんなところへズカズカと土足で踏み込むわけにはいかない。タツミ自身が話してくれる気持ちの整理が付くまでは、私は気長に待つつもりさ。」

“……そっか、タツミのことを大切に思ってるんだね。”

「当たり前だろう?タツミは私の恩人でもあり、そして何よりもこのマコト様が見込んだ男なのだからな。……今言ったことは口外禁止で頼むぞ?こんな事を他の誰か……特にタツミ本人に聞かれるとマズイからな。」

“うん、約束するよ。”

「あぁ、感謝する。」

 

「キキキ!では辛気臭い話はここまでにしておこうか先生!ここからはこの偉大なるマコト様の、矯正局での日々について聞かせてやろう!」

“え、えぇ……それはちょっと遠慮させてもらおうかな?”

「何ィッ!?先生はこのマコト様の超偉大な矯正局での功績を聞きたくないと言うのか!?」

“(いや、そもそも矯正局での功績って一体……?)”

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

“……ふぅ、マコトの矯正局での武勇伝を聞いてたらすっかりこんな時間になっちゃった。シャーレに戻って溜まってる書類を片付けちゃわないとなぁ。”

 

“けど、やっぱり言うまでもないけどタツミは万魔殿の皆からはすごく愛されていたね。それに彼の意外な一面も知れたし、収穫は大きかったと言えるかな。さて、それじゃあ次はタツミと交流のある他校へも聞き込み調査へ行くとしよう。”

 

“その前に書類を片付けないとだけどね。トホホ……”




次回は他後編です
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