ありふれた転生者は異世界でも無双する   作:白の牙

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第12話

 

 

 「ふん!」

 

 オルクス大迷宮に入って2時間、刀真、ロクサーヌ、ライザの3人はあっという間に19階層にまで辿り着いた。

 

 「うん・・・・だいぶ動きに無駄がなくなってきたな」

 

 いつも使っている大太刀ではなく、ライセン大迷宮でゲットしたガントレット“煌蠍の籠手”を使って戦ってきた刀真。最初は動きにぎこちなさがあったが、戦っているうちにぎこちなさがなくなっていき、今では素手で戦うのと同じ感覚で動くことが出来は始めていた。

 

 「しかし、ライザは随分と戦い慣れてるな」

 

 「まぁね。私としてはそんな重そうなものを両手に持って動ける刀真に驚いてるけど」

 

 

 そして、ライザが思いのほか動けることにも驚いていた。

 

 「・・・・・ここなら大丈夫そうだな」

 

 広さ的に問題ないと判断した刀真はマジックバックからテントを取り出し、広げると自動で組み立てが行われた。

 

 「後は念のためにっと」

 

 テントが組みあがると、刀真は4枚の符を取り出し2枚をテント近くの壁に、残りの2枚を地面に貼り付ける。

 

 「オン」

 

 そして、真言を唱えると、4枚の護符が淡く光、不可視の結界が張られた。

 

 「これでよしっと。2人とも少し休むもう」

 

 「はい」

 

 「えっと、こんなところで休んで大丈夫なの?」

 

 テントの効果を知っているロクサーヌは素直に頷き、効果を知らないライザはこんな場所で休んで大丈夫なのかと尋ねる。

 

 「問題ない。見た目こそ小さいがこのテントの中は昨日泊った宿の部屋並みに広いんだ。更に人払い、魔除け、不可視、侵入防止の効果があるんだ。ついでに強力な人払いと魔除けの結界を張ってるから、見つかることはない」

 

 実際、大渓谷で野宿をしていた時は見つからなかったと刀真はライザにいうとテントの中に入り、普段はマットだが敷くとベッドに変わる寝袋を人数分敷くと、そのうちの一つに入る、1分もたたないうちに眠りに入った。

 

 2時間程仮眠をとって、心身共にリフレッシュした3人は朝が早いということで宿場の亭主が特別に作ってもらった軽食を食べ、エネルギーを補給し終えると攻略を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 「グォオオオオ!!」

 

 「やかましい」

 

 20階層の最奥でゴリラの体躯とパワーに加え、カメレオンの擬態能力をあわせもった“ロックマウント”の咆哮に臆することなく魔物の顎に蹴りを叩きこんで宙に浮かせ、無防備となった胴体に拳を叩きこんで討伐した。

 

 「2人はどうだ」

 

 刀真は少し離れた場所でロックマウントと戦っているロクサーヌとライザに視線を移す。ここまでの道中と違い、最奥は鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形のため、おされてはいないもののうまく立ち回れていないのが分かった。ライザにいたってはここが洞窟で崩落の危険性があるためロクサーヌとの戦いのときに使っていたダイナマイトに似た道具を使えずにもいた。

 

 このままでは押されるのも時間の問題だと思い、代わりに倒そうと思った矢先、2人の動きが止まった。

 2人が動かないのを好機と見た2体のロックマウントは跳び上がると空中で見事な1回転を決めると両腕を広げ、2人に迫る。その姿は創作に出てくる3代目の大泥棒と瓜二つだ。

 

 「・・・・朧・流水斬」

 

 迫ってくるロックマウントに臆することなく、ロクサーヌは鞘に納めた剣を抜く。刀真から教わり現状唯一使うことができる流水のごとき居合“朧・流水斬”でロックマウントを両断した。

 

 「それ!」

 

 ロクサーヌが居合を放ったのと同じころ、自身に迫ってくるロックマウントに対し、ライザは杖に魔力を込めると杖が光の槍へと変わりその光の槍を振り上げ、ロックマウントを斬り裂くのだった。

 

 「あれも錬金術の一種なのかねぇ」

 

 杖が光の槍に変わったことに刀真はあれも錬金術なのかと興味を示していると、

 

