異世界に強制召喚されてから5日。刀真はブルッグと呼ばれている小さな町で冒険者活動を行いながらこの世界と召喚された他のクラスメイト達の情報を集めていた。
今わかっているのは召喚されたこの世界の名が“トータス”と言うこと、トータスには3つの種族があり、その内の2種族、人族と魔人族が長い間争いを続けていること、最近、魔人族側に何らかの変化が起こり、戦況が変わったことだ。
「(つまり、俺達はその戦況をひっくり返すために喚ばれたってわけか。でも、何処にいるのかまではまだわかってない)」
紙に書き記した情報を読み返しながらこれからについて考える。
「(多くの情報を得るにはでかい街か国に行くしかない。ここからだと商業都市フューレンか帝国が近いな)・・・・・昨日見た夢も気になるしな~~~」
次の目的地を決めていた刀真だったが昨夜見た夢が非常に気になっていた。
「(見た目からしてあれは獣人だった。何かに追われているようだったがその正体は分からず、残酷にも殺された。何であんな夢を見たのかは分からないが助けて未来を変えろってことか?)でも。助けろって言っても時期が分からないんじゃなぁ~~~」
何気に難度の高いミッションに刀真はお手上げ状態だった。
「取り合えず明日、亜人達がいるっていうフェアベルケンの森とやらに行ってみるか」
ここで悩んでいても仕方がないと思った刀真は明日、多くの亜人達が住む森“フェアベルケン”に行ってみることを決めた。
翌日、行くついでに荒野に住む魔物の討伐の依頼を受けた刀真はマジックバッグに収納しているとある天才に頼んで作ってもらった魔力バイクに乗って森へと向かっていた。
「久しぶりに乗ったが、いい乗り心地だ」
交通規制のない世界のため滅多に出せない速度で荒野を走る刀真。
「さて、もうすぐ森に着くが・・・・何だあれは?火柱?」
「はぁ、はぁ」
荒野を犬耳の生やした少女が必死に走っていると、頭上に影が被ったことでその存在に気づき、空を見上げる。
『クェエエエエエエエエ』
翼を生やした何かがおり、太陽を背に少女へと襲いかかる。犬耳の少女は傷を負うのを承知で前に思いっきり跳び、襲撃者の奇襲を躱した。前方に回りながら受け身を取ると少女は手に持っていた鞘から剣を抜き取り構えると、
「やぁあああ」
襲い掛かってきた魔物に斬りかかる。
『クェ!』
鋭い鈎爪での攻撃を紙一重で躱し、渾身の一刀を振るうが、
「か、硬い」
魔物の足は鉄のように硬く、足を切り落とすことが出来なかった。魔物は少女を引き裂こうと連続で前足を振るう、少女は剣で爪をうまくさばきながら後退する。足が駄目なら比較的柔らかいであろう喉か眼を狙おうと魔物の猛攻に耐えながら隙が出来るのをジッと待つこと数秒、少女を仕留めようと魔物が足を大きく振り上げたのを好機と見た少女は首を切り落とそうと遠心力を乗せた一刀を振るう。
「(落とせる)」
確実に切り落とせると少女が思った瞬間、魔物から光が発せられた。あまりの光に少女は片眼をつむった。そして、光が止むと、剣の半分が焼切れていた。
ありえない出来事に少女が困惑し、動きを止める。
『クェエ!!』
魔物が爪を突き立ててきた。
「っ!?」
寸前のところで気を持ち直した少女は鞘で爪を受け止めた。力負けし、地面に叩きつけられたうえ、もう片方の足で少女が逃げれないように抑え込んだ。
そして、少女のとどめを刺そうと魔物の口から炎が漏れ出る。少女が絶望を感じていると、1本の短剣が魔物の目に突き刺さった。
『クェエエエエエ!?』
片目を潰された痛みに魔物が苦痛の叫びをあげていると1人の青年が現われ、魔物を蹴り飛ばしたのだった。
「(夢で見た子だな)」
火柱が上がった場所を目指してバイクを走らせていた刀真は赤、紅、赫で統一されたグリフォンに類似した魔物に襲われている亜人の少女を見つけ、助けるために特殊な術式が施された短剣をアイテムボックスから取り出し、魔物の片目に向け投擲。魔物の片目をつぶし、痛みに悶えている魔物の元に一瞬で飛び、がら空きの胴体に回し蹴りを叩き込み、蹴り飛ばすのだった。
そして、少女の安否を確認するため振り返ると、その子は夢に出てきた少女だった。
「(ご都合主義というか、何かが関与してるきがしてならないが、今はこの子の治療が先だな)」
偶然では片付けられない出会いに刀真は誰かが関与しているのではないかと疑問を感じるも、少女の体を見て、治療が先だと判断した。
「“治癒(クーラ)”」
刀真は倒れている少女の元にいき上半身を起こすと回復魔法を少女にかけた。傷がそこまでひどくなかったため、直ぐに治った。
「さて、残るは」
『クェエエエエエエ!!」
魔物の討伐だけだと刀真が思った矢先、魔物が目が光、雄たけびを上げると地面が一瞬で溶岩地帯へと変わった。
「まじか」
刀真は少女を抱えると空に浮かびあがり、難を逃れる。固有能力を持っている魔物が存在することは知っていたが、地形を変化させることが出来る魔物がいたことに刀真は驚く。
「このままだと町や森まで広がっちまうな」
この事象を起こしている魔物を討伐しない限りマグマはどんどん広がっていくことを知った刀真は両手で抱えていた少女を片手で抱えなおし、アイテムボックスから転生時に頼んで貰い、数々の戦いを乗り越えてきた愛刀“閻魔”を取りだし、指弾の要領で刀を上に弾き飛ばして鞘から抜刀し、鞘をアイテムボックスにしまい、落ちてきた刀をキャッチする。
「あれを討伐するために今から突っ込む。振り落とされないようしっかり捕まってろ」
「は、はい」
言われた通り、少女は落とされないようにするため刀真の首に手をまわし、しっかりと刀真に抱き着く。その際、少女の豊かな双球が刀真の胸元に当たる。
「(な、何だこの胸は!?弾力、張、柔らかさ。そのすべてを兼ね備えている。黒歌もそうだったが獣人の胸はみんなこうなのか!?って!?今はそんなことを考えている場合じゃないだろうが!?)」
いろんな意味で驚愕する刀真だったが、今はそのことについて検証している場合ではないことを思い出し、気を引き締め治す。
全ての準備を整え終えると、刀真は魔物に向かって飛ぶ。
『クェエ!』
向かってくる刀真に魔物は口から火球を連続で吐き出し、刀真達を塵にしようとする。それに対し、刀真は火球を切り裂きながら進んでいく。魔物は遠心力を加えた尻尾での薙ぎ払いで刀真を吹き飛ばそうとするが、
「しっ!」
『クエェエエエ!?』
逆に尻尾を切り落とされてしまった。
「終いだ。朧・號雷斬」
刀真は刀に練り上げた気と覇気を纏わせ、震脚に匹敵する程の踏み込みと共に示現流の雲耀の速さには遠く及ばないが非常に速く、鋭い一閃を繰り出した。その斬撃は魔物を一刀両断するだけに収まらず地面にも斬撃痕を刻みつけるのだった。
「(いつか運命の出会いがあるって夢で会った女神様やあの子に言われていたけど、もしかしてこの人が私の)」
刀真に抱かれている少女は刀真を見てそう感じ取るのだった。