ありふれた転生者は異世界でも無双する   作:白の牙

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第13話

 

 

 

 

 ひょんなことから罠にかかり、最強といたわれた魔物“ベヒモス”との戦いに陥った刀真、ロクサーヌ、ライザの3人。何の苦もなくベヒモスを討伐すると、数階ほど下に降り、その日の迷宮攻略を終えることにした。

 

 「刀真って本当に強いよね~~」

 

 「どうしたいきなり?」

 

 食後のお茶を飲んでいるとライザが刀真を見て言ってきた。

 

 「今の私じゃあ絶対に倒せないと思えるベヒモスを1人で倒したんだよ?」

 

 「強くたっていいことなんてないさ。特に俺の故郷でわな」

 

 「どうして?」

 

 「・・・・・俺がいた世界には魔物なんてものはいないから、堂々と剣を振るうことも魔法を使うこともできない。俺が使ってる刀やライザが作った爆発物も個人が持つことが禁止されていて、扱ったりするには資格が必要なんだ」

 

 「資格かぁ。今まで気にしない作ったり、使ったりしてたけど・・・確かに必要だね」

 

 刀真の発言にライザは納得する。

 

 「考えても仕方ないしやめよう。それより、ライザ」

 

 「何?」

 

 「ほれ」

 

 刀真は今、思い出したかのようにあるものをライザに投げ渡した。

 

 「おっと・・・って、これてグランツ鉱石!?しかもこの大きさ、私が採取しようとしてたもの!?」

 

 「一目見ただけで分かるなんてな」

 

 「でも、どうやって採ったの?そんな時間なかったよね?」

 

 「ちょっとした裏技を使ったのさ」

 

 ライザの言う通り、鉱石を採取する時間はなかった。だが、刀真は鉱石を採取した。何故か?それは刀真が自身のスキルを使ったからだ。罠が発動した瞬間、スキル“蒼雷”を発動、自身に纏わせ身体機能をあげた。更に習得しているスキルの権能の一つである思考加速を使い、感覚を引き伸ばす。そして、引き伸ばされた時間の中ですばやく鉱石を掘り起こし、アイテムボックスの中に入れた。かかった時間、1秒。

 

 「・・・・とってくれたのかうれしいけど・・・ごめん、これは受け取れない」

 

 数秒の間、鉱石を見ていたライザは鉱石を刀真に返した。

 

 「不注意と予想外の事で2人を危険な目に合わせた私には受け取れないよ。だから、それは刀真が使って」

 

 「分かった」

 

 ライザに鉱石を使ってほしいと言われた刀真はライザの意思を尊重し、自分で使うことを決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 その翌日、色々な意味で英気を養った刀真達は一気に100階層にまで進んだ。ベヒモスを超える魔物が存在しなかったというのも一気に踏破できた理由の1つでもあるのだが。

 

 「ここが終点の100階層か」

 

 「あっという間だったね」

 

 いまだ100階にまで辿り着いた者は誰もいないと言われているオルクス大迷宮の100階に罠込みとはいえ1日と数時間で踏破したのである。

 

 「だが、俺たちにとってはここからが本番だ」

 

 100階のその先を知っている刀真達にとっては本当の大迷宮を井戸見た目の通過点でしかない。

 

 「準備と覚悟は出来てるか2人とも?」

 

 「はい」

 

 「勿論」

 

 「・・・じゃあ、行くか」

 

 3人はそろって目の前にある扉の魔石に触れる。すると、魔法陣が3人の足元に展開され、淡い光とともに3人は100階層から姿を消した。

 

 同時刻、とある王国の騎士団が、異世界から召喚した勇者達とともにオルクス迷宮に足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・・ここが、真のオルクス大迷宮の1階層か」

 

 「表の迷宮よりも暗いですね」

 

 「この暗さに視覚が慣れるまでは嗅覚と聴覚に頼るしかないな」

 

 ぼんやりとしか先が見えず、この暗さに目が慣れるまでは他の器官で補うしかないと刀真が言うと、

 

 「ふっふ~~ん、そこは心配ご無用だよ」

 

 ライザが胸を張って言う。

 

 「大丈夫ってどういうことだ?」

 

 「こういうことも想定して錬金術で夜目が効くものを作ってたんだ。はい」

 

 刀真の問いにライザはバッグから丸薬のはいった瓶を取り出し、刀真とロクサーヌに1粒ずつ渡す。

 

 「これを飲めばどんなに暗い洞窟でも普通に見ることができるんだ」

 

 「ほぅ」

 

 ライザから丸薬の説明を受けた刀真は興味を示し、丸薬を口に入れ、飲み込む。丸薬を飲んで数回瞬きをすると、暗かった洞窟内が鮮明に見えるようになった。

 

 「おぉ」

 

 「これは凄いですね」

 

 「でしょ、でしょ」

 

