悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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133話 女神が婚約者だった

「婚約者のマルセラさん」であって「女神のマルテルさん」でないと信じたかった彼女から――外堀を埋めるように、呪文が唱えられ始める。

 

「お美しい姿――まるで王都までも届いています、『貴方の双子のお姉様でいらっしゃるユリア様』と違わぬ……女として嫉妬してしまうほどのお顔ですわ」

 

これは、詠唱のようだ。

 

どうやら僕の願いは叶わないっぽい。

僕はもうだめだ。

 

「……母譲りの、女々しいだけの顔だ」

「そう言われてしまいますと、女としては負けた気分ですね」

 

ま、まだ行けるはず。

 

そうだ、女の子ならかわいいっておだてたら気持ちよくなって忘れるかも。

 

「とんでもない。お前こそ――――」

 

「『マルセラ』……そうお呼びくださいませ♪」

 

笑顔を張りつけた僕の顔の下は、だらだらと流れる汗を隠すので精いっぱい。

 

――僕と同じく、マルセラさんも笑顔。

だけども、その中身は何かが違うんだ。

 

「あ、ああマルセラ……それでだな、お前は美――」

「――――――――そういえば、なのですけれども」

 

ぴたり。

 

言葉が、被せられてくる。

明らかに、あからさまに。

 

……怖い。

 

「『私の友人』が、彼女に大変良くして頂いておりまして――ええ」

 

彼女は、肩までの金髪を――「普段」は冒険者の服装に隠すようにしているそれを、今日はなにやらの髪飾りをつけ、「普段の冒険」では何日も野宿するせいでくすみがちなそれを、まぶしいほどに輝かせていて。

 

その瞳は、実は気づかいの塊だし女神な性格を隠すように意志の強そうに光っていて。

 

けれども、今日は――

 

「『ユリア様の弟様であるジュリオン様』についても、それはもう――『ご本人かのように』聞き及んでおりますの。ええ、本当に――『服装と髪型さえ変えたなら、ユリア様としか見えない』くらいに。……髪。お手入れ、行き届いてらっしゃいますわね? 冒険者としてではなく、町の視察に来るときの綺麗な銀髪に、ひと房の美しい紫――『今と同じ』、ですわよね?」

 

「ひゅっ」

 

僕の肺から、空気が消える。

 

――だってその顔は、どう見ても。

 

顔もお化粧していて服装は伯爵令嬢にふさわしいドレスにはなっていても――女神マルテルさんそのもので、ついでに言えば、ですわ3姉妹やリラちゃんを叱るときのような凄みがあって。

 

この3年間ずっと一緒に旅をしていて――主に癒やし要員として、僕から積極的にパーティーへ誘っていて、1年の半分以上は同じ場所で寝起きしていた彼女にしか、見えなくなったから。

 

マルテルさん=女神=マルセラ・マルシュ=婚約者=メインヒロイン。

 

こんな、おかしな等式が成立しているだなんて。

 

「………………………………」

 

僕は、天井を眺めた。

 

……なぁんでぇ……?

 

「ぐぬぬ……私のセレスティーヌが、あんな小娘にNTRそうになっておる……!」

「ぐぬぬ……俺のママが、他の女と見つめ合っている……!」

 

「ジュリオンさまの、将来のおくさま……あれぇ? どこかで見たような……?

 

「あたいはやっぱアイジン狙いしかねぇなぁ、兄貴ぃ。てかアイツ、やっぱアイツだよな? この前の遠征も一緒だった……」

 

彼女と僕、2人きりのはずの昼食会場は、なぜかドアの先からギャラリーが覗いている。

 

けどもやっぱりそんな場合じゃない。

そんなことを気にかけている場合じゃない。

 

――つい数日前まで一緒に居たはずのマルテルさんが、メインヒロインだった?

 

原作の、あの癖の強すぎるヒロインたちの1人の、あの子――マルセラ・マルシュだった?

 

いやいや、それにしてはおとなしすぎる。

メインヒロインが、こんなにも真っ直ぐな子のはずがないんだ。

 

確か彼女はもっと、こう……高飛車で自分の美貌が1番で、間違っても他の同世代の女の子を褒めるような子じゃなかったはずだ。

 

むしろ小さいころからの社交の場で、同世代かつ同格以下の女の子を片っ端からけなして泣かせていたほどにわがままガールだったはずなんだ。

 

それで、性格がそっくりなジュリオン様とはとにかくに喧嘩ばかりしていたからこそ、穏やかな性格の主人公くんへ惹かれていく――そんな流れのはずだったんだ。

 

なのに今は、どこからどう見ても伯爵令嬢にふさわしい振る舞いしかしない淑女だ。

たとえ家柄で負けてても親から言われても、頭を下げるようなメンタルはしていなかったじゃじゃ馬なはずなのに。

 

彼女は、僕がユリアになってるときは普通の距離感で接してくれていた。

普通に優しくて普通に良い子で――つまりは、あり得ないんだ。

 

そのはずなんだ。

 

「ひそひそひそ」

「ひそ?」

「ひそひそ……」

 

……お願い。

 

のぞき見してたのは怒らないから……そこのドアから聞き耳立ててる、みんな。

 

誰でもいい。

 

助けて。

 

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