転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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今回は山海経編です


【番外編】他生徒から見た丹花タツミ 山海経編

“さて、今日はシャーレの仕事で山海経までやって来たわけだけど……やっぱりあまり歓迎はされていないみたいだね。山海経は伝統的に内向的な学園だから仕方ないかもしれないけど、こうも冷たくされるとちょっと落ち込んじゃうなぁ……”

 

“まぁでも生徒の前で情けないところを見せるわけには行かないからね!ルミ達みたいに歓迎してくれている子達もいることだし、前向きに行こう!”

 

“……そう言えば、今の今まですっかり忘れていたけど山海経と言えばよくタツミがシュンやココナちゃんの手伝いに梅花園に行っているって話だったよね。休みの日に他の学園までわざわざ手伝いに行くに行くタツミはもう置いておくとして、そういうことなら山海経でのタツミの評判とかもちょっと気になるところではあるね。”

 

“……一応、聞き込みしておこうかな。”

 

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〜玄龍門門主の場合〜

 

「よう来たな先生。何のもてなしも出来んが、時間の許す限りはゆっくりしていくと良い。」

“ありがとうキサキ。ところで、藪から棒な話で申し訳なけないんだけどキサキに聞きたいことがあるんだ。”

「ほう、妾に聞きたいこととな。よい、申してみよ。」

 

「……なるほど、タツミのことじゃったか。もちろん知っておるよ。ゲヘナ学園に所属している1年生で万魔殿の議長代理を努め、更には頻繁に梅花園の教官達の手伝いに来ておるあの男のことじゃろう?」

“あ、良かった知ってたんだね。”

「いくら玄龍門が代々他学園との交流を拒んできたとは言え、流石にそのくらいは知っておるよ。それにタツミはしょっちゅう梅花園へ出入りしておるからのう。今や山海経において一番有名な学外の人間と言っても過言ではないじゃろうて。」

“そ、そんなに有名なんだねタツミって……”

「自分で言うのもなんじゃが、山海経はゲヘナやトリニティのような学校と比べると田舎。それも閉鎖的と来ているからの。そんなところに他校の人間が出入りしていれば、いい意味でも悪い意味でも目立つじゃろう?」

“それは……たしかにそうかもね。”

 

「さて、本題じゃが……妾は玄龍門の門主と言う座に座っておる身。故にあまり大きな声で言うことは出来ぬが……個人的にタツミのことは1人の人間として好ましくは思っておる。あやつは良くも悪くも殆ど裏表の無い人間。こういう座に座っておると甘い顔をして近づいてきて、裏では良からぬことを企む輩などいくらでもおる。そういう連中と違って、要職に付いているにも関わらずあれほど自己を投げ捨てて他者のために尽くす人間など絶滅危惧種と言ってもいいじゃろうからのう。」

“(なるほど。キサキ自身は違うとは言え、表向きでは閉鎖的な玄龍門の門主からここまで言われるとはね……)”

「タツミと直接話した事は少ないが、シュン教官やココナ教官の話を聞く限り悪人には見えぬし何よりも梅花園の子ども達が懐くはずがないからのう。子どもと言うのは存外大人のことを良く見ているものじゃからな。」

 

「で、その上でじゃが妾はタツミの性格や器量、他者の気持ちを察して気を使う事のできる視野の広さや相手を立てる精神は評価しておるが……一方で、あやつの己の顧みぬ呆れてしまうほどの自己犠牲精神は危ういとも思っておるよ。」

“……やっぱり、キサキから見てもそう見える?”

「……というより、タツミを見ているとその危うさにハラハラさせられる節はないかえ?奴は己のことを俺様などと大層な呼び方をしている割には、真面目で律儀かつ責任感が強い男じゃ。面倒事にはすぐ首を突っ込み、喩え敵であろうと救えるものは救おうとするその精神は評価すべきと同時に、明確なあやつの欠点でもある。今はまだなんとかなっておるから良いじゃろうが、止めるべき時はしっかりと叱りつけてやるべきであろうな。」

“(……やっぱりキサキはすごいな。あまりタツミと交流はないだろうに、タツミのことを良く理解している。流石は上に立つ人間……と言ったところだろうね。)”

 

