転生したらイブキの兄だった件   作:砂糖菓子くん

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お待たせいたしました
今回から本編に戻りたいと思います
FOX小隊と交戦することになったタツミとワカモ
一体どうなっていくのか……


狐と決意と丹花タツミ

FOX小隊との交戦開始からしばらくが立つ。

俺様はワカモと背中を合わせてお互いのカバーをしつつブークリエと盾を構えてひたすらFOX小隊の連中と対峙し続けていた。

 

「ほらほら!守ってばっかりじゃ勝てないわよ!」

「ハッ!そんな事言われなくても分かってらぁ!」

 

目の前では俺様と同じく盾を構えた金髪ロングのFOX3が好戦的な笑みを浮かべながらそんな事を口走っている。

俺様はそれに一言そうとだけ返すと、持っている折り畳みシールドをFOX3の盾へと叩きつけた。

瞬間、左腕に激しい衝撃を感じるとともに金属と金属のぶつかった大きな音が周囲に響き渡る。

 

「へぇ、思ったよりやるじゃない!」

「当たり前だ!こちとら毎日イカれた不良どもの相手をしてんだぞ!伊達にゲヘナで生き残っちゃいねぇよ!」

 

そのままギリギリと鍔迫り合いになりつつも、俺様とFOX3は盾越しにそう言い合う。

……とは言え、流石に力で劣っているキヴォトス人とこのまま力比べの格好になるのは良くないだろう。

そう判断した俺様は、一旦盾を持つ手の力を緩める。

 

「……っ!?」

 

すると先程まで盾に力を込めていたFOX3はそのまま力の行き場をなくし、前へとバランスをやや崩した。

その隙を見逃さず俺様は盾を振ってFOX3を弾き飛ばす。

 

「ちっ、舐めんじゃないわよ!」

 

だが、FOX3は盾を弾かれてバランスを崩しながらも右足で自身の身体を支えるとそのまま地面へ着地する。

そして、すぐに体制を整え直すと俺様へ向かって手にしたサブマシンガンの銃口を向けてきた。

 

……なるほど、流石はあのSRTの厳しい訓練を受けてきた経験豊富な3年生と言うことだけはあるようだ。

体制を崩されながらもあの身のこなし、そして俺様が追撃するよりも前に体制を整えて隙を見せない立ち回り。

その動きは同じSRT所属のポイントマンでも空井とは違い、修羅場をいくつもくぐってきたのだろうと感じさせるベテランそのものだった。

 

(流石にそう簡単に隙は見せちゃくれねぇな。)

 

とは言え、FOX3の動きは隙こそ無いものの空崎委員長や剣先委員長ほどの化け物じみた身のこなしではない。

確かに一回で崩れるほどやわではないが、この調子で攻め続ければ隙を生むことは出来るはずだ。

俺様は盾を構えてFOX3と再び睨み合いつつ、ブークリエの引き金に手をかけながら心のなかでそう呟いた。

 

「狐坂ワカモ!覚悟しろ!」

「ウフフ……威勢だけはいいですわね七度ユキノ。私とタツミさんの愛の一夜を脅しの道具に使った代償は重いですわよ?」

「黙れ!そもそも学生のうちからそんなことをするとは思わないだろうが!」

「あら、それほど私とタツミさんは強固な愛で結ばれているということですよ。従いたくもない相手に従っている貴方達とは違って……ね?♡」

「うるさい!その口を閉じろ!」

 

そんな俺様の後ろではワカモとFOX小隊隊長である七度ユキノが激しい戦闘を繰り広げており、彼女達の戦闘によって起こっている銃声や熱気などが俺様とFOX3にもひしひしと伝わってきていた。

ワカモは七度の手にした銃から放たれた射撃をかわすと、そのままヒラヒラとした和服を風に揺らしながら地面へと綺麗に着地する。

その光景を確認しつつ目の前のFOX3へ視線を移そうとした瞬間、俺様の背筋に寒気が走った。

 

