彼女は単なる魔法少女   作:うさぎ最高

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  ゆらゆらゆらぐ、たゆたう、かたちはなく、あるのはいし。とおのくことも、ちかづくこともなく、すべてがひろがり、すべてがない。


 とけだして、まろびでて、ながれて、のびて、そしてすべてがすべてになった。


 もどれない、もどることはない、とりかえしのつかないこと。


 なくした、なくなった、よろこび。


 いわをうしなって、いま、ただ、いしがあった。


彼女は目覚めた
魔法少女の誕生


「──目を、開けて下さい。」

 

 突如として聞こえた声に何かが巻き戻った気がした。辺りは瓦礫でいっぱい。それ以外にはなにもない。

 

 声がする方を()()とそこには兎と鶏を混ぜたような謎の生き物が、チェック柄のベストを着て立っていた。お母さんの腰ぐらいまでの大きさで、蓋を開けた懐中時計をこっちに向けている。

 

「あなたはだれ」

 

 不思議な事にその生き物を、レテは知っているような気がした。何かから助けてくれた、そんな記憶が薄っすらとある。

 

 謎の生き物は元から大きい兎の目をさらに大きく丸くして、細める。

 

Good morning, my fair lady.(おはよう、私の魔法少女)自己紹介が遅れました事をここにお詫びします。私はコトイリ。君と魔法少女契約を結んだ異次元生命体です。」

 

 そうして、とさかの付いた兎の頭を少し下げ、鶏の手足を動かしてコトイリは丁寧にお辞儀をした。

 しかしなんかやりきった感を出していて少しうざい。兎の顔だからよく分からないけど、既に上げてこちらを見ているその顔がドヤっているようにも見える。

 

 なんとなく腕をコトイリの頭がある高さまで動かすと彼女は耳を寝かせた。目がとても輝いている。撫でてくれ、と言っているような気がした。

 

 寝ていた身体を起して、近付いて、撫でようとしたその瞬間、甲高い音が鳴り響いた。

 

「なに、これ……」

「異次元エネルギー体でしょうね。いえ、一般には魔物と言うのでしたか。どっちにせよ魔法少女が狩るべき獲物であることに違いはありませんが。」

 

 異次元生命体、異次元エネルギー体、魔物、魔法少女。知らない言葉ばかり。今いる所も瓦礫と地面しかない知らない場所。それでもその全てにどこか覚えがある。特に──

 

「魔法少女……」

「そうです。レテ、魔法少女レーテー。私の魔法少女。」

「レテは魔法少女……?」

 

 それにしてはステッキも無いし、服だって単なるワンピースで魔法少女らしさの欠片もない。魔法なんてものは見当すらつかない。

 今のレテは()()()()()魔法少女のイメージとは似ても似つかない。

 

「ええ、レテと私は契約しましたから。レテはもう魔法少女になっています。今足りていないのは見た目だけです。さあ、あなたの思う魔法少女を思い浮かべて下さい!」

 

 コトイリの言う通り、こんな単色のフリルもないワンピースとスニーカーは魔法少女のの見た目に全然足りていない。

 魔法少女、それはキラキラでふわふわで軽やかな壮麗な衣装を纏っているものだから。

 

 そう思うと同時に、レテがレテを覆って、身に着けるもの全てが切り替わった。

 シンプルなワンピースは、水のように泡が浮かぶ薄い水色のサマードレスに。スニーカーは、くるぶしの部分に兎の足が飾られた黒のレースアップサンダルになった。

 頭にはドレスと同色のお花の詰まったボンネット、左耳から閉じた鶏の嘴が垂れ下がって、手には縁がレースで覆われた透明な日傘が現れた。

 

 でも、まだ足りない。レテには魔法がない。

 魔法少女、それは魔法を使って魔物を倒すものだから。だから、足りない。

 

 それを願うと、レテを作るレテがさわいでととのって、()()()()()()。レテは忘れることを願ったから、無くなることを願ったから、魔法を使える。 

 忘れさせる魔法を。

 

 瞬間霧のようなものがレテの全身に薄く纏わりついた。これは、レテの魔法だ。そう分かる。

 

 レテの、『忘れる』魔法だ。

 

 

 

 

「どう、コトイリ。レテは魔法少女になれた?」

「それはもうばっちしです。」

 

 甲高い音がまた響く。不快だ、消し去りたい。

 

「この音消えないの」

「レテならすぐに消せますよ。これはレテが倒せるものの叫びですから。」

「それって魔物?」

「そう呼ばれるものですね。さあ、向かいましょう魔法少女レーテー。記念すべきあなたの初陣ですよ。」

 

 

 

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