悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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104話 躁鬱激しい父と兄

「3年前のあの日、ユリアたんが爆誕してからというもの、王都でもほぼユリアたんの実在が信じられるようになっている。セレスの忘れ形見のユリアたんが」

 

「『ユリア』も『たん』もやめてください父上」

 

音を立てず、優雅な食事の場にふさわしくない会話が展開されている。

綺麗なテーブルマナーの元、おフレンチな食事を楽しみながらの会話なのに。

 

「ああ、もちろんごまかしているとも妹よ。実際、『ユリアたんという我が愛すべき妹は存在しない』のは事実だから、否定するのに嘘偽りはないからな」

 

「その設定を作ってしまったのは僕ですが、妹扱いはやめてください兄上」

 

きりりとマジメな顔をしているイケメン父子は、正気な顔をしながら頭のおかしい会話をしている。

 

頭がバグりそうだね。

いや、もうとっくに僕の頭はバグって狂っているのかもしれないね。

 

「しかし――なるほど。『3年前、セレスティーヌから夢の中で、魔王軍による本格的な侵攻を予言された』というユリアたんの言葉は……年月が経つにつれ、ますます真実味を帯びてくるな。ああ、もちろん最初からこれっぽっちも疑ってはいなかったがな」

 

くいっとワイングラスを傾けた父さんが、言う。

 

そうだね、疑わなかったね。

むしろさっきみたいに飛びついてきたと思ったらさめざめと泣かれたね。

 

僕の覚悟とかなんて無駄だったんだね。

 

「ええ、同じく。セレスティーヌママのお告げの通りにモルテール子爵――聞けば、ママ直筆の許可証を与えられて我が領地で活動していた彼が、この領だけでなく、あらゆる領地――王都までへ深く入り込んでいる魔族の痕跡を確認している。その数は明らかに異常だからな、妹よ」

 

「妹では……いえ、良いです……この格好をしている手前、強く否定もできませんし……」

 

――「母さんのお告げ」。

 

枕元に立ち――屋敷内の人たちからの意見を総合すると、息子である僕へは優しいものの凜とした態度で接していたそうで、だから恐らくは淡々と「未来」について語っただろうと思われる、セレスティーヌ母さん。

 

そんなママンが夢でささやいてきたとかいう妄言を愚かにも一発で信じた父さんたちは、僕がゲーム内でちょろっと出たりしていた侵入魔族の手がかりなどをいくつか伝えたのを真正直に信じ、元王女だったママン&辺境伯としてのパパンの地位を活かし、徹底的に調べている最中だとか。

 

そして「7年後から10年後に『魔王』との決戦が予想される」というお告げを確定した未来と信じて根回しをしているんだとか。

 

……うん、まあそれは良いことだ。

 

主人公くんがどのルートを選ぶにせよ、学園のある王都――人類圏の中心も中心、その近くまで魔王軍が攻め込んでくるのはほぼ確実。

 

その規模や時期がずれるだけで、主人公くんが大活躍するのは確定――ということは、そこまで迎撃してきたはずの各領主や兵士たち、冒険者たち――そして市民たちが、かなりの被害を受けるのもまた確定。

 

それほどの脅威を、多くて十数人のヒロインたちを連れただけで返り討ちにできたからこそ「勇者」認定になるんだ。

 

もし未来がゲーム通りに進むのなら、ゲームではないこの世界で、たくさんの人が傷つき、死ぬ。

 

もしそうはならなくって、この世界があのゲームによく似ているだけの世界だったとしたら――万全な対策を講じておけば、もしかしたら被害はほとんど出ないかもしれない。

 

でも、もしゲームの通りならば魔王を倒せるのは主人公くんだけ――つまりは彼が勇者、英雄になるのはどちらにしても確定した未来。

 

多少戦果がしょぼくなったとしても正義の塊みたいなヒーローのことだ、魔王軍を退けていくらか平和になっただけでも満足してくれるだろう。

 

満足してくれるよね……?

 

「しかし……ああ……」

 

「ああ……やはり美しい……」

 

父さんも兄さんもベルトランも他の使用人の男たちもそうだけど、なんで僕を見ながら「ああ……」ってため息つくんだろうね。

 

ちなみにそれの女性バージョンは「はぁ……」だ。

 

ため息つきたいのは僕の方なのにね。

おかしいね。

 

「……なぁベルトラン? ユリアは本当にジュリオンなのか? もしや、セレスティーヌが女神より賜りし未来予知でこうなると知り、本当は双子で生まれてきたユリアたんを私にも隠し、ジュリオンだけが産まれたのだとしたのではないか? あるいはジュリオンは実は女児だったとか」

 

「私めも、最近は疑問に感じてきておりまする」

「ベルトラン、僕は紛れもなくジュリオンだが」

 

ベルトランが僕の話を聞いてくれない。

 

「もはやユリア様が男子であろうと女子であろうと関係はありませぬ……!」

 

おじいちゃんのお耳は遠くなっちゃったのかな?

 

「そうだ! 我が愛しの妹ユリアよ!」

 

お兄ちゃんのお耳はマザコンこじらせちゃったのかな?

 

「ベルトラン、大いに関係があります。そして兄上、食事中ですのでお静かに」

 

僕は、この狂った会話に眉間をほぐす。

 

……この屋敷ごと魔族の洗脳魔法とか受けてないよね……?

 

いや、明らかに魔族に対して不利な方に傾いてるから、ただそう思い込みたいだけだけどさぁ……。

 

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