 「グォオオ」

 

 背後から擬態していたロックマウントが襲い掛かってきた。

 

 「奇襲をかけるなら声を出すな馬鹿が」

 

 刀真は振り返ると説教を言いながらロックマウントを蹴り飛ばすと、

 

 「“獣厳・砲”」

 

 拳を突き出して拳撃を飛ばし、ロックマウントに風穴を開けると同時に壁に拳大の穴が出来上がった。

 

 「刀真様、あれを見てください」

 

 ロックマウントの素材を回収しているライザを待っているとロクサーヌが何かを見つけたのか指をさす。

 

 「ん?」

 

 ロクサーヌの指さすほうに顔を向けると壁の一部が崩れ、青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。

 

 「あれはグランツ鉱石だよ」

 

 「グランツ鉱石?」

 

 ロックマウントの素材を回収し終えたライザが鉱石の名を教えた。

 

 「特にこれといった効果があるわけじゃないけど、涼やかで煌びやかな輝きが女性に人気で指輪、イヤリング、ペンダントなんかに加工して贈ると喜ぶんだってキャサリンさんが言ってたよ」

 

 「へ~~~~」

 

 何処にいるかもわからない雫と再開したときに心配をかけたお詫びとして何かに加工して渡すかと思い、取ろうと考えるが、直感が危険を伝えてきた。

 

 「おいおい、まじか」

 

 「どうしたんですか刀真様?」

 

 「あの鉱石・・・罠が仕掛けられている」

 

 「えぇ!?」

 

 直感の警報が気になり解析、鑑定を行うと鉱石周辺に魔法陣が設置されており、鉱石に触れた瞬間、部屋にいる者を別の場所へと強制転移させるようだ。

 

 「美味しい話には裏があるだな。でもまぁ、捉え方次第では悪くないトラップだな」

 

 「どういうことですか?」

 

 「メリットは一気に下層に行けるところだ。デメリットは何が待っているのかわからないことだ」

 

 刀真はこの罠のメリットとデメリットをあげる。それと同時に、あれに触ったら起こる未来も見えた。

 

 「(俺一人だけだったら、迷うことなく触るんだが、今は連れがいるからなぁ~)」

 

 自分1人だけならその罠ごと破ればいいだけなのだが、今はロクサーヌとライザの2人もいる博打に付き合わせる訳にはいかないと思っていると、

 

 「あの、刀真様?」

 

 「どうした?」

 

 「その、ライザさんが鉱石をとりに行ったんですが」

 

 「何!?」

 

 言われ、顔をあげると。鉱石をとるためにライザが壁をよじ登っていた。

 

 「ライザ!その鉱石には罠が仕掛けられて」

 

 大声で言うも崖を登るのに集中しているのか聞こえていない。

 

 「くそ」

 

 それならばと刀真はライザが鉱石に触れる前にライザを連れて壁を離れるしかないと考え、高速移動でライザの元へと移動する。

 

 「よし、と・・・」

 

 「ったじゃない!」

 

 ライザが鉱石に触れるギリギリのところで彼女の手を掴み、刀真は触れさせるのを防ぐことができた。

 

 「ちょ、刀真!?手を放してよ、何の力もない石だけど錬金術の素材にはなる・・・」

 

 「この石には罠が仕掛けられてるんだ」

 

 「えぇ!?」

 

 錬金術の素材にしようと思っていたものに罠が仕掛けられていると聞き、ライザは驚く。

 

 「旅をしていればこれよりもいいのが手に入るかもしれない。だから、今回はあきらめてくれ」

 

 「むぅ~~~~~~しょうがないか~~」

 

 さすがに罠と分かっている物に触れるのはどうかと思ったのか、ライザは鉱石をとることを諦めた。その時、

 

 「わぁ!?」

 

 足場にしていた壁が崩れ、ライザはとっさに鉱石に手を伸ばし、触れてしまった。

 

 「あ」

 

 ライザが鉱石に触れたことで罠が起動し、魔法陣が部屋全体へと広がる。そして、視界を白く染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 視界が戻ると刀真達は今いる場所を確認する。3人が飛ばされた場所は巨大な石造りの橋の上。橋の長さはざっと見て100m、天上も20mほどあり、橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。

 

