悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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134話 マルテルさんが詰め寄ってきた

ぐるぐると考えが回るせいで僕が黙り込んでいたのか。

 

「………………………………」

 

「    」

 

金髪の間からのぞく深紅の瞳が、まるで僕が今まで考えていた脳みその中までを、じ――――っとのぞき込んできているのに――体が完全に硬直する。

 

マルテルさんと=マルセラさん。

 

ずっと見慣れてる瞳が、僕を見透かそうとしてきている。

 

……いやいや、ここまで雰囲気も違うんだから……そう、姉妹!

 

貴族だから当たり前のように居るはずの姉妹とか、そんな関係の別人なんじゃないか?

 

そうだ、そうに決まっている。

貴族の子なら、きっとそうに違いない!

 

たとえば……そうだ、母親違いのとか!

それならジュリオン様とユリア並みに似ていてもおかしくはない!

 

だって、大切にされてるはずの伯爵令嬢が冒険者やるだなんてありえないもん。

 

平民に近いし貧乏だから放り出された男爵な3姉妹たちならともかく、辺境伯に嫁ぐ予定の女の子を、そんな危険なところへやるはずがない。

 

そうだよ、原作ジュリオン様なら腕のケガひとつでけなしてくるのが目に見えてるんだ、花よ蝶よとお庭で育てるに決まってるんだ。

 

そうそう、ありえない。

 

だから、この子はマルテルさんではない。

ただの、マルセラさん。

 

僕の正体を暴いてきた女神ではなく、ジュリオン様の変わりっぷりに戸惑っているだけの婚約者。

 

「……ジュリオン様?」

 

「ジュ、ジュリオンで良い……婚約者だろう」

 

「では、私のことはマルセラとお呼びください」

「いや、でも――――」

 

「以前は、私のことを『おい』『そこのうるさい奴』としか――――」

 

あっ……ジュリオン様の過去のやらかし。

それを持ち出されたら、もう言うこと聞くしかないじゃん……。

 

「あ、ああ! マルセラ! これで良いか!」

「ええ、嬉しいです♪」

 

にっこり笑っているマルテルさん、もといマルセラさん。

 

……あの、笑顔が怖いんだけど。

 

ま、まぁ、どんな内容だったかは忘れてるけども、事情があるにしろ5歳の子へ――しかも婚約者へ暴言を吐いたのは事実のようだ。

 

その記憶が正しかったのに安堵すると同時に、そのやらかしを僕が清算しなきゃいけないっていう、いちばん最初に考えてた胃痛がこみ上げてくる。

……10歳になって分別がついたからこそ、貴族として家の格を意識して僕を持ち上げてくれる形にはなってるけども……これ絶対怒ってるって。

 

いやまぁ、僕の来世もとい今世がやらかしたことだから、僕が背負うしかない罪だし――なによりも、さっきまでのガンつけは、どうやらその怒りを秘めていたからだと分かった。

 

……助かったぁ……。

 

「そういえばなのですけれど」

 

「は――うむ、何だ?」

 

どれだけ怒られようと、この子がマルテルさんとしてユリアな僕を見破ったわけじゃない――その事実に心からの安堵を、

 

「お姉様――ユリア様は、本日はいらっしゃらないので? 『大切な弟様』が嫌っていたはずの相手が訪れるというのに? わたくしが、その弟様へ酷い暴言を吐いたとご存じのはずの――素敵なお姉様ですのに? 領民の1人1人へもお優しいあのお方が、大切な弟様を傷つけた相手との時間へ、駆けつけないというのは――あまりにも、おかしいのではなくて?」

 

「    」

 

きょろきょろと部屋を見回して――ばたんっとドアが急いで閉まったおかげで出歯亀たち引っ込んでくれたけども、それまでよりも強烈なストレスを受け、3年前のつめたくてきちゃないお水で停止しかけた心臓が飛び跳ねる。

 

――え。

 

待って。

 

もう修羅場は終わったはずじゃ――

 

「聞き及んでおりますわ。ユリア様は、対外的には存在自体を内密にせねばならない御方――かのセレスティーヌ姫様の生き写し。ジュリオン様が政務の見習いでお忙しい代わりに、お姉様が秘密裏に――少なくとも領の中で活動され、冒険者の方々と魔王軍の討伐を、と」

 

「そ、そうだ、姉――様は、今日も領内のモンスター討伐を――」

 

「ユリア」としての活躍のインパクトに釣られてか、僕の――5年前にマルセラさんへやらかした件の悪評は完全に上塗りされている。

 

僕が「姉さん」の代わりに実務を――というのはそれとなく広めてあった話だし、この子に聞かれたときに答えていたはずだから、これで――

 

「――おかしいですね? ちょうど『今日あたりに婚約者と会うのが辛い』のだと。ユリア様、心労でお疲れのようでしたのに。ユリア様の、婚約者の方に――つまり? 『本日は類い稀なる偶然、または意図的にわたくしへ当てつけるように、ユリア様の婚約者の方もまた、こちらにいらしているはず』――ですよね? 」

 

「えっ」

 

「ですからわたくし、お屋敷に迎え入れられたときにユリア様から何かがあるのだと。ええ、あのお方なら、そういうことくらいはするはずですから」

 

きゅっ。

 

今度こそ心臓が止まりそうなほどに縮み上がっている。

癖になってる心臓が、危うく小休止を入れるところだった。

 

待って。

 

待って、そこまで考えてなかった。

ユリアもジュリオンも考えてなかった。

 

「あと。――そもそも、疑問だったのですわ? ユリア様の存在が秘密なら、どうしてあのように大々的に軍を率い、人々を率い、領地改革を行っているのですの? 本当に秘密にするのでしたら、むしろすべてをジュリオン様の成果とするために――そうそう。『男装』――でも、されますわよね? だって……こんなにも、そっくりなんですもの。ねぇ?」

 

「 」

 

どくんっ。

 

あ、不整脈。

10歳でなるんだぁ……そっかぁ……。

 

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