音がする方向へ、コトイリと一緒に駆けていく。断続的に鳴るその高音は悲鳴のようだけど明らかに人のものではない。前を走る鶏の足が土を擦って、止まる。
「ほら、あれが異次元エネルギー体……魔物です。」
コトイリが指した方には、うねうねと動く物体が二十本程集合してくっついている3m程の高さの気持ち悪いものがあった。それらが中心を避けるようにバッと開くと、金属同士がこすれ合うような不快な高温が辺りに響く。さっきの音はこれかな。
直観に従って、開けていた日傘を閉じて、リボンを結んで固定する。
「先手必勝!!」
地面を蹴って、飛んで、浮かんで、その魔物の真上から傘を振り下ろす。
小気味いい音を立てて、一気に三本がへし折れた。魔物は残ったのをこちらに寄せてくるが、それを蹴って後ろに飛んで回避する。
……そして、折れたそれらが元にもどった。
「ねぇ、コトイリ。これってどうしたら倒せるの」
「殴りかかるよりも前に聞いて欲しかったですね。」
やれやれとでも言わんばかりに頭を左右に振るコトイリ。
「そういうのいいから」
「こういうかっこつけも時には必要なんですよ、レテ。異次元エネルギー体、すなわち魔物には発生の切っ掛となったもの──核があります。多くの魔物は核を奪わない限り再生し続けるので、核の位置を見定め、その周囲の部位を素早く除去し、核を奪取するのが基本の魔物の倒し方です。」
「ふーん」
なんだか長くて難しい言葉が散りばめられていてよくわからない。コトイリはそれを察しているのか手を口元に持っていって、首を少し傾ける。
「ですが、まぁ、レテにはもっといい方法があるでしょう?魔物からその切っ掛けを取り除く……、こういい換えましょう。
そう言って、コトイリは愉快そうにレテに微笑みかけて、懐中時計を取り出す。
今度の言うことは理解できたので、レテも準備をする。魔法少女になって、手に入れた、
レテを作っているレテを絞り取る、願いに染められたレテの欠片を日傘に流し込む。日傘の生地が波打った。エメラルドグリーンに染まった日傘の先を魔物に向ける。
「傘の先を人に向けてはいけないとお母さんから教わってませんでしたか?」
コトイリが笑う。レテも笑う。
「
自然と口から出た言葉によって、傘から水のような液体がビーム状に飛んでいった。
魔物は飛ばした液体に濡れて、そして直ぐに消え失せ、それとほぼ同時にカランと音がする。
音がした方の地面を
「これがさっきの魔物の核ってもの?」
「恐らくそうでしょう。レテ、それが異次元エネルギー体を再び生み出す前にやる事があります。」
「なにをするの」
そう尋ねるとコトイリは辺りをぐるっと見渡して、少し歩いて止まった先の地面を蹴った。
「ここに、異次元が重なり絡まっています。これを解消しない限り異次元からのエネルギーは集まり留まり、またここで異次元エネルギー体が発生するでしょうね。」
「ふーん」
またなんだか難しいことをコトイリは言い出した。あまりレテに分からない言葉を使わないように注意した方がいいかもしれない。
「魔法少女がエネルギーを加えれば、これは解消されますが……この重なりを魔法少女協会は必要としているので、今回は解消せずにそのまま切り出して持って行きましょう。」
魔法少女協会、知らない言葉が出てきた。多分魔法少女が所属するとこなんだろうけど。聞いてみたい気持ちもあるけど、きっと長くなるし、レテの魔法は長くは持たない。魔物が
「……どうやって?」
「私の足元にその核を投げて下さい。」
少し遠いけど十分投げて届く近さにコトイリはいる。
レテは指輪を握って、投げた。すると、ぼふっとおよそ地面から出るようには思えない音が鳴って、指輪の周りの景色が歪み、すぐに元に戻った。指輪は何も変わってないように見える。
「ほんとにその重なりとやらは切り出せたの?」
「ええ。ではレテ、魔法少女協会に向いますよ。あそこは身寄りのない魔法少女には寮を提供しています。衣食住はあった方が嬉しいでしょう?」
「嬉しいというか、ないと困るよね」
「それもそうですね。」
コトイリは地面から指輪を拾い上げて、胸のポケットに仕舞った。そしてレテの方に戻ってくる。レテも魔法少女の衣装を解除して、目覚めた時に着ていたシンプルなワンピースに変えた。
「ねぇ、コトイリ。魔法少女協会はどこにあるの」
「ここから歩いて十分程のところにあります。道は知っていますので、着いて来て下さい。」
その鶏の手を差し伸べられたので、握る。コトイリは耳を寝かせる。撫でた。もふもふだった。
コトイリは満足げに目を細めた。