「……っ!ワカモ、狙撃だ!2時の方向!」

「分かりましたわ!」

 

俺様は後ろへ大きくステップを踏んでワカモの背中へ付きながらそう叫ぶと、タイミングを合わせてポジションを即座に入れ替えて盾を掲げる。

するとその瞬間、俺様の盾に特大の衝撃が走った。

 

「なっ!あの狙撃を防いだだと!?」

「へっ、バレバレなんだよ!」

 

俺様は驚愕で目を見開く七度へ向かって好戦的な笑みを浮かべながらそう言った。

 

「くっ……!」

「ワカモ!スイッチだ!後ろは任せたぞ!」

「承知いたしました。タツミさんも、しっかり私の背中を守ってくださいね?♡」

「言われなくても分かってる!お前には指一本触れさせねぇから安心しろ!」

「ウフフ♡はい、頼りにしております!」

 

俺様とワカモはそう遣り取りをすると、ワカモへ向かって放たれたFOX2からの射撃を防いだあとにポジションをもとに戻す形で入れ替える。

そして、ポジションを戻したワカモはそのまま七度へ向かって突撃して近接戦闘を始めた。

俺様は再度飛んできたFOX小隊の狙撃手、FOX4からの狙撃を盾で防ぐとそのまま盾を地面へ突き立てる。

 

「着地の隙を狙ったのにあの狙撃を察知されるどころか完璧に防がれるなんて……」

「ハッ、着地の隙を狙うなんてバレバレなんだよ。俺様がワカモの晒してる隙に気づかないとでも思ってんのか?経験豊富なSRTの狙撃手ならもっと奇をてらって来るかと思ってたけど、案外基本に忠実なんだな?」

「私と戦ってるはずなのに相方の隙を把握してカバーするなんてどこまでバケモンなのよアンタ……!」

 

目の前で歯ぎしりしつつそう吐き捨てるFOX3。

いやまぁ、そりゃワカモとは普段からしょっちゅうやり合ってるからな。あいつのクセや着地のタイミングなんて全て把握してるから、必然的に隙が生まれるタイミングだって把握しているに決まっている。

そして今は背中を合わせて戦う味方同士なんだから、隙をカバーするのは当然と言えるだろう。

 

「狙撃手に伝えとけFOX3。俺様達を崩したいなら、もっと気配を消す練習をしとくんだなってよ。今のお前達の狙撃手は気配やタイミングがバレバレだ。後輩の霞沢の方がよっぽど厄介だぞ?」

 

……まぁ、とは言えポジション的にFOX3の後ろだから直接どうこう出来るわけじゃないから狙撃自体は止められないから厄介な事には変わりないんだけどな。

 

「くっ……減らず口を叩くんじゃないわよっ!」

 

そんな俺様の言葉にFOX3は目を吊り上げてそう叫んだ。

 

「しかし……腕が落ちましたわね七度ユキノ。私を捕まえたあの時の貴方はもっと強かったですわよ?」

「な、何だと……!?」

「ウフフ、そんな迷いのある目で私やタツミさんに勝てると思っているとは……甘く見られたものですね。」

 

俺様の背後では七度と撃ち合いを続けながら、ワカモが自身の不機嫌さを少しも隠そうとしないような様子でそう吐き捨てている。

 

……そうだな。ここから横目で見るだけでも分かるが、七度の動きは明らかに硬さや緊張の混ざったものだ。

しかもワカモにその事を指摘されて一瞬体が硬直していたし、やはり七度も誰からの命令かは知らないが自分のしていることに疑問があるのは間違いないのだろう。

分隊員であるFOX3がこの強さなのだから、隊長である七度は間違いなくSRTでトップクラスの強さがあるのは間違いない。それは一度あのワカモを逮捕できている、という事実から見て疑いようがない。

だが今の七度は……目に光がなく、俺様やワカモの言葉に一々反応する戦場に出たばかりの経験の浅い新兵のようにしか見えなかった。

 