 「ほんっとうにごめん!」

 

 「わざとじゃないってのはわかってるから気にすんな。俺でもとっさに手を伸ばしちまう」

 

 わざとじゃないことは知っているので刀真はライザを責めなかった。

 

 「それはそうとお客様だ」

 

 奥へ続く道と、上階への階段、その両方から魔法陣が浮かび上がる。階段がわの魔法陣からは大量の骸骨戦士が、奥へと続く道からは恐竜にちかい体格の魔物が現れた。

 

 「あれって、もしかしてベヒモス!?」

 

 「ベヒモス?」

 

 「私も冒険者ギルドの資料でしか見ただけなんだけど、ここオルクス大迷宮65階層に生息する魔物でかつて最強と言われていた冒険者でも歯が立たなかったって書かれてた」

 

 「この世界の最強とやらがどれだけの強さだったのかは知らないが・・・・大体、あの赤いグリフォンクラスってところだな」

 

 ライザの情報を聞いた刀真は冷静にベヒモスの強さを測る。

 

 「(2人にはまだ無理だな)あれは俺が相手をする。2人はわらわら出てくる骸骨どもを頼む」

 

 「はい」

 

 「了解」

 

 自分達ではまだベヒモスと戦うことはできないと分かった2人は骸骨戦士と戦うことを了承した。

 

 「鎧化(アームド)」

 

 解放の言葉とともに嵌めている指輪からゼリー状の物質が刀真の体を覆い、鎧(という名の服とブーツ)となった。さらにアイテムボックスから煌蠍の籠手を呼び出し、装着する。

 

 「この籠手の性能を試すのにピッタリの相手だな」

 

 遭遇する魔物が弱くて頑丈さや能力を確認することが出来なかったが、目の前の魔物なら能力を知り、試すにはもってこいの相手だと刀真は判断する。

 

 『グルァアアアアア!』

 

 そんな刀真の思惑などつゆ知らず、ベヒモスは咆哮をあげながら突進してくる。

 

 「まずは籠手の耐久力を試すか」

 

 籠手の耐久力、強度を確かめるべく刀真は両腕を交差させベヒモスが来るのを待つ。そして、ベヒモスが触れた瞬間、刀真は吹き飛ばされ宙高く浮かぶ。

 

 体重、体格そのすべてが違ううえに、ぶつかればひとたまりもないが、

 

 「よっと」

 

 刀真は何ともなかったかのように空中で一回転して、キレイに着地した。

 

 『グルァアアアア!』

 

 「ふん!」

 

 そして、最初の勢いのまま突っ込んでくるベヒモスに合わせて右拳を突き出し、

 

 『グルォ!?』

 

 殴り飛ばした。

 

 「もうしぶんなしっと。さて、検証も終わったことだし・・・・狩らせて貰うぜ?」

 

 籠手の状態を確かめ、大体の強度を確かめ終えると籠手同士を軽くぶつけ、獰猛な笑みを浮かべる刀真。その笑みと圧にベヒモスは生まれて初めて恐怖を覚えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 一方、大量の骸骨兵士と相対しているロクサーヌとライザはというと、苦戦していた。

 

 骸骨兵士の戦闘力自体はそんなにたいしたことはないのだが、数が多いうえに倒しても、倒しても魔法陣から出てくるのだ。

 

 「キリがないね」

 

 「はい。それにこのままだと私たちの体力が尽きるほうがさきになりそうです」

 

 骸骨兵士を喚びだす魔法陣を破壊しないことには骸骨兵士との戦いは永遠に続く。この状況を打破するには魔法陣へと続く道をふさいでいる骸骨兵士達を一撃で倒す技、もしくは魔法が必要だ。だが、そのどちらも2人は持っていない。つまり、このままではロクサーヌは言った通り体力が尽きるのがさきとなる。

 

 「ライザさん。この魔物達を一掃できる道具はありませんか?一掃されれば私の最速で魔法陣の所まで行って壊せるのですが」

 

 「う~~ん・・・これだけの数だと、あれかな」

 

 ロクサーヌのこの状況を打破するアイテムはないかと聞かれたライザは後ろ腰のバックをあさり、アイテムを探し、

 

 「あった」

 

