彼女は単なる魔法少女   作:うさぎ最高

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 本は膝の上に置いたまま、頭だけ動かしてその人はこちらを見ている。幸い敵意はなく、そこには疑問しかなかった。

 

「最近魔法少女になったレテです。やることがなくて暇だから探検してて、それで図書館に来ました」

 

 その人は既に誰かからレテのことを聞いていたのか、合点がいったようで、あなたが噂のレテちゃんかと反芻している。

 

「星華さんから話は聞いているよ。なんでもうちの捺実(なつみ)に稽古をつけてもらう予定らしいね」

「……それ聞いてません」

「あれまぁ、星華さん結構連絡ミスするんだよ。自分の持ってる情報を伝えるのが苦手なんだろうね。僕的にはあの人後輩を連れ回すのに向いてないと思うんだけど」

 

 でも足手まとい(新人)と一緒に魔物討伐するの平気なのあの人ぐらいだししょうがないよね。そう言って声を立てて笑う。随分と愉快な人だ。

 

「当人からそのように聞いたことはありませんが、浦西星華は魔法少女の中でも強い方なのですか?」

 

 コトイリが尋ねる。それに大袈裟に手を振って、笑いながら返す。

 

「んにゃ、星華さんは別にそこまで強くないよ。というか今いる魔法少女の実力自体横並びだし。平気云々は性格と戦い方の問題さ」

「と、言いますと。」

「誰かを見守れるような戦い方をしてる人が少ないんだよ。接近して一対一で殴り合う人が多いこと多いこと。僕も人のこと言えないけど」

「レテもお姉さんと一緒かもしれない」

 

 日傘で殴ったり消したりするのがレテの基本攻撃だ。魔物に接近した状態でどこに誰がいるのか把握するのは難しい気がする。

 そう考えると、確かに上空に留まってそこから枝を投げているせいかお姉さんは、かいりお姉さんやレテみたいな接近戦をしてる魔法少女よりも、誰かを見守るのに向いているのだろう。

 同意を示すために頷いておく。

 

「レテちゃんも接近戦タイプなんだ。だから星華さんはこっちに教育しろって言ってきたんだろうね。」

「ふーん」

「浦西星華はしっかりとレテのことを考えていたのですね。良いことです。」

「上から目線だなー」

 

 またけらけらと大声で笑う。レテとこの人しか居ないとはいえ図書館でこんなに大声を出してよいのだろうか。

 

「さっきから煩いよ。本が面白いのも分かるけど程々に……って、誰?」

 

 よくなかった。他に人もいた。しかも話していたお姉さんと見た目がそっくりな人。服装まで同じで、本を三冊抱えている。

 違う部分はピアスの位置だろうか。今出てきたお姉さんは左耳にピアスを付けているけど、話していたお姉さんのピアスは右耳にある。ただピアスは同じ、銀色の四角いものだ。

 

 出てきた方のお姉さんは最初眉間に皺を寄せていたけど、今その顔は驚愕に染まっている。

 

「あ、捺実。この娘はレテちゃんだよ。ほら、星華さんに言われてた娘」

「捺実は君でしょ。またよく知らない人を騙そうとしてるの?趣味悪いよ。」

「バラされちゃった」

 

 また笑っている。同じ見た目の人が同じ声で話しているから混乱してきたけど、どうやらレテ達は騙されていたらしい。

 この頻繁に笑う人が、レテに戦い方を教えてくれる捺実さんのようだ。

 後から来た方、捺実さんじゃない方が申し訳なさそうな顔でこちらを見る。

 

「ごめん。捺実は初中(しょっちゅう)こういうことをするんだよ。ほら、僕達瓜二つだから。」

「別に大丈夫」

「問題ありません。」

 

 大丈夫だけど……瓜二つだからのところで誇らしげにしたのはなぜなんだろう。

 かいりお姉さんも捺実さんもこの人も魔法少女というのは変な人の割合が高いんだろうか。

 

 捺実さんじゃない方の人が本を置いて、本棚にもたれ掛かって座っている捺実さんを立たせている。当然のように同じ身長だ。きっと1mmも違わないだろう。

 

「さて、改めて自己紹介をしよう。僕は(うしお)、こっちは捺実(なつみ)。」

「苗字はどっちも一緒!二人合わせてさかもとシスターズだよ」

「さかもと姉妹ね。」

 

 今度は二人とも笑っている。うしおお姉さんの方は音立ててないけど。……薄っすら思ってたけど、苗字同じってことはやっぱり双子なんだ。

 

「レテはレテで、これはコトイリです。よろしくお願いします。うしおお姉さん、なつみお姉さん」

「レテと契約している異次元生命体のコトイリです。どうぞよろしくお願いします。」

「あ、敬語はいらないよ。星華さんや灰李ちゃんには敬語じゃなかったって聞いてるし」

「じゃあそうする」

 

 レテが敬語をなくすとなつみお姉さんは満足そうに首を振った。

 

「汐、そろそろ昼ご飯だ。部屋に戻ろう。」

「了解。レテちゃん達もはやく食堂にいきなよ、あ、食堂の場所分かる?」

「分かる」

「ならよかった、遅れるとご飯無くなっちゃうかもしれないしね」

 

 笑いながらうしおお姉さんはなつみお姉さんに連れ去られていった。階段を降りる音が聞こえて、扉が開いて閉まって、そして図書館は静寂に包まれた。

 

「……コトイリ、レテ達も行こうか」

「本を借りていかなくても良いのですか?」

「昼ご飯の後でいいや」

 

 階段を一段一段下っている。ふと、あることに気付いた。

 

「ねぇ、コトイリ」

「なんでしょう」

「あのお姉さん達の区別する方法、ピアス以外に思いついたよ。なつみお姉さんの方だけ腕時計着けてる。」

 

 本に隠れて判別つかなかったけど、階段の方に向かっていった時、後ろから見た時にうしおお姉さんの腕には腕時計がなかった。うしおお姉さんは座っていた時、右腕に腕時計が見えたのを覚えている。ちょっと秘密を見つけたような気分。

 

「そんな細かいことに意識を割かなくても分かりますよ。全く纏う異次元エネルギーが違うではないですか。」

「……レテはそれ分からない」

 

 コトイリはずるいと改めて思った。

 

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