悪役貴族転生【女装】悪役令嬢ルート~99通りで断罪される悪役に転生して女装したら死亡フラグが無くなる代わりに周囲の目が怖くなってくんだけど?~ 作:あずももも
「ところで、王都では最近このような髪形が……」
「あ、じゃあジュリオンさまにはこのアクセが……」
「――では、身籠もりたくなられましたら神殿の方への連絡は私めの方から致しますゆえ」
「必要ありませんベルトラン」
しゅばっ――かわいいいきものたちが僕の髪の毛を触ろうとした瞬間に、定位置である数歩離れたテーブルでポットをふきふきしているベルトラン。
「………………………………」
ていうか、待って?
女神様に頼めば……男でもって、それ本当?
もしそれが本当なら、原作でバッドエンド(デスエンド以外のメス堕ちエンドの全部)なジュリオン様って、まさか……!?
「うっぷ」
誰にも気づかれないように、上がってきた胃液を飲み下す。
――まさか、お姉様方向けの薄い本の「背孕みでの出産」、あるいは紳士向けの「TSでの出産」とかそういう展開がファンタジーな力で実現可能とか、思うわけないじゃん……女神様怖い。
「ユリアおねえさま、さらさらの髪の毛ですぅー」
「ユリアさまの髪の毛は1日中でも梳かしていられるんですぅ」
ああ、小動物たち。
僕を挟んで左右前後から好き勝手に服や髪の毛をぺたぺた触って動き回って「もっとかわいくする」のに花を咲かせるのは勘弁してもらいたいけど、それはもはや癒やしでしかない。
そもそも、女の子として活動せざるを得ない僕が2人の着せ替え人形扱いにされるのをやめてってのが無理なのは、よーく知ってる。
だって、それが女の子の本能だから。
マルテルさんですら、ネックレスとか指輪とかを贈ってくるようになってるんだから。
……ジュリオン様がセレスティーヌ母さん譲りすぎる女顔なのが、そしてメス堕ちエンドが控えているのが悪いんだ。
メス堕ちエンドであられもない姿(ぎりぎり審査を通ったとか)のイベントスチルで女装ジュリオン様に惚れた一般ユーザーが「この子は誰?」って無垢な瞳で質問して「ジュリオン様は男だぞ」って言われて性癖を破壊させられた報告が後を絶たなかったほどには女顔なのが、いけないんだ。
………………………………。
……そうだよなぁ……ジュリオン様、原作の時間軸での高校生でも体つきは華奢だったし、顔もイケメンだけど作画を変えずに髪を伸ばしただけでとたんに美少女になるほどの女顔だったんだよなぁ……てことはこのまま成長しても、たいして変わることは……。
「……ジュリオンさまぁ」
「おにいさまぁ」
「もっとかわいく」
「してしまったら」
「「だめ、ですかぁ……?」」
声をぴったりと合わせた、もう何十回目の「おねだり」。
うずうずするおててを合わせながら、僕を着飾ろうと迫ってくる子たち。
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
――男とは、年下の――ことに庇護対象の女の子には、弱いと定義づけられている。
だから、僕は。
「……いいですよ」
「やったぁ!」
「またおかあさまに頼んでおきます! 最近のはやりのかわいいアクセ!」
きゃっきゃっと戯れる小動物たち。
………………………………ああ。
良いんだ。
この笑顔を守るためなら、僕は男としての尊厳なんて――うん。
メス堕ちエンドに比べたら、はるかにマシなはずなんだから。
けども……今日1日、普段より何割増しでみんなから「かわいい」って褒められることになるんだろうなぁ……。
◇
「まぁ! こんなにたくさん!」
「はいっ、アメリアさまっ。ぼく、スラムの人たち……だった人たちと今でも話すので、町に出て平民の人たちではやってるのとかを買い付けてきたんです。……おきぞくさまのユリアさまに安物とか、怒られちゃうかもしれないですけど」
「いいえ! どれもこれもかわいいからだいじょうぶです! ね、アメリアさま!」
「ええ、エミリーさま! さっそくユリアおねえさまを飾りましょう!」
きゃっきゃっきゃっ。
アメリアちゃんとエミリーちゃん、2人と戯れているのはルーシーちゃん。
屋敷に居るときはメイド服、またはエミリーちゃんのおさがりの服を着ていて、もうどこからどう見ても実質的に孤児だった子供とはとても思えない。
「兄貴ー、ヒマー」
「リラ……お前、女の子だろう……髪飾りくらいは……」
「だってあたい、あーいうのキョーミないしー。ユリアの姉御もそうだろー、疲れた顔してるし。ヤダって言えば良いのによー」
「ユリア様は常に世界のことを憂いていらっしゃるんだからな。俺も、もっと役に立たないと……!」
……僕の周りにもう少しリラちゃんやテオ君みたいな落ち着いた子が居ればなぁ……。