悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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132話 お互いに誤解でした  そういうことにしたい

ジュリオン様として7歳で目覚めてからは、死ぬ未来を回避すべく好き勝手して――貴族的な面倒くさいことからは離れていたけれども、もう僕も10歳になってしまった。

 

成人にはほど遠くとも、少なくとも対貴族階級においては――豚貴族さんは除くけども――そのルールに従うしかない。

 

「……ジュリオン様……やはり、許しては……」

 

だから。

 

まるで捨てられる直前のわんこみたいな顔をしている婚約者へは、正しい相対をしなければならない。

 

「……そんなことはない。僕も成長して、あれは『間が悪かった』だけだと理解している――『マルセラ』。今は思うところは、なにも無い。……婚約破棄も、するつもりはない」

 

「……! 有り難う、ございます……!」

 

言葉を昔のように、子供のときのように。

そうすることでこの場は収まるらしい。

 

だって、「婚約者」だから。

 

敬語とは、丁寧な言葉とは、相手に対して距離感を示す言語表現だ。

適切な言葉づかいは相手へ対する敬意を伝えられるが、過度なそれは逆効果。

 

婚約者という立場、かつ、僕の方が家の格では上という状況。

 

なによりも「僕が目覚める前のジュリオン様」ならしたであろう尊大な話し方に戻したことにより、一瞬目を見開くも――安心したように息を吐く彼女。

 

きっと、彼女の家――両親から強く言われてきたんだろう。

 

そりゃそうだ、なにしろ貴族の家同士、しかも上級のそれ同士の縁談だ。

こじれねじれこねくり回った結果、相手から完全に拒絶されるのは避けたいはず。

 

ましてや僕はジュリオン様――次男とはいえ辺境伯、しかも母親は元王族だったし。

 

「………………………………」

 

ひとまず、空気は和らいだ。

 

……メインヒロインの1人、貴族同士幼なじみな婚約者を幼いころのパーティーで罵倒して、それが未来での僕の死亡フラグのひとつになっていたはずだったんだけど、残念ながらその細かい経緯までは覚えていない。

 

そもそもとして前世の記憶はあいまい、ついでに今世は冷たい水でのショック療法的に乗り移った形で、もちろんあのときにも記憶はかなり吹っ飛んでる。

 

そして、そこから3年が経過している。

どれだけ記憶力の良いスペックのジュリオン様ブレインでも、全部は留めておけない。

 

――だから、小さいときの「喧嘩」が原作通りにジュリオン様が一方的に悪いのか、それともこの子が言うように傷心のジュリオン様の地雷な発言のせいで起きたのかはわからない。

 

……どんな言葉でいじめたのかは知らないけども、おそらくはやさぐれてた時期のジュリオン様(5歳)だからなぁ……ある程度仲良くなれたら改めて、ジュリオン様に代わって謝らないと。

 

大丈夫大丈夫。

 

貴族子女といえども、しょせんは10歳の子供。

 

しかも年頃の女の子だ、ジュリオン様の綺麗なお顔と権力と財力で優しくしてあげれば――

 

「……それにしても」

 

「ひゅっ……!?」

 

なぜか、僕の口から息が漏れる。

 

――女子という生物は、齢数歳にして男とは違うもの。

 

ましてや貴族の子女とあって――原作でも知っている彼女は、頭の回転がずば抜けている才女だった。

だからなのか、最低でも成人してから転生したのを自覚してから3年が経っているはずの僕が、正真正銘10歳の彼女と相対するだけで、気圧されている。

 

「――――――…………」

 

……うん、ずっと考えないようにしていた。

 

綺麗な金色の髪。

その下で光る、意志の強そうな――いや、強いと「知っている」目元。

 

3年間ずっと積極的にパーティーを組ませてもらっていた、女神マルテルさん。

5年前に喧嘩別れ――子供のそれだけども――をしていた、婚約者マルセラさん。

 

いやいや。

いやいやいやいや。

 

偽名にしては安直すぎるよね?

じゃあやっぱり偶然似てるだけの別人だよね?

 

「うふふ……」

 

――笑みの深くなる彼女

 

……気づいてないって可能性は残されてないかな?

 

そうだよね、僕は普段は「ユリア」として女装してるし、今は「ジュリオン」として男装――もとい男らしい格好をしている。

 

普段は髪に灰を塗って白髪にしていて、今はツヤのある銀髪。

髪だって普段は肩へ垂らしているのを、今は後ろで結っている。

 

服だって普段は冒険者用のであっても女の子らしいワンピースかスカート、その下にタイツとかズボンとかで、今は飾り気のない男子用の正装だ。

 

声だって――普段はもう、声変わり前の小学生男子として普通に話してて、人前ではちょっと女の子らしい口調にしてみたりして、けれども今は意識して声を張って硬い感じにしてるし。

 

うん。

 

顔が多少似てる――同一人物とはいえ、これだけいろいろ変えていたらまず本人だとは思わないはず。

 

絶対、そう思わない気がする。

 

……気づいてないよね?

 

双子として認識してくれてるよね?

 

お願い。

 

君はただの婚約者であって、3年間寝食を共にしていろいろと恥ずかしい話まで全部ぶちまけてある女神じゃないって、ここで言って……?

 

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