彼女は単なる魔法少女   作:うさぎ最高

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ガキは帰れ by 遠藤灰李

 コホン、とせいかお姉さんが咳を一つ。

 家々が両隣に建ち並ぶ道路の端を三人で歩いている。コトイリはレテに抱えられているので、歩いていない。

 

「レテさんが申し訳ございません。」

「ごめんなさい。かいりお姉さん。」

「別にいいよ……マジで怒ってたわけでもねぇし」

 

 でも地雷系はこういうのな、とスマホの画面を見せながらかいりお姉さんはレテに念を押す。

 

 遠藤(えんどう)灰李(かいり)、それがこのパンクな服装をしたお姉さんの名前だ。

 説明を受けて分かったけど、かいりお姉さんの服装やメイクはパンクファッションに分類されるものらしい。目の下が膨らんでいて色が濃いからといって、地雷系だと思ったレテの見識のなさが恥ずかしい。

 

「謝罪は受け取ったからさ、魔物退治の話しようぜ。えっと、浦西さんは何ができんの?」

(わたくし)は枝を生成して、それを魔物に突き刺すことでエネルギーを吸収できますわ。効果量は可変、生成まで2秒程、同時に複数の枝を生成することも可能ですの。ただ、近接戦闘には期待しないでくださいまし。」

 

 すらすらと答えるせいかお姉さん。以前にも同じことを聞かれたことがあるのかもしれない。

 

「りょーかい。私は足場作ったり、魔物を叩いたり斬ったりできる。足場の制御は使い魔(相方)に任せてるから私に聞かないで。」

 

 かいりお姉さんも答えた。次はレテの番だろう。

 

「レテは日傘で魔物を殴ったり、魔物の一部を消したり、ビームで魔物を消し去ったりできるよ。最後のは使えないこともあるけど」

 

 伝え終えると、かいりお姉さんは何か気になるようで、目を忙しく動かしている。顔を見て、少し待つと、口を開いた。

 

「レテ……さん、その、元々だったら申し訳ないけどさ、見た目ってどうなってんの?そのぬいぐるみもだけど、魔法に関係してるようには思えないし」

「ぬいぐるみではありません、異次元生命体です。」

「うわっ、喋った!」

「何を驚いているのですか、遠藤灰李。異次元生命体は話すことができるものですよ。」

「異次元生命体?異次元生命体がなんでここに……」

「コトイリ、かいりお姉さんが戸惑ってるから、一旦黙って」

「分かりました。」

 

 お姉さん達の足が、止まる。いつのまにか道路の横の家は数を減らし、代わりに田んぼが並んでいる。

 前にいるかいりお姉さんがこちらに振り向き、せいかお姉さんと顔を合わせる。せいかお姉さんの身長が高めだからか、見上げるような形になっている。

 

「浦西さん」

「はい」

「レテさん……レテちゃんは見た目通りの(とし)なのか」

「まぁ、そうですわね」 

「逆にそれ以外に何かあるの」

 

 言ってから気付いたけど魔法の効果で幼い姿になることもあるのかもしれない。

 コトイリに聞いてみると、あり得ると返された。

 

「じゃあ小学生ぐらいの子を戦いに引っ張り出してるのかよ。親はどうしてんだ。」

 

 かいりお姉さんは目を吊り上げている。どうやらレテを魔物との戦いに連れて行くのに反対らしい。

 

「レテに親はいません。」

 

 黙ってと言ったのに勝手にコトイリが返事をする。睨みつけると、一旦は黙ったじゃないですかと言い出す。

 ……確かにそうかもしれない。レテが許すまで黙れというべきだったか。

 

「あんたは……コトイリだっけ。」

「そうですね。レテが紹介してくれましたが、一応私からも自己紹介を。レテと契約している異次元生命体のコトイリです。よろしくお願いします。」

 

 引き続きレテに抱えられながら、コトイリは話し、そして頭を下げる。だが、かいりお姉さんはその自己紹介が気に入らなかったようだ。さらに目尻が上がった。

 

「なんでこんなガキと契約したんだよ。もっと適切なやつがいたろ」

「レテと契約したのは、それがレテの望みを叶える最短の手段だったからです。」

「望みィ?」

 

 言葉の端々から怒りが覗く。レテが戦うことに反対しているというだけではなさそうだ。

 

「なんでそんなに怒っているの、かいりお姉さん」

「なんで、って……魔物と戦うのは危ないだろ。ガキは遠ざけられるべきだ。そして、それを怠るバカ共がいたら、そりゃ怒るだろ?」

 

 かいりお姉さんは屈んで、レテの両肩を掴み、顔を合わせる。

 

「あんたは帰るべきだ」

「魔法少女寮に?でも、ここにいる魔物は強いらしいし、人手は多い方がいいよ」

「ガキに頼る程弱くない」

「レテも弱くないよ、役に立つ」

「危険だ。死ににくいとはいえ、魔物の攻撃を受ければ痛いし、引退時の状況が悪かったら死ぬことだってある」

「それはお姉さん達も同じ──

「同じじゃない、あんたは魔法少女になる為の試験や研修を受けたか?保護者とよく話し合ったか?してないだろ」

「遠藤さん」

 

 せいかお姉さんがレテの肩の上にあるものを引き上げる。肩が軽くなった。

 

「なんだ」

「レテさんは魔法少女になる以前の記録が存在しません。」

「は?」

「二日前、彼女はその日にそこの異次元生命体を伴って魔法少女協会本部に現れました。そこから政府に問い合わせを送りましたが、レテさんの外見に一致する同年代の少女は存在しないらしいです。」

「なんだ、そりゃ」

「さぁ。」

「さぁ、って……」

 

 かいりお姉さんは酷く混乱しているようにみえる。

 それにしても、せいかお姉さんの言うことは初耳だ。レテにはあの魔物をはじめて倒した日よりも前の記録が無いらしい。まあ、どうでもいいことか。

 

「いや、そうだとしてもガキを戦わせていい理由には……」

「ガキ、ガキって言いますけどね、(わたくし)からしてみればあなたも十分過ぎるほどに子供ですわよ。遠藤さん。」

「それとこれとは話が違うだろ!」

「そうかもしれませんわね。でも、一度レテさんが戦う様子を見てから、レテさんをどうするかはそれから考えてくださいまし。」

 

 かいりお姉さんは渋々、頷いた。

 

 

 

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