彼女は単なる魔法少女   作:うさぎ最高

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巻き戻しの道筋

「一度来たことがあるのに、見たことないところを通ってたみたいだね」

 

 昨日と同じ路線の逆向きの新幹線で呟く。

 

「そりゃレテは寝てましたから。」

「コトイリ、レテはホテルからこの駅までの移動の話をしてるの」

 

 昨日のアフタヌーンティーの後、レテ達はお土産を買ったり遊んだり夜ご飯をとったりしてビジネスホテルで早めに寝て、起きた。

 またもやせいかお姉さんに買ってもらった大きめのバッグには少しのお土産とゲームセンターの景品が入っている。

 

「あら、つい先ほど同じ道でつまらないと仰っていたではないですの。そのために通る場所を変えたこと、忘れたとは言わせませんわよ。」

 

 せいかお姉さんの微笑みが今は憎い。せっかく誤魔化せてたのに台無しだ。

 

「レテ?別に私もそれを覚えていますから、誤魔化せてはいませんよ?」

「……そんな顔に出てたかな」

「私とレテは通じ合ってるので。」

 

 ここぞとばかりにドヤ顔をする。相変わらず角度が絶妙でついイラッとくるぐらいには上手なドヤ顔だ。ムカついたのでブラシで毛を整える。コトイリは腕をばたつかせて抵抗した。

 

「あばれないでよ」

「頭以外を触られるとゾワッとするんですよ!ゾワッと!」

「見た目の元にした生き物の習性に影響されているのかしら。コトイリさんは早朝に鳴きたくなったりしますの?」

「しません。……そもそも、それは雄鶏の習性ではないですか。」

 

 少しお腹が空いてきたので駅の自販機で買ってもらったスジャータのイチゴ味のアイスクリームを開ける。せいかお姉さんはこれをシンカンセンスゴクカタイアイスだと言ってレテと自分の分を買っていた。

 プラスチックの小さな使い捨てスプーンを突き刺すが、刺さらない。もう一度突き刺しても、刺さらない。びくともしない。

 

「確かに、よく見るとコトイリさんの鶏冠(とさか)は少々小さめですわね。雄鶏ではなく雌鶏がデザイン元なのですか。しかし、なぜ雌鶏を?」

 

 隣をそっと見る。コトイリとせいかお姉さんの会話はそれなりに盛り上がっているようだ。これならちょっと行儀の悪いことをしていてもバレないだろう。

 

「おかしな質問ですね。私達の見た目は契約者に依存すると知っているでしょうに。レテが思う鶏の見た目がこのようなものだった、それだけのことです。」

「まぁ……それもそうですわね。」

 

 アイスのカップを台から持ち上げて、口の近くに持っていく。そして舌をだして硬いアイスの表面を舐めた。

 冷たい。そして全く味がしない。強いて言うならこれは氷の味だ。絶対にアイスクリームの味ではない。

 

「せいかお姉さん、このアイス食べられないんだけど。不良品かな」

 

 話しかけて、こちらを向いたせいかお姉さんは申し訳なさそうな顔をしていた。嫌な予感がする。

 

「レテさん、それは……十分程置いて溶かしてから食べるものですわ。」

「コトイリ、何とかして」

 

 コトイリに泣きついて見る。多分無理だろうけど、コトイリは時々レテが無理だろうと思ったことでもしてくれる。

 

「無理です。」

 

 無理だった。

 

 ◆◆◆

 

「やっと、食べれる」

 

 白いスプーンを薄っすらピンク色のアイスに差し込む。今度はちゃんと刺さった。持ち上げる。口に突っ込む。甘い。美味しい。

 ねっとりとしていて濃厚で喉から水分が失われていくような感覚さえある。もちろんしっかりとイチゴの味もする。

 

 次同じことになっても問題ないようにと、コトイリの口に新しくアイスを乗せたスプーンを挿し込む。一瞬うさぎの口をこじ開けてもいいのか、とかうさぎにアイスクリームを食べさせてもいいのか、とかそういう疑問が浮かんだけど、コトイリは別に本当にうさぎだという訳でもないので大丈夫だろう。

 

「この行為に意味はありますの?」

「硬いアイスクリームをこれと同じ味の物体に変換することができるようになります。しかし、バニラ味など他の味を買うのなら役に立たないでしょう。」

「え」

「レテ、次からは食べたいと思う十分前にアイスクリームを鞄からだして温めましょう。もしくは保冷剤と一緒に保管するのを止めればよいのかもしれません。お土産用に買っている浦西星華の真似をする必要はないのですよ。」

「保冷剤と一緒に入れてましたの……通りであんなにも硬くなっていましたのね。」

 

 車内にアナウンスが流れる。もうすぐ到着だ。残り少ないアイスを食べながら、次はそのままバッグに入れようと決心した。

 

 新幹線が止まった。プラスチックのスプーンを折って、アイスのカップの中に入れて、蓋を被せたそれをバッグに入れる。

 

「忘れ物はありませんこと?」

「だいじょうぶ」

「問題ないと思います。」

 

 せいかお姉さん、レテ、コトイリの順で並んで通路を通る。開いている扉のその先の光景はそれはもう見覚えがあった。

 

「既視感たっぷり」

「まぁそうでしょうね。」

 

 合流する予定の魔法少女の人は駅の外で待っているらしい。待たせるのも悪いので、速歩で改札を通り過ぎる。駅を出ると、やはり人が少なく、すぐに彼女は見つかったので、駆け寄る。

 

「こんにちは、よろしくお願いします!」

「……あんた誰?」

 

 顎の少し上までの黒い髪、銀色の金具が付いている白いドクロマークが目立つ黒い袖無しのシャツ、これまた黒いテカテカした短パン、その上から大きめの紺の革ジャン、それに首輪。目の下は泣き腫らしたように膨らんで、まつ毛は多めだ。

 

「私、人待ってんの。ガキはお母さんの方に戻りな。」

「レテがその待ち人だよ、よろしく!地雷系のお姉さん!」

「は?」

 

 焦った顔でこちらにやってくるせいかお姉さんが目の端に見えた。

 

 

 

 

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