悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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7章 女装して領地に絡め取られていく僕
131話 逃げ切れなかった僕と、婚約者


ジュリオン様として転生して10歳になった僕は、すべてを投げ出すつもりでの逃避先な遠征先で、のんびりゴブリンやオークをダンジョンで倒して楽しんでいた。

 

……そうしたらなぜか、7歳のときに事故で倒したはずのエロディーさんが本当になぜか蘇っていたもんだから襲われて、あやうくえっちな目に遭うっていうか半分遭って――よく分からない力で助かって、はや1週間。

 

僕は貴族家に属する者としての責務を果たすべく、逃げずに帰還した。

やたらと短いようでいて、やたらと長かった1週間だった。

 

いや、本当は理由をつけてさらに遠いダンジョンにでも逃げ――領民のために攻略しようとしてたんだけど、まさかゴブリンオークの出てくるダンジョンに魔王軍幹部のサキュバスが復活して巣くってたせいで、僕自身も含めてぼろぼろだったから帰らざるを得なかった。

 

わりと本気でピンチだったし。

 

……10歳で、そういうのに目覚めていないのに危うく目覚めかけたくらいだったし……サキュバス怖い。

 

やっぱり精神を操作してくる系統は恐ろしい。

洗脳や篭絡は魔王軍の十八番だもんなぁ……。

 

ちなみに薄い本とかはそういう系統のがいっぱいだったらしい。

特にジュリオン様とかね、性別とか年齢とか顔とか体とかいろいろいじられてね。

 

かわいそうにね。

今からふるえが止まらないよ。

 

でもそれから2、3日で調子は戻ったし、そこからまた後回しにしたかったのが――婚約者と会って話をするイベント。

 

だって、非常に気まずいんだもん。

 

僕が目覚める前のジュリオン様(5歳)がやらかした(しかも内容は完璧に忘れている)後始末を、過去から転生してきた僕がしなきゃいけないとかさ……感覚としては、大地主とか大企業の子供同士のこじれた仲を外野の大人であるはずの僕が仲裁してこいって感じなんだし。

 

……嫌なものは嫌だったんだ。

胃が痛くなるのは嫌だもん。

 

でも、逃げ続けることはできなかった。

 

これまたなぜか、間に合うはずもないはずだった……過保護っていうか僕と母さんを同一視しているダメダメなパパとブラザーが、僕がすんでのところで助かって気絶してたときに強襲してきていたもんだから、気がついたときにはもう屋敷まで戻されていて物理的に逃げようがなかったんだ。

 

確かに、僕がエロディーさんにぐっちょぐちょにされてるあいだに助けを寄こしてほしいとは言ったけども……なんでこんなことに。

 

タイミングが最悪すぎる。

 

あともう少し遅く来てくれていたなら――いやいやルーシーちゃんはなにも悪くない。

なにもかもジュリオン様の運命が悪いんだ。

 

でも、それはいい。

 

それはまだいいんだ。

 

ジュリオン様の婚約者は、学園に行けば主人公くんに惹かれていき、最終的には彼の元で幸せになる。

だから、ほどほどの距離感でほどほどの付き合いで済ませたらいい。

 

――そう思っていたのに。

 

「………………………………」

 

きっと、今の僕はとんでもなく間抜けな顔をしているだろう。

ジュリオン様の立ち絵はギャグ風味なのが多いからね。

 

それはともかく――どうしよう。

 

今の僕は、予想外過ぎる展開で頭が回らないんだ。

 

だって。

 

「――マルシュ伯が次女、マルセラ・マルシュでございます、ジュリオン様」

 

下げられる、女の子の頭。

 

「5年前のパーティーでの無礼を寛大にもお許しくださっただけでなく、屋敷へ立ち入って直接謝罪する機会を設けてくださり、感謝申し上げます。お父様とお母様からも、そのようにと」

 

お嬢様――本物の貴族のご令嬢。

 

僕が最も会いたくなくて、けれども婚約者である以上にはいつかは会わなきゃいけなかった相手。

 

「……いえ。当時は僕も幼く、むしろ僕の方がマルセラ様へ……」

 

――それだけだったら、ここまではなっていない。

 

僕は回らない頭で、なんとか絞り出す。

けれども相手は止まらない。

 

「とんでもございません。この歳になってようやく理解したのです――身内、それもあのお美しくお強い、素晴らしい御母様を失った直後のジュリオン様が、当時から婚約者だったとはいえ、ただの子供だったとはいえ……わたくしの馴れ馴れしい言葉に心を乱されるのは当然だと」

 

たかが、5歳のときの事件。

 

小学校にも届いていない子供同士のケンカ。

ジュリオン様の記憶からは完全に消えるほどに時間も経っている出来事。

 

でも――立場の違い、貴族文化の違いというものは、10歳でしかない子供の彼女へはずっと降りかかっている。

 

だからこそ、こうして目の前まで押しかけられている。

 

だって、普通ならまず大人になっても続くはずの「婚約者」だから。

 

「まだまだ未熟な身ではありますが、もしあれがわたくしのお母様だったら――そう思うと、これ以上なく胸を打つのです。ですからどうか、お優しいジュリオン様が、もしあの時のことへ心を痛めておられるのでしたら、婚約破棄も受け入れ……」

 

――ジュリオン様として、この世界の紛れもない住人として生まれ直してしまった以上、僕はそのルールの中で生きなければならない。

 

貴族社会、その中でも上位の家庭に生まれてしまった者の宿命として。

女装して町で冒険者気取りで楽しく逃避している時間は、今は封印しなければならないんだ。

 

だから今のように女装を解いて、「本来のジュリオン様」としての責務を、果たそう。

 

………………………………。

 

胃が、痛いなぁ……この肉体はまだ10歳なのになぁ……。

 

 

◆◆◆

 

 

ジュリオン様は、逃げられません。連載からも。

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