「貴様、言わせておけば……!」

「落ち着いてユキノちゃん!安い挑発だよ!」

 

そんな七度を必死に落ち着かせようと、後方から支援をしているピンク髪のFOX2の叫び声がその場に木霊する。

 

「ユキノ……」

 

そんな七度を見て、FOX3は歯ぎしりをしながら悔しそうな表情を隠そうともせずにそう言った。

 

「……おいおい、人の心配をしている場合か?」

「うっさいわね、分かってるわよ。こちとらアンタの相手をするだけで精一杯なんだからね。」

「へぇ……そんな事言ってる割にはまだまだ余裕があるように見えるけどな?」

「当たり前よ。私はSRTの厳しい訓練や吐くような実戦を何度も経験してきたのよ。確かにアンタが強いのは認めるけど1年生のヒヨッコに負けてやる道理はないわ。」

 

FOX3は盾越しにニヤリと笑うと、感情の高ぶりを隠そうともせずにそう言い放つ。

その目は多少の迷いこそはあるものの、目の前の相手を必ずねじ伏せると言う強い思いを感じるものだった。

……なるほど、これは苦戦しそうだな。

 

「と言うか、それを言うならアンタだってやけに余裕じゃない。いくら災厄の狐が居るとは言え、こっちは4人でアンタ達は二人なのよ。アンタくらいの実力者なら数的不利がどれほどキツイかは分かってるでしょう?」

「あぁ、そんなのは百も承知だ。しかもそっちにはスナイパーまでいるからな。俺様やワカモを捕らえるのにわざわざこんな用意周到だとは……」

「あら何?今更怖気づいたのかしら?」

「まさか、あの天下のSRTがただのゲヘナの1年生やテロリストを相手にここまでなりふり構わずにかかってくるなんて光栄だなと思っただけだ。」

「……アンタが減らず口が得意ってことは分かったわ。」

「おいおい、それを言うならそっちもだろ?」

「ふふ、違いないわね。」

 

盾を構えてそんなやり取りをしつつ、俺様とFOX3は盾越しにお互い好戦的な笑みを浮かべてそう言い合う。

 

「……ねぇ。」

 

そんな事を考えつつブークリエを構える手に力を込めていると、FOX3から声がかかった。

 

「……なんだ?」

「アンタさっき言ってたわよね。正義が何とかって。」

「……あぁ。言ったな。」

 

俺様の事を射抜くような視線で鋭い口調でそう言うFOX3に対して、俺様は一歩も退くことなくそう応える。

 

「確かに私達が今やっているような事を正義だと呼ぶことは……私には出来ないと思うわ。」

「……へぇ、案外あっさりと認めるんだな。」

「当たり前よ。私達は外道にまで堕ちるつもりはないわ。」

「おいおいよく言うぜ。俺様の頭の上にヘイローが浮かんでないのは見りゃ分かるだろ?そんな奴に大型のスナイパー弾を撃ち込もうとする連中のどこが外道じゃないって言うんだよ?」

 

俺様が肩をすくめながらそう言うと、FOX3は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら口を開く。

 

「……私達にも事情があんのよ。部外者が知ったような口を利かないでもらいたいわね。」

「部外者にだって口出しする権利はある。お前らはSRTの最上級生、つまり権力的には一番上の立場だ。なら、権力者が民衆から色々言われるのは分かるだろ?」

 

そう、俺様だって今はゲヘナの議長代理。つまり前までは羽沼議長がやっていた立場の代理をしているわけだが確かに権力はあるけど、その分民衆からは色々なことを言われることは覚悟しておかなければ行けないわけで。

上に行けば行くほど心無い言葉だって投げかけられるようになるけど、それは当たり前のことだろう。

上に立つ、と言うことはそういうことだ。

 

「まったく、ああ言えばこう言う……と言うかそれを言うならアンタだって災厄の狐なんてテロリストと体を重ねた上に今だって庇い立てしてるじゃない。それで正義が自分にあるとでも言うつもりかしら?」