「まぁそれはともかくとして、タツミには妾も感謝しておる。タツミが梅花園を手伝うようになってからはシュン教官やココナ教官の笑顔も増えたことじゃし、玄龍門のよそ者を嫌っておる構成員ですらタツミにだけは態度が柔らかい輩も居るからの。ミナもタツミとは幾ばくか打ち解けておるようじゃし、外部との交流が増えるというのは良いことであろうからな。」

“そうなんだ……すごいんだね、タツミは。”

「うむ。タツミのおかげでゲヘナとの学園を挙げた交流会を行うという話も出ておるくらいじゃから、玄龍門の門主として是非改めて礼を言わせてもらいたいのう。」

 

〜玄龍門ナンバー2の場合〜

 

「……先生?奇遇だな。門主様との会談の帰りか?」

“あ、ミナ。うん、そんなところかな。”

「そうか、門主様の前で粗相は無かっただろうな?」

“大丈夫だと思うよ、多分。それよりミナ、少し聞きたいことがあるんだけど……”

 

「タツミか?そうだな、あいつは良い奴だぞ。確かに我々が忌むべきよそ者ではあるが、奴は不良に苦戦していた我々の前に颯爽と現れて手を貸してくれた上に名も名乗らずに去っていこうとしたからな。その姿になんてハードボイルドなんだと痛く感銘を受けたものだよ。」

“あ、あはは……ミナらしいね。”

「ん?そうか?あぁそれとあいつは私がマフィア映画を見ていることについて肯定もしてくれたんだ。玄武商会のあの忌々しい脳みそが筋肉でできているカンフー女にはいつもバカにされる趣味を、タツミは「俺様もヤクザもののゲームとかしてましたよ、やってることは許されることではありませんが立ち振舞は格好いいですよね」と言ってくれたからな!」

“やってることが許されないのは否定しないんだね……”

「それはまぁ、ヤクザやマフィアのシノギ……いわゆる仕事は紛れもない犯罪行為だからな。マフィア映画は好きだが私は作中の人物の立ち振舞が好きなのであって、そこを真似るつもりは決してないから安心してくれ。」

“そっか、なら良かった。”

 

「それにタツミは梅花園の教官達の手伝いをしに来てきれているし、私も梅花園にはよく顔を出すからな。自然と話す機会も増えやつと打ち解けたのもあるだろう。」

“うん、休みの日にはしょっちゅう梅花園に顔を出しに行っているよねタツミって。”

「あぁ。今のあいつはゲヘナの議長代理をしていると聞いているから、いつ休んでいるか少し心配だがな……」

“良かったら、今度ミナからもきちんと休めってタツミに言ってもらえないかな?”

「それは構わんが、あいつが私にそう言われたくらいで梅花園へ行くのをやめるとは思わんがな……あまり大きな声では言えんが、私の部下の中にはよそ者を親の敵のごとく嫌っている者も多いが、タツミにだけは助けられた恩義を感じているのか少しだけ態度の柔らかい連中も居る。彼女達とてタツミが倒れることは望んでいないだろうから……分かった。今度、また言っておくとしよう。」

“うん、よろしくねミナ。”

 

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〜玄武商会会長の場合〜

 

“うぷ……る、ルミ……気持ちは嬉しいんだけど、流石にこんなにたくさん食べられないよ……”

「何言ってるのさ!先生は普段から仕事が忙しくてあまりちゃんとした物を食べられてないってタツミから聞いてるよ!なら、このくらい余裕だろ?」

“き、気持ちはありがたいけど私もう高校生じゃないんだしそんなに食べ盛りじゃ……うっぷ……”

 

“し、死ぬかと思った……”

「ははは、大げさだねぇ。……で、確かタツミの事をどう思っているかって事を聞きたいんだったね?」

“う、うん。そうなんだ。”

「そうだねぇ……一言で言うなら、タツミは底の知れない男って感じだろうね。」

“底の知れない男?”

「もちろん悪口じゃないよ。いい意味で底が知れないってことさ。だって考えてもみな先生。タツミは普段ゲヘナの万魔殿で自分の仕事をこなしながら、休みの日には梅花園の手伝いに来てるんだよ?普通ならやっとこさ取れた休みを、給料も出やしないボランティアに費やそうと思える人間がこの世にどれだけ居ると思う?」

“……そう考えると、タツミって結構とんでもない事をサラッとしているよね。”

「だろう?それにタツミは気概や愛嬌もあるし、誰に対しても優しい。それでいて手先も起用で、料理の腕だって流石に私よりは少し劣ってるけどレイジョが言うには充分店で出せるレベルのものらしいからね。何なら料理人として雇えるなら雇いたいって言っていたよ。」

“それは……確かに底が知れないね。”

「ま、そういうことだね。タツミはよく梅花園が発注した食材を受け取りにウチに来るから私も結構交流はある方だけど、それでもまだ底の見えてこない不思議な人って感じがして……ふふ、結構面白い男かもね?」

 

〜玄武商会会長のボディガードの場合〜

 

「……先生?こんにちは、お疲れ様です。」

“やぁレイジョ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど今時間って大丈夫かな?”

「……?はい、構いませんが……」

 

「なるほど、タツミさんのことですか。そうですね、彼は山海経へ来るたびに手合わせをお願いしている良き鍛錬の相手と言う風に認識しています。」

“そう言えば、タツミは良くレイジョと手合わせしてるってこの前聞いたような気がするけど。”

「えぇ、それは事実ですね。タツミさんは梅花園の食材を取りに玄武商会をよく訪れるのですが、その際に時間がある時はいつも彼と手合わせをしているのです。カンフーは一日にしてならずと言いますし、私自身もイメージトレーニングや自主練習のみならず実際に技を振るえる相手がいるというのは大変心強いですから。」

 

「タツミさんはとても強い方です。初めはヘイローのない男の方と言うことで戸惑いがありましたが一度手合わせが始まればそんな気持ちは吹き飛びました。彼の体の動き、重心の位置、盾の使い方、相手の行動に対する鋭い読み……どれをとっても一級品です。キヴォトスでも有数の実力者だと言っていいでしょう。あの治安が悪いことで有名なゲヘナで生き残れるだけの事はあります。」

“うん、私としてはそれでも心配になる部分も多々あるけど……タツミの強さはすごいと思っているよ。”

「はい。そして強さに目が行きがちですが、彼の一番の強さはその強い気持ち。絶対に折れない心です。一度何かを守ると決めたら誰に何を言われようが、どんな目に会おうがそれを貫き通す。その頑固とも呼べる程の精神が彼を突き動かす原動力なのでしょう。」

“確かに、タツミっていつもは柔軟だけど自分が決めたことに対してはかなり頑固な部分はあるよね。”

「はい。ですがそれは裏を返せば芯が強いということでもありますからね。行き過ぎるのは良くないですが、しっかりとした自分の考えがあるというのは素晴らしいことだと思います。」

 

「それに、タツミさんはお優しい方ですからね。一度彼と手合わせをしている最中に私が下手を打って足をくじいてしまった事があるのですが、その際に彼は血相を変えて私を背負って煉丹術研究会まで走ってくれましたし……それに恥ずかしながら、店舗運営で生じた悩みや愚痴などをモモトークで聞いてもらってもいますから。」

“あ、そうなんだ。”

「はい。彼はとても聞き上手なので……ふふ、ついつい余計なことまで話してしまいそうになりますね。腕っぷしが強く、料理に関してもルミ会長も認めるほどの腕……ウチの従業員として雇えたらどれだけ良いことか……」

“(これは……ちょっと要注意ってところかな?)”

 

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〜梅花園の教官、姉の場合〜

 

「梅花園へようこそ。ゆっくりしていって下さいね先生。きっと子ども達も喜んでくれますよ。」

“うん、ありがとうシュン。ところで、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……”

 

「タツミくんですか?はい、彼にはとっても感謝していますよ。タツミくんの仕事が非番の日にはわざわざゲヘナから山海経まで来て梅花園を手伝ってくれていますし、ココナちゃんや子ども達からもとても好かれています。今ではタツミくんが来る日を心待ちにしている子も居るくらいには、園にとってすごく大切な人になってくれていますから。」

“イブキの相手をしてきたからかは分からないけど、タツミって子どもの相手をするのが上手いよね。”

「はい、それはもうとーっても。私やココナちゃんが言っても泣き止まない子がタツミくんが相手をするとすぐに泣き止んだり、ワガママを言う子もタツミくんの言うことなら素直に聞いたり、喧嘩をしたときもすぐにお互いに謝って仲直りしたり……もう本当に、普段から梅花園の教官としてお迎えしたいくらいですから。」

“あ、あはは……でもそれを聞くとたしかに教官として迎えたくなる気持ちは分かるかもしれないなぁ。”

 

「けど、時々思うんです。私達はタツミくんに負担をかけていないのかって。先生もご存知でしょうが、タツミくんは今やゲヘナの議長代理。とても忙しい身です。休日だって前より減っているでしょうに、それでも休みの日は必ず梅花園に来て手伝ってくださっている……一度タツミくんに無理をしてほしくないと伝えたのですが「俺様がやりたくてやってることだから」と笑顔で言われてそれ以上は何も言えなくなってしまって……実際園の仕事はとても大変で、タツミくんが手伝ってくれるのは助かりますが……彼に無理をさせていないでしょうか。」

“それは私も常日頃から思ってるよ。タツミは議長代理になってからはすごく忙しそうにしているし……だから、もしシュンがタツミに無理をさせていないか心配ならシュンがタツミをお休みさせてあげるって言うのはどう?”

 

「タツミくんにお休みを……ですか?」

“うん。例えば子どもたちのお昼寝の時間にタツミも一緒に寝かせてあげるとか、申し訳ないけどココナちゃんに園を任せて二人で街へ行って息抜きするとか。多分タツミがやりたくてやっているって言ってるのは本音だろうしタツミ自身子どもが好きなところはあるから、来るなって言ってもタツミは来るのは辞めないと思うよ。あの子は変な所で頑固だからね……だから、そういう方向からタツミを癒してあげるといいんじゃないかな?”

「……そうですね。確かに先生の言うとおりかもしれません。そういうことであれば、今度ココナちゃんとも相談してとびっきりの息抜きをタツミくんに用意してあげなくてはいけませんね。」

“うん、それが良いと思うよ!”

「そうと決まれば今から何をするか考えておかなければいけませんね。今までもお昼寝の時間に寝落ちてしまったタツミくんに膝枕をしたりはしていましたが……」

“……ん?”

 

「それに私が困っているとすぐに横に来て助けてくれますし、肩が凝るって言ったらマッサージもしてくれて、愚痴だって何時間付き合ってもらっても嫌な顔一つしないし、悩みの相談にも乗ってくれて、それに料理も上手だし気配りもできて優しくて……それに何よりも、私が甘えたいって言ったら恥ずかしがりながらもちゃんと甘えさせてくれて……」

“(……あれ?)”

「普段は梅花園の教官として気を張っている私ですが……彼の前だと1人の女として、春原シュンとして弱みをさらけ出せるので……ふふ。日頃のお礼も兼ねて、彼にはたくさん休んでいただかなければ♡」

“(……まぁその、頑張れタツミ!)”

「……それだけに、エデン条約の会場で彼が負傷したと聞いた時は気が気ではありませんでした。本当に、タツミくんが無事で良かったです。」

“……うん、そうだね。”

 

〜梅花園の教官、妹の場合〜

 

「あっ、こんにちは先生!梅花園へようこそ!」

“やぁココナちゃん。今日も可愛いね。”

「むっ、子ども扱いしないで下さい先生!私はこれでも立派な教官なんですからね!」

“あはは、ごめんごめん。それよりココナちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどね……”

 

「えっタツミさんですか?そうですね……とってもいい人だと思います!園の子ども達は気難しくて中々他人には懐かないんですけど、タツミさんにはすごく懐いていますし……それに私が言い聞かせても聞かないのにタツミさんが言うと一回で聞くんです。」

“(うーん……ココナちゃんの場合は飛び級ってこともあるってことを抜きにしても、本当にタツミは子どもの扱いが上手いよね。何かコツとかあるのかなぁ?)”

「それにタツミさんは私が困っているとすぐに飛んできて助けてくれますし、何よりもみんな私のことを子ども扱いしたりするのにタツミさんはきちんと私のことをココナ教官って呼んでシュン姉さんと同じように一人前の教官として扱ってくれるんです。何なら「その歳で教官をやれているココナ教官はすごい」と褒めてもくださいましたし……それに責任ある仕事を任せられている時点で立派なレディだよとも言ってくれて……えへへ♡」

“(あ、ココナちゃんが笑ってる。可愛いなぁ……)”

 

「もちろん子ども扱いもたまにされますが……た、タツミさんになら子ども扱いされるのも悪くないかも……はっ私は何を言ってるの!?」

“(……うん?)”

「と、とにかく!とても頼りになるのでついつい園に来たら膝の上に乗せてもらって頭を撫でてもらったり、私も彼に抱きついて彼の匂いを……ってそうじゃなくて!」

“(あれ、なんか雲行き怪しくない?と言うか滅茶苦茶子どもってアドバンテージを活かしてないかな?シュンが聞いたら泣いちゃうよ?)”

「た、タツミさんはとっても頼りになる兄さんです!決して他意はありませんからっ!」

“(……いや、兄さんって呼んじゃってるし。)”

 

「……それに、タツミさんのおかげでイブキちゃんと言う大切なお友だちも出来ましたからね。イブキちゃんとはとても仲良くさせてもらっていますし、そう言う意味でもタツミさんは私にとって大切な人です。だから、この前のエデン条約でタツミさんが負傷したって聞いた時は涙が止まらなかったですけど……無事で良かったです。」

“……うん、そうだね。タツミが無事で本当に良かった。”

「はい。それに姉さんとも話してたんですけど、タツミさんは普段のお仕事もあるのにお休みの日に梅花園に来てくださっているので……恐らくタツミさんの性格からして来なくても良いと言っても来ると思うので、また今度彼の疲れを少しでも癒してあげられればと思います!毎回毎回タツミさんには申し訳ないとは思いますけど、私だって彼と会いたいですし……」

“(……なんか、ココナちゃんって思ってるより大人な考え方なんだよね。逆にシュンは意外と子どもっぽいと言うか……そういう意味でも姉妹なのかもね?……同じ男の子の好きになるところもそっくりだし。”

 

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〜錬丹術研究会会長の場合〜

 

「……あれ、先生?珍しいね、先生がわざわざ錬丹術研究会まで来るなんて。今日はどうかしたのだ?」

“やぁサヤ。実はちょっと聞きたいことがあってさ……”

 

「タツミのこと?えっと……言いにくいんだけど、ぼく様はタツミは結構後先考えずに危険なことに首を突っ込んでいく危なっかしい奴だと思ってるのだ。もちろん、彼がいい人なのは否定しないけどね。」

“そうだね、概ね私も同じ意見かな……彼はすごくいい子なんだけど自分に降りかかる火の粉をはらおうともせず対岸の火事の心配をするような子だからさ……”

「まさかタツミがヘイローのない身でキヴォトス人を庇うなんて……知らせを聞いた時はびっくりしたのだ。タツミならいつかはやりかねないと思ってたけど、流石に死ぬのは怖いだろうと思っていたから心底驚いたよ。こんなこともあろうかと、損傷した体を即座に修復する薬をタツミに渡しておいて正解だったのだ。」

“うん、ありがとうねサヤ。あの薬がなければ今頃タツミは死んでいたかも知れないから……本当に感謝してる。”

「ううん、お安い御用なのだ。でも、いくらなんでもそんな無茶苦茶な真似をしてまで人を助けるのは……ちょっとやりすぎな気もするのだ。タツミがお人好しなのは悪いことじゃないけど、行き過ぎると身を滅ぼしかねないような気もするから……先生、念のため今度もう一回薬を調合するからタツミに渡しておいてくれる?」

“うん、分かった。ありがとう。”

 

「それにしても、タツミのあの人助けの精神は一体どこからくるのか不思議なのだ。ゲヘナならともかく、よそ者に対しては嫌悪感を隠さない山海経ですらあの調子だし……まぁぼく様も彼には助けてもらっているから、あまり強くは言えないけど心配はするのだ。」

“(多分それは彼の前世が関係しているのは間違いないだろうけど……それをサヤに言うわけにはいかないしな。)”

「結構な事を言ってるけど、ぼく様もタツミのことは人として好きだし尊敬もしているのだ。確かに危なっかしいけど彼の優しさは本物だし、錬丹術研究会に遊びに来たときも人懐っこくて礼儀正しいから研究会の皆からも人気だし、ぼく様も彼のことは可愛い後輩だって思ってる。……だからこそ無理はしてほしくないのだ。」

“……うん、そうだね。”

「さて、辛気臭い話になって悪かったのだ先生。とにかくぼく様はタツミのことは可愛い後輩だって思ってるのだ。また今度、タツミにあったら煉丹術研究会へも顔を出して欲しいって言っておいてもらえると助かるのだ!」

“うん、分かった。ありがとうサヤ。”

 

(……申谷カイの件でタツミには意図しない形でこっちの事情に巻き込んじゃってるから申し訳ないのだ。だからせめてでも、タツミが危険な目に遭っても大丈夫なよう薬を調合する。それがぼく様に出来る唯一の彼に対する罪滅ぼしだと思うのだ。結局あれから申谷カイからのコンタクトはないけど、もうすぐ月光祭の時期だし……多忙な時期を狙ってくる可能性はある。油断はできないから今後も気を引き締めないとなのだ。)

 

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“さて、一通りこれでタツミと交流のある子に聞き込めたかな?京劇部の子たちはタツミと会ったことがないらしいから、そっちはまた今度行くとしよう。”

 

“それにしても、よそ者に対してかなりあたりの強い山海経でこの評価をされているなんて……これもタツミが頑張ってきた結果なんだろうね。先生として誇らしいよ。”

 

“さて、それじゃあDU地区へ戻るとしようかな。一旦シャーレに帰らないと行けない用事もあることだしね。”

 

“帰ったらまた積み上がった書類の整理かぁ……最近リンちゃんも容赦がなくなってきたからなぁ。まぁでもリンちゃんを助けると思えばこのくらいなんてこと無いよね!”

 

“よーし!頑張るぞー!”

 

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〜シャーレにて〜

 

“ただいまー。”

「おう、おかえり先生。」

“あれ?タツミ?どうしてシャーレに?確か今日はトリニティでナギサと会談だったんじゃ?”

「いや、思ったより早く終わったから羽沼議長の面会ついでに先生に渡したい書類があってシャーレに寄ったんだよ。そしたら当番の早瀬先輩が先生は今日は山海経へ出向いてるって言ってたから帰ろうと思ってたんだが丁度良かったぜ。はいこれ。」

“そうだったんだね。こんな遅い時間まで待ってもらってわざわざありがとうタツミ。”

「気にすんな。早瀬先輩とコーヒー飲みつつ話しながら待ってたし、それに書類もいくらか手伝ったから暇はしてなかったしな。先生も忙しいだろうからゲヘナまで来てもらうのも悪いしついでに持ってこれるなら、それに越したことはないだろうしよ。」

“書類の整理までしてくれたんだ……ありがとうタツミ。”

「おう、このくらいお安い御用だぜ。」

 

「……そういや先生、また机の上にカップラーメンの容器や半額シールの貼ってあるコンビニ弁当が転がってたけどまたジャンク飯ばっか食ってんじゃないだろうな?」

“ぎくっ!だ、だってしょうがないじゃん!カップ麺やコンビニ弁当なら手間もかからないんだもん!”

「はぁ……まぁ菓子パンとエナジードリンクだけだった頃よりはマシなのは違いないが、カップ麺やコンビニ弁当だと食物繊維が足りなくなるだろ。今度当番の時に野菜使ったメニューで昼飯作ってやるから、日頃からきちんと野菜も食うように心がけるんだぞ?」

“うぅ……はーい。”

「うんうん、分かればよろしい。」

“……なんか、タツミってお母さんみたいだよね。”

「いや、誰がお母さんだよ。せめてお父さんだろ。と言うか、俺様は先生みたいなでっかい娘を持った覚えはないんだが?」

“ふふ、冗談だよ冗談。”

「まったく……そういうことだから、食生活はキッチリしとくんだぞ先生。んじゃ、俺様はこの後イブキのプリンを買って帰ってやらないといけないからそろそろお暇させてもらうとするわ。」

“うん、分かった。気をつけてねタツミ。”

「おう!じゃ、また今度な!」

 

“やっぱり、最後の笑顔だけ見ると年相応の可愛い男の子なんだよなぁ……中身は大人びてるんだけどね。”

「先生!帰ってきたなら書類を手伝って下さい!朝から大変なんですからね!」

“あ、ごめんユウカ!すぐに行くー!”




アリスク、RABBIT小隊、ワカモ等交流のある生徒はまだいますが思ったより文字数がかさんだのと、番外編もこれで5話になってしまったので一旦切り上げて次回から本編のFOX小隊との戦闘に戻りたいと思います

アリスク、ワカモ等の評価を楽しみにしていただいていた方には大変申し訳ありません
また機を見て番外編も投稿していく予定ですので、お待ちいただけますと幸いです!
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