悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~   作:あずももも

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142話 そこそこ元気になったアメリアちゃんと元から元気なエミリーちゃん

「――!! おねにいさま!」

 

「アメリア、落ち着け――ああいや、落ち着きなさい。その呼び方はジャンル違いだと教えたでしょう」

「あ、今のおねに――おねえさまはユリアさまモード、なのですね? わかりました!」

 

とてとてとて。

 

廊下の先から歩いてくる――たぶん、普段散策している庭から戻ってきたばかりなのだろう、外へ出る服装のまま小走りで近づいてくる姿。

 

アメリア・デュクロワ――今世の僕の、義妹。

 

異母兄弟(姉妹)(マルテルさんの前では)。

 

原作通りなら、ジュリオン様がどうにかなるまでとにかく気まずい間柄になっていはずの、血が半分だけ繋がっている――現在8歳、2個下の女の子。

薄い紫の髪は義母のソフィーヌ母さん譲りで、おっとりしてぽわぽわしているのもまた母親そっくりだ。

 

……ゲーム本編では今のソフィーヌさんを何歳か若くした印象で、幸薄病弱年下系美少女そのままな姿に成長していたけれども、一点だけ違うところがある。

 

それは、

 

「この数か月で、起きていられる時間がまた延びました!」

「ええ、ソフィーヌ様から聞いています。良かったですね」

 

――「自分で元気に歩くどころか小走りにもなれる」という……家族としては嬉しいけど明らかな異常だ。

 

そのこと自体は、本当に嬉しい。

嬉しいんだけど……。

 

「それも全部、ユリアおねえさまのおかげでジュリオンおにいさまのおかげです!」

「……私は、たいしたことはしていませんよ」

 

いえ、本当になにもしていないんです。

 

だってアメリアちゃんの病気は……「主人公くん」と出会わないと、解決不可能なはずなんだから。

 

――原作開始時のアメリアちゃんは、それはもうテンプレ的な病弱っ子だった。

 

なにかあれば倒れる、なにもなくとも倒れる、メインルートのうちは隙あらば寝込んでパーティーを強制離脱。

ついでに移動はファンタジー式車いすで、常にメイドさんたちに身の回りの世話を焼かれている描写がプレイヤーの同情と守護心を駆り立てる。

 

ルートに入るかレベルが上がるまではHPとMPは最低クラスで、戦闘も困難で戦闘不能も良くある子で……早い話が、死んだ前世おにける流行としてはすでに時代遅れになっていたはずの病弱ヒロインそのものなんだ。

 

「特定の原因」を「主人公」が解決してあげない限り、その病魔に蝕まれている状態は続くどころか日々悪化していき、特定時期の作品次第ではヒロインとして選択しなければとうとうに命が――という系統のヒロイン。

 

そんな彼女の病魔の正体は、心臓の欠陥。

 

前世で言えばうまく酸素を取り込んで送り出せない病気であり、今世で言えばうまく魔力を循環できない病気だ。

 

ゲームの歴史で言えば……前世的には高校生になる年齢まで辺境伯としての権力と財力でそれっぽい医者とかを片っ端から集めてなんとか体を維持して生き延びたアメリアちゃんが学園で主人公くんに見染められ、ルートに入るとその病気が悪化していくのを食い止めようと彼が奔走してその真相と対策へ急ぐ――という流れとなって救われる存在。

 

まぁ今どきのカジュアルなソシャゲーだ、エンディングでのジュリオン様への仕打ちを除けば、どのヒロインたちへもバッドエンドは存在しない。

 

今どきはカジュアルでフラジャイルなプレイヤーしかいないから、ヒロインに選ばれなかったから他の男とくっつくとか落ちぶれるとか病気で倒れるとかいう結末はあってはならないんだ。

 

そんな理由だからアメリアちゃんだけが選ばれなくともハーレムルートではなんだかんだ救済されるし、選ばれなかったとしても「そのときふしぎなことがおこった!」って感じでさらりと完治していたりする。

 

うん。

 

アメリアちゃんの肉親になっちゃった以上、たとえ僕が盛大にミスってやっぱり良くて雌堕ち悪くて斬首エンドになったとしても、アメリアちゃん自身は幸せに生きていけるだろうって思えるだけ……まだマシって思っておこう。

 

「わぁ……! 今日のユリアおねえさまの、そのアクセサリー、かわいいです……!」

「そうなんです、アメリアさま! マルセラ……マルテル? マルセラマルテル? まるまるてるてる? ……さまが、贈り物としてユリアさまに着けてあげてたんですぅ!」

 

エミリーちゃん……さすがに人の名前は覚えようね?

 

「すてきです! わたしも体調さえよければ、ぜひお会いしたかったです!」

「大丈夫ですぅ! ユリアさまなジュリオンさまの事情を聴いて、一度おうちに帰ってなにかの準備をしてからまた来るって……」

 

きゃっきゃっ。

 

アメリアちゃんといちばんに仲の良いエミリーちゃんが、両手を恋人つなぎにしながら戯れている。

 

「ほぅ…………」

「これが人生の癒し……」

「アメリアお嬢様とエミリーのためなら粉骨砕身致します」

「それをご覧になっておられるユリア様の瞳! あれはかつて、幼かったジュリオン様とユーゴ様を眺めておられたセレスティーヌ様そのもの……! あのお歳で既に母親としての心まで……!」

 

癒し系小動物たちの邂逅に、使用人さんたちの目も細くなっている。

 

うんうん、これは本当に癒しだ。

アニマルセラピーだね。

 

あと、最後の。

 

……僕が男ってこと、忘れてないよね?

 

マルテルさんみたいに認識が歪んでないよね?

 

僕、なるなら父親だよ?

 

男なんだから子供、産めないよ?

 

「お産みに……なられますか? 女神様から愛されしセレスティーヌ様の御子ですゆえ、王都の神殿で一言『孕めるようになりたい』と相談なされば、即日にでも」

 

「結構ですベルトラン」

 

しゅばっと来て2人に聞こえない声で耳打ちしてくるベルトラン。

 

……この人、マルテルさんと出会ったせいで、しちゃいけない化学反応起こしてない……?

 

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