幾何学的な模様のある扉、その上の壁に貼り付いているプレートには個室二とだけ書かれている。
ドアノブも何もない扉に身体を当てると、すり抜けていく。休憩室と同じ仕組みだ。
『お待たせしました。』
「待った?」
境さんは椅子を回転させて、身体をこちらに向け、手招きをした。近寄ると、机の上に地図が見えた。
地図には多くの書き込みがあり、その中でも赤い小さめの円が一際目立っている。
『なるほど』
「なるほど」
『突入後はどうするの』
「突入後はどうするの」
そういうことらしい。
方針が決まったので、早速行くことになった。街の中での行動は私服ですると言われたので、服を切り替えると首を横に振られた。魔法少女の衣装に戻す。
ニヤニヤと笑みを浮かべながら境さんが部屋を出る。追いかけていくと、個室五というプレートのある扉に入った。扉には他の個室や休憩室と同じく、よく分からない模様がある。
私とコトイリも続けて入ると、梯子があった。
梯子は床に開いた穴から出ていて、下に降りるためのものであることが窺える。
『ここまでする必要があるのですか』
『本部とは違い、普通に人が近寄れますからね。ここ以外の支部でも同じ仕組みらしいですよ。』
『そうなんだ』
境さんが降りた後、私もコトイリを廊下に下ろして、梯子を掴む。金属製の梯子は所々錆びてはいたが、しっかり固定されており、不安はなかった。
下の部屋に着き、右を見ると廊下があるのが分かる。一周見渡したが、それ以外の壁には何もなかった。
英文字満載の淡黄色のTシャツに紺のジーンズを履いて、小さなレモン色のバッグを持ち、包帯を巻いている境さんが歩いていく。
私も廊下に入った。廊下は薄暗く、やけに長い。設計者は、余り近い建物だとバレると思ったのかもしれない。
やっと扉が見え、境さんがそれを開けると、何重にも重なった電子音が流れ出す。
扉の先はいわゆるゲームセンターというやつのようだ。出て、ゲームセンターの方から扉を見るとお洒落な文字でrestroomと書かれている。トイレに擬態しているようだ。
試しにとドアノブを握って回そうとするが、できない。開かないようになっているのか。
境さんはニヤけながらそう言う。半信半疑でちょっと時間を置いてから開けようと試みる。開いた。
しかし、壁が出現していて戻れない。その左右には男子用の個室と女子用の個室の扉が一つずつ出来ていた。
頷く。なぜここまでしようと思ったのかはよく分からないが、凄いことには間違いない。
気になっていたことが解消されたので、本来の予定通りに動くため、ゲームセンターの出口に向かう。それなりに繁盛しているようで、殆どの筐体が埋まっていた。
自動ドアを通り過ぎてしばらく歩くと、境さんがバッグからさっきの地図を取り出す。私も覗き込んで見ていると、黒の二重丸があった建物がこのゲームセンターがあるところだと分かった。目的の赤い円の範囲内にはないが、そこまで遠いというわけでもなさそうだ。
境さんの誘導に従って、移動を続けていくと、範囲に入ったと告げられる。
注意深く辺りを見ながら進んでいると、ふとコトイリが腕を動かす。
『ここですね』
その腕が指し示したのは、街灯の根元だった。