「うん?何を勘違いしてるんだ?俺様は別に自分が正義だなんて思っちゃいないぞ?」

「……は?」

 

俺様の言葉に、FOX3は間の抜けた声を出す。

 

「そりゃそうだろ。俺様がワカモと体を重ねたのはもうこの際否定はしないけど、テロリストであるワカモを庇うなんて行為は明らかにアウトだろ。RABBIT小隊やヴァルキューレが相手なら、俺様のやっていることは矯正局へ入れられても文句は言えないだろうよ。」

「清々しいほどの開き直り……よくそれでユキ……FOX1や私達のことをボロカスに言えたものね。」

「まぁ……そりゃ人殺しよりはマシだからな。」

 

FOX3の言葉に、俺様はサラリとそう言ってのける。

 

「確かにワカモはテロリストだ。災厄の狐なんて二つ名が付くくらいだし、実際にその名に相違ない暴れっぷりをしている。趣味で街一つ消し飛ばすわ、所構わず襲撃して来るわ、それでいて飄々としていていつも余裕で腹立つわで……本当にムカつく女だ。」

「……」

「けど、少なくとも殺人を犯そうとするお前達よりはワカモの方がマシだ。SRTと言えば本来は治安を守る、ワカモのようなテロリストから市民の安全を守るための部隊のはずだ。それが殺人に手を染めるなんて……そんなもの、テロリストと何が違うって言うんだ?」

「……っ!」

「今回だって俺様はお前達が普通にワカモを捕まえるためにここへ来たなら、俺様は喜んでワカモを逮捕するために協力をしていただろうよ。けど、お前達の目的は俺様の殺害の可能性が高い。」

 

俺様はそこで一旦言葉を区切ると、ありったけの戦意を込めてFOX3に叩きつけながら口を開き……

 

「そんな連中に俺様の獲物()を渡すわけにはいかねぇんだよっ!!!」

 

腹の底から、ありったけの声を出してそう叫んだ。

 

「獲物……ですって?」

「あぁ。俺様は普段からあいつにこっちの都合なんてお構いなしに襲われているからな。今じゃすっかり俺様の倒すべき相手ってわけだ。」

「……それが本当だとすれば憎むべき相手じゃない。何でそこから自分の獲物だって認識になんのよ。」

「そりゃ最初は殺意も沸いたさ。けどあいつと何度も戦って刃を交える間に……俺様は気づいちまったからな。こいつにだけは絶対に負けたくないってよ。」

 

そう、最初は俺様だってワカモの事はただのテロリストだって認識だったし所構わず襲撃を仕掛けて俺様の命を取ろうとする単なる忌むべき相手だったのは違いない。

けどワカモと何度も刃を交えるうちに奴の性格や意外と律儀な一面、恩を忘れない義理堅い部分とかを知っていくうちに……気がつけば俺様は口で言ってるほどにはワカモの事を邪険には扱わなくなっていった。

 

いつしか俺様はワカモには絶対に負けたくないって対抗心を抱くようになったし、口にこそ出さないけど今はもう完全に俺様のライバルとして認めているんだ。

いつか完封なきまでに叩きのめして、負けを認めさせてやると俺様に思わせるくらいにはな。

 

あと、ワカモにはエデン条約で助けてもらった恩をまだ返しきることが出来ていないからな。

いくらテロリストとは言え、受けた恩は必ず返すのが俺様の信念でもある。

 

……それに、完全に押し切られる形になったとは言えワカモとは一夜の過ちを犯してしまったからな。

俺様の我慢が効かなかったのが悪いとは言え、こうなった以上何かしらの責任は取って然るべきなのは当然だ。

自分の気持ちに整理がついていないとは言え、このまま何事もなかったかのように流してしまうのはあまりにもワカモに対して失礼だろうからな。

 