 2人に褒められ機嫌をよくするライザ。

 

 「どのくらい持つんだ?」

 

 「1粒で2日ぐらいかな」

 

 「結構持つな」

 

 半日、長くて1日だと思っていた刀真はその効果時間に驚く。

 

 「さて、ここからは未知だ。2人とも警戒を怠らないように・・・行くぞ」

 

 もろもろの準備を終え、3人は迷宮攻略を開始した。

 

 

 

 

 

 「まさしく洞窟って感じだね」

 

 せり出た岩を避けながらライザが感想を言う。

 

 「でも、一つ一つがでかいから避けて通るのも一苦労だ」

 

 「ですが、これだけ大きければ身を隠すのに役立ちますし、奇襲をかけることもできます」

 

 「その逆もしかりだけどな」

 

 「でも以外かな~~?」

 

 「何がだよ?」

 

 「刀真はそんなこと考えないで突き進んでいくような気がするんだよね~」

 

 「何でそう思った?」

 

 「何となく」

 

 ライザの女の勘に刀真は苦笑いを浮かべる。

 

 「ライザの言う通り、昔の俺だったら突き進んでたな。だけど、とある一件で死にかけてからは慎重さを身に着けたんだ」

 

 「昔って、刀真のいた世界にはこういった迷宮はないって言ってなかったっけ?」

 

 「・・・俺にもいろいろあるの」

 

 ライザの問いに刀真はあさってのほうを向いて答えた。

 

 「っ!止まってください」

 

 道なりに進んでいた3人が初めての分かれ道に辿り着いた時、斥候役を勤めていたロクサーヌが何かに気づいたのか、2人に止まるよう指示を出し、岩陰に隠れるようにジェスチャーを送る。そのジェスチャーに従い、2人は岩陰に身を隠す。

 

 数秒間、身を隠していると直進方向の通路から白い毛玉が跳ねながらやってきた。

 

 「(・・ウサギだね)」

 

 「(ウサギだな。俺の知ってるウサギとは大きさがだんちがいだが)」

 

 通路の奥からやってきたウサギ型の魔物。それは中型犬ぐらい大きく、後ろ足が大きく発達しているうえ、赤黒い線が血管のように幾本も浮き上がり、心臓のように脈打っていた。

 

 「(どうしますか刀真様?)」

 

 「(迷宮の魔物の強さを知るには丁度いいかもしれないな。おあつらえ向きに他にも身を隠しているがいるみたいだからな)」

 

 真の大迷宮に住む魔物に強さを知るには丁度いいと刀真が言う。刀真の言う事が分からないライザだったが、

 

 「(・・・来ます)」

 

 ロクサーヌの言葉を聞き、視線を移すと、

 

 『グルゥア!』

 

 白い毛並みの狼型の魔物は唸り声をあげながら岩陰から飛びで、ウサギに襲い掛かる。最初に飛びでた狼に続くように岩陰に隠れていた2匹の狼がウサギに襲い掛かる。

 

 第3者から見れば狼がウサギを捕食すると思うだろう。だが、

 

 『キュウ!』

 

 ウサギはかわいらしい鳴き声をあげたかと思えば、跳び上がり空中で一回転すると、異常に発達した足で最初にとびかかってきた狼に回し蹴りを繰り出す。その際、蹴りが出せるとは思えない音が発生し、蹴りが狼の頭部にヒットすると鳴ってはいけない音とともに狼の首があらぬ方向に捻じ曲がる。

 

 「(魔物にしてはいい蹴りだな)」

 

 自分の蹴りに関心を持たれていることなどつゆ知らず、ウサギは回し蹴りの遠心力を利用してもう一度空中で回転すると、さかさまの状態で宙を踏みしめ隕石のごとく地上へと落下、着地寸前で縦回転し、回転の勢いも乗せたかかと落としを着地地点にいた狼に繰り出し、頭部を粉砕した。

 

 ウサギが着地するのを見計らっていつの間にか岩陰から出ていた2匹の狼がウサギを襲う。それに対し、ウサギはあろうことか生えているウサミミで逆立ちするとブレイクダンスを始めた。襲い掛かった2匹の狼は回転蹴りをくらい壁に激突し、絶命した。

 

 『グルルル・・・グルゥア』

 

 最後まで残っていた1匹の狼が唸りながら尻尾を逆立てすると尻尾が放電を始め、咆哮とともに雷撃をウサギに飛ばす。

 

 高速で迫りくる電撃をウサギは右、左と華麗なステップで躱し電撃が途切れた瞬間、狼に懐まで一気に踏み込むとサマーソルトキックで顎を蹴り砕いた。

 

 『キュ!』

 

 ウサギは前足で耳を払い、勝利の雄たけびをあげた。

 

 「「・・・・・・」」

 

 「(1階層で出てくる魔物でこの強さ。今の2人じゃ倒すのはきついかもしれないな)」

 

