悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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138話 マルテルさんのヤン堕ち

「ジュリオン様」

 

「はい」

 

マルテルさんからの声で、自然と伸びる背筋。

 

……怖い。

 

「ジュリオン様は――側室や愛人へ愛を注ごうとも、正妻へはそれ以上の愛と情熱を注ぐお方。そうですわよね?」

 

「え? ……あ、ああ……そうですね……?」

 

あれ、おかしいな。

マルセラさんの瞳孔が見開いている気がするぞ?

 

あと、怖すぎてもう口調とかわけわかんないことになってる。

 

「ユリア様――いえ、ユリア?」

 

「え……ええ」

 

「………………………………」

「………………………………」

 

「――よし、理解しましたわ」

 

がたっ。

 

席を立ち、1歩、2歩と近づかれる。

さっきとは別の種類の恐怖。

 

「つまり――――――」

 

ふわり。

 

さっきよりもゆっくりと抱きつかれた僕の耳元で、彼女が囁く。

 

「――私の、はつこい、の、人。ゆりあ」

 

「   」

 

「初恋――それも『同性』へのだと思っていた憧れからのそれも、婚約者の異性として当然結ばれると思っていた貴族子女の責務から好きになろうと努力をして、けれどもあの日私自身の傲慢さを生まれて始めて正面から手酷く指摘され、それを気持ちでも理解すると同時に私を叱ってくれる人という意味での『異性』へのそれも――――どちらも、『あなた』へのそれ……なのよね? どうかしら? ごめんなさい、私、今、ものすごく混乱しているのだけど……間違っているところ、あるかしら?」

 

「ひゅっ」

 

あ、今ちびりそうになってる。

 

膀胱が縮み上がって――けれども男として生まれたおかげか、ぎりぎり決壊せずに済んでいる。

 

「………………………………」

「………………………………」

 

沈黙が怖い。

 

「――ああよかった。ふふっ」

 

耳元の声が、怖い。

 

熱いのに、冷たい。

 

「あなたが無事で居てくれて。――サキュバスなんかに、さらにはそのあとに別のモンスターに汚されずに、この美しい肌も高潔な魂も無垢な精神も、なにもかもそのままで居てくれて。ふふふふふふふ……わたくしだけの、綺麗なままのユリア……ジュリオンでユリア……あは、あははははは……」

 

「         」

 

あの、マルセラさん……?

 

僕の女神のはずのマルテルさん……?

 

「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……大丈夫よユリア、大丈夫ですわジュリオン様」

 

えっと、僕をどっちかにしないと話しにくいんじゃないかなぁ……?

 

「女装――いえ、乱れた姿で保護したときの貴女は女性の私から見ても扇情的で美しい女性で、今の男性の格好はただの男装にしか見えない貴方も、こんな私へそんなに大切な真実を告げてくれる覚悟と情熱を秘めた凜々しい男性だもの」

 

僕の耳元でASMRをしていた彼女が、ちょっとだけ顔を離して僕を正面から至近距離でのぞき込んでくる。

 

……近すぎて瞳へ反射する光もなければ瞳孔が開いたままで怖いです。

 

ていうか、だいぶおませさんですねマルテルさん。

ああ、女の子って男より早熟なんでしたよねそうでしたねマルテルさん。

 

「ユリア。私、強くなるわ」

 

「えっ」

 

なんで?

 

「だってあなたの1番をいただくのは私だもの」

 

そうなの?

 

「そうだと、生まれたときから決まっているのだもの。そういう運命なのだもの。だから絶対に他の女にも男にも渡さな――――側室候補や愛人は作る気、あるのですかジュリオン様。わたくし私わたくし私以外の女を何人娶り私を置き去りにするのですかユリア」

 

「  」

 

こわい。

 

言動が支離滅裂になってきているところがホラー過ぎる。

 

「……そういえばユリアとしての冒険に着いてきていたあの子たち……ルーシーもリラも、あとテオも、どう見てもあなたに惚れていて……ああ、シモーネとレモーヌとジュモーネもよね」

 

ですわ3姉妹の名前、よく覚えてるねマルセラさん。

さすがは女神マルテルさんだ。

 

「先日の大規模な攻略で着いてきた、あの子――確かエミリーとか言ったわね。あの子が1番危険よね。明らかに雌の顔になっていたものね。――お手付きしているのかしらジュリオン様? 先ほどの言葉は嘘だったのかしらユリア」

 

「」

 

玉が、きゅっとなった。

男としての証が、女の子に恐怖している。

 

「……ふふっ、ごめんなさい。その顔で安心したわ。でも大丈夫よ、ユリア」

 

縮み上がっている。

 

「あなたの貞操は、私が守るわ」

「あ……ありがとう……ございます?」

 

おかしいなぁ。

 

そういう発言って普通、男から女にするものなんじゃないかなぁ。

 

「――――――15から通う学園の規則で、卒業まで子作りを禁止されているのが口惜しいけど、それが終わったら……男としても女としても、私が命を賭けて愛するわ。10人でも20人でも、あなたの子を産み育てるわ」

 

「      」

 

抱きついてきている彼女からは、まるでサウナに居るみたいなじとじとじめじめした蒸し暑さが伝わってくる。

 

「私、ユリアのことが大好きで、ジュリオン様のことも好きになっていましたわ。だから好きな人が1人で2人……ふふ、ふふふふふふふ……」

 

………………………………。

 

おかしいなぁ。

 

「あ、そうね。ユリアとしてもジュリオン様としても愛せるのだから、どちらの服装でも……ふふ、ふふふふ……今度家に帰ったときには、お母様から手ほどきを受けませんと……」

 

――マルテルさん。

 

もしかして……僕が、おかしくしちゃったのかなぁ……?

 

 

 

 

【BAD END/No.51:マルテル「……性格は腐ってるけど、結婚して良いって程度には好きだったのに。ジュリオンの――馬鹿」――回避】

 

【new! BAD END/No.51:マルテル「ユリア/ジュリオンの居ない世界なんて必要無いもの。魔王? 良いわ――その力で、全てを終わらせましょう」――発生】

 

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