悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~ 作:あずももも
「……成る程ね。つまり、こういうことかしら?」
その後。
婚約者の彼女を「身内」にすると伝えた屋敷のみんなが入ってきた場で。
「――デュクロワ家とその使用人を除けば、私がユリア――ジュリオンの正体を最初に知った……ああ、私がユリアとジュリオンの初めての女……2人の、両方の、初めての……将来を誓った仲……旦那様と妻がいっぺんに……うふふふふ……」
事情を知ったマルセラさんが怖い。
こんなに怖いって知っていたら教えなかったのに……いやだって、この子って、ここまでなるはずじゃ……ねぇ?
もっとこう、プライドが高い分、理解したらそれまでって子だったはずだから……ねぇ?
良くも悪くも直情でさっぱりとした性格だったはずのメインヒロインの1人が、こんなことになるだなんて……ねぇ……?
「ひぇっ……セレスティーヌ並みに愛が重い……でも初対面で三日三晩捕食してくるよりは理性的……」
「ひぇっ……ママ並みに嫉妬深い……でも初対面だった俺の婚約者へ丸1日ふたりきりで詰問したよりは優しい……」
齢10歳にして「女」を発揮している彼女へ戦慄していた僕は――女神だったのに謎の重力を発露しているマルテルさんよりやばかったらしい今世の産みの母親のことを知り、ちょっとだけ安心した。
うん……女って怖い。
「ええ、もちろん守りますわ。だって――これが、学園へ行けば私たち『3人』だけの秘密なのですもの……そう、将来的には夫婦になる私たちだけの秘密……愛する人とその家族と身内だけしか知らない、秘密……うふふふふふふふふふ……」
秘密ってそんなに大事かなぁ。
大事なんだろうなぁ。
男の僕にはよくわかんないや……あ、窓の外にちょうちょ。
◇
「――つまり? ユリア――ジュリオンは、あの亡きセレスティーヌ様の魂に導かれ、かの『アクヤクレイジョウ』を引き継いでいる。そういうこと?」
マルテルさんとベルトランは、すぐに打ち解けたみたい。
……一応学園に入ってしばらく、ルートによっては3年目までは婚約者で良く会う間柄のマルテルさんとはこの先最大で9年くらいは付き合いがあるんだ、学園に入るまでは毎日のように会う、うちの執事と仲良くしてくれることは単純に嬉しい。
けども。
「左様でございます、マルセラ様。ジュリオン様は、3年前に姫様のご遺志を女神様より授かり、以降はセレスティーヌ様の幼き頃に王都を改革せしめたのと全く同じように、デュクロワの領地改革を推進――『未来の奥方様』がご存じのとおりに数々のダンジョンを攻略、また、冒険者の育成――魔力を持たぬ兵士の育成でデュクロワ領全土の戦闘力底上げに、魔族幹部の討伐も2度成功という戦果を挙げておられます。『武力のユリア様』と『知力のジュリオン様』と、両方を駆使されて」
「加えるなら、この屋敷からすぐの、ユリアとして常に目を光らせている町――そこのダンジョンギルドのマスター……ジャンとか言ったかしら? 彼を通じ、ギルド経由でも近隣の領まで届く治安や税制、孤児対策も……まさしく、かつて王都を明るい都へと改革せしめた御母上に負けない功績を達成しているわよね? この国において一定程度独立した権力と支配を持つギルドへも、有事の際には王族の血も引くユリア、そしてジュリオン様の声が届くのだもの」
長い長い、2人とも長い。
会話の文章量が長すぎる。
その内容はどうでも良いこと――いや、結果を見ればちょっとおかしなことに事実になっちゃったことがらではあるけども、産みの母親の七光りのせいで過剰評価なところもかなりある気がする。
ていうかベルトランたちは僕のことを実質的に母さんの魂が取り憑いてるって思ってるし、母さん扱いしてきてるし。
ていうかていうか、本当に大半が「あの」母さんのしでかしてきたらしいことの「続き」として認識されてるからのおかしな反応でもあるんだ。
「……!! 成程……流石はジュリオン様の奥方となられる御方……既にその全貌は把握されておられると……!」
わー、おじいちゃん、すっごく笑顔ー。
僕を母さん扱いしてヨイショしてくるときの他はアメリアちゃんとエミリーちゃん相手にしか見せない満面の笑みー。
「ええ……と言っても、ユリアのことを調べていただけなのだけれども。――そうよね? 『ユリア』」
とても上機嫌なマルテルさん。
でも、油断してはいけない。
「……え、ええ……その通りです……」
事情を説明し終え、それに対してのツッコミもとい学会での「素人質問なので恐縮なのですが」的なおえらいさんからの細かいところまでちくちくちくちくしてくるタイプの詰め方をされた、あの恐怖を思い出すんだ。
絶対に、油断してはいけない。
僕がついてきた嘘についての怒りは、まだ相当持っているはず。
僕は、どんな扱いをされても神妙に申し訳なさそうに素直に答えなければならないんだ。
………………………………。
こんな生活が……学園に入るまでは全面的に、どうにかして追放とかされる穏便なエンディングを迎えるまではそこそこに続いていくのは――きっと、僕の罪だ。
女装なんかして助かろうとした、僕の浅はかだけどなぜかうまく行きすぎてあさっての方向へ加速している気がする浅慮のせいなんだ。