「『
声の後魔物のしっぽが停止する。その隙に畳んだ傘で殴りつつ、反動を付けて後ろに飛ぶ。
移動したレテはせいかお姉さんにキャッチされ、そのまま上昇。すでに動き出している魔物から離れる。
「コトイリ、説明して」
ブレスレットを腕に通しているコトイリは不思議そうな顔で魔物を見つめながらも口を閉じたままだ。
「そのブレスレットをあなたが手にしてからあの魔物の様子がおかしくなりましたわね。……何か、弁明はありますか、コトイリさん。」
せいかお姉さんがいつ作ったのか、一番最初に魔物に放った枝よりも更に長く大きいものを持って、コトイリに問いかける。まさかそれをコトイリに刺すつもり……?
「うーん、おかしいですね。あの異次元エネルギー体、核が無いのに動いています。これが原因でしょうか?」
聞こえていないのか無視しているのかブレスレットを腕から外し、それを様々な角度から見つめている。枝との距離が縮まった。
「コトイリ!」
叫ぶと、やっとこちらに顔を向けた。
「どうしたのですか?」
「そのブレスレットとあの魔物について、ちゃんと説明して。じゃないとせいかお姉さんに殺されるよ」
「……こんなのに?まぁ、あの異次元エネルギー体には効くでしょうけど。」
せいかお姉さんが枝をコトイリに突き刺そうと腕を動かす。それを反射的に日傘で叩いて弾く。枝は落下して、地面で暴れ狂う魔物に触れるが、魔物の動きは止まらない。
「レテさん?別に死にはしませんわよ、ちょっと動けなくなるだけですわ。」
せいかお姉さんから圧を感じる。
なんで邪魔したの?コトイリさんは不審な行動をしているのよ?
そんな声が聞こえてくるようだ。
…………レテはなんで枝を落としたんだろう。
コトイリが大事だから?
でも、このレテの兎が紛らわしい行動をしているのは確かだ。なら本当に動けなくするだけなのならば、せいかお姉さんの枝を止めるべきじゃなかったんじゃないのか。
「説明、説明ですか。そうですね、このブレスレットはあの異次元エネルギー体の核ですが、魔法少女でもあるようです。これ自体が指向性を含んだ異次元エネルギーを纏っていたようですね。レテがそのまま触ってたら異次元エネルギー体になってたんじゃないでしょうか。」
空気を読まずにコトイリが話し出す。相変わらずよく分からないが、せいかお姉さんには伝わったようで、納得したのか右手の二本目の枝を天秤の皿に置いて消した。もしかしてコトイリの話が分からないのは、レテが馬鹿だからなのかもしれない。いや、せいかお姉さんが賢いんだ。そういうことにしておこう。
「一先ずそれを信じてさしあげますわ。では、あの魔物にもう核が無いというのならば、どうすれば倒せるのでしょう。」
「時間経過で消えると思いますよ。魔法少女を介した強化とはいえ、ブレスレットでは取り決められる契約条件に限りがあります。あの異次元エネルギー体は、ブレスレットが纏っていた異次元エネルギーを取り込んで動いているだけのゾンビに等しいです。」
「……それはあの魔物を今すぐ倒す方法は無いということですの。」
「再生するのにも異次元エネルギーを使いますから攻撃し続ければその内霧散しますね。レテに分かるように言うと、あの魔物は傘で叩きまくって痛め付ければ死にます。」
「ありがと、とても分かりやすい」
会話に参加できないまま魔物を見つめてたけど、それでいいなら話が早い。せいかお姉さんに解放してもらって、上から魔物目掛け落下する。
何となく思い付いて、レテの欠片を日傘の石突きに集中させる。黒い石突きが薄っすらと緑がかる。
魔物はもう目の前、落下の勢いそのままに傘を魔物に突き刺した。すると、魔物の胴体に丸い穴が空き、その穴よりも一回り大きい円状の切れ込みも刻まれた。
すぐに肉が盛り上がって元に戻るが、薄桃色の輝きが弱くなっている。
「コトイリの言う通り、叩けばいつか倒せそう」
今度はレテを石突きから魔物に叩き付けている面に移動させて、再度振り被る。魔物の胴に跡が残り、またすぐ修復する。
「やられっぱなしにはしてくれないね」
両側から頭としっぽが迫る。しっぽの方にも口があるので、ブレスレットを取った後に形を変えたのだろう。
頭を弾いて、その上に乗って日傘を突き刺す。しっぽの方にも攻撃しようとすると、上から枝が飛んできた。せいかお姉さんだ。
それが止めとなったのか、枝に吸収されるように魔物は消え失せた。