 目当ての物、風魔手裏剣に類似した翡翠色のアイテムをバッグから取り出した。

 

 「ライザさん、それは?」

 

 「これ?風を生み出すことのできる道具だよ。前まではもうちょっと小さくて、投げないと行けなかったんだけど、手に持つタイプに変えたんだ。そうすれば」

 

 取り出したアイテムをロクサーヌに説明しながら左手でそれを持ち振るうと、骸骨騎士が斬り裂かれた。

 

 「こうやって直接切ることもできるし。さらにこうすれば」

 

 ライザはアイテムを骸骨兵士に向けてかざすと、アイテムはひとりでに回転を始め、突風が巻き起こり、骸骨兵士たちを吹き飛ばした。

 

 「こんなこともできるんだよね~~。今だよロクサーヌ」

 

 「・・・・・・“雷公”」

 

 ライザが魔法陣までの道筋を作ったのを確認すると、ロクサーヌは身体強化以外で唯一使うことのできる魔法“雷公”を唱え、発動する。雷をまるで鎧のように身に纏うと、目にも留まらない速さで魔法陣の元へと駆ける。その道中、再び魔法陣から召喚された骸骨兵士に道を阻まれるも、ロクサーヌと接触した瞬間、粉々になった。

 

 数秒足らずで魔法陣の元にまでたどり着いたロクサーヌは刀剣を魔法陣に突きさして破壊。これで骸骨兵士が無限に召喚されることはなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「オラオラオラオラオラ!」

 

 自身よりもはるかに大きいベヒモスに刀真はラッシュを仕掛ける。蟻と像なみの対格差があるというのにベヒモスは刀真のラッシュを受け後ずさっていく。

 

 「オタァ!」

 

 そして、強烈な右ストレートをくらったベヒモスは大きく後ずさった。

 

 「その自慢の角もあと少しで砕けそうだな?」

 

 連撃と強烈な右ストレートをくらい続けた角はボロボロとなっており、正直、いつ砕けてもおかしくなかった。

 

 『グ、グルオォォォォオ!』

 

 ベヒモスが怒りの咆哮をあげると、角が赤く輝きだす。

 

 「(魔力を纏わせた?・・・・いや、違うな僅かだが、焦げたにおいがする)赤熱化って所か?気と鎧で大丈夫だろけど、進んで当たりたいとは思わないな」

 

 刀真は気による強化と鎧で赤熱した角に当たっても身体を焼かれることはないと断言するが、進んで当たりたくないと言う。

 

 「これ以上戦ってもイジメになるだけだから・・・終わらせるか」

 

 ベヒモスの底を測りきった刀真は終わらせるべく、左拳を地面に向け、

 

 「“発射せよ(Firing‐up)”」

 

 と、唱えると籠手の先端にある水晶が地面へと撃ち出され、地に埋まった。確かな位置に水晶が埋まったことを確認した刀真は後ろに下がった。後ろに下がったのを好機ととらえたベヒモスは咆哮をあげながら突っ込んでくる。

 

 ベヒモスの身体が地面に撃ち込んだ水晶の手前まで来たところで、刀真は左拳を地面に叩きつけ、

 

 「“成長せよ(Growing‐up)”」

 

 そう唱えると、地面を通して振動が水晶へと伝わり、その振動を糧に水晶が急成長。成長した水晶はベヒモスの顎に当り、のけ反らせた。

 

 「はぁあああああ」

 

 ベヒモスがのけ反ったのを確認すると、刀真は右腕に力を集約させる。その光景を見ていたベヒモスは刀真の背後に自身よりもはるかに大きい亀とその亀に巻き付いた蛇がいるように見えた。

 

 「“獣厳・玄武爆”」

 

 力をため終えた刀真は一足でのけ反ったベヒモスの懐に入ると力を集約させた右拳を殴ると同時にその体に大きな風穴を開けた。ベヒモスは光の粒子となって消えいた場所には巨大な魔石と戦利品である角が落ちていた。

 

 「魔石は換金。角は・・・何かに使えるかもしれないからとっておくか」

 

 落ちている魔石とベヒモスの角をアイテムボックスに収納して魔石は換金で金銭へと変える。それを終えると刀真はロクサーヌとライザの元へと戻って行くのだった。

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