 狩られると思っていたウサギが狼(しかも複数)を圧倒したことに驚くロクサーヌとライザを他所に刀真は冷静に魔物と2人の戦闘力の差を分析していた。

 

 「(これは本格的な探索を始める前に2人のブートキャンプをするほうがいいかもしれないな。問題な場所だな)」

 

 今後の予定を決めていると、

 

 『キュ!?』

 

 ウサギの驚くような鳴き声が聞こえてきた。

 

 「(どうしたんだろう?)」

 

 「(体が震えていますね)」

 

 誰から見てもウサギの様子はおかしかった。

 

 「(・・・ある震え、何かに怯えている?)」

 

 ウサギの様子から体の震えは恐怖からくるものだと判断した刀真。一体何に怯えているのか?そう刀真が思っている中、それは現れた。

 

 2mはあるであろう巨躯に白い毛皮、ウサギや狼達のように体を走る赤黒い線。その魔物を例えるなら熊だった。ただし、足元まで伸びた長く、太い腕、30センチはありそうな長い爪。

 

 熊はゆっくりとウサギの前まで移動するとウサギを睥睨する。言葉通り蛇ににらまれた蛙になったウサギは熊ににらまれ、動けずにいる。

 

 『・・・・グルル』

 

 この状況に飽きたかのように熊が低い唸ると、ウサギが夢から覚めたかのように体を一瞬震わせると脱兎のごとく逃げ出した。

 

 『・・・・』

 

 逃げ出したウサギに熊のその巨体に似合わない速さでウサギに迫ると、その長い腕を振るい、鋭い爪でウサギを切り裂こうとした。だが、そこはさすがのウサギ、体を捻りながら横に跳び、熊の爪撃を躱した。

 

 誰の目から見ても熊の爪はウサギには掠りもせず、躱しきったかのように見えた。

 

 しかし、地面に着地したウサギの体が三つに分かれた。熊は悠然とウサギの死骸に近づくと死骸を爪で突きさし、食べ始めた。

 

 「っう!?」

 

 「・・・・」

 

 その生々しい光景にライザとロクサーヌは目を背け、吐き出さないよう手で口を抑えた。

 

 「(2人には刺激が強かったみたいだな)」

 

 昔、転生する前のだったら、自身も2人のようになっていたのだろうと刀真は思う。2人心の安定のため熊にはさっさとどこかに行ってもらいたいと思っていたのだが、そう簡単にいかないのが現実である。

 

 ウサギを全てを食べ終えると熊の唸りながらこっちを向いた。どうやら、刀真達が隠れていることに最初から気づいていたようだ。

 

 「(こっちを狙わなかったのはいつでも殺せるからと腹を満たしたかったからってところか)」

 

 逃げることは簡単だが、延々と追い回されるのは簡便と思い、刀真は必要ないが念のために分身を1体作り、岩陰から出る。

 

 「(刀真様!?)」

 

 「(刀真!?)」

 

 「俺たちがいることはバレてるみたいだ。それに今見ただろう、でかいうえに動きも速い。さらにここの住んでるから道も知り尽くしてる」

 

 バレているからか小声ではなく普通の音量で2人に岩陰から出た意味を話す。

 

 「逃げるよりも狩ったほうが早い」

 

 刀真は鯉口を切り、構える。一瞬の静寂ののち、先に動いたのは熊だった。

 

 逃げたウサギを追ったように体に似合わない動きと早さで刀真に近づき腕を振り下ろそうとするが、それよりも早く刀を抜刀した刀真の一閃が熊の腕を切り落とした。

 

 『グルゥア!?』

 

 腕を切り落とされた事に加え、初めての痛みに戸惑う熊。

 

 「狩られる側は初めてみたいだな?その気持ちをたっぷりと味わいながら逝け」

 

 振り上げた刀をそのまま振り下ろし、熊を両断した。

 

 両断された熊はベヒモスのように粒子となって消え、魔石と素材が残った。さらに

 

 「なんだこれ?」

 

 1個の宝珠も転がっていた。

 

 「“風爪”?」

 

 解析、鑑定で宝珠の名を読み解いた刀真だったが、いつまた魔物に襲われるのかが分からない今、調べるべきではないと判断し、アイテムボックス内へとしまった。

 

 その後、熊の影響で斥候を勤めることが出来なかったロクサーヌの代わりに自身の直感に従って、進んでいくと川辺に類似した場所に辿り着いた。

 

 「こんな場所があったなんて」

 

 「丁度いい、ここで少し休も・・・ん?」

 

 小休止兼野営の場所にちょうどいい場所だと思い準備を始めようとした時、突き出た岩に何かが引っかかっているのが見えた。少し気になり、岩に近づくと、

 

 「っな!千癒にハジメ!?」

 

 気を失った幼馴染と親友がいたのだった。

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