古き良き日本の住まいを体現した屋敷の一室に一人の老人が床に臥せており、周りには多くの人が集まっていた。
「先生、父は」
「・・・・もって今日明日かと」
「そんな」
老人の息子と思われる男性が担当医に容体を尋ね、担当医は診断結果を伝えた。
「木乃香、黒歌、裕奈、斑鳩、鴇はいるか?」
「ここにいるで刀真さん」
「ここにいます」
「私もいるよ」
「いるにゃん」
「ちゃんといるよ」
「剣を・・・俺の剣を持ってきてくれないか?最後に振りたいんだ」
「・・・・はい」
男に頼まれ妻の一人が部屋に飾られている刀を取りに行く。妻から刀を受け取ると、男はゆっくりと起き上がり、剣を杖代わりとして使い、部屋から出ようとする。
「待ってください父上。そんな体で剣を振ろうだなんて」
「誠二」
「母上」
息子の一人が父を止めようとするが母がそれを止めた。
男は庭に出ると、剣を引き抜き、構え、今日までのことを思い出す。不慮の事故で死に、お詫びとしてこの世界に転生した。波乱万丈な人生を送り、自分にはもったいないほど美人な妻、6人と結婚し、子を授かり多くの孫が生まれた。
「(前世で得られなかった多くの物を得られた)満足の行く人生だったな」
今日までのことを思い返し終えると、剣を上段で構え、振り下ろした。
その一太刀はまるで構えた瞬間に振り下ろされていたと錯覚するほど早く、鋭かった。
「・・・・・・」
「父上?っ!?」
何の反応も起こさない男が心配になり息子が近づき、顔を覗き込んで眼を見開いた。男は笑みを浮かべた状態で眼を閉じていたのだ。そして、悟ってしまった。
「父上・・父上!?」
息子は泣きながら男を抱きしめる。息子の反応で男がなくなったことを悟った者達も同じように涙を流した。
男“上條刀真(かみじょうとうま)”。前世での年も加えると享年116歳。家族と戦友、多くの友に見守れながらその生涯を終わらせたのであった。
「(・・・・何だ?)」
生ぬるいお湯に浸かっている感覚、次に柔らかい布のようなもので身体をこすられ、包まれていると刀真は感じた。
状況を確認するために身体を動かそうとするが、思ったように力が入らず、目を開けると視界がぼやけて見えた
「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」
少しづつ視界が良くなっていった刀真が見たのは、黒い髪の綺麗な女性で疲れているのか仰向けになって肩で息をしている。周りにいる女性の力を借り、起き上がった女性は刀真を振るえた手で抱える。その時、刀真は窓に映る自身を見て驚いた。何故なら、赤ちゃんになっていたからだ。
「(どうなってんだ一体?)」
何でこんなことになっているのか分からないが取り合えず刀真は流れに身を任すことにするのだった。