彼女は単なる魔法少女   作:うさぎ最高

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彼女は確立しつつある
協会長との遭遇


「ろんどっばし、おちた、おちた、おちた。ろんどっばし、おちた。」

「My fair lady」

「唐突に英語ですわね……。」

「ロンドン橋の歌の最後ってどうしてあんなに語呂が悪いんだろう」

(わたくし)はそう思ったことがありませんが、翻訳の違いでしょうか?」

 

 ハンドルを握りながら、せいかお姉さんは小首を傾げた。

 

 魔物を倒した後、他の場所に行くらしいかいりお姉さんと別れたレテ達は魔法少女協会へ帰ることになった。少し移動して、車を停めた所に到着して、せいかお姉さんに運転してもらっている。

 

 そこから魔法少女協会まではそれなりに遠く、レテとコトイリは暇なのでこうして歌を歌っている。

 

「びるでぃあっぷぃずうっだんくれい、うっだんくれい、うっだんくれい。びるでぃあっぷぃずうっだんくれい」

「My fair lady」

「レテさんは何語ですの、それ。」

「英語だよ」

「……どういう意味ですの?というかロンドン橋に続きなんてありましたっけ。」

「ありますよ。十二番まであります。まぁ、民謡なので別パターンも数多くあるのですが。今レテと歌っていたのは二番で、木と粘土で橋を作ろうとしているところですね。」

「壊れそうな橋ですこと。」

「あー、先取りされちゃった」

「え?」

「歌の人々も同じことを思ったようで、木と粘土では流されてしまうと別の材料を考案します。」

「ぶりっくさんもるた」

「そうです、レンガとモルタルです。」

「よく分かりますわね……。」

「ですがこれも壊れてしまうとまた別の材料を考えます。結局金と銀で作り、それらを盗む盗人を捕まえるためにパイプを持った寝ずの番を用意して終わります。」

「コトイリ全部言うんだ。次は何歌おうか」

「かごめとかどうでしょう?」

「仲良くお話のところ悪いですが、着きましたわよ。」

 

 窓の外を見ると魔法少女協会本部の校門が見える。受付には、はぜきお姉さんもいる。車の窓を開けて、手を振る。

 

(うらら)さん!正門を開けて下さいまし!」

「はいはーい、おかえりー」

 

 門が開き、校庭を車で進んでいく。駐車場代わりのそこには黒い車と白いトラックが並んでおり、レテ達が乗っている車もその横に移動されつつある。

 

「よし、無事に駐車できましたわ。先に降りてて良いですわよ。」

 

 後ろを見ていた頭が戻り、伝えられる。それに頷いて、コトイリを連れて降車する。

 校舎の正面扉を目指して歩いていくと、扉から誰かが出てきた。背丈や格好からして知らない人だ。

 

 その人はあゆむお姉さんよりも少し低いぐらいの背丈で、耳の辺りまでの長さの微かに光を反射する白髪。向けられた顔は左右を反転させても全く同じに見えるだろうと思える程に対称で整っているが、目が見開かれて爛々と輝いているのでとても怖い。

 そのまま、怪我でもしているのか足をあまり持ち上げず、校庭の土と靴が擦れ合うズリズリという音を立てながら、こちらに近寄ってくる。目の前に立たれた。

 

「……レテに何の用ですか。」

「用という程のものでもないよ。ただ、こんな面白くて貴重なものを目の前にして観察しないだなんて研究者としてあり得ないだろう。」

「貴重……?」

 

 レテに貴重なところなんてあっただろうか。怪しいお兄さん、いやお姉さん、やっぱりお兄さんかな……怪しい人はレテとコトイリを交互に見ながら忙しなく手を動かし、時折頷いている。ふと、レテの方にだけ視線を向ける。

 

「あれ?これはどうなってるんだ」

「どうなってるも何もないです。もう観察は十分でしょう、さっさとレテから離れて下さい。」

 

 コトイリがレテと怪しい人の間に立って遮る。怪しい人への対応にしてはコトイリの反応がぬるいので、もしかしたらこの人はコトイリの知り合いなのかもしれない。

 

「いや、ちょっと、まだ……もう少しで分かりそうなんだ。」

「あんなにも私とレテの繋がりを見ておいて、そしてレテを凝視しておいてまだ分からないのですか。君も鈍りましたね。」

「…………魔法少女か?」

「そうですよ、レテは魔法少女です。それだけのことです。」

「酷いことをする。それが君のやり方か。」

「君には負けますよ、それにレテが望んだことです。さ、レテ。行きましょう。」

 

 コトイリの腕がレテを引いていく。怪しい人はレテをまだ凝視している。怖い。そっと目をそらしてコトイリの方を見る。

 

「あの人はコトイリの知り合い?」

「まあ、その範囲内でしょう。あれは魔法少女協会の協会長ですよ。こちらでの異次元エネルギーの挙動に関して並々ならぬ興味があり、肉体を得てまでこちらに留まった私の同族です。」

「へー、あの人も異次元生命体なんだ」

 

 階段を登る。方向からして、寮の部屋に向かっているのだろう。

 

「ふと思ったんだけど、真っ先に行くのが自分の部屋でいいのかな。なんか先に報告に行く場所とかありそうなものだけど」

「何も言われてないので大丈夫だと思いますよ。それに、レテには気になることもあるでしょう。」

「そんなんあったかな」

 

 コトイリは目を丸くして、不思議そうに頭を傾ける。

 

「服」

「あぁ……」

 

 確かに昨日せいかお姉さんが買った服があのクローゼットに入り切っているかは割と気になる。それに、ちゃんと届いているのかも。

 

 寮の部屋の前に着いた。扉にある張り紙にはあゆむお姉さんの名前とレテの名前が書いてある。ノックをする。返事はない。あゆむお姉さんは出かけているのだろう。

 

 扉をスライドさせると、沢山のトレーニング器具が目に入る。一度目にしたことがあるとはいえ、やっぱりまだ驚いてしまう。

 靴を脱いで、早速部屋の右側にあるクローゼットの前に行って、開く。

 

「あれ」

 

 かなり入ってはいるが、思っていた程ぎゅうぎゅう詰めではない。両開きのその下の引き出しも同じくそうだ。

 

「レテが着せ替えられていたから多く思えていただけだったのかもしれませんね。」

「なるほど」

 

 折角だがら今着ているブラウスとスカートを脱いで、違う服に着替えてみる。この紺色の薄手の長ズボンに黄色の袖無しのワンピースと白シャツなんかいいんじゃないだろうか。コトイリも同意したので、それに決まった。

 

 

 

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