……分かっているさ。

俺様のやっていることが間違っているってことくらい。

本来ならSRTは正義側の人間で、ワカモを庇っている俺様は悪人。だからいくら殺人を請け負っているとは言え、こいつらにはワカモを逮捕する権利があるのは確かだ。

確かに裏では殺人を請け負っているけど、表からしてみればSRTは未だに正義側の人間であることは明白。

だからワカモの身柄を確保して俺様を始末すれば、連中の言うようにSRTの再建は果たされるのかもしれない。

 

だが、そんな事をすればSRTは陰謀で染まった血で血を洗うとんでもない闇を抱えた学園になってしまう。

 

『私は憧れたんです。SRTの屈強な正義に。』

 

……そんな所にFOX小隊の連中はもちろん、月雪達RABBIT小隊の連中を復学させるなんて事はあってはならない。

そんなものは……月雪の憧れた正義なんてものとは程遠いのは火を見るよりも明らかなのは間違いないだろう。

 

それに何よりもだ。

ワカモ。

俺様のライバルをそんなクソみたいな学園の再建に使おうとしていることが俺様は何よりも許せない。

 

所構わず襲撃を仕掛けてきて、俺様のことなんておかまいなしに振り回してくる彼女を。冷酷なようで実は律儀で義理堅く、俺様のピンチに手を貸してくれる彼女を。

あんな破廉恥な水着を顔を真赤にして着ながら、いじらしくも表面上は余裕を保って誘惑してくる様な彼女を。

そして何よりも、俺様に向けて真っ直ぐな思いをぶつけてくれたひとりの女の子を……

こんな人殺し集団に預けるなんてそんな事は俺様が死んでも許さない。

 

だから、これは単なる俺様のワガママに過ぎない。

相手の思い通りに事を運ばせないために、そして何よりも俺様の事を好いていてくれる一途な女の子を守るために男としての意地を張っているってだけ。

実にわかりやすいシンプルな理由だろ?

 

「さて、これ以上御託を並べるのは辞めにしようぜ。」

 

俺様は頭の中で考えをまとめると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら盾をドン!と打ち鳴らした。

 

「どうせ何を話したってこの場では平行線を辿るだけ。お前らにお前らの正義があるように、俺様には俺様なりの正義がある。正義の反対は悪ではなく、別の正義。ならキヴォトスにおいての白黒の付け方は分かるだろ?」

「……なるほど、勝ったほうが正義ってことね。」

「そういう事だ。わかりやすくていいだろ?」

「えぇ、ゲヘナ育ちらしくて良い意見だと思うわよ。」

「ハッ、お褒めに預かり光栄だね!」

 

お互いに視線をぶつけ合って軽口を叩き合い、同時に盾を地面へ叩きつけて互いを威嚇する俺様とFOX3。

そんなやり取りをしている俺様の後ろに、静かに着地音を立てながらワカモが背を合わせて着地した。

 

「タツミさん、このままでは……」

「あぁ。どう考えてもジリ貧なのは間違いないな。」

 

俺様とワカモは背中を合わせながらお互いの正面に敵を捉えつつ、そんな言葉を交わす。

 

迷いがあって動きが硬いとは言え七度とFOX2の連携は流石に長年一緒に任務をこなしているだけあって強固なものだし、FOX3の防御力だって崩すに至ってはいない。

そこへ俺様やワカモの隙を狙うようにFOX4からの的確な狙撃まで織り交ぜて来るんだから、このままじゃ今は持ちこたえられているとは言えジリ貧だろう。

 

俺様とワカモは今は背中を合わせ、お互いのカバーを行いながら戦闘を行っているから被弾こそ避けられているもののこのまま体力の消耗が続くとマズい。

なんとかして、突破口をこじ開けられればいいのだが……

 

「冷静さを欠いているとは言え、流石はFOX小隊。悔しいですが実力は申し分ありませんからね。状況的に救援が望める状態でもありませんし、なにか状況を打破する物が必要です。」

 

目の前の敵を睨みつつも、こちらへ視線を送りながら淡々とそういうワカモに対して俺様はコクリと頷く。

 

「何か策は?」

「あぁ、もちろんあるぞ。」

「ウフフ……流石はタツミさん。頼りになりますね♡」

「当たり前だろ。俺様を誰だと思ってんだ?」

 

俺様がそう言うと、ワカモはいつもの飄々とした雰囲気を崩そうともせずに愉快そうな笑い声を上げた。

 

「内容はエデン条約の時と同じ。俺様が前、お前が後ろにポジションを取っての一点突破だ。どっちかがしくじったら仲良くあの世行きだから、気合い入れろよ?」

「はい。このワカモ、必ずやタツミさんとの阿吽の呼吸をあの薄汚い狐共にお見せいたしますわ♡タツミさんこそ、遅れを取らないでくださいね?」

「あぁ、お前には指一本も触れさせねぇよ。必ず守ってやるから安心しときゃいいさ。」

「ウフフ……はい、よろしくお願い致しますね♡」

 

俺様とワカモは互いに視線を合わせると笑みを浮かべ、どちらからともなく互いの拳を軽くコツンと合わせる。

 

「……そう言えば、タツミさん。」

「ん?どうした?何か作戦に不明点でもあるか?」

「いえそうではなく、先程そこの金髪の女に仰っていた「ワカモは俺様の獲物だ」という発言のことですがあれは私への愛の告白ということで宜しいでしょうか?♡」

「……はぁ!?」

 

突然顔を赤く染めながら恥ずかしそうにそんな事を口走るワカモに対して、俺様は素っ頓狂な声を上げる。

 

「んな訳ねぇだろ!あれは言葉通りお前は俺様が倒すべき獲物だから手を出すなって意味だバカ!それ以上もでもそれ以下でもねぇっつーの!」

「まぁそんな、私がタツミさんの女だから手を出すななんてなんと大胆な……♡」

「どんな解釈したらそうなるんだバカ!いいか!確かにお前とは間違いを犯しちまったけど、俺様は絆されたりなんざしねーからな!」

「相変わらず素直じゃないんですから。しかし、そういうところもタツミさんの素敵なところですよ♡」

「うるせぇバカ狐!と言うか今は戦うことに集中しろ!敵は待っちゃくれねぇんだぞ!」

 

俺様は捲し立てるようにピシャリとそう言うと、盾を地面に叩きつけて打ち鳴らし目の前のFOX3を睨みつけた。

 

「はぁ、私は何を見させられているのかしら……」

「痴話喧嘩かな……あはは……」

 

そんなFOX3はジト目を浮かべながら俺様とワカモに視線をよこしつつそう呟き、それに対して苦笑しながらいつの間にか俺様の正面にやってきていたFOX2が言及した。

その背後にはFOX1の姿もあり、彼女だけはこちらのことを殺意を込めて睨みつけてきている。

 

どうやらやる気は満々のようだ。

……いいだろう、相手にとって不足はない。

 

そんな死んだように、逆らえない誰からの命令を嫌々こなすだけの連中に俺様とワカモが負けるわけねぇ。

必ずここで叩きのめして、目を覚まさせたうえで先生に突き出して保護してもらうからな。

その上で、お前たちを裏で操っている黒幕を引きずり出してボコボコにしてやるよ!!!

 

「行くぞ、ワカモ。」

「承知いたしました。どこまでもお供致しますわ♡」

「あぁ、頼りにしてるからな。」

「ウフフ……はい♡」

 

俺様とワカモは互いに顔を合わせて笑い合うと、ポジションをそれぞれ前後に取り直して武器を構える。

そして再び顔を合わせて頷き合うと、FOX小隊に風穴を開けるための攻撃を仕掛けるため地面を蹴るのだった。




今回からまた本編を執筆していきます
少なくとも年内は4日に一回更新になると思いますが、気長にお待ちいただけますと